ウマ娘怪文書やら思いついたSSを垂れ流すだけの。
「吉井! 木下たちがDクラスの連中と渡り廊下で交戦開始したわ!」
ポニーテールを揺らしながら走ってきたのは僕と同じ前線第二部隊に配属された島田さん。 こうして改めて見ると脚もスラッと長く、顔立ちも整っていてスタイルもいいのにどうして僕は彼女に女性としての魅力をあまり感じないのだろうか…
島田さんに続くようにやってきたは同じ部隊に配属された一花さん。
ふと、一花さんと島田さんを見比べるとピンと来た。
「あぁ、胸か」
「どの指から剥がされたいかしら。 大丈夫よ、全部剥ぐから」
「うーん、擁護しきれないなぁ…」
不味い、あまりにもな胸囲の格差社会に口から言葉が漏れ出ていたようだ。何とかして話を逸らさなければ。
「そ、それより試召戦争に集中しよう! 一花さんたちは初めての実戦なんだし! 一花さんはとりあえず動かせることは出来るんだよね?」
「うん、二乃ほどじゃないけれど明久くん達が教えてくれたからね」
先週末、家庭教師が来ない日に二乃さんを除いた全員に、とりあえず簡単な召喚獣の操作を教えることが出来たので後は戦死しないことを心掛けて動いてもらえれば言うことなしだろう。
前線はどんな様子なんだろう、と耳を澄ませると怒号と共に普段嫌という程聞いている声が聞こえてきた。
『負け犬共、戦死者は補習だ!!!』
『げっ、鉄人!? い、いやだ…鉄人の鬼の補習だなんて地獄じゃないか…!!』
『黙れ! 終戦まで時間が掛かるだろうからな捕虜にはたっぷりと指導をしてやるぞ。補習が終わる頃には趣味は勉強、尊敬するのは二宮金次郎、愛読書は学問のすゝめという模範的な生徒に仕立て上げてやろう』
『た、助けてくれ!誰かぁ!誰かァァァ!!!』
「……」
「…………」
「総員退避ぃー!!」
鉄人の補習だって!? そんなの死に向かうようなものじゃないか!
「吉井、ウチらが退いたら木下が危ないのよ!?」
「最前線には二乃もいるし私も撤退に賛成は出来ないかなぁ…?」
「大変だ!! 前線の損耗が激しくて崩壊しかけている!」
「総員退避しなさい!」
「うん、退避しよっか」
なんという手のひら返し。惚れ惚れする。
「あ、吉井隊長!」
「横溝くん? 配置は代表傍付きだったよね?」
「その代表からの伝言だ『逃げたらコロス』」
「よぉし、全員前線へ突撃!! 作戦はガンガンいこうぜ!!」
「「「「「おぉぉぉおおおおお!!!!!」」」」」
秀吉と二乃さんは必ず助け出すんだ!
崩壊しかけている前線へ全速力で駆け込むと学年主任の高橋先生が居る。ということは、総合科目か…!
「Fクラス吉井明久、召喚します!」
「島田美波、召喚します!」
「中野一花、召喚しますっ」
「承認します」
「「「
【Fクラス 吉井明久 総合科目 521点】
【Fクラス 島田美波 総合科目 643点】
【Fクラス 中野一花 総合科目 562点】
流石Fクラス。総合科目だというのに軒並み点数が無惨な数値だ。
因みに、僕らが将来的に戦おうとしているAクラスの下辺りで総合科目は2400点とかなので僕らの点数は吹けば消し飛ぶ程度である。
それでも今の相手はDクラスだし、前線部隊とやり合っていた為に彼らの点数は無傷の第二部隊よりもかなり低くなっている。
「Fクラスの増援…!?」
「くそ、五十嵐先生と布施先生はまだか!?」
五十嵐先生に布施先生ってたしか化学の先生!
学年主任一人だと召喚フィールドが限られるから人数を増やしてDクラスは速攻戦にするつもりか!
「島田さん、一花さん! 化学の点数は!?」
「60点台ね」
「たしか50ちょいかな」
「よし、先生2人がこっちに来る前に削れている敵から確実に減らすんだ! 戦死していったクラスメイトのためにも!」
そういう僕は30点ちょいだった気がする。
荒れ狂う波のようにFクラスの召喚獣達が手傷を負ったDクラスの召喚獣を飲み込み、次々と戦死者を出していく。
「隊長首を取れ! そうすればFクラスなんてバカの集まりだ!」
【Dクラス 御厨仁 総合科目 218点】
【Dクラス 涼城白亜 総合科目 334点】
【Dクラス 実原氷里 総合科目 487点】
前線部隊が削ってくれていたおかげで僕達でも勝てる!
一花さんも島田さんも押し負けることなくどんどん相手の点数を削っていき、僕も攻撃を躱しながら召喚獣の急所に木刀を叩き込む。
召喚獣も首や関節に攻撃すればその分、大きく相手の点を削ることが出来るのだけれど、よっぽど扱いに慣れていないと狙った攻撃は出来たりしないんだよねぇ。
「な、なんで!?」
「どっこいしょおおお!!」
バコンっ!と振りかぶった木刀が御厨くんの召喚獣の頭部をしっかりと捉え、彼の召喚獣が粒子となって消えた。
【Dクラス 御厨仁 戦死】
「戦死者は補習ゥ!!」
「に、西村先生!? ひぃ…ッ」
引き摺られるようにDクラスの面々が補習室へと連行され、渡り廊下はFクラスが制圧することが出来た。
今のところ戦況はこちらが有利だろうか…?
学年主任の高橋先生は次の戦場に連れて行かれ、すれ違うように二人の美少女…二乃さんと秀吉がやってきた。
違う、秀吉は男だ。
「明久、助かったのじゃ…」
「なんでこっちが崩れるまで来ないのよあんた達…」
「秀吉、二乃さん! 無事でよかったよっ」
「ごめんね木下、二乃。 吉井がひよったのよ」
「逃げようとしてたもんね」
「えぇ!? 二人も逃げるのに賛同していたよね!?」
「三人とも召喚しなさい。 補習室に送ってあげるわ」
ヤバい、二乃さんが殺る気だ!
「誰か! 前線副隊長が乱心してるから連れてって!」
「ちょ、離しなさいよ!? というかあんたは坂本と一緒に居るはずでしょ三玖!?」
いつの間にか最前線にやってきていた三玖さんに羽交い締めにされてFクラスへと連れ去られていく二乃さん。
秀吉を初めとする生き残ったクラスメイトも点数をだいぶ失ったので点数補充のテストを受けるために教室へと戻っていく。
僕達、第二部隊は押し込んだ前線の維持、又は更なる前進が仕事だ。
「このままDクラス前まで押し込んで雄二率いる本隊が来るまでみんなで耐えるよ!」
第二部隊総勢10名を引き連れ、渡り廊下を進むと布施先生が、そしてそれを挟むように背後の階段から五十嵐先生が現れる。
これってもしかして!!
「かかったなFクラス!」
「君は確か塚本くん!」
塚本くんはDクラスの副隊長だったはず!
さっきの渡り廊下での戦いは僕達を引きずり出すためだったのか!?
「明久くんって結構凄いよね」
「へ? いきなりなんの事?」
「違うクラスの人達もしっかり名前を覚えているでしょ? 凄いなって」
「いやぁそれほどで…ってそんな話してる場合じゃないからね!?」
褒められるのは嬉しいけど相手から挟み撃ちに合ってる最中に言われるのはタイミングが悪いよっ。
「塚本くんだっけ? 私は中野一花だよ。よろしくね」
しかもご丁寧に挨拶までしてるよ一花さん!? と、思っていたら一花さんがこちらに軽く目配せをしてきた。
も、もしかして一花さん…少しでも時間稼ぎをしようとしている!? 隊長の塚本くんが僕たちに戦いを仕掛けないから他のクラスメイト達もタイミングを逃して視線をキョロキョロと忙しなく動かしている。
「私、転校してきたばかりで色々分からなくて」
「あ、あぁ…この学校色々と変わってるから…」
と、取り留めのない話をしていると僕達を挟むように立っている片方、五十嵐先生が唐突に姿を消していた。
そしてこちらにしか見えないように柱の影でムッツリーニがサムズアップをしている。
そうか、本隊が向かってきているんだね!!
「お姉様! ようやく見つけましたわ!!」
「み、美春!? そういえばあんたDクラス…!?」
「このブタヤロウども、呆けてないでお姉様以外全滅させなさい!」
しかし一花さんの時間稼ぎも束の間、Dクラスの方から走ってきた女子生徒が僕たちを取り囲むクラスメイトに向けて檄を飛ばし、ようやく我に返った彼らが次々と召喚していく。
たしか、あの子は清水美春さんだったかな。 どうやら状況を見るに島田さんにご執心らしい。
「よし島田さん。任せた」
「ちょっと吉井!? ここは男としてか弱い女子を助けなさいよ」
「いや島田さんには悪いんだけど──」
「お姉様と美春の愛の物語を邪魔をする豚野郎はミンチにしてやります…」
「僕にはこの殺意に飛び込む勇気はないし、一花さんの方が心配だから!!!」
清水さんを島田さんに任せて僕は塚本くんの前に立つ。
一花さんだけでは瞬殺されてしまうだろうから。
「試獣召喚!」
【Fクラス 吉井明久 化学32点】
【Fクラス 中野一花 化学54点】
【Dクラス 塚本孝規 化学110点】
さすがはDクラス! 戦力差がダブルスコア、トリプルスコアだ!
因みに一花さんの召喚獣をさっきはよく見ていなかったのだけれど、今見ると島田さんの召喚獣みたいに軍服を着てレイピアを構えている。
二乃さんは西洋風?の鎧を着ていたし五姉妹だけど召喚獣は結構違うんだなぁ、とか思ってたりする。
「一花さんはとりあえず戦死しないように気をつけて! 僕が塚本くんと切り結ぶ!」
「うん、わかった。無理はダメだよ明久くん。 フィードバック?っていうのあるんでしょ」
そうそう、召喚獣の腕を切り落とされたりすると僕自身の腕も焼けるような痛みが走るんだよねぇ…って
「危なッ!?」
「ちっ、避けるな吉井!」
「いやいやいや、避けるに決まってるんでしょ…と!」
いつの間にか肉薄していた塚本くんの召喚獣の剣を回避するとお返しに木刀を二、三発叩き込む。 点数差が大きすぎるとダメージも上手く与えられないけどね…
「そんなへなちょこ攻撃でやられるか!」
「そう簡単にやれるとは思ってないよ! こっちはなんたって二人いるんだし!」
「なっ!?」
「なんてね!」
二人いる、と言われて一花さんの召喚獣を探す為に注意が逸れた。それを狙って足払いのように木刀による下段攻撃を放つと塚本くんの召喚獣はそのまますっ転び、図ったかのようにそこには一花さん。
「えいっ!」
転んだ召喚獣の頭部にブスッ…という音を鳴らしながらレイピアを突き刺す。……なんというかグロテスクなワンシーンになっているけど致命傷も致命傷、点数差なんて関係がない一撃によって彼は戦死した。
「隊長塚本くんは一花さんが討ち取ったよ!!」
一花さんの代わりに僕が叫ぶとDクラスに動揺が走る。
「流石はFクラスの女神が一人!!」
「一花さん愛してるぅ!」
「最高! あと今告白したやつ、異端審問会によって公正な死刑を言渡す」
「素敵っす! 判決は死刑だゴルァァ…!」
Fクラスは仲間割れをしていたけれどいつもの事なのでヨシ!!
ところで島田さんはどうなっただろう? 戦死したかな? したらしたで僕の命は繋がるんだけど…
【島田美波 化学12点 vs 清水美春 化学81点】
ギリギリ持ちこたえていた!?
これはこれで助けに行かないと後々僕がヤバい!
「ふふふふふ、お姉様! これでトドメ…私とめくるめく素晴らしい世界を見ましょう!」
「嫌よ!? というかトドメさされたら西村先生の地獄の補習じゃない!」
「地獄の補習もお姉様と二人ならば天国も当然!」
掲げられた短剣が振り下ろされる瞬間、咄嗟に木刀をぶん投げて清水さんの剣を弾いた!
「なっ!? ─この、ブタヤロウ!!」
ヒィ!? おおよそ同級生が放つ言葉と殺気じゃないよ!?
怒り狂った彼女は狂戦士ばりの動きで僕の方へ急接近してくる。 不味い、この点数差だと僕の点数も一撃で消し飛びそうだけど避けるのもギリギリだ。
「私も居るよっ」
突進してくる清水さんの横合いから一花さんが鋭い突きを放つ。が、驚異的な回避力で一花さんの一撃を屈むように回避。 そのまま転がって僕の方に向かってくる。
「さぁ、死になさい! 斬って、開いて、叩いて、捏ねて晒します!」
「具体的過ぎるしなんか料理される気分だよ!?」
「キシャァァァァァ!!!」
遂に人語を発することすら出来なくなった清水さんの短剣が召喚獣を穿く。
「ぃ゛……こ、のぉ!」
間一髪、短剣は左肩辺りに突き刺さり激痛が襲ってくるけど動けないレベルじゃない…!
召喚獣の短い脚でも短剣を突き刺してくるような近距離なら蹴りは届く。 清水さんの召喚獣の腹部に強く蹴りを入れて距離を開けると一花さんと瀕死の島田さんが清水さんの背後から互いに武器を振るって斬りこんだんだけど…如何せん点数差が酷いので何方も致命傷にはならなかった。
【Dクラス 清水美春 化学64点】
「コロス…ウバウ……オネエサマ」
部隊の他のクラスメイト達はまだ手が離せないし三人でこのモンスターを相手しないといけないの!? 三対一だっていうのに勝てる気が全くしないんだけれど!?
しかし絶望に打ちひしがれていた僕達に三人の女神が舞い降りた。
「…アキヒサ、危ない。 試獣召喚!」
「美波さん!お待たせしました 試獣召喚!」
「一花、よく持ちこたえましたね! 試獣召喚!」
「三玖さん、四葉さん、五月さん!!」
三人に続くように雄二が率いるFクラス本隊がDクラスへと猛進してきた!
【Fクラス 中野三玖 化学41点】
【Fクラス 中野四葉 化学31点】
【Fクラス 中野五月 化学89点】
す、すごい! 三玖さんと四葉さんは無傷なはずなのに下手をすると一撃で殺られる点数だ!?
でも五月さんはDクラスに匹敵する!
そのまま三人は勢いを殺さずに清水さんの召喚獣を攻撃してポリゴン片へと変えてしまった。
【Dクラス 清水美春 戦死】
「先生!早く連れていってください!」
「おぉ、清水か。しっかりと教えてやる」
「オネエサマ…オネエサマ……」
目が虚ろだ。
「三玖さん、助かったよ!」
「……この前話を聞いてくれたお礼だよ」
「ねぇ、吉井」
お礼だなんて。僕はただ話を聞いただけだ。
「四葉さんも助けに来てくれてありがとう!」
「いえいえ、島田さんも一花も無事でよかったです!」
「吉井?」
四葉さん、なんて気持ちのいい人なんだ…彼女の爪を煎じて雄二の頭からかけてやりたい。
「五月さん、あんな点数取るなんて凄い腕が千切れるように痛いぃぃぃいいいいい!!?」
「ありがとうございます。この前、家庭教師から教わって……吉井くんの腕が変な方向に曲がってますよ美波さん!?」
朗らかに援軍の三人と話をしていたら関節をキメられた。
「良くもウチを見捨てたわね吉井……!」
「み、見捨ててません! 島田様なら大丈夫だって思いましてぇええ!!」
思いの外、ガッツリとキマッていて逃げられない…!
「何バカなことしてるんだお前らは…にしても中野姉妹はいい働きをしてくれた。 召喚獣を使い始めたばかりとは思えんな」
「あ、雄二! ホントそうだよね。 二乃さんも前線で頑張っていたし一花さんにも助けられたし…三人のお陰で僕達も戦死しなかったから!」
「明久、俺から話しを振っておいてなんだが関節技をキメられながら平気で話してるお前は異常だ」
失礼な。思いの外しっかり決まりすぎていて諦めているだけだ。
「須川、島田を教室に連れて行け。俺たちはこのままDクラス代表の平賀を討ちに行く!」
「了解! 動くな島田!」
「は、離しなさい! ウチは吉井を殺さないといけない!」
「須川くん、早く連れて行って!?」
二乃さんといい島田さんといい身の危険が身内の間で有りすぎる…!
その後、雄二達の本隊がDクラス内へと乗り込みムッツリーニが見事に平賀くんを討ち取ったらしい。
らしい、というのは僕もかなり点数を失ったのとフィードバックで動けなくなっていたので廊下の隅っこで打ち捨てられていた。
「……お前、こんなところで何してるんだ?」
「い、いやぁ…これには水溜まりよりも浅く、小石ほどに小さい理由がありまして…」
翌日のこと。
「Dクラスとは教室交換しない!?」
「あぁ、あくまで俺達の目標はAクラスだ。Dクラスにはちょいとした仕事をしてもらう」
まぁ、この手の悪巧みって雄二に任せておけば大抵何とかなるからなぁ…
「明久、お客が来ておるぞ」
「僕に? 誰だろ」
アイツかな…? いや来る理由はないか。
教室のドアを開けると緊張した面持ちで大きな荷物を持っている可愛い女の子がいた。
「姫路……さん…? どうしたのこんな汚らしい場所に」
「え、えっと…吉井くんに用事があって…その……」
まさか告白!?
どうしよう参ったな……
「「「これより異端審問会開催の準備を行う」」」
参ったな!? クラスの前で話すだけで僕の命が!!
「お、お弁当作ってきたんです! 食べてください!」
「ありがとう! でも後で受け取るよ!!!」
「「「「「「判決 死刑」」」」」」
「審議もしてないよぉぉぉぉ!!!」
問題
『家計の消費支出の中で、食費が占める割合を何と呼ぶでしょう』
木下優子の答え
『エンゲル係数』
教師のコメント
正解です。流石、木下さん。ちなみにエンゲル係数という名前は、論文の発表者である統計学者エルンスト・エンゲルに因んで名付けられました。
吉井明久の答え
『今週は塩と水! 時々砂糖水です!』
教師のコメント
栄養素が圧倒的に足りていません。
中野五月の答え
『エンゲル係数』
教師のコメント
五月さんは最近、正答数が増えてきましたね。しっかりと勉強が身に結んでいるようで先生は嬉しいです。
中野一花の答え
『五月』
教師のコメント
中野家のエンゲル係数の比率を見てしまった気がします。