サブタイはクロコダイルさんの個人的名言から。
――海軍第77支部、通称プリケツ要塞
静かな夜だ。
そんな中で要塞内第二兵舎から、突然の電伝虫による連絡。
夜番の海軍将校は、新兵がらみのトラブルかと応じれば。
『侵入者が! 少女です! 既に兵が……全滅すんぜ――』
それは信頼する軍曹の、苦しげな声。
電伝虫の表情は、息も絶え絶え。
そして通信の声自体も、途中で途切れてしまう。
「おい! どういうことだ! 報告は明確にしろ!」
『まったくよね。初老扱いしないでほしいわ。私は幼女だっていうのに』
甘い、幼い声。
電伝虫が少しつり目の子供っぽい顔になった。
「貴様、何者だ! 軍曹はどうした!」
『私、背が低くて。この電伝虫に届かないの』
幼い子供の、甘えるような困った声。
こんな状況でなければ助けたくなっただろう。
だが、今は――
「答えろォ!!」
『だから踏み台になってもらったわ。二度と動かないようにしてね』
殺したということ。
いや、おそらくは第二兵舎にいた海兵100人も……。
「貴様……!!」
『わざわざ第二兵舎を攻めたんだから、第一兵舎には期待してるわ。じゃあね♪』
通話は切れた。
「ッ――!!!!」
夜番の将校は急ぎ、プリケツ要塞内全てに警報を鳴らした。
まだ、近隣海軍への救援信号は送らない。
大規模襲撃の様子はなく……単独の暗殺者なら警報で対処できるだろうとの判断からだ。
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「始まったかぁ。精鋭部隊らしいけど、逃げ出す子はいるかしら☆」
「中は……覗くのもやめた方がいいぜ」
「キャプテン――クロネコちゃん様が暴れてるんだからな」
「そうねぇ。巻き込まれるだけでしょ」
裏口に回ったみさき達が、肩をすくめる。
相手が噂通りの精鋭部隊なら……それがなおさら仇になるだろう。
ただ強いだけの集団で勝てるなら、みさき達はとうにあの変態を始末している。
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「おおよその内部構造は教えたんだ。警報が鳴った時点で、既に兵力の半数近くを始末したと考えていいだろう」
「出番はねェか」
「ガタイが小さくなってもパワーに変わりはなかったしな」
正門近くに隠れ潜むナズーリンたちも、クロネコの心配などしない。
むしろクロネコが負けないかなと内心で祈っているほどだ。
そうなれば、脅されていたことにもできるだろう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
第一兵舎のロビー。
うるさく鳴り響く警報音に、悲鳴が混じる。
「うおああア~~っ!!!」
「ひいいーーーーっ!!」
敵の姿すら見えぬまま。
海兵たちが切り刻まれていく。
銃弾も、剣戟も。
襲撃者の姿を捉えられない!
「網だ! 網を使え!」
兵舎唯一の将校が声を張り上げるが。
「い い判 断 だけ ど――遅かったわね」
音すら置き去りに、場所を変えて声がし。
一瞬だけ、将校の背後に黒いドレスの幼女の姿が現れる。
「な――!」
慌てて海兵たちが銃口を向けるが、その時には既に幼女は消えて。
将校の首が斬り落とされていた。
そして再び始まる蹂躙。
「大尉殿ォ――ぉ、あ、がァ」
悼む声すら断ち切られ。
「畜生ォ!! ひ――」
自暴自棄に銃を撃てば、腕を斬り落とされ。
「網を! 網を使えば――うぎゃあああ!!」
最後の指示に従い、網を持ち出そうとする者から……順に仕留められる。
「相手の体格は子供だ! 足元ォごぉ……ぎ、痛ェ!!」
「ぎゃああーーーーーーっ!!!」
小さな体は、大人の股の間も潜り抜けられる。
見えないそれは足の周りを駆け巡り、恐るべき力で膝を割り、股間を切り裂き、脛を撃ち。
海兵たちを足元からなぎ倒していく。
「……もう、やめてくれェ」
やがて全ての兵が倒れ伏し。
死に切れぬ海兵の呻き声が響く中。
「……そうね。私も弱いモノいじめに来たわけじゃないから」
黒い少女が超高速の疾駆を止めて姿を現した。
容姿と相まって、海兵には亡霊が出現したようにしか見えない。
「止めてあげる」
明かりに照らされるその笑みは、魅了されるほどに美しく愛らしいが。
「あなたたちの命を」
「ぎゃああーーーーーーっ!!!」
ぷすり、と。
子供が遊ぶように息のある海兵の首を斬りつけ――
「やめろォ!!!!」
手が止まる。
髪と髭を特徴的に束ねた将校が、第一兵舎に飛び込んできたのだ。
その背後に続くは、今までより明らかに鍛えられた海兵が数十人。
「あら……やっと本物の精鋭部隊の到着? 遅かったわね」
彼らの目に怒りはあれど恐怖はなく。
怒りに駆られて統率を乱す気配もない。
彼らこそプリケツ要塞本城に寝泊まりする、本部隊。
クロネコが始末した200人ばかりの駐屯兵より全てが格上の連中。
そんな彼らを率いるは。
「単独犯だと……目的は私の暗殺か? なぜ兵士たちをいたずらに傷つける?」
海軍第77支部大佐プリンプリン。
「ん~……準備運動」
クロネコが、くすりと笑った。
「フザけんなァ――っ!!!」
その答えに激昂し、脚を斬られ倒れていた海兵の一人が、彼女へ銃弾を撃ち込む!
「ふふ」
だが、発射音と同時にクロネコの姿は消え。
その海兵の喉元へ刃が振り降ろされ――
「私が来た以上、もう兵は傷つけさせん」
間に入ったプリンプリン大佐の
「ッ!!」
食い込んだ刃が抜けない。
「私に刃は通用しない。お嬢さん、キミの事情……詳しく教えてもらおうかッ!!!!」
武器ごとクロネコを捕らえたまま。
プリンプリン大佐が壁にタックルした!!
「っと、危ないわね」
激突の寸前、クロネコは“猫の手”の片方を捨てて大佐から離れる。
“月歩”ができなければ、この離脱も遅れていただろう。
「フンッ!!!!」
肩に刃を食い込ませたまま、プリンプリン大佐は激突。
兵舎の壁が吹き飛び……月光に照らされる訓練場へ飛び出す。
「さァ、お嬢さん。準備体操は十分だろう? 私が相手をしようじゃないか。お前たちはケガ人の治療を急げ!!」
「ハッ!! プリンプリン大佐!!!!」
クロネコが、チラリと倒した海兵たちを見て。
片方だけになった“猫の手”を見る。
「人質をとろうなどと考えんことだ。私の直属部隊はそこまで甘くない」
「……ふぅん」
フッ、とクロネコの姿が消える。
「背後か?」
プリンプリン大佐の背後に瞬間移動したクロネコが残る刃を振りかざすと同時に。
大佐の背中、首、後頭部が
「ッ――!!」
慌てて空中を蹴って“月歩”で大佐の背から離れる。
振り下ろす刃は、大佐の背にかすりもしない。
安堵と共に、クロネコは着地した。
「なるほど。調べておいたのに……実際に立ち会うと、厄介なものね」
「ほう。私が悪魔の実の能力者だと知っているのかね」
ぴくりと、プリンプリン大佐の眉が跳ねる。
「知ってるわよ。この要塞の名前にまでして宣伝してるし……能力を知った上でバカにして立ち向かってきた海賊どもを討ち取ってきたんでしょ?」
「おや、私のファンかな? そうとも、私は“ケツケツの実”を食べた尻人間」
ぼこりぼこりと、大佐の体のそこかしこが膨らむ。
その膨らみ全てが彼自身の――尻!!!!
「刃を受け止めるとは知っていたけど、五本の刃を同時に止めるなんて」
「この技――
大佐の肩の膨らみが消え。
食い込んだままだった“猫の手”がぽとりと落ちた。
そう、瞬時に肩に生み出されてひしめく5つの尻が、それぞれの谷間で刃を受け止めていたのだ!
「ケツケツの実……名前こそハズレっぽいけど、知る人ぞ知る“七つの悪魔
「勉強熱心なお嬢さんだ。そこまで知る者は海軍にもまずいない」
ニヤリとプリンプリン大佐が獰猛な笑みを浮かべる。
「打撃も斬撃も、この尻には通用しない。私を倒したくば高圧で海水でも打ち込むことだ!」
「随分と具体的な弱点ね」
部下から引き離し、安心したのか。
プリンプリン大佐には余裕が見える。
「お嬢さん、キミに勝ち目はない。悪魔の実の能力は使い方と訓練次第で、いくらでも強い戦闘手段になる」
彼の体に生えた、やわらかく月光を反射するまろやかな尻が。
「私は、能力だけにかまけたそこらのバカとは違うぞ」
きゅっと筋肉で固まり、尻が強固な肉塊と化す!
「私の尻は、鍛え上げ研ぎ澄ましてある……!!!」
「…………」
屈強な尻で押しつぶさんと、プリンプリン大佐がクロネコに体当たりする!
クロネコは姿を消し、それを回避!
「本当はしっかり事情を聞きたいのだがね……任された部下をあんな風にされて……黙っていられるかァ!!!! 鍛え上げた私の尻で磨り潰してくれる!!!」
戦いが始まれば!
プリンプリン大佐の抑えていた怒りが露となる!
その怒りに呼応するように尻は膨れ上がり!
筋肉密度も計り知れぬものとなる!!!!
「
凄まじい破壊力!!!!
クロネコ自身は超スピードで回避したが。
強固な要塞の壁が粉砕され、破片が
「くっ!」
「スピードがあろうと、避けきれん攻撃などいくらでもある!!!!」
大きなものは避けるが、小さな破片をいくつも喰らう。
頭をかすったものもいくつか。
「私みたいな美幼女に尻を押し付けようなんて……変態!!!!」
つぅ、と額を垂れてくる血を感じながら。
クロネコは罵った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
同時刻。
「「「「お前が言うなァ!!!!」」」」
クロネコ海賊団全員が義務感に駆られ、虚空にツッコミを入れた。
プリンプリン准将を魔改造して、ファンの方には申し訳ない。
ワンピース二次を書くことがあれば、必ず活躍させようと思ってたキャラなのに。
とりあえず活躍はします。
●ケツケツの実
体に尻を生やす。
尻は能力者自身の尻で、ダメージは本体尻にフィードバックする。
尻をどれだけ鍛えるかで強さが変わる。
本作プリンプリン大佐は、相手がチュウ以外の幹部なら原作でも返り討ちにできた実力者。
(ただし船ごと沈められるとどうしようもないし、アーロンにも勝てない)
プリケツ要塞の名は、彼の能力から。
●七つの悪魔超人系
その昔、あまりの悪質さから超人系ホイホイで封印された七つの悪魔の実。
超人系オリンピック優勝者の胴上げがきっかけで、宇宙から舞い戻ったという。
原作では「バネバネの実」がその一つ。
「ケツケツの実」がこれに含まれるかは研究者によって意見が異なる。
より上位の「悪魔の実六騎士」「悪魔の実将軍」などもあるらしい。
●尻刃取り(しりはどり)
刃物を尻の肉で挟み、受け止める技。
よほどの怪力でなければ挟まれた武器を奪い返せない。
尻なので、愛刀家に使うとブチキレられる。
●尻圧
尻をどれだけ力んでいるかの、スイッチ的な言葉。
特に明確な数値化はされていない。
●尻滅裂(しりめつれつ)
足裏を尻にして弾力による高速で助走。
肩と頭を尻で覆い、タックルする技。
コンクリートや岩を粉砕できる破壊力。