バカとテストと五等分   作:夢見969

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バカと学祭と中華喫茶ヨーロピアン

「それで出し物なんだが…何か希望はあるか」

「はいはーい! せっかくだし飲食店関係したいなー」

「飲食店。武田」

「任せてくれ上杉君。 飲食店と…」

 

満開に咲き誇っていた桜も散り、緩く吹く風も少しずつ温さを感じ始めた時期。 文月学園の学園祭、清涼祭が行われる為、2年Aクラスはクラスとしての出し物を決めなければいけなかった。

本来ならば代表である霧島翔子が司会進行を行うのだが、生憎、彼女はこの手の進行が苦手だ。 故に副代表である俺と何か意気揚々と、呼んでもいないのにやって来た武田祐輔が工藤愛子の意見を板書している。

去年のこの時期は学祭なんて勉学の邪魔、時間の無駄と捉えていたが…こうして大勢の意見を取り纏めたり、案を引き出したりするのは良い経験になる。

 

「やっぱり展示じゃ味気ないよね」

「竹林、なにか案があるのか」

「愛子ちゃんの意見に乗っかっちゃうけどね。 優子ちゃんとか代表とか、綺麗な子が多いからメイド喫茶でもすればいいんじゃないかな?」

「……一応意見は意見だ」

 

武田の方へ視線を移すと彼は頷き、ホワイトボードに『メイド喫茶』と書き加える。

その後も『お化け屋敷』、『たこ焼き喫茶』やら意見が出続ける。

たこ焼きで喫茶をするのか? よく分からないが。

 

「だいぶ意見が出たな。 この中から一つに絞るぞ。 挙手で頼む」

 

Aクラスは比較的まともな生徒が多く、この手の決め事で揉める事はほぼ無い。 クラスメイトの殆どが竹林、工藤案の『メイド喫茶』に手を挙げた。 なんというか、それでいいのかお前達は。

 

「上杉君。 どうせだ、このまま役割を決めてしまった方がいいんじゃないか?」

「そうだな…先ずは花形のホールを希望する奴は居るか? メイド喫茶だからメイド服を着てしまうことになるが」

 

スっ、と何人か手を挙げた。マジか。

 

「分かった。次にキッチンは」

 

そこで手を挙げたのは姫路と久保、それに武田と女子数名。

そのまま決めてしまおうと思ったのだが、恐ろしい悪寒が背筋を走った。

徐ろに、先日手にしたばかりのスマホを取りだし明久にメッセージを打つ。

 

『姫路、学祭、キッチン』

 

嫌な予感のあまりに箇条書きになってしまったが明久ならば伝わるだろう。 と、考えている間に既読になりすぐに返事がきた。

 

『死』

 

「姫路。お前は体調を崩しやすいだろ。 当日に何かあると互いに負担になってしまうから服飾関係をやってみないか?」

「あ、そうですよね…。 体調を崩して他の皆さんにご迷惑をおかけする訳にもいきませんし。 メイド服のお裁縫頑張りますねっ」

 

危なかった。

あの雑食明久が『死』の一言を送ってくるとは、どれほどの腕前なんだ姫路。

その後も特に問題が起きることなく、割り振り放課後を迎える。 準備期間もしっかり有る、学祭の心配は無く、有るとすれば…

 

「あ、上杉くん……」

「その様子だと、余程クラス設備が酷かったようだな五月」

「はい。その…みかん箱とゴザでした」

 

教育現場と思えねぇ…

文月学園は試験校だから学費が異常に安いのだが…それだとしても最低限Dクラス程度の設備が貧乏高校ぐらいの設備だろうに。

 

「今日も、その願いします」

「時間外労働だが、今更か」

 

先日の試召戦争終了後、週に一度、バイトのない日に五月が家庭教師とは別で勉強を見てほしいと頭を下げてきた。

以前ならば鼻で笑い時間の無駄だと断言していたところだが、やる気がある五月を無下にする事もないだろう。

 

「さっさと図書室にいくぞ。バイトがないとはいえ、あまりらいはを一人にしたくないからな」

「すみません。あの上杉くんはどうして私にこうして時間外でも勉強を教えてくれるんですか? その、覚えが良くないのに…」

「俺にもよく分からないが…敢えて言うなら五月が一番意欲的に取り組んでいると思っているからか。結果は振るわないが」

 

本当に。明久よりも若干ではあるが覚えがいい程度だ。 明久級の学力とは恐れ入った。

 

「お前達の成績が振るわねーと俺がバイトをクビになってしまうからな。 気張って成績を上げてくれ」

「うっ…教わっておいてこういう事を言うのは気が引けますが……そこまでお金が大事ですか? 家庭教師の他にもバイトをしているんですよね」

「あぁ大事だ。別に守銭奴のつもりは無いが、ウチには……そこそこ借金があるからな。 妹をしっかりと進学させてやるには金が必要だ」

 

やはりというか、この話題を出すと五月はフリーズした。

 

「別に同情も何も要らん。欲しいのは成績だ」

「は、はい。頑張ります…ッ」

 

やる気だけは五人の中で一番あるので苦労も疲れもあるがまだ良い。数分、数学に頭を悩ませている五月を視界の端に捉えているとガコンッ……と何かが外れる音がした。 何かではない、正確には天井の点検口だ。

 

「ここまでは追ってきてないようだね!?」

「お前は何をしてるんだ明久(バカ)

「吉井くん!?」

 

天井からバカが降ってきた。

 

「聞いてよ風太郎、五月さん! 僕も臨時収入があったから皆でご飯でも行こう!って二乃さんと話してたらFFF団の皆が追いかけてきて!」

「私誘われてませんよ!?」

「アイツらの居るところでそんな話をしたらそうなるだろう……」

 

思いの外、理由がしょうもないものだったのは良いとして明久が臨時収入? いつも仕送りを使い切って塩を舐めているようなヤツが?

 

「臨時収入って一体どう「いけない! 人を待たせてるんだった! じゃあね二人とも!」 てめぇ、いったい何をした!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ない危ない……風太郎の隠し撮りを匿名希望Mさんにダースで売ったとバレたら何されるかわかったもんじゃないよ…」

 

まさか風太郎のブロマイドが売れるとは思ってもみなかった。世の中意外な所で需要があるものだ。

二階の窓を飛び降りて植木の横を突っ切り外から下駄箱にたどり着けば二乃さんと三玖さんがドン引きした顔でこっちを見ていた。何故に。

 

「なんでたった数分でそこまでボロボロになって外からやってくるのよ…」

「信じられない」

「………いつもの事」

「明久の事で驚いたりするだけ無駄じゃからのう」

「失敬な!? 3日に1回ぐらいの頻度だよ!いつもじゃないって!」

 

毎日だったら流石に僕の身が持たない。

 

「でも雄二がやる気出してくれて助かったよね」

「ん……あぁ、清涼祭? だったかの話?」

「そうじゃな。 やはりクラス代表が先陣を切ると話し合いもまとまりやすいしの」

「………中華喫茶なんてアイデアがあのクラスから出るとは思わなかった」

「二乃が居るからキッチンは完璧」

 

人を呼び込むための美少女達と持ち前の料理の腕、ちょっと教室がボロいことに目を瞑って貰えればFクラスの出し物はかなり高水準と言えるだろう。 明日にでもムッツリーニと二乃さんが試食品用の胡麻団子を作ってくれることになってるし、僕にとって貴重なカロリーになるので有難くいただくつもりだ。

 

「それで吉井。何処か行く宛てあるのかしら。この辺まだ詳しくないのよね私たち」

「出来れば、静かなところがいい…」

「任せて。いい喫茶店知ってるんだ!」

 

学校を出て駅前方面へと他愛もない話をしながら歩いていくと人気の喫茶店の【ラ・ペディス】がある。 因みに僕や風太郎が時折臨時でバイトをしていることもあったりする。

 

─カランッ と小気味のいい音を鳴らしながら入店をすると一人の女性が笑顔で迎えてくれた。

 

「お帰りください豚野郎」

 

迎えるどころか退店を強要された。

 

「お客さんだよ清水さん!?」

「後ろにいる女子お二方は入店してもいいですが豚野郎共は豚箱がお似合いです!」

「待って、秀吉は豚野郎なんかじゃないよ!」

「……では3人は此方へどうぞ」

 

二乃さんと三玖さん、秀吉は案内をされて僕とムッツリーニだけ入口に取り残された。

 

「どうしようムッツリーニ。何とかして清水さんを納得させないと……あれムッツリーニ?」

 

隣に居たはずのムッツリーニが居なくなっており、いつの間にか清水さんとコソコソ話しをしている。

 

「………入店料」

「お、お姉様のブロマイド!? お支払いもお金ではなく写真で問題ありません」

「裏切り者ォ!?」

 

写真で買収なんて卑怯者がすることだよムッツリーニ! あぁ、もう二乃さんと三玖さんは注文してるし!?

 

「ちっ、仕方ありません。貴方も早く座って注文してください。入口に何時までもいられると邪魔なので」

「理不尽過ぎる……」

 

とぼとぼと歩きながらみんなが座った所に向かうと水を差し出された。三玖さん……!

 

「散々な目にあったよ…」

「アンタが悪いんじゃない?」

「男ってだけだよ!?」

 

理不尽なのは慣れてるつもりだけどさ!

さて、気分を変えて注文をしのんびりと話しているとアップルパイが出てきた。美味しいんだよね〜店長(清水父)が作ったアップルパイ!

久しぶりのカロリーに夢中になりながら頬張っていると視線を感じた。 さては僕のカロリーを狙っているな!?

 

バッ! と視線の先を追うと窓に張り付いてヨダレを一筋垂らしている五月さんが居た。

 

「……………」

「……アキヒサ? なんで顔を隠してるの」

「みんな外を見ちゃダメだ!僕のカロリーを盗ろうとしてる!」

「してませんよ!?」

 

くっ、カロリーお化けが乗り込んできた!! 僕のアップルパイは死守せねば!?

 

「どうしたのよ五月。そんなに必死で」

「私を置いて美味しそうなもの食べてるからですが!?」

「五月、フータローと勉強してたから」

「一声あってもいいじゃないですか!」

 

ぷんぷんと怒りながら席に着けば僕と同じモノを注文していた。良かった、いきなり盗られなくて…

 

「明久、中野姉妹をFクラス基準で考えるのは間違いだと思うんじゃがのう…」

「……今や立派なFクラス」

「すっごい不名誉だわ」

「私もちょっと嫌だ」

 

そもそもFクラスで名誉のことなんて何一つ無いから嫌がるのも当然だ。

 

「でもごめんね? 雄二がバカなせいで教室があんなのになっちゃってさ」

「あれは、まぁ私たちにも責任があるので…」

「五対一で負けたし…」

「上杉が悪いのよ」

 

ごめん風太郎。飛び火した。

 

「あやつも副代表じゃからな。仕方あるまい」

「……頭は固いが良い奴」

「悪い人じゃないことは分かってますので」

「フータローはいい人」

 

二乃さんだけはツン、と顔を背けたままだけれど否定はしていないから少なくとも嫌悪まではしていないのだろう。そのまま話は移り変わり清涼祭の話になる。中野さんたちは知らないしね。

 

「そもそも学祭って何やるのよ」

「んー、多分あんまり他の学校と変わらないんじゃないかな? お店出したり、ちょっとした催しがあったりする感じだし」

「うむ。特色としては召喚獣トーナメントがあるぐらいかの」

「……たしか賞品は一年間の学食スイーツ無料券と如月グランドパークの特別券だったはず」

 

ムッツリーニは何でまだ発表されていない賞品を知っているんだろうか。…って!?

 

「「スイーツ無料券!?」」

 

五月さんとハモった。何だかとても恥ずかしいよ!

 

「吉井くん。出ましょう」

「そうだね五月さん。 僕たちの手でスイーツ無料券を栄光を掴み取ろう!!」

 

おー! とノリノリの僕達は考えていなかった。

当たり前のようにこの大会には首席や次席、上級生までが入り乱れる混沌になるなんて。




清涼祭アンケート
学園祭の出し物を決める為のアンケートにご協力下さい。
『喫茶店を経営する場合、制服はどんなものが良いですか?』



中野三玖の答え
『喫茶店のコンセプトにもよる。メイド服とか』


教師のコメント
確かにそうですね。Fクラスの場合は中華喫茶のようですので中華風をイメージした給仕服になるのでしょうか。



吉井明久の答え
『チャイナ服!』



教師のコメント
吉井くんが着る訳では無いですよね? 男性の場合は何を着るのか、まで考えてみるとクラスでのバランスが取れると思います。



土屋康太の答え
『先ずクラスにいる7人のイメージカラーを決め、布に装飾を施す。生地には主流の絹を使い肌触りが良く、それぞれの華やかな雰囲気を演出するように製作。 中野四葉ならば緑を基調とし快活なイメージに合わせて丈は他の女子より若干短めに…(この後、他六人のイメージ三面図までびっちり)』


教師のコメント
一体どこをめざしているのでしょうか。
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