「これがロリロリの実だ」   作:神谷涼

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大き目の原作改変だからと細かく書いてたら長めになった……



「さて……計画に移るか……」

 

 煌々と三日月の照らす夜の海。

 海軍船にて。

 

「チチチチ……そのまま当たるまで大砲を撃っておきたまえ。近づく必要はない」

 

 海軍第16支部大佐ネズミ。

 貧相な痩せた体に、卑しい容貌の男。

 その戦術はどこまでも執拗かつ陰湿。

 

「近隣の海軍支部にも協力させて一週間。奴らは食料も弾薬も補給できずいる。白兵戦力はそれなりに充実し……飛び道具使いもいるようだが。ウデの立つ狙撃手がいないのは致命的だな」

「全ては大佐殿の見事な作戦と索敵ゆえ!」

「敵船、砲撃の気配なし! 砲弾は既に尽きたようです!」

 

 ネズミは船長室から出ず、伝令に指示だけする。 

 追従する側近らも、弛緩しきった空気。

 

「このまま撃てるだけ撃ったら退却だ。補給させず、じわじわ磨り潰してやるがいい。まあ……砲弾もないのだ。今回で命乞いしてくる可能性も十分にあるがね」

「「ははははは!」」

「できれば私の手で“百計のクロ”を捕らえたい。我々も魚人どもの上がりだけで生きるわけにはいかん……相応のノルマを果たさなくてはな」

 

 狡猾な悪徳将校ネズミは、魚人海賊アーロン一味と手を結び。

 その情報が海軍本部へ届かぬよう封殺する代わり、多額の献金を得ていた。

 さらには目障りな他の将校らをアーロンにけしかけ、始末させてきたのだ。

 彼にとっても部下にとっても、海軍活動とはビジネス以上のものではない。

 

「クロネコ海賊団……よくここまで手ごろな賞金になるまで生き延びてこれたものですな!」

「副船長ジャンゴは催眠術の使い手、他はニャーバン兄弟(ブラザーズ)なる腕利きが2人。目だった戦力はそんなところですな……船員の入れ代わりも激しい様子!」

「チチチチ……襲撃ごと、一般市民らにも消耗する程度の海賊が。コツコツない知恵しぼって無駄に悪事を重ね、手柄首になってくれたわけだ。ありがたいことじゃァないか」

「奴の賞金を考えれば、今回の手柄で准将への昇進もありえますな!」

「准将ネズミか……チチチチ、悪くない!」

 

 クロネコ海賊団討伐は、彼にとって文字通りの踏み台。

 すべては海軍本部への勤務アピールに過ぎない。

 

「大佐殿、小舟が一艘……乗員は一人! 服装を見る限り、船長のようです!」

「ほう……!」

 

 大佐ネズミの作戦は的中した。

 面白いほどがうまくコトが進むとき。

 慎重な人物ほど……盲目となる。

 

「チチチチ……追い詰められて、船長自ら命乞いか。冷酷な男と評判だったが、泣かせるじゃないか」

「“百計のクロ”について戦闘記録は皆無! 本来なら参謀格の存在かと!」

「沿岸襲撃時にも、ろくに上陸しておらず。補給時に本を買っている程度!」

「部下の掌握はできているようですが、およそ戦える人物とは思えません!」

 

 海賊“百計のクロ”は冷酷な計画で知られた海賊だが。

 当人の戦闘記録はない。

 大佐ネズミが直接調べれば、慎重で狡猾な彼はその不自然さに気付いたかもしれないが。追従者たる部下たちを通して知った情報を、今の彼は鵜呑みにしてしまう。

 その方が、彼自身にとって今は都合がいいから……!

 

「小舟が接舷しました!」

「チチチチ……出迎えてやれ。ただし副船長ジャンゴの変装かもしれん。視線はそらしておけ」

 

 名の知れた海賊の命乞いだ。

 直接に聞いて、踏みにじってやらねばならない。

 だから。

 本当の“百計のクロ”の力を知る者なら、決して出さない指示を出してしまう。

 

 そして、ネズミと側近らは既に勝ち誇った顔で船室の扉を開き、甲板に出る。

 

「“百計のクロ”か。笑わせる名前だ。本当に頭のいい奴が海賊なんぞするものか。バカな野犬の群れでふんぞり返る猿にすぎん」

 

 そして。

 

「同感だ――“杓死”」

 

 冷たい声と共に。

 三日月の下、黒猫の影が見え――消えた。

 

 

 

 

 船長のクロが一人、小舟で海軍船に向かって。

 クロネコ海賊団の船員らは困惑するばかりだった。

 

「砲撃は止んだが、何の音沙汰もねぇ」

「マジで自首したってのか?」

「まさか殺されちまったんじゃねェだろうな……」

(その方がマシかもしれねェ)

 

 動揺する船員らを、副船長のジャンゴも何も言わない。

 正直言えば、このまま逃げてしまいたかった。

 

「大砲準備しやした、ジャンゴ副船長」

「乗り込む用意はできてる」

「シャム……ブチ……」

 

 余計なことしやがって、とは口にしない。

 ここでC・クロを放置して逃げれば、地の果てまで追ってくる。

 この船は彼の船であり……ジャンゴは彼の宝があることも知っているのだから。

 

 海賊船が、軍船に近づいていく。

 砲撃はない。

 海兵の声すらしない。

 

 甲板が、三日月に照らされる。

 

「あ…………」

「か、海兵どもが……!!」

「「全滅してる……!!!!」」

 

 海軍第16支部の海兵は全てもの言わぬ骸と化していた。

 月光を背に受けながら、甲板の縁に座るのは。

 五指にそれぞれ刀をとりつけた十刀手袋“猫の手”を付けたC・クロ。

 

「やっぱこうなってたか……」

「我らが船長ながら、寒気がするぜ……あの強さ」

「まったくだ。相手は商船や村人じゃねェ。鍛えられた軍隊だぜ……」

 

 諦観を込めたジャンゴに、シャムとブチが背筋を凍らせ呟いた。

 

「さて……計画に移るか……」

 

 クイ、と手首でメガネの位置を整えながら。

 C・クロは海兵の骸を見下ろす。

 

「おい」

「……」

「死んだフリしてりゃ見逃されると思ったか?」

「ヒッ……!」

 

 蹴りつけられ、ガタガタと震えながら将校――大佐ネズミが転がる。

 

「部下の体を盾に、死んだフリしてやりすごそうたァ……いいタマしてやがる」

「まままま待ってくれ! 私はそれなりの立場だ! 金もある!」

「そうか」

 

 這いつくばったネズミを、蹴りつける。

 

「ギャア!」

「なかなか小賢しいじゃねェか。海軍大佐。部下を皆殺しにされて……敵に囲まれて、よくさえずりやがる」

「ま、待ってくれ! キャプテン・クロがこんなに強いなんて知らなかったんだ! わかってりゃ手出ししなかった!」

「おう、あの技の目撃者なら、いつも通り()しとくか?」

 

 ジャンゴがチャクラムをクルクルと回した。

 さっきの船長室の一件が悪い夢で……いつもの日常に戻れるといいなと祈りながら。

 だが、C・クロが手をかざし止める。

 

「待て、ジャンゴ。おい大佐ネズミ、俺の船をしつこくつけまわしたのは、貴様だろう?」

「な、なぜ私の名前を!!」

「てめェら海軍が俺たちの名前を知ってるってのに、なんで知られねェと思う。第16支部で大佐だ。急な昇進でもなきゃ、新聞読んでりゃわかる……お前さんは黒いウワサも多いからなァ」

「ガァァァ! 取引だ! 取引しよう!」

 

 刀傷を踏みつけられ、ネズミが苦悶の声をあげる。

 その姿はまさに鼠をいたぶる猫。

 

「バカだらけの手下にも取り柄があってなァ……俺の船に、スパイができるような頭の持ち主はいねェ。補給もせずに沖合をうろつく俺たちを、どうやって正確に捕捉してた?」

「ぐ、それは……!」

「言え」

「あー……言った方がいいと思うぜェ」

 

 口ごもるネズミに、C・クロが冷たく見据え。

 ジャンゴが肩をすくめながら、逃がさぬよう主戦力で周囲を固める。

 他の船員らは海軍船まるごと略奪の真っ最中だ。

 

「わ、私の命を助けろ! それが条件だ!」

「そのザマでそれだけ吠えりゃ上等だ……助けてやろう」

「ほ、本当だな!?」

「本当だ。気が変わらねェ内に教えろ」

「ぐぼ!」

 

 蹴りつけられ、呻きながら。

 

「“ダウジング”だ。ロッドを使えば、私は探す人間や品のおおよその方向を……近づけばその場を、見つけられる」

「ほう……!」

「ダンシングだとォ? 踊りなら、てめェなんぞより俺の方が――」

 

 思わずジャンゴが口を挟む。

 

「違うダウジングだ、ジャンゴ……占いみてェなモンだ。ククク、いいぞネズミ。思った以上の拾い物だ。俺ァ縁起をかつぐ趣味はねェが、名前とツラの相性もいい」

「ぐはっ、ごほっ、相性だとッ?」

 

 踏みつけた足をどけられ、咳き込みながらネズミが問う。

 

「確認のための実験台程度に考えていたが……計画以上だ。運命の後押しを感じるぜ」

「なんだ? 何を言っている……!」

 

 C・クロの目がギラギラと光り。

 ネズミが呪縛されたように動けなくなる。

 ゆっくりと見せつけるように、C・クロが“猫の手”を外し。

 どろどろと蜜を垂らす異様な果実を、唖然とするネズミの口に――

 

 ねじこんだ。

 

「味わって食え。ケモ耳美少女になれる“ケモケモの実”モデル『ネズミ』! まさにお前のためにあるような実だ!」 

「ウマァ――」

 

 通常の悪魔の実と違い“裏・悪魔の実”は美味だ。

 一つ喰えば美少女に。

 二つ喰えばさらなる属性を得た美少女と化すが……精神は崩壊して廃人と化す。

 慎重なC・クロが敢えて口にせず7年間隠し通した果実は、腐ることなく美味を保ち。

 その効果もまた……

 

「な……なんだと! あの貧相なオッサンが!」 

「「美少女になったァーーーーーー!!!!!!!」」

 

 灰色のショートカットヘア。

 同じく灰色の大きなネズミの耳。

 さらには長いネズミの尻尾までもが伸びている。

 それはまさにケモミミ美少女であった。

 しかも明らかに作風が……画風が……出版社が違う美少女!

 

「ハッハッハッハ! やった! やったぞ、歓迎するぜネズミ……いや、ナズ……そうだな、これからはナズーリンと名乗ってもらおうか! お前が記念すべきクロネコ海賊団の美少女1号だ!!」

 

 歓喜するC・クロに。

 

(マジで美少女になりやがった……しかも1号だと? 2号とか3号も作るってことかよ……!)

 

 ジャンゴは戦慄を覚えていた。

 悪い予感で胃がよじれそうだった。

 





記念すべきTS第一号
ネズミ大佐→ナズーリン(東方Project)

唐突に生えたダウジング設定は、ネズミが戦闘力皆無なのに出世しすぎだろ……ってことで付け加えました。
アーロンがらみでの汚職だけで成り上がれるほど、海軍もザルじゃないはず……。
当人が狡猾な上、賞金首や隠し財宝を的確に見つけて出世してる扱い。
ジャンゴの催眠術やホーキンスの占いみたいな、能力者以外の特技です。

当初は原作通りにモーガンを出して、ヒメヒメの実を食わせクッパ姫に……とか考えてましたが。
モーガンが美少女化して海賊になると正史が完全崩壊しそうだし、クロ視点ではシャムやブチと大差ない戦力なので、やめときました。
原作よりモーガンの出世は遅れるでしょが、大差ない人格になるでしょし。
ネズミも当人じゃなくても、似たような汚職将校がいれば正史成立するし……。
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