「これがロリロリの実だ」   作:神谷涼

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「人の夢は!!! 終わらねェ!!!!」

――7年前

 

 赤髪海賊団の襲撃は圧倒的だった。

 

「副長官殿! フーズ・フー様が破られましたァ!!」

「それほどの力を付けていたか……赤髪」

 

 六式“月歩”で船を離れて迎撃に向かったフーズ・フーは撃破され。

 援護していた砲手の大半が、逆に狙撃され。

 接舷もせぬ間に、もはや戦力は壊滅寸前。

 残った兵でどうにか砲を撃ち、敵を近づけまいとしている状態。

 

 あの超人フーズ・フーが倒されるなど、クロには理解の外。

 彼は良き先輩だったが、それ以上に恐るべき怪物だった。

 そして目の前に、より尊敬すべき人物がいる。

 

「師匠、この場は撤退すべきでは」

 

 この一週間で師匠と呼ぶようになったペドフィリアン副長官へと、クロは提言した。

 

「無駄だよ。奴らは私たちの任務を知っているらしい――政府の誰かがリークしたんだろう」

「船足さえ同じなら、海軍の助力を得れば……」

 

 クロが言い募るが。

 そこに伝令が飛び込んできた。

 

「操舵輪が狙撃で破壊されました! 舵が……!」

「……行儀よく、砲手だけで済ませてくれるとは思っていないさ」

 

 諦観。 

 

「そんな……本部にある師匠の女子小学校学級はどうなるのですか! 私を教育実習生として参加させていただける話は!」

 

 血涙。

 

「そうだな……私が戻らなければ、我がクラスの生徒たちは……天竜人の奴隷に……オウッ……オゥゥ」

「師匠……!!!!」

 

 トドの如く号泣するペドフィリアンに。

 クロも男泣きで応える。

 それを水に差すように。

 頭上――甲板で人がどさりと倒れる音がした。

 誰かが、また狙撃されたのだ。

 

「……ッ、泣いている場合ではない。連中は砲撃をしてこない。時間をかけて我々を丸裸にするつもりだ。極秘任務を知っていて、その成果を狙っているのだ。念入りに戦力を奪ってから、接舷してくるぞ」

 

 ペドフィリアンは踵を返し、己の私室に向かう。

 クロもまた、それに付き従った。

 甲板からは、さらに犠牲者が倒れる音。

 

「我々は“ゴムゴムの実”を手に入れ、護送すべくこの海に来た」

「ッ、悪魔の実ですか!」

 

 妙な特殊能力など、幼女に気味悪がられるだけ。

 クロもペドフィリアンも、およそ価値を認めていない。

 

「だが、奴らも知らないであろう……より深い機密がこの船にはある」

「任務内容もですが……なぜ、それを私などに……!!」

 

 機密のため島を皆殺しにした男が、新入りのクロにそれを明かす理由がわからない。

 しかも、彼はあくまで官僚。

 戦闘力はクロに劣る。

 この場で裏切られるとは思わないのか。

 

「私を殺しても、赤髪の連中はやり過ごせんよ。それより夢を託させてくれたまえ」

 

 変態とはいえ、ペドフィリアンは海千山千の世界政府高位官僚。

 クロの考えうる全てを、把握できている。

 

「夢……ですか」

「キミと会えて、私は久しぶりに……本当に久しぶりに理解者を得た。嬉しかったんだ」

 

 甲板から響く砲音が減っている。

 時間は少ない。

 

「手短に伝えよう」

 

 そしてクロは聞いた。

 悪魔の実――“ゴムゴムの実”回収のため来たこと。

 本来ならばとうに終わり、補給も必要なかったが……天竜人の愚行によって密命が増え、予定よりも長期航海となってしまったことを。

 

「思えば、それ自体が私を陥れる謀略だったかもしれん。今、我々を襲う赤髪とタイミングを合わせるためのね……」

「しかし天竜人の密命とは……」

「聖地から出るはずのない“裏・悪魔の実”が、東の海に流出したんだ」

 

 ゴムゴムの実が入れられているという、これみよがしな宝箱と別に。

 ペドフィリアンが、簡素なトランクを開いて見せる。

 

「こ、これは……!」

「“裏・悪魔の実”は通常の悪魔の実じゃない……美味で、たいした能力は得られず。けれど、聖地マリージョアの外に決して出してはならない、存在を知られてもいけない。ま、天竜人が独占したがってるだけなんだけどね」

 

 中にはハート形の、どろりと蜜を垂らす果実が三つ!

 魅惑的な甘い香り!

 

「確かに美味そうですが、独占するような能力なのですか?」

「名前を聞けばわかるかな。これらは“ロリロリの実”“ビッチビッチの実”“ケモケモの実『モデル:ネズミ』”だ」

「ロリロリの実……!」

 

 ニヤリと、ペドフィリアンが笑う。

 だが状況ゆえ、その笑みもどこか空虚。

 

「件の天竜人ロリヴィッチ・トポジージョ聖(57)は、一族当主の座につき。管理していた“ロリロリの実”で若返って美幼女となった」

「57歳が美幼女に!!」

 

 その効果は、クロが想像した通りのもの。

 

「そして愚かにもその美味に囚われ。所持していた残り二つの実も食べて、ネズ耳ロリビッチと化したんだ」

「ま、待ってください師匠! 複数の悪魔の実は……!」

 

 ペドフィリアンが重々しく頷く。

 

「裏の場合……即死はしないが、精神が崩壊して廃人になる。そのまま始末して実を回収すればよかったんだがね。己が食うはずだったビッチビッチの実を食われ、怒り心頭の奥方様はバカ亭主を大砲に詰めて打ち出したんだよ。この東の海へ……」

 

 想像以上に酷い理由だった。

 

「その回収を命じられたと!? 本命は“ゴムゴムの実”だったのでしょう!? そんな愚かな連中のために、我々の幼女学級が失われるのですか!!!!」

 

 義憤。

 

「……仕方ないさ。奴らの権力は私より遥か上だ」

「だからと……あなたの“計画”を狂わせるなど!!」

「ありがとう。だが、仕事が遅れて補給が必要になったからこそ……キミに出会えた」

「師匠……!!!!」

 

 もう甲板から砲撃の音は聞こえない。

 

「さあ、時間だ。そっちのトランクも持って行きたまえ。これらに関する資料が入っている。相応の情報がなくば、それは活かせまい」

「…………」

 

 これらの果実を持ち出せば、赤髪はともかく政府から逃げきれまい。

 

「この一週間、楽しかったよ。ロリリリ……私には子がいないんだ……幼女は妊娠できないし。そんなことをするのは、解釈違いだからね」

「……そんな、師匠も逃げましょう!」

 

 魂を凍てつかせたはずのクロの目に、涙が浮かぶ。

 

「覚えているかね。私たちが初めて会った時の、ふみふみリングを」

 

――ハァハァ、幼女のスカートの中ァ……!!

 

「そんな思い出話、聞きたくありません!!」

 

――いいだろう。キミに幼女愛好者としての全てを教えてやろう!

――やったぜ。

 

――我々はロリコン血盟団だ。

――はい。この心血すべては幼女のために!

 

「いろいろあったねぇ」

 

――キミの存在はまさに『男湯に幼女』といったところだね。

――そのように過分な評価を……ありがとうございます!!

――ど、どういう意味だ?(フーズ・フー)

――先輩、師匠は『思いがけない恵み』とおっしゃっています。

――あ、そう……。(フーズ・フー)

 

――師匠! “剃”を限定的ながら使えるようになりました!

――この数日でかい! やったじゃないか! 転びそうな幼女を合法的にハグできるぞ!

――はい! 師匠のおかげです!

――いや、教えたの俺……。(フーズ・フー)

 

――靴を脱がせればいいとか、下着を脱がせればいいとか、おかしいと思わないかい。

――まったくです! 新しい服を着て、得意そうに見せてくる子とか最高ですよ!

――わかってるねぇ!!

――お前らどっかヨソでメシ食え。(フーズ・フー)

 

「キミの目的はなんだい」

「女子小学校の校長先生になることです!!!!」

 

「その野望の火を絶やすことなく、己の道をつき進むことをここに誓いたまえ!!!!」

 

 じわりと、ペドフィリアンの目に涙がにじんだ。

 

「今日かぎりをもって、ロリコン血盟団(総勢2名)を!!!」

 

 クロは滂沱の如く溢れる涙を、噛み殺す。

 

「解散する!!!!」

 

 

――ドスッ

 

 

 ペドフィリアンの言葉が終わると同時に。

 クロのナイフが、彼の心臓を抉った。

 

「我が生徒たちよ……永遠に幼女……たれ……」

 

 虚空に手を伸ばしながら……ペドフィリアンは絶命した。

 涙と鼻水を垂らし這いつくばった姿は、醜悪な命乞いそのもの。

 見た者は彼の崇高さ()を理解せず、ただ下劣な男が部下に裏切られ殺されたと考えるだろう。

 

(最後の最後まで……師匠、心遣い感謝します!)

 

 そして接舷され、乗り込まれる中。

 接舷されたとは逆側の舷窓を外し、飛び出すクロ。

 託されたトランクを手に海中へと逃れ……必死に泳ぐ。

 幸いにも逃げる彼への狙撃はなかった。

 

 

 

  ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

――現代(7年後)

 

「うう、師匠ぉっ……」

 

 語りながらクロネコは泣いていた。

 その姿は美幼女だけに庇護欲をそそりまくる、すさまじい破壊力だが。

 話した内容が内容だ。

 

「今の話で、泣く要素ってどこだい」

「グランドラインの海賊って強いのねぇ」

 

 聞き手二人としては、コメントに困る。

 師匠とやらは、明らかに死んだ方が世のためだ。

 

「うっ、うっ……とにかくそうして、私は師匠の夢を引き継ぎ、“裏・悪魔の実”を手に入れたわけ。あと六式の基礎」

「その六式の基礎が一番役に立ってると思うんだけど……」

 

 クロのバケモノじみた戦闘力あってこそ、ジャンゴは従っているし。

 大佐ネズミの海軍船も壊滅したのだ。

 

「ずびっ……こんなのはただの技術。夢を叶えるための手段よ」

「しゅ、手段だって大事だよ。教えてくれた先輩にも感謝すべきじゃないかな?」

「私たちも身に付けたら無敵になるんじゃない?」

 

 二人としては、よくわからん変態談議よりも六式の方が気になる。

 話の中で扱いの小さかったフーズ・フーは、スルーすべき人物ではないはずだ。

 鼻水をすするクロネコに問うてみるが。

 

「役に立ってくれたことは感謝するけど。所詮は負け犬よ。この世界の理不尽を教えてくれただけ。第一技術ってのは、催眠術じゃ与えられないし。あのきつい修行を、あんたたちができるとも思えない」

 

 冷淡ないつものクロネコである。

 同志と幼女以外への彼女は冷酷そのものなのだ。

 

「そ、そうか」

「確かにきついのは、いやねぇ」

 

 二人も努力家ではない。 

 

「ねぇねぇ、どうしてすぐ“裏・悪魔の実”を使わなかったの?」

「確かに。リスクがどうとか言っていたが、7年も待ったのはなぜだい」

 

 過去の話を聞いてもさっぱりだ。

 

「資料を読んだからよ。食べれば次元の違う美少女になる実。護送船が沈んでも、世界政府はこの東の海を探し続けるわ」

「なら、さっさと政府に差し出せばよかったじゃないか」

 

 そんな厄ネタを抱え込む意味がわからない。

 

「師匠が死んだ以上、知り過ぎた人間なんて……始末されるだけよ」

「確かにその可能性は高いか」

「こわっ……世界政府こわすぎなぁい? 海賊より殺してるじゃない」

 

 海賊ジャンゴとして悪事を働いてきたみさきだが、そんな風に淡々と人を始末する在り様には恐怖を感じる。

 

「全ての海の全ての海賊が殺している数に比べれば、微々たるものよ」

「いやいや、だからって殺す必要ないでしょ」

「……確かにキミは政府向きだね」

 

 やりとりを眺めつつ、ナズーリンが肩をすくめた。

 

「ともあれ、政府はもう関係ない。私たちは政府に嗅ぎつけられず……かつ、己を高める必要があるの」

「過去を聞いてもわからないんだが……どうしてだい?」

「適当な島に隠れ住んだ方がいいと思うんだけどぉ」

 

 己を高める意味がわからない。

 

「バカ! 今の話を聞いて、わかんなかったの!!!!」

((わからない……!))

 

 わからない!

 

「いい? あの日――陸地に泳ぎ着いて!! 私は改めて!! 誓った!!!!」

 

 すぅ、と小さな体に息を吸い込む。

 熱くなるクロネコに比例する如く、二人は嫌な予感で冷めていく。

 

「人の夢は!!! 終わらねェ!!!!」

 

 ドン!と美幼女クロネコの背後に、かつてのキャプテン・クロと見知らぬおっさん――たぶんペドフィリアン副長官が浮かび上がる。

 

「私たちは師匠から夢を託されたのよ! 叶えるのが当たり前でしょ!!」

「「わたし……たち?」」

 

 二人とも勢いに流されたりしない。

 

「立派な女子小学校を築いて幼女たちにチヤホヤされる義務が……私たちにはある!!!!」

「ないよ!!」

「ないわ!!」

 

 勝手に入れられたくない。

 

「師匠の死にざまを聞いて、感じ入らなかったの? それでも男!?」

「「女にされたよ!!」」

 

 ごもっともである。

 それに男でも感じ入る人は少ない。

 

「協力したら、ナズーリンには学級委員長をゆずってあげるし……」

「いらないよ」

「学級委員長よ? みんなに『きりーつ』って言えるのよ?」

「言ってどうするんだい」

 

 信じられない返答に、クロネコが固まる。

 ぎぎっと首をみさきに向けた。

 

「ほら、みさきも憧れの女教師になれるわよ?」

「なりたくない!」

「なりたくないって……小学校教師よ? いっしょに水着に着替えたり、修学旅行でお風呂に入ったりできるのよ?」

「女湯は興味あるけど、小学生と入ってどうするのよ」

 

 さらにありえない回答に、クロネコは眩暈がした。

 よろけながら、失神するように仰向けでベッドに転がる。

 

「とりあえず、補給を兼ねて適当な街を襲う?」

「そうだね。さっきリストを焼いてたけど、いくつか辺鄙な島なら私も知っているよ」

 

 二人はそんなクロネコを放置して、船の今後を話し合い始める。

 物騒な会話だが、クロネコの想定より遥かにぬるい。

 

(この二人、どれだけバカなの? 道理ってものがわからないの?)

 

 勝手な価値観による、勝手な罵詈雑言。

 

(言ってもわからぬバカばかり……なら)

 

 ベッドへ仰向けに倒れ込んだクロネコの目が異様な光を宿し始める。

 

(やっぱり高みに至る必要があるわね……ロリロリの力を“覚醒”させるためにも)

 

 恐ろしい決意に至っていることを。

 今はまだ誰も気づいていない……! 

 




フーズ・フー先輩、描写すらなく退場!
普通に原作通りの流れに入ります。
追加任務について詳細は聞かされてません。

心の師ペドフィリアン副長官、死亡!

ロリコン血盟団は二人が勝手に名乗ってただけです。
本格的な活動は、本部に戻ってからする予定でした。
解散時点ではロリコン談義するだけの、変な二人組です。

覚醒すると何が起きるかは想像の通りです。



オリキャラとその舞台裏。

・ロリヴィッチ・トポジージョ聖(57)
一族の当主になって“裏・悪魔の実”の管理権を得る。
代々奴隷に食わせてたが、すごい美味と聞いて自分で食って幼女になる。
ホントに美味かったので、自制心なく残りも食って廃人に。
常時アヘ顔セックスマシーンと化し、しばらく護衛や奴隷のおトイレになる。

・ロリヴィッチ・ロージィ宮(57)
ダンナが美女になれる“ビッチビッチの実”をくれると楽しみにしてた。
当主になってから、なかなか戻らない夫の様子を見に行くといろんな意味で変わり果てた姿に。
事情を護衛から聞いて、護衛は皆殺し。夫は追放と称し、大砲で聖地から発射して処刑。
すっきりした後、護衛らに“裏・悪魔の実”回収を命令。
似たような任務で東の海にいた、ペドフィリアンの船への追加任務となる。
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