また彼は一年生の頃に明久達と同じクラスだった為……
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翌日
最前に陣取っている二乃さんの機嫌は最高潮に悪かった。
流石にバカな僕でも地雷原に突撃するほど愚かでは無いので逆に上機嫌にパンを頬張っている五月さんに事情を聞いてみる事にした。
そのパンがあれば僕は3日ほど生きていけるカロリーだ!
…因みに何とか二乃さん話しかけようとした須川くんは既に罵詈雑言をその身に受けて灰と化して風になった。
「家庭教師が昨日の夕方に来たんです。 その、同い年の男の子で…それがどうにも二乃は気に食わないようでして…」
「あぁ、昨日言ってたもんね。人を呼んで勉強とか考えたことも無いなぁ…」
「私も考えてなかったのですが…お父さんが…」
厳しいお父さんなようだ。
「で、でも凄い家庭教師さんだったんですよ! 授業はとっても分かりやすくて…初対面でお前、不器用だろうって言われて面を喰らいましたが」
なんだろう、去年の夏ぐらいに僕も「お前はバカすぎる」って言われたことを思い出した。
「今日は私にあった参考書とプリントを持ってきてくれるって言ってました!」
なんでこんなに意欲があるのに神様は彼女に相応の学力を与えなかったのだろうか?
天は二物を与えないとかそういう?
「あー……でもやっぱり二乃さんはそういうのが嫌なのかな」
「…はい。 二乃もそうですが一花と三玖も家庭教師の人に会うだけで勉強はほぼ…」
「私はちゃんと参加しましたよ!」
「あ、四葉さん。おはよう」
「おはようございます吉井さん!」
少し遅れてやってきた四葉さんが僕の前に座るとこちらを向くように座って卓袱台に片肘をついて微笑んだ。
可愛───はっ、殺気!?
咄嗟にカバンを構えると彫刻刀が突き刺さる。
寸分の狂いのない投擲にこの殺意、康太だな!?
「………処刑対象」
「よーし、ムッツリーニ! 僕と取引しようじゃないか!」
「土屋くんおはようございます…その彫刻刀は投げるものでは…」
「ムッツリーニさんおはようございます!」
「……ムッツリじゃない…!」
流石に女子にその呼び方をされるのはキツイのか必死に首を振っていたのでこのまま処刑はなかったことにしてもらおう。
「吉井さん、五月と何のお話していたんですか?」
「あぁ、昨日来たっていう家庭教師の話を」
「なるほど! 昨日私たちを学校まで案内してくれた方だったんですよ家庭教師!」
随分と世間は狭いものだ。
二乃さんが言っていた仏頂面の家庭教師かぁ…そうなると……
「今日の放課後も召喚獣の練習は厳しいかぁ…」
「…あ、そうですよね。すみません…」
「あ、いやいや大丈夫だよ! 五月さんも四葉さんも勉強頑張っている訳だし!」
とは言ったものの雄二にはどう伝えよう。
僕としては頑張ってる五月さんと四葉さんは応援したいので無理強いすることはしたくない。
「ま、最悪Bクラス戦までに召喚獣をなんとか出来ればいい。 Dクラスは相手じゃないしな」
「あ、雄二! おはよう。今日は遅かったね?」
「ちょっと調べ物をな。四女と五女は勉強して学力を上げればどの道クラスとしてはプラスになる」
「坂本さん、せめて名前で呼んでくれませんか?」
「五女って逆に言い難いような…」
「どっちだって同じだろ。 明久、とりあえずお前は残りの一、二、三を何とかしろ」
「最早数字しか言ってないよ!?」
そして一二三さんをどうにかするの僕なの!?
「吉井」
目の前に立つ雄二の横に並ぶように
「な、なにかな二乃さん!?」
「放課後やるわよ」
「えっと…僕お金もってないけど…」
「召喚獣ってやつの使い方を教えてくれるんでしょ? それとあんたがお金もってないのは昨日の昼だけで十分知ってるわよ。 本当は美波に教わりたかったけど…美波も吉井が一番上手いって言ってたわ」
島田さんが僕を褒めていただって!?
明日は鉄人が降るのではないだろうか。
「二乃…今日も……その家庭教師が…」
「…知らないわそんなの」
「二乃…!!」
「その辺にしておくのじゃ。朝から喧嘩なんぞしても面白くなかろうに」
秀吉の仲裁で二乃さんは直ぐに席へと戻り、少し離れた席で事を伺っていた一花さんと三玖さんも興味を失ったように腕枕の中で眠りへと向かっていった。
うん、難しそうな話だね!
そのまま特に何も無く放課後を迎えると三玖さんが廊下を走りそれを男子が追い掛けていた。
走るっていってもそんな速度ではなかったけど互いに。
一花さんもなんだか理由をつけて帰ってしまったので結局、朝言ってた通りに二乃さんだけが教室に残っていた。
「それじゃあ鉄…西村先生お願いします!」
「今、鉄人って言いかけなかったか? まぁ、いい承認する」
「
【Fクラス 吉井明久 保健体育 42点】
ボンッ! と僕の召喚獣が現れるとちょこちょこと二乃さんの前を左右に軽く歩いてみせる。
「…ダサいわね」
「昨日に引き続き今日まで!? そう何度も言わなくたっていいじゃないか! とりあえず二乃さんも召喚して。
「はぁ……試獣召喚!」
【Fクラス 中野二乃 保健体育 31点】
二乃さんの前に出てきたのは鎧を着込み大振りなランスを持った小さな二乃さんだった。
あれかな、ガードの硬さ的なものが召喚獣に反映された?
にしても武器は長物かぁ…僕は木刀だし上手く教えれるかな。
「…歩くのも難しいんだけど」
「召喚獣だと視線の高さとか違うからね。ラジコンを操縦する感覚…とはまた違うかも」
二乃さんの召喚獣の周りを僕の召喚獣がちょこまかと動き回る。直進とか左右の動きはすぐに出来るようになるんだけど斜めとかジャンプとかって意外と難しいんだよねぇ…
「ゴキブリみたいな動きね」
「ゴキ…ぐへぁ!?」
「あ、当たったわ」
あまりの言われように驚き召喚獣の動きが止まった瞬間に二乃さんのランスが横殴りに僕の召喚獣を吹き飛ばした。フィードバックが痛いけれどあまり点数差がないのが救いだった。
「何をやっとるんだお前らは…」
「見て分かりませんか特訓です!」
「それは分かるがな」
呆れた様子の鉄人はそれ以上何かを言う訳ではなく教室の隅で成り行きを見守るように立っている。
不気味だ!
「と、とりあえず二乃さんは自由に動けるのが目標だね。その後に攻撃とか回避とか」
「ふーん…ま、いいわ。 時間を潰せるならそれで」
不格好ながらも歩き方向転換する召喚獣を眺めながら時折僕の召喚獣が小突く。
イラッとした様子でランスを振るうも先程のような不意打ちでは無いために軽くヒョイと避けてみせる。そんなことを何回か繰り返していると─
「いい加減にしなさいよ
「うぇえ!? いや、ほら召喚獣の練習だしダメージも与えてないよ!?」
「人が珍しく真面目にやってるってのにちょっかい出してんじゃないわよ! あと避けるな!」
「避けないと僕が痛いんだって!?」
怒りのスイッチが入ると先程までのたどたどしさは何処へやら、確実に僕を仕留めるべく走り突きやら殴打の応酬が襲いかかってくる。
本当に初心者なの?!
それから1時間あまり、つまり完全下校時間までは二乃さんとあと途中から美波と秀吉が加わって召喚獣を動かしていた。
「んー、一日で結構動かせるようになったね!」
「そうかしら、あまり実感がわかないけど」
「最低限動けるようになればDクラス戦はそこそこ戦えそうだよ! あ、でも持ち点ゼロになると戦死扱いになって戦争終わるまで補習だから気を付けてね」
「は、はぁ!? なによそれ!?」
家庭教師から逃げて召喚獣の練習していたのに戦死すると勉強しないといけないのこれ如何に。
「とにかく明日もやるわ。あいつに会わないためなら仕方なくバカに指示を受けるわ」
そこまで嫌われる家庭教師、一体どんな人なんだろうか。 僕達と同じ歳って五月さんは言ってたけど。
「…一応お礼は用意しておくわ。 あんた惨めだし」
「お礼なんていいよ! 施しは受けるけど!」
じゃ、と軽く手を振って帰っていく二乃さんを見送る。
まさか後に家庭教師を巡って雄二が犠牲になるなんてこの時は思いもよらなかったんだけど。
新学期3日目の放課後。
二乃さんとの特訓も終わったし今日は新作のゲームが家に届く日だし受け取りを夜にしておいて良かった。
カバンを担ぎ、下駄箱へと向かうと下駄箱の前に先程まで教室にいた顔が座っていた…いや…
「二乃さん…じゃなくて三玖さん?」
「…………たしか………………」
僕の顔を見たままフリーズした。
そんなに僕の顔かっこいいのかな。
「………ごめんなさい」
「なんで謝られたの!?」
「……名前思い出せなくて」
良かった、唐突にフラれたのかと思っちゃった!
「吉井明久だよ。吉井でも明久でも好きに呼んでねっ」
「それじゃあアキヒサ」
「うん、それでどうしたのこんな時間に下駄箱の前で座り込んで…あ、二乃さんを待ってた?」
「………ううん。すこし、考え事」
「吉井! まだ帰ってなかった……む、中野……三玖か? どうした」
「あ、西村先生。 三玖さん少し考え事してみたいで」
「そうか暗くなり始める時間帯だから気をつけて帰りなさい。 吉井はバカだが盾ぐらいにはなる男だ。吉井」
「あ、はい! 気をつけて帰ります。 行こう三玖さん」
鉄人もこういう時、大人というか教育者なんだよなぁ…と改めて思ってしまった。 4月とはいえ6時を回れば薄暗くなってるし女の子一人で帰宅は危ないだろう。
「……無理しなくていいから」
「いやいや、三玖さんみたいな可愛い子がこんな時間に一人で歩いてたら危ないって! それにクラスメイトだし僕としてはみんなと仲良くしたいからね」
「……ありがとう」
無言の時間が続く。
学校になれた? とか3日目にして聞くような事じゃないし、僕は気の利いた男子だからね!
「…アキヒサは勉強出来ないの?」
「へ? そりゃまぁ…Fクラスにいる程度には出来ないよ?」
「……突然知らない人から、…本当に知らない訳じゃないけれど、そんな人から『お前たちは勉強ができる』なんて言われて信じられる…?」
知らない人から勉強が出来るって言われたら…?
うーん、僕は馬鹿だし…でも。
「信じられないかもしれないけど、信じたいって思うかな?」
「信じたい…?」
「うん。 三玖さんがそんなに悩んでるってことは…きっとその人が真剣に言ってくれたって思ったんじゃないかな? 真剣に、言ってもらえたことなら僕は信じたいかなぁ」
「……そっか」
それ以降、三玖さんは口を開くことなく彼女の家であろうとんでもない高層マンションに到着した。 僕の住んでるところもそこそこイイつもりだったけど、ここは格が違う…!
「……送ってくれてありがとうアキヒサ。また明日ね」
「あ、うん。また明日三玖さん!」
「三玖が勉強し始めたんだけどあんた、何か知らない?」
「へ? 勉強し始めることはいいことじゃない?」
「
「い、いやぁ…家庭教師から勉強を教わらない方が僕としては不思議なんだけれど……」
「………………あ、そうだ吉井。 ほらこれ、一昨日言ってたお礼よ。一応だけれど教えてもらってるし」
二乃さんが差し出してきたのは小さな袋に入ったナニか。 思いっきり話を逸らされた気もするけど中身を見た瞬間、僕はそんなことを忘れて受け取ったそれを掲げてしまった。
「お弁当!!? いいの!?」
「五人分作るのに一人増えたところで変わらないし」
「ありがとう二乃さん! これだけあれば1週間は生きられるよ!」
「なんでその量を数日に分けて食べようとしてるのよ!? 何日かに一回ぐらいは作ってあげるわ」
「…女神?」
「敬いなさい」
「ははぁ…!!」
なんて優しい女の子なんだ…! 今日の二乃さんは輝いて見える。
その時、不意に視線を感じた。 まさか僕から1週間分のカロリーを奪う輩!?
咄嗟に視線を感じた方へと目を向けるとフワッとした髪がなびいて見えたが逃げるところだったからか顔までは見えなかったのだけれど…
「姫路さん…?」
「なに、吉井の知り合い?」
「えっと、小中の同級生かな」
たしか今はAクラスだったはず…なんで屋上なんかに姫路さんが来てたんだろう?
「ここに居たか明久、次女」
「あ、雄二! 今姫路さんとすれ違わなかった?」
「姫路…? あぁ、Aクラスの。すれ違ったぞ。 それよりも次の月曜日だ」
「「月曜日?」」
はて、なんの話しだろう。二乃さんも分からないといった顔でこっちを見ている。うーん、綺麗な顔だ。
「朝イチでDクラスへ宣戦布告、昼にはそのまま開戦する」
「本当にDクラスで大丈夫なの?」
「次女、Dクラスってどんなクラスだと思う」
「Fクラスよりは頭いいんでしょ」
うん。正解。
「明久、Eクラスはどうだ?」
「僕達より頭いいよね」
「はぁ……いいか、Eクラスのメンツは主に体育会系部活の連中だ。 部活に精を出し多少勉強を疎かにしているが…中にはCクラス並の連中も居る。 比べてDクラスは上にも下にも動けない成績だ」
「なるほど…」
「それで、来週の月曜ってのには理由があるのかしら」
そうだよ、どうせやるなら今日明日のほうがいいんじゃないのかな。なんて言おうとしている雄二は先駆けて理由を説明した。
「今週一杯はお前たちには召喚獣の練習を続けてもらう。 それに進級試験が終わったばかりだし俺達Fクラスが試験召喚戦争をやるとは思いもよらないだろう。 そうタカをくくっているうちにこっちは補充試験で点を稼いでヤツらを叩く」
確かにクラス替えして最初の週から補給テストなんて受けるわけないか。それにしても雄二って僕と同じバカなのに色々と考えてるんだよなぁ…
「って事でだ、少なくとも次女は戦えるレベルになってもらう」
「ま、やるだけやるわ」
「それと宣戦布告は明久にやってもらう」
「待って、下位クラスからの宣戦布告って酷い目に遭わない?」
「これは明久にしかできない事だ」
「嫌だよ!? どうせ荒事になるんだって分かってるからね!!」
袋叩きにあうのが目に見えてる。
「大丈夫だ。明久なら居てもいなくても大丈夫だからな」
「やっぱりそういう事か貴様!!」
「そんなに嫌ならジャンケンか何かで決めればいいじゃない」
「え、二乃さんもジャンケンしてくれるの?」
「しないわ」
しないのか…
まあ、宣戦布告の使者なんて可愛い女の子にさせるつもりはなかったけどさ!
「じゃあ雄二、僕は頭を使うよ! 僕はチョキを出す!!」
「なるほど。お前にしては頭を使ったな…じゃあ俺はお前がチョキを出さなきゃ…ぶん殴る」
なんて?
「ジャンケン…!」
「ちょ、ちょっと待っ─「ポン!」─くっ、ポン!」
チョキを出したのに殴られたし負けた。
問題
『少年探偵団』や『怪人二十面相』を世に送り出した、日本の小説家の名前を答えなさい。
姫路瑞希の答え
『江戸川乱歩』
教師のコメント
正解です。さすがですね、姫路さん。
江戸川乱歩は大正から昭和にかけて活躍した、推理小説を得意とした小説家で、アメリカの文豪、エドガー・アラン・ポーの名に因んだペンネームです。
中野三玖の答え
『コナン・ドイル』
教師のコメント
コナン・ドイルは1800年代中期から1900年代前期にイギリスで活躍した人物です。代表作は『シャーロック・ホームズ』シリーズや『ジェラール准将』シリーズになります。
テストにはこのように作者を答えなさい、又はこの作者の作品名を答えなさいのような問題が多く出る場合がありますので、作品と作者の結び付きをしっかりと覚えましょう。 時間がある時に読書をしてみるのもいいかもしれませんね。
吉井明久の答え
『犯人はこの中にいる!』
教師のコメント
先生は犯人ではありません。
中野四葉の答え
『犯人は吉井さん!』
教師のコメント
まさかの展開過ぎて先生は困っています。
彼は何をしたんでしょうか。