Episode DECADE×FOOLS GAME 桜花ルート5034 作:ホシボシ
上条がオーディンに変わり、ワープでソノラブーマの後ろに回る。
しかし突き出した拳は簡単に弾かれた。
ソノラブーマはオーディンが後ろに現れたのを理解して、対応が間に合っているのだ。
「音が、してるんだよォ!」
爪がオーディンの装甲を傷つける。
すぐにワープで逃げるが、その時、轟音の衝撃波が連続で発生して、オーディンは大きく後退していく。
衝撃波はドーム状に広がり、織莉子が飛ばしたオラクルを吹き飛ばして、さらにオーディンが呼んだミラーモンスターたちも受け付けさせない。
織莉子もマホを守るための大きなオラクルに魔力を供給したいがため、なかなか攻撃に転ずることができない。
マホを切ればいいのだが、今はもうそんな選択肢は存在していなかった。
「こんっのぉおおおおおおお!」
声が聞こえた。
空中に出現していく魔法陣、それを蹴って、美樹さやかが猛スピードでやってきた。
そこで抵抗感。衝撃波だ。さやかは一瞬だけ考えた結果、考えることを放棄して真正面から突っ込んでいく。
衝撃波はただひたすら耐える。魔法陣で足場を作り、悲鳴を上げる体は回復魔法で誤魔化して――
「馬鹿が」
減速しているので、さやかの首に爪が入る。
すさまじい勢いで吹き出ていく血液。
「そっちもね」
その血が、オクタヴィアになった。
「しま――ッ!」
巨大な拳がソノラブーマを捕らえる。
鷲掴みにしたままビルの下へ落下。オクタヴィアはそのままソノラブーマを地面に押し当てた。
「マミさん! かずみ! お願い!」
「任せて!」「りょうッかーい!」
一緒についてきたマミたちが、下にいるソノラブーマを抑えに向かう。
一方で、さやかは着地と同時にオーディンのほうへ駆け寄っていった。
「恭介! 大丈夫?」
「う、うん。でもどうしてここに?」
「織莉子さんがオラクルでメッセージを送ってくれて」
オーディンは織莉子を見る。織莉子はゆっくりと頷いた。
「僕は大丈夫。大丈夫なんだけど……」
「けど?」
「……一つ、いいかな?」
「?」
「迷ってる。いろいろと。でも、少しは、わかった気がしたんだ」
「うん。うん。そっか、うん」
「だけど、あと一つ、最後のピースが足りない感覚なんだ」
下のほうで銃声が聞こえる。
マミとかずみが、ソノラブーマと戦っているのだ。
あまり時間はかけられないから、オーディンはたった一つだけ、その疑問を選んだ。
「キミは、どうして僕を突き放さなかったの?」
「……まあそりゃ、ちょっとはアレな想いもあったよ」
「アレって?」
「そりゃ、なんていうかちょっとあの、あわよくば……や、や、内緒! ま、まあそれはいいじゃん! でもなんていうかさ」
せっかくオーディンが心をさらけ出してくれたのだから、コチラもさらけ出すのが筋ってものだろうと思った。
「一番はやっぱり、ヴァイオリン弾いてる時の恭介の顔が好きだからかな」
「………」
「いい顔だったよ。楽しそうって一つの言葉じゃ括れないくらいには」
「……まあ、笑ってる顔ばっかりじゃ、なかったよね」
「それも含めて、良い顔だった。あたしが一番、わかってるから!」
「……僕の両親より?」
「もちろん! どんだけ近くで見てきたと思ってんの! むしろ恭介よりわかってますってば」
さやかはニカッと笑った。
「だから負けないでよ! あんなヤツに!」
原点回帰。その言葉が浮かんだ。オーディンは頷くと、織莉子を見る。
一瞬だけ、隣にいるマホを見た。不安そうな顔をしている彼女のためにも――
「いけるかい? 織莉子」
「はい。上条くん……」
織莉子は何かを言いかかけて、止めて、考えて、そしてやっぱり口にする。
「私は、これからも貴方を使い続けます」
「……うん。それでいいさ。それがキミの努力なら、僕は望む音色を出せるように頑張るよ」
「もとより、鹿目まどかを超えようとした身。限界を感じて怯むことほど愚かなことはないわ」
見滝原を。イコール、世界を救う。
今も戦っているまどかの力は感じている。
しかし女神とて、いつかどこかで道を間違えてしまう時がやってくるかもしれない。
ではその時に、一体誰が止める? 誰が止めれるという?
決まっている。女神を殺せるものだけだ。
少し怯んでいたが、なに。司の言うとおりだ。
最初から望んでいた場所へ進めばいいだけ。
「今こそ私は、すべてを超越します! 女神さえも過去にして!」【アライブ】
その時、下のほうでは悲鳴が聞こえた。
マミとかずみが吹き飛び、ガードレールや、電信柱にぶつかって地面に倒れた。
その中央では二人を吹き飛ばしたソノラブーマが笑っている。
マミたちはアライブを発動したのだが、ソノラブーマから放たれた音楽を聞いた途端、アライブが解除されたのだ。これが破壊の音階『デストロイブザー』である。
「フフハハハ! アライブさえなければお前たちは俺には勝てない!」
「では、アライブでお相手しましょう」
「!」
上を見る。織莉子が舞い降りてきた。
見たことのない姿だった。後頭部につけた大きな赤いリボン。
細いリボンで結んだネックカバー。胸元が大きく開いているお姫様のようなドレス。
腰裏にも赤いリボンが見えた。そこから伸びる細いリボン。
腰の中央にはオラクルが一つ。さらに伸びたリボンの先の一つにも、大きめのオラクルが一つ。
(織莉子! アライブに覚醒していたのか……! だが――!)
ソノラブーマは体からデストロイブザーを鳴らす。これを聞けば、織莉子とて――
「なに!?」
織莉子の変身が解除されない。理由はソノラブーマもよくわかっている。
この破壊の音をかき消していくヴァイオリンの音色。
「僕が音楽を続けてきた理由はたった一つ。音楽がやりたいからだ」
黄金の羽が舞い落ちていく。
その中で、オーディンサバイブが舞い降りた。
各装飾が派手になっており、胸部アーマーは不死鳥の頭部を彷彿とさせる。
仮面は那羅延天をモチーフにしているようだが、右肩には北欧神話において、オーディンの使いであるカラス、フギンが。左肩には同じくカラス、ムニンを彷彿とさせるアーマーが装着されていた。
カラス翼は巨大で、マントのようにオーディンを包んでいる。
オーディンはかつて龍騎の世界においては、既にサバイブの力を発動していた状態であった。
今これは、その状態にさらにインキュベーターがサバイブの力を付け足した状態であるため、他のサバイブ態よりもスペックは遥かに高い。
腕輪であるドラウプニル。Vバックルのベルト部分が、メギンギョルズというものへ。
さらに手は、ヤールングレイプルという手袋で覆われており、それぞれがオーディンのスペックを何倍にも跳ね上げていた。
さらに右腰には、ゲリという狼の装飾品があり、これがカードを読み取るバイザーになっている。
左腰にはフレキという、これまた狼型のアイテムがあるが……?
「だから僕はお前には負けない。僕のために、お前みたいな理由を抱えてるヤツに負けられないんだ!」
「フンッ! 俺に殺されていただけのヤツが! 生意気にィッ!」
ソノラブーマが走る。
爪でオーディンを切り裂こうと思ったが、腕を振るうスピードを超えて、オーディンがソノラブーマを切り抜けた。
火花が散り、痛みで足がビタリと止まる。
一瞬の思考。ソノラブーマは振り返るが、そこでまた腹に一撃をもらった。
ヴァイオリン型の武器、『ゴルトバイザーツバイヴァリウス』。
オーディンはまず、『弓』を模した長剣でソノラブーマの胴体を切り、振り返ってヴァイオリンを突き出した。
顎当ての部分以外には黄金のエネルギーがまとわりつき、それが刃になっている。
煙をあげて後退していくソノラブーマ。
そこでオーディンは持っていた弓をヴァイオリンの真横、凹んでいる中央部分に突き刺した。
『トール!』
電子音はジュゥべえが担当している。
形状的にはヴァイオリンの横に長い弓を差し込んだだけだが、これで弓が『柄』に代わり、形状が『斧』になった。
両手で、力の限り武器を振るい、次々にソノラブーマの装甲を削り取っていく。
さらにそこでデッキから自動的にカードが射出されると、そのままゲリにセットされる。
【シュートベント】
エコーのかかった電子音。
するとオーディンの頭上に巨大な炎の剣が現れ、剣先をソノラブーマに向けて発射された。
「グォオオオ!」
ビクトリーソード。
剣がクリーンヒットし、爆発する。
吹き飛んでいくソノラブーマ。
そこでオーディンは、ファイナルベントのカードを抜いてヴァイオリンにある『F字孔』の部分に差し込んで見せる。
『あいよォ! 喜んでぇ!』
武器から聞こえるインキュベーターの声。
どうやら読み取っているらしい。
大技なのだろう。させるわけにはいかないと、ソノラブーマは羽を広げて――
「お前!」
そこで織莉子が前に立った。
「どけぇえ!」
切りかかるが、そこで衝撃。
織莉子に顔を蹴られたのだ。そして腹も蹴られていた。腕も、腰も、顎も、足も蹴られていた。
黒いタイツの先にある黄色いヒール。
右足が四つある。左足も四つある。
「煩悶のドッペル」
織莉子は豪快に左脚たちをふるって、ソノラブーマを蹴り飛ばす。
「ご招待のドッペル」
さらに織莉子に変化が起きる。
マミアライブが身に着けているようなボンネットが装着されると、そこからキャンデロロに酷似した魔女が姿を見せる。
伸びるリボン。それは起き上がったソノラブーマを縛り上げた。
さらにフリーズベントの音声。
グレイプニール、黄金の鎖と足かせが、拘束をより強固なものにする。
唸るソノラブーマ、どれだけ力を込めても拘束が解けない。
そうしているとチャージが完了したようだ。
『へいお待ち!』『トールハンマー! いっちょォ!』
帯電する斧を振り下ろすと、シンクロするように天から巨大な雷撃が降り注ぎ、ソノラブーマに直撃する。
悲鳴が聞こえる。ソノラブーマは全身に蓄積する確かなダメージを感じていた。
その時、オーディンが手を伸ばすと、そこへゴルトバイザーが現れる。
同じくしてマミとかずみの体が光り、彼女たちの体から一枚のカードが排出された。
サバイブ・正義と、サバイブ・決意。
ゴルトバイザー上部の不死鳥が翼を広げると、そこにカードをセットする場所が現れる。
オーディンは右に正義のカードを。左に決意のカードをセットした。
すると絵柄が変わり、中央にある不死鳥の体が描かれているサバイブ・無限と、一枚の絵になるように両翼の絵柄となった。
オーディンの体に変化が起こる。
右肩にいるフギンが、シザースを彷彿とさせるオレンジと黄色を基調としたカラーリングに。
そして左肩にいるムニンが、ナイトを彷彿とさせる黒と青を基調としたカラーリングに変わったのだ。
どうやら二枚のサバイブのカードの力を得ているらしい。
そこでカラスが分離して、まずはフギンが翼を広げて加速する。
ソノラブーマは手を払い、無数の従者型を生み出した。
一斉にレーザーを射出するが、高質化した肉体はそれらを一切寄せ付けずに、ソノラブーマに直撃していく。
「ぐあぁ!」
弾かれ、倒れる。
追撃を許すわけにはいかない。
ソノラブーマは轟音のセミの鳴き声を放つが――
そこでムニンが鳴いた。
カラスの鳴き声がセミの声をかき消し、逆にソノラブーマが耳を抑える。
さらにムニンは翼をはばたかせた。すると竜巻が発生して、ソノラブーマの体が浮き上がっていく。
「恋慕のドッペル!」
織莉子の背後にオクタヴィアが降ってくる。
しかし頭がなくなっており、かわりにアーチ状の手すりがついた台座があった。
織莉子はそこへ飛び乗ると、魔女を操り、先が湾曲した剣を無数に召喚する。
そして――
「グアァアアァアアア!」
それらが、一斉にソノラブーマと従者型に突き刺さった。
苦痛の悲鳴が、やがて憤怒のものへと変わっていく。
剣が衝撃波で粉と変わり、そしてソノラブーマの体も巨大化して変形していった。
「腹が立つ! 人間風情が! 俺を怒らせるな!」
人型だったシルエットは今はもはや完全なセミになっている。
しかし複眼や広げた羽にある脈はスピーカーになっており、声もそこから聞こえてきている。
「音で殺してやる!」
ソノラブーマは膨れ上がる殺意を解き放とうとした。
しかしそこで無数の炎が飛来する。
ガルドサンダー、ガルドミラージュ、ガルドストーム、そしてゴルトフェニックスが一つに交わり、巨大な不死鳥・"ガルダフェニックス"へと変身する。
頭部はガルドストームのネイティブアメリカンを彷彿とさせる大きな羽飾りをつけており、胴体はガルドサンダーの頭部を彷彿とさせ、尾のほうはガルドミラージュを彷彿とさせるカラーリング、さらには孔雀のような長い翼が存在して、そこには無数に配置された圏が見える。
「慈悲のドッペル!」
織莉子が巨大なソウルジェムのような物体の中に入った。
集中していくエネルギー。ソノラブーマは爆音をあげて、そこへ飛んでいく。
しかしまたも音が音をかき消した。オーディンがツバイヴァリウスを演奏している。
さらにオーディンは素早くベルト左にある狼型のアイテム、フレキの耳を触る。
そこはレバーになっており、右耳を倒すごとに、目に表示されている文字が切り替わっていく。
そして『亥』の文字になった時、左耳を押し込んだ。
『クビラ!』『ゴルトチェーンジ!』
ジュゥべえの声が聞こえて、ガルドフェニックスが鳳凰からイノシシの姿に変わる。
その二つの牙は長い剣になっていた。
ガルドフェニックス・クビラ。
咆哮をあげて猪突猛進。ソノラブーマに突撃していき、その怪力で有無を言わさず押し出していく。
そこで織莉子が入っていた巨大なソウルジェムが凄まじい光を放った。
直後、轟音。
ソノラブーマの体が大爆発を起こし、蝉堂は瘴気を吹き出しながら地面を転がる。
死ぬ! 蝉堂は目を見開き、オーディンたちに背中を向けた。
「くッ、くそぉお!」
モザイク状のエネルギーが迸り、蝉堂は消え去った。
「うっひょーっ! やったね恭介! 織莉子さん!」
マホを横抱きにして着地するさやか。
オーディンは一旦、変身を解除して、ため息をつく。
それなりに疲れた。とはいえ、休んでいる暇はないようだ。
というのも、今までは沈黙していたメガリバースマシンが目を光らせて、レーザーで街を破壊し始めたのだ。
あれを放っておくわけにはいかない。
「行きましょう。乗ってください」
織莉子が巨大なオラクルを出現させて、その上にのり、中にマホたちを詰めていく。
しかし残りはマミとなったところで定員オーバーとなってしまった。
「よし! 美樹さんと合体すればいいじゃない!」【アライブ】
プリンピング。マミが名札になってさやかに張り付くと、光が迸って――
「……へ?」
さやかが水着になった。
「どどどどどど!」
波乗りさやか。文字通りサーファー姿のさやかなのだが、ラッシュガードの面積が異様に小さく、非常に露出度が高い。
海ならば何も気にならないが、今この状態で、ましてや目の前に上条がいるのに。
上条もギョッとして、すぐに違う場所を見る。
「ま、マミさぁん!」
『ごめんなさい。でもほら! 後ろを向けばいいじゃない』
なんだか声色がニヤニヤしているような。
さやかは頬を膨らませながらも、上条に背を向けた。
「すんごいえっちですね! えへへ! へへ、へ。あ、ごめんなさい。こういうところでした私……」
マホがうなだれる中、オラクルが動き出す。
『ねえ上条くん』
「は、はい?」
『美樹さんのおなか。ソウルジェムがむき出しになってるの』
「はぁ」
『危ないと思わない? もしも誰か、スナイパーみたいな敵がいたら』
「ま、まあ、そう……ですね」
『そう、だから手で覆ってあげて』
「マミさん!」
『いいじゃない! ねえ! ほら! 早く!』
「え、えーっと……」
「いい! いい! 別にこれくらい……!」
しかし、そこで、さやかは目を細め、固まる。
「やっぱ、お願い……、していい?」
「え!? え……!?」
「ダメ?」
「いや、べつに、大丈夫だけど。立花さんとかにしてもらえば……」
「ごめーん。わたし今ね、マホさんを守るのに精いっぱいだから」
「は、はぁ」
「ほらもう時間がないわ。行きましょう!」
織莉子に急かされ、上条はさやかの腹に手を回した。
((う……!))
二人とも真っ赤になって固まる。
昔は遊ぶ中で、ちょっとくっついたことはあったかもしれない。
だから大丈夫などというレベルではない。この状況の水着は下着も同然だ。
そのうえで素肌に触れさせるだなんて、我ながらアクセルを踏みすぎたとさやかは思う。
しかし多少の荒療治の効果はあったそうで、上条は真っ赤になって顔を逸らしていた。
それを他の女性陣はニヤニヤしながら見つめ、オラクルは飛んでいく。
「ハァ! ハァ……!」
メガリバースマシンの上で、桜花は汗を拭った。
手が震える。体が重い。視界がボヤける回数が増えてきた。
それでも魔力を込め続け、次々に怪人や魔獣を呼び出すゲートを作っていく。
「桜花ちゃん! 魔法を使うのをやめて!」
まどかが翼を広げて彼女のもとへ向かうが、そこで衝撃。
体はあっという間に桜花から離れて、飛んでいく。
ダメだ。もっと。もっと殺さないと。
人が死んで、苦しんで、そしたらきっと少しは私の痛みが分かってくれる。
私の痛みが消えてくれる。
桜花はそう思って魔力を注ぎ続けた。
まるで走馬灯みたいに記憶が溢れる。好きだった兄はもういない。そもそも初めからいなかった。兄が仲良くなる女性たちもだ。
そして、自分も。
でもそれがわかったことは、あまりいいことではなかった。
桜花は欲しくなった。何か、本物が。
「負だ」
杖の先端が、桜花の胸を突き破った。
「人間は、地獄はいくつも想像できるが、天国は想像できない」
なぜ差別表現のある作品を人が嫌うかわかるか?
なぜ暴力性を拒もうとするかわかるか?
生きてもいない少女に暴力の限りを尽くせぬか、わかるか?
それはフィクションでは終わらないからだ。
眼をそらしては、いけない。創作は本物になる。
「それも、善意の物語は現実に影響を及ぼさないが、悪意の物語は現実に投影される」
不安定な精神で魔法を使い続けていたからソウルジェムはすぐに真っ黒になった。
「故に、闇は永遠に残り続ける」
桜花は嘔吐するように血を吐き出した。
苦しい。胸を掻きむしる。心のある位置が疼いて、疼いて――
「だず――ッ! たずげでぇええぇぇぇぇ!」
悲鳴と共に彼女のソウルジェムがグリーフシードを作り出す。
桜花の肉体は倒れ、そのまま魔女に踏みつぶされた。
感情の魔女・サクラコ。細長い体に、いくつもの顔が張り付いている。
これは兄の顔であり、攻略ヒロインたちの顔だった。
すぐに、サクラコの悲鳴が聞こえてくる。
ネクロデザイアが顔を巨大化させて一口に飲み込んだのだ。
するとその体がボコボコと音を立てて肉の塊になる。
そのまま他の仲間たちを飲み込み、そして、一つの化け物になった。
その名の通り、巨大な魔女帽子をかぶった女の顔だった。
鉤鼻の部分が、三日月状の頭を持ったネクロデザイアになっている。
さらに顔にはサクラコが持っていた無数の顔に加えて、キルゾーンやリッパーKなどの顔も張り付いている。
この魔女の頭部は、すぐさま町の破壊を開始した。
黒い炎が逃げ惑う人々を焼き殺し、違う場所に転生させて、またすぐに殺して見せる。
「なぎさに任せるのです!」
お菓子の魔女に変身すると、仲間を乗せて飛んでいくが――
悲鳴。悲鳴だった。ウィッチが悲鳴を上げると衝撃波が発生して、吹き飛ばされてしまう。
それは他の魔法少女やライダーも同じだ。さらに黒い嵐も発生して、まったく前に進めない。
「任せてください!」
「は、はい! お願いするの……、え?」
なぎさにとっては知らない騎士が見えた。
アギトは、マシントルネイダーをスライダーモードに変えて黒い嵐の中を突っ切っていく。その後ろには水波レナの姿もあった。
彼女も魔法少女のようで、オフショルダーのワンピースの白い襟部分には、アギトの紋章が見える。
「ユニオン!」
レナが叫ぶと、一瞬、ピカッとアギトのマークが身を包んだ。
その紋章の角が展開する。
同時にアギト本人も、クロスホーンを開いた。
腰を落として、狙いを定める。
「外さないでよ!」
まず、レナが飛んだ。
続いてアギトもシートを蹴る。
先行するレナの体が光ると、巨大な鏡になった。その裏、ど真ん中にアギトは足裏を合わせる。
「ハァアアアアアアア!」
アギトが鏡の裏を蹴った瞬間、鏡から巨大化したアギトの脚が伸びた。
それはウィッチに直撃すると、吹っ飛ばし、空を超えて、あっという間に星々のほうまで運んで見せる
そこで鏡がレナに戻った。
彼女がアギトの足を巨大化させて放つ必殺キック、"アブリューションシュート"が炸裂したのだ。
「って! ちょっと! 倒せてないじゃない!」
「おっと……! これは、マズイなぁ」
宇宙に弾かれたらば、戻ればいいだけだ。
ウィッチが猛スピードで落ちていく。
落ちて、落ちて、クレーターを広げよう。
そしたらきっとたくさんの人が死ぬ。
「させるかァアア!」
飛び立った男、クロスファイヤー。
空を飛び、光となりて宇宙を目指す。
この手を、この手で、一瞬でも桜花に触れることができたならば――
「宙の反対は、
クロスファイヤーは衝撃を感じた。
背中が地面についている。空の向こうに赤い点が見える。
あれが、今まさに落下してきているウィッチなのだろう。
しかしなぜだ? 立ち上がってみて、気づく。
「希望の反対は?」
アリカポネがそこにいた。
「絶望だ」
「ぐっぅ!」
全身から吹き出る火花。
クロスファイヤーは切られたところを手で押さえた。
「今宵、全てが反転する」
アリカポネはステッキを投げ捨てて、葉巻を咥えた。
手招きを一つ。すると、クロスファイヤーは走り、燃える拳を連続してアリカポネに打ち込んでいった。
しかしそこでアリカポネが指を鳴らすと、マシンが能力を発動する。
メガリバース。
クロスファイヤーは、全身を殴られたような痛みと衝撃を感じて後退していった。
「痛みも」
ロギーは葉巻を吹き矢のようにして、クロスファイヤーに毒針を突き刺す。
「夢も」
動きが鈍る。
「理想も」
そこを殴られた。
「価値もォ!」
蹴られて、クロスファイヤーは地面を転がる。
「そして勝利もだ! この前は負けたが今は違う! 勝つのは俺だ!」
「ぐッ! ゥゥウ……ッッ」
「お前らの反対は誰? そう! 怪人であるオーレ!」
そこでアリカポネはロギーに戻る。
そしてコートの裏から『ドライバー』を取り出し、腰に装着した。
「いや? むしろォ? お前がライダーでなくなったため、俺の価値が上がっちまうわけだこりゃ!」
スイッチを入れ、腕を伸ばして構えをとる。
すると赤黒い光がロギーを包み込み、はじけた時にはその姿は別のものに変身していた。
その名は、『プロトゼクロス』。真っ黒な仮面ライダーである。
クロスファイヤーは立ち上がり十字状の炎を飛ばすが、そこで反転。
ゼクロスに向かっていた筈の炎が、クロスファイヤーに直撃する。
「人はかつて創作に理想を求めた」
衝撃集中爆弾を蹴る。それはクロスファイヤーに命中し、爆発を起こした。
「だがいつしかそれは反転し、人は創作に現実を求めた」
ゼクロスは倒れたクロスファイヤーの首を掴むと、引き起こして腹を殴る。
そして回し蹴り。赤く発行する足がクロスファイヤーを吹き飛ばす。
「悲劇もまたエッセンスとなる。あそこまで堕ちた女を戻すなんざ、野暮にもほどがあるぜ。ディケイド」
あぁ、もう、違うのか。ディケイドじゃないのか。
ゼクロスは呆れたように笑った。
その左手はファイブハントと呼ばれる装備になっており、冷凍ガスを発射する緑色に変わる。
「炎の対になる、俺の冷気に酔いしれろ」
クロスファイヤーは抵抗したが、そこでメガリバースマシンが作動する。
炎の勢いが急激に弱まり、彼は分厚い氷に覆われた。
そこでゼクロスの右腕にマシンガンアームが装着されて、次々と弾丸が発射される。
氷が砕けた。
クロスファイヤーの体はバラバラになるが――
直後、その破片の全てが炎に変わる。
それらが一つに交わると、再びクロスファイヤーへとなった。
「これは面白れぇ」
「俺は! 桜花ちゃんを助ける!」
それは、きっと大きな希望である。
ならばいいとゼクロスは仮面の中で下卑た笑みを浮かべた。
それが反転すれば、クロスファイヤーの心は折れてくれるだろうし。
「その時こそ、このロギーの真の勝利が確定するのさ! フフハハハハ!」
構えをとって飛び上がる。
ゼクロスキック。
クロスファイヤーもまた、炎を纏った回し蹴りで対抗するが――
「ぐあぁああッッ!」
爆発が起こり、クロスファイヤーが地面を転がった。
手を挙げると、それを合図にメガリバースマシンの目からエネルギーが放たれてクロスファイヤーの周囲に着弾していく。
悲鳴が聞こえ、クロスファイヤーは爆炎の中に消えていった。
一方で、町のほうでは紅渡が歩いていた。
向かい側から剣崎一真が歩いてくるのが見える。
「ここに来るまでの道、見えた奴らは全員助けたが……、お前はどうだ?」
「当然です。馬鹿にしないで頂きたい」
そこで剣崎が一枚のトランプを投げた。
スペードのエース。それは渡の後ろにいたカナリコブラの額に突き刺さり、絶命させる。
一方で剣崎の後ろにいたセミミンガの腹にキバットが直撃していた。
歩く二人。剣崎は渡を通り越してカードを抜いた。
渡も剣崎を通り過ぎてセミミンガの腹にめり込んでいるキバットを助ける。
「変身」「変身!」
背中合わせになるブレイドとキバ。
少し離れたところにアギトとレナが着地する。
「久しぶりだな。翔一」
「なに? 翔一の知り合い?」
「ええ。金剛寺さんに、銀宮寺さんです」
「まったく違いますが」
「いやぁ、すみません。記憶はあるんですけど、ないんです」
キバとブレイドは沈黙する。
アギトが冗談を言っているのではないことはわかっている。
その上で考え、理解したようだ。
「まあ、いい。そっちは任せたが今は協力しろ。茶番は終わらせるぞ」
「ええ。あのメガリバースマシンを破壊しましょう」
そこで灰色のオーロラが現れる。
今度は何だと視線を移すと、眼鏡をかけた高校生が現れた。
「まあまあ、お三人さん。ここはゆっくり行きましょうや」
「お前は……!」
「たまには若いもんに華を持たせてもええやん。なあ?」
常盤ソウゴはニヤリと笑う。
「ですがクロスファイヤーが危険です。彼が桜花を助ける前に退場してはそれこそ意味がない。茶番もいいところです」
「まあ確かに。せやけど、それが焦りってもんや」
「?」
「Episode DECADEは短編集。主役は一人やない。って、ことですわ」
そこで場面はそのクロスファイヤーに戻る。
ゼクロスの前に広がる爆炎。
ニヤリと笑うが――、笑みが消えた。
気配を感じる。
そして、直後、炎が闇に飲み込まれた。
暗い、黒い、それはまるで、ブラックホールだ。
「ッ、誰だ!」
クロスファイヤーを庇った男がいた。
「仮面ライダーだ」
「ッ!?」
「仮面ライダー、エボル」
星座の早見盤がついている。
ドライバーは、ビルドドライバー。
それはつい先ほど、司が使用していたものである。
秋人はそれを拾い、自分が使っていたボトルと、そばにあった仮面ライダーのボトルを使って変身したのだ。
「っかしーなぁ? 俺の記憶が正しけりゃ、テメェは味方だったはずなんだが」
「なら訂正してくれ」
エボルがクロスファイヤーを守ったのは決して偶然ではない。
「お前が刻んでいるのは、最悪の記憶だ」
「……大ショッカーのルールは簡単。裏切り者には、死、あるのみ」
ゼクロスが小刀を抜いて走り出した。
エボルもまた、スチームブレードを持って応戦に向かう。
切りあう音の果て、ゼクロスの体に火花が散った。
しかし彼は笑う。メガリバースマシンの発動。
「なにっ!」
しかしエボルにはダメージが返らない。
「無駄だ! 僕には無視の力がある。それをこのエボルの力で効果範囲を広げた」
「なんだとぉお……?」
「今、適応されてるのは死者を蘇生させる力のみ! あとはガラクタだ!」
「だったらテメェを殺せば元に戻るわけだ。燃えてきたぜ!」
両者は激しくぶつかっていく。
一方でクロスファイヤーは動かない。動けない。受けたダメージは大きく、そうすると困ったことに、もう立ち上がることができない。
しかし彼は空に瞬くウィッチを見ると、ゆっくりとではあるが体を動かし始めた。
立つためにだ。
このフラつく体の中で、クロスファイヤーは泣きたくなった。
なぜだかわからないが、きっと、いろいろ、たぶん、なんか、そういう感じのことがたくさんあるのだろうと察したのである。
今のような状況で、このまま、あの魔女の頭が世界にぶつかって滅びてしまったシチュエーションが山のようにあったのだなと思った。
それは世界の話であり、個人の話でもある。
今もどこかで、誰かの中で。
滅びをもたらす隕石が近づいて、近づいて、近づいてきて……。
そしてそれが心に落ちたら、人はきっと、死ぬ。
「たすけてくれ!」
それは酷く情けない声ではあった。
あれだけ大口をたたいて、あれだけ確固たる決意を固めた上で、空から降ってくる怖いものを見たら、大手を振って逃げたくなった。
桜花ちゃんを見捨てて、なにもかも捨てて、ただひたすら走って、走って、そして走っている間に自分が死んでくれたら楽なのにと思ってしまった。
しかしそれをまさか本当にするわけには……。
あげく、言葉にすることもできないので、代わりに感情を一番わかりやすく表した、この言葉が出てきたのだろう。
心が折れかけていたのかもしれないし、実際はもう折れていたのかもしれない。
しかしいずれにせよ、わかることがあるのならば、自然に声が出ていたということだ。
そしてクロスファイヤーは逃げることはしなかった。
助けてあげたい。
助けてほしかった。
助けられればそれはきっと、その時、俺たちは『仮面ライダー』になれたのだろう。
いつか悪夢に変わるとしても。愚直な優しさをただひたむきに追い求めたかった。
だから、これは、どうか、すべての人間へ。
「助けてくれ!」
そのひたむきな声。
司が持っていた『天の石』に呼応したのは、必然であった。
「もちろんです!」
「決まってるよ!」「当たり前だ!」
「任せて!」
「了解!」
「ほほーい!」
そのバラバラな返答は、司の言葉に対するアンサーであった。
天の石、その効果は扉を開くこと。
助けを求める声に全員が同じ速度で反応した。
だからこそ、ウルトラマンメビウス。
スタービルドストライクガンダム。
キュアハッピー。
アキバレッド。
仮面ライダーしん王。
フルブラストメモリーズと名付けたメンバーが全員やってきたのだ。
そしてそれだけじゃない。彼らの仲間もついてきてくれた。
世界中に開くゲート。そこから飛び出したヒーローたちは、怪人から人を守り、そして空から降ってくる悪い
考えた結果、直接手で。だから戦士たちは次々とウィッチを抑え、押し返そうとしていた。
「……なるほど。まあ、いいでしょう。これもまた王に刺さる剣となる」
「あとは頼んだぞ」
キバとブレイドは変身を解除してオーロラの中に消えていく。
ソウゴも少し呆れたように笑うと消えていった。
「また負けちゃったの?」
「……誤解があるよ」
「わかってますって。いつも、えらいえらい」
静香は、ニコリとほほ笑み、戻ってきた渡の頭を撫でていた。
「バカタレ! また後輩をいじめて悦に入ってたの!?」
羽美は剣崎の腹部に一発拳を打ち込む。
「ふざけるな! そんなことするか!」
「きゃあエッチ! どこ触ってるの! ってか、してたじゃん!」
「いいか、あれはな――」
それは怒りにも似た優しさだった。
「火をつけてやっただけさ。決して消えない炎をな」
織莉子のアライブの元ネタは、おりマギ無印1巻の最後のほうにある没案でございます。
オーズの新作が出るということでね。
この前の一挙放送で見直してみたんですけど、めちゃくちゃ面白かったですね。
なんか当時は正直そこまで刺さってなかったんですけど、この前のやつで結構個人的ランキングが上のほうにきましたよと。
んで、いっこ、おもろいなって思ったのが、完結編なのに脚本家べつの人なんですよね。
やっぱライダーってそこが魅力的というか。
P、脚本家、俳優、監督とか、作品を構成するパーツが結構毎回バラバラなのが面白いなって思います(´・ω・)b
たとえば浅倉とか、黎斗とか、あの役者さんじゃなかったら絶対あそこまで人気出てなかっただろって思わせられるしね。
もちろんもっとそういう人はいますけど。