Episode DECADE×FOOLS GAME 桜花ルート5034 作:ホシボシ
巴マミは穏やかな寝息を立てていた。
それが乱れたのは、午前二時のこと。
自室の扉が開く音と、隙間から漏れる灯りで目が覚めてしまった。
向こうも気づいたのか、すぐにライトは消えて、弱弱しい声の謝罪が聞こえた。
「んん……ぅ? どうしたの、暁美さん……?」
返事はない。しばらくするとモゾモゾと布団が動くのを感じた。
気配がすぐそこに迫る。マミは怯んで右を見た。
暗いが、わかる。ほむらがそこで寝ている。
「一緒に寝たいの……、だめ?」
「だめ、では、ない、けれ、ど……」
確かに以前、からかってそんなことを提案したときはあった。
あの時は氷のような目で睨まれて拒絶されたが、今はどうだ?
いったいどういう風の吹き回しだろう。そしてさらにギョッとする。ほむらがギュッとしがみついてきたのだ。
(こ、これはっ、どういう――ッ!?)
以前、仁美とサキが熱心に語っていた少女漫画『初恋はミルキーウェイ外伝・ラビリンスラブトルネード』にて、女の子と女の子の禁断の関係が描かれていたが、これはまさかそういうことなのか? 禁断のアバンチュールに身を投げてしまうのか?
夜の"にゃふにゃふ"(隠語)してしまうのか!?
マミが目を見開き、喉を鳴らした時だった。気づく。なんだか、ほむらの体が小さい。
背中に手をまわしてみて気づいたが、特徴的な長髪の感じがしない。
そこで目が慣れてきた。
ほむらがショートカットになっている。これは『博士』と呼ばれている姿だ。
怖がりで、身長もどういうわけか小学生くらいなのだ。
「怖い夢を見たの」
「そ、そうだったの。いいわ。一緒に寝ましょう」
マミが博士の頭を撫でていると、安心したのかすぴょすぴょと気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
博士は
しかし彼女には他のほむらにはない優れた頭脳と、発明品がある。
たとえば朝、目覚めたマミたちがリビングへ向かうと、なにやら白い箱があった。
「マミさんは何がいいの? いつもの?」
「そうね。お願いできるかしら」
博士は嬉しそうに頷くと、箱にある液晶をタップする。
すると何やら起動音がして、やがて蓋を開けるとそこにはクロワッサンに目玉焼き、カリカリに焼いたベーコンとサラダ、そしてコーンスープがセットになった『暁美モーニングセットA』があった。博士は同じようにアボカドがたっぷり入ったサンドイッチを取り出して、そこにマミが淹れた紅茶を添えれば完璧な朝食ができあがる。
二人は他愛もない話をしながらモーニングを楽しんだ。
「それにしても博士ちゃんが造ってくれたマシンって本当に便利だわ」
食後は、同じく博士が造ってくれた食洗器にお皿を入れれば完璧だ。
博士は嬉しそうに笑いながら、からっぽになった紅茶のカップで口元を隠した。
「マミさんのお家にお世話になってるんだから当然なの。それに……」
「?」
「それに、少しでも時間に余裕があったほうがマミさんとたくさんお喋りできるの……」
(可愛すぎて草ァ!)
って、いけない。あまりの愛らしさに最近ニコがよく口にしているネットスラングが出そうになってしまった。
だがまあ仕方ない。手塚の占いによるとマミは木属性らしい。だから草が生えてしまうのも無理はないのだ。たぶん。
とにかくマミが博士を抱きしめて頬ずりしている時だった。
博士の短かった髪がものすごい勢いで伸びていく。
身長も伸びて、博士は『ほむら』に変わった。
「ちょ、ちょっと……! 離れて」
「えぇー!」
ほむらはマミを引きはがすと、恥ずかしそうに咳ばらいを一つ。
「ごめんなさい。私が迷惑をかけたわ」
「全ッ然! むしろもっと来てほしかったくらいだわ!」
「あの子も照れてたみたい。でも、嬉しそうだったから……」
「また何か発明していたの?」
「いえ、そうではないの。どうして博士になったのか、私にもわからないわ」
以前も、眼鏡をかけた『ホムラ』になって戻れなくなったという事件があったが、今はそれぞれのほむらとコミュニケーションもとれるし、意志一つで戻れるので危惧はしていない。
とはいえ、勝手に変わったことは気になる点である。
「あの暁美さんたちは確か――」
異なる時間軸のほむらたちには、当然それぞれの世界があった筈だ。
魔法ではなく科学、それが博士のポリシーであり、彼女が開発した永久機関マウリッツエンジンは人類の歴史に残る革新的な発明であるとされている。
むろんそれが彼女のいた時間軸では必ずしも希望になったとは限らないらしいが。
「そういえばなんだけど、私たちは記憶を取り戻したでしょう? でも博士ちゃんのいた時間軸のことはほとんど覚えていないのよ」
言われてみればifの自分を召喚するということは、そう単純なものでもないのかもしれない。かずみが存在しているのだってゲームを続けた時間軸があったからこそ生まれたわけだし、もしも博士がいた時間軸のなかで何か凄まじいものが生まれていて、それが今となって何かしらの干渉を始めたからこそ、博士が呼応して出てきた可能性だってある。
「ディケイドが言っていたわね。別世界、それが時間軸と無関係ではないとしたら……? ごめんなさい巴さん。何やら嫌な予感がしてきたわ」
「ふふっ、大丈夫よ。みんながいるんですもの。きっとまた何とかなるわよ!」
「そう言ってもらえるとありがたいわ。何も起きないことを祈りましょう」
ほむらは残っていたサンドイッチをペロリと平らげた。
その日の夕方まで時間は飛ぶ。
夢を諦めた日はいつですか? たまたま見たバラエティーのテーマだった。
街頭インタビューではいろいろな人が、それぞれの終わりを語っていた。少し重いテーマではあるが、あくまでもバラエティーのトークテーマのネタなのでポップな編集で、悲観的なイメージはなるべく感じさせないようにしていた。
しかし、なぜだか上条はまったく笑うことができなかった。
スタジオではかつてプロサッカー選手を目指していたというミュージシャンが、笑いながらかつての挫折を語っている。
高校生の時は本気で目指していたし、ダメだと思った時はそれはもう悔しかった。でも大学生活でバンドを始めてからはそれが凄く面白くて、気づいたら音楽の道を歩んでいたと。
『そんなもんですよ人生なんて。生きてたら次の夢が出てくるんです。だから大丈夫、もし悩んでる子がいたら、いっそ諦めてしまうのも手かもしれません。そしたら次の目標が見えてくるんです。それがどういうものかは、まあ自分の目で確かめてみてね』
そう言っていた。そう言われた気がした。
上条恭介はそれをよく思い出す。今も夕暮れの河原を歩いているなかで、頭の中を言葉がグルグルグルと巡っている。
事故でヴァイオリンが弾けなくなった時は絶望したし、腕が治って弾けるようになった時には全てが上手くいくと思っていた。
しかしどうだ。なんだか最近、どうにも調子が悪い。
音が乗らない。はじめは入院時のブランクだと思っていたけど、どうやらそういうことではないようだ。
「……チッ」
先日、演奏会があった。
優秀なアーティストたちが集まるところに上条の姿もあったが、そこには蝉堂という少年の姿もあった。
上条は彼が苦手だった。なにかと突っかかってくる。
それは切磋琢磨するライバルなんて関係じゃない。少しでも足を引っ張ろうとする悪意の塊だ。
まあ、そういう類の人間には何度か会ったことはある。嫉妬や、一方的な恨みを向けられるのは今に始まったことじゃない。
その日、上条はかつてない不快感を覚えた。
自分の演奏中に何人かが席を立っていた。話し合ってる人間まで目についた。
だが蝉堂の時はどうだ。みんなが聞き入っていたのが雰囲気でわかった。
なによりも表情が違う。自分に向けられていた表情はというと、あれは同情だった。
事故でまだ腕が戻っていないのだろうという気を遣った人々。
だが上条はもう万全のコンディションだった。なのに音が乗らない。音が足りない。
『天才や神童と言われていたそうだが、そうした存在は実はそれほど珍しいものじゃない。メディアはお前くらいの人間が活躍していれば誰でも持て囃すものだ。大切なのはその腕を維持していけるかどうか。世辞の世界から抜け出した際に通用する腕があるかどうかだとは思わないか?』
ヴァイオリンを片付けている上条に、蝉堂がかけた言葉がこれだ。
激しい苛立ちはもちろんあったが、同じくして刺さるものがあった。
ヴァイオリンの腕は確実に蝉堂のほうが上だ。というより上条の腕が確実に落ちてきている。演奏技術的な面でもそうだが、なによりも足りないものがある。
それは、それは――……、それは、なんだ?
上条はまるで逃げるように会場を後にした。
パッションだの、普段ならあまり考えないことだが、やはり多くの演奏家が『魂』を重要視してきたゆえ、無視もできないだろう。
自分には何が足りない?
冷静に考えれば考えるほど見たくないものが見えてくる。
今まではずっとヴァイオリンしかないと思ってた。でも最近は、そうでもないのかと思い始めてきてる。
音楽が好きなだけで、他の楽器でもいいのかもしれない。それこそギターなんてかっこいいじゃないか。中沢に貸してもらったロックバンドのCDを聞いて、好きな曲もたくさん見つかったし。
「?」
ふと足が止まる。河原で楽器を練習していた女生徒が目についた。
見滝原の一年生のようだ。あまり上手くはなかったが、誰でもそういう時期はある。だから練習しているのだろう。
しかしその子が突然、楽器を落として歩きだしたのだ。
濡れるのも構わず川の中に入っていく。奥はそれなりに深い筈だ。
「何をしてるんだ!」
上条はカバンを放って女生徒を追いかけた。
バシャバシャと音を立てて近づくと、肩を掴む。
「こうすることが正解なのに、止めるんですか?」
「え? 何を……?」
「私は幼いころから楽器を演奏してきました。将来はプロの演奏家として海外で活躍するんです」
上条は動きを止めた。隣にいた美樹さやかは、上条を覗き込む。
「どう思う? 恭介」
「それは……」
上条は静かに笑った。
「まあ、そうだな。なら死んだほうがいいかもね……」
無音。無言。やがて、さやかが笑う。
「いいよ。わかった」
さやかは剣を生み出すと、それを振り上げて――
「キュエーッ!」
斧が、さやかの顔面に叩き込まれる。
めり込んだ刃を見て、上条はハッと我に返った。
飛び込んできたガルドストームはさやかを蹴り飛ばし、川の中に叩き落す。
上条はそこで全てを理解した。そもそも、さやかがここにいるわけがない。彼女はまどかたちと一緒に帰ったはずだ。
そして何よりも周囲の景色が変わっている。肩に触れた少女と、自分の首筋にあったのは、間違いなく『魔女の口づけ』ではないか。
「やってくれる……!」
首筋に爪を立てる。赤い痕が口づけを消し、偽物のさやかは川に溶けていった。
アイコンタクトを送ると、ガルドストームは少女を掴んで飛び去った。
同じくして上条の周り、水がうねり始めると、無数のピラニアが飛び出してくる。
しかしそこで黄金の光を纏ったデッキが高速で飛び回り、ピラニアを次々に撃墜していく。それは上条の周りを猛スピードで旋回した後、左手に収まった。
腕を旋回させて無限大のマークを描く。そしてすでに装着されていたVバックルへ持っていたカードデッキを装填した。
「……変身」
鏡像が二つ、旋回してきて肉体へ重なる。
ちょうど川から水しぶきをあげて魔女が飛び出してきた。
ハンマーヘッドシャークとクロスボウを融合させたような弓の魔女・ブノワーズだ。
サメ映画よろしく、大口をあけて一気にオーディンを飲み込んでみせる。
が、しかしすぐに気づいた。オーディンがすぐ傍にいる。食らいかかった一撃をワープで回避していたらしい。
オーディンは空から飛来するゴルトバイザーを掴むと、デッキから自動的にカードが抜かれてセットされていく。
『シュートベント』
雲が割れ、そこから一筋の光が川を照らした。
ソーラーレイ。激しい熱が川の水を蒸発させ、あっという間にブノワーズがむき出しになった。
だが、水がなくても問題ないらしい。多少スピードが落ちるだけで、もともと飛行能力が備わっていたようだ。
ブノワーズは舞い上がると、その頭部から矢を発射してオーディンを狙う。
しかしそれもワープで回避し、すぐに飛んできた二発目もワープで回避しつつ前へ歩いていく。
ブノワーズが三発目を撃とうとした時、空から火の鳥が飛来して直撃した。
爆発が起きて墜落する魔女と、オーディンのもとへ舞い降りるガルドサンダー。
『ファイナルベント』
バイザーを投げ捨て、飛び上がるオーディン。そこへガルドサンダーも追従する。
両足を突き出すと、そこへ火の鳥が融合。黄金のフェニックスが轟轟と燃え上がり飛行する。
ブノワーズもそれを確認すると大口をあけて突進していった。
二体がぶつかり合い――、すぐに、火の鳥がサメを貫いた。
ガルドサンダーの力を借りて放つ両足蹴り『エターナルフレア』が炸裂したのだ。
オーディンの着地と同時に魔女結界が崩壊していき、そこで変身を解除する。
「恭介! 大丈夫!? このスーパー魔法少女さやかちゃんが助けに来たからもう安心し――」
ダブルソードを構えたさやかが駆けつけて、目が合った。
さやかはキョロキョロと辺りを確認すると、やがて真っ赤になって変身を解除した。
「あれ……? 私は、何を……」
さやかが目覚めた少女に説明する。
楽器の練習中に気を失っていた。疲労か貧血が原因だろうから今日はもう帰って休んだほうがいい。そういうと少女はお礼を言って帰っていった。
「ごめんね、さやか。嘘を言わせて」
「なに言ってんの。これは不安にさせないための優しい嘘なんだから」
上条とさやかは大事そうに楽器を抱えて帰っていく少女の背中を見つめていた。
「あの子、助かってよかったね。さっすが恭介、頼りになるぅ!」
「あはは、からかわないでよ。僕が強いんじゃなくてオーディンの鎧が優秀なだけさ」
ふと、上条は少女が楽器を落とした所を見つめる。
「あの子、演奏の才能がないって嘆いてたみたいだ。もともと自殺願望がどこかにあったんじゃないかな。だからそこを魔女に突かれた」
「そうなんだ。かわいそうだけど、他にも道はあるのに……」
そこで上条は小さく笑う。
「そうだよね。目指した道を歩めないのは辛いだろうけど、死を選ぶくらいじゃない」
もっと小さく、呟いた。
「もう、ないのかもな。情熱なんて」
「え?」
「……なんでもないよ」
さやかを見れなかった。腕を治してくれた彼女に対する罪悪感があった。
でも仕方ないだろうと自己弁護。殺し合いに巻き込まれて未知なる力を与えられ、世界の秘密を聞かされる。その状態で何も知らなかった自分には戻れない。
生き残りたいと思う心が、かつての夢を曇らせた。
それは仕方ないことなんだ。きっと。たぶん。おそらくは。
「それよりどうしてここが? 鹿目さんたちと帰ったんじゃ……?」
「あ、うんっ! ジュゥべえが恭介の場所を教えてくれたの。魔女に襲われてるから助けてやれって」
「どうして彼がそんなことを……」
「さあ。なんか話したいことがあるから、参加者を集めてるみたい。一緒にいこっ!」
さやかは大きく深呼吸をすると、上条の手を取って走り出した。
『で、いきなり現れたテメェらはオイラたちに協力しろと』
妖精、ジュゥべえはうんざりした様子で話を聞きえた。
『ふざけんじゃねぇやい! なんでテメェらのゴタゴタを解決するために、オイラたちが力を貸さなきゃならねーんだ。こっちはゲームの真っ最中なんだぞ!』
「世界にとって有害な侵略者を倒すことは、お互いの利益のために繋がるだろう?」
『テメーらがその侵略者かもしれないじゃん? いきなり壁破ってきやがって。なんなんだよあの灰色のオーロラは』
知人の紹介で来たとゼノンとフルーラは説明したのだが、ジュゥべえからしてみればサッパリである。
「ボクらは別にゲームを止めようだなんて思ってないさ。ただ少しばかり力を貸してほしいだけで」
『しかしメリットがねぇ』
ゼノンたちが抱える戦士たちのレベルを上げる装置になってほしい。
それだけでなくジュゥべえたちが持っている戦力を使わせてほしいだなんて実に欲張りな提案である。
「もちろんタダでなんては言わないよ。フルーラ」
「はーい!」
フルーラは可愛くラッピングされた箱をジュゥべえの前に差し出す。
『ん? なんだこりゃ』
ジュゥべえが爪でバリバリ包みを破って箱を開けると、綺麗に並べられたお菓子がこんにちは。
「おまんじゅう」
『饅頭だぁー? 馬鹿かテメェら。インキュベーターがンなモン食うわけね――……って、あら?』
ジュゥべえが饅頭の一つを手で避けると、何か下のほうに――
『あ、あら? あらら? あぁぁ、ららら』
饅頭の下には小判型に生成された宇宙延命のエネルギーがビッシリと並べられている。
『あらぁ……』
「どうかな? ボクらのお饅頭は」
『……とーっても美味しそうなお饅頭。オイラ、お饅頭大好きっ!』
ジュゥべえはそう言って箱を背中のほうに回した。
『はい、美味しそうなお饅頭いただきました! はい、もう頂いちゃいましたッ!』
「受け取ってもらえる。ということかな?」
『何をすりゃいいって?』
「技術を提供してくれるだけでいい。ボクらは早急にレベルアップ装置の中身を用意する必要がある。それをいちいち作っていては、桜花が死ぬ前に間に合わない」
「原理は志筑仁美が使うコネクトと同じよ。召喚体が死んでもデータが壊れるだけで、実際の肉体には影響はないわ」
『なるほど。それなら、まあ……』
「あとひとつ、ボクらがココに来たのは同僚の紹介からと言ったが、それだけじゃない。キミたちが現在使っている龍騎、そして未来で使う鎧武はコチラ側の技術でもある」
同じ『色』があるからこそ、ゼノンたちも今、こうして居心地よく過ごせるわけだ。
「まさかキミたちも自分たちが使っている駒がどこから来たのか、把握していない訳じゃないだろう?」
『まあ、神崎と魔獣との話し合いに、先輩はいたからな』
「クッションが広いのは素晴らしい。ボクらが座るクッションが」
ジュゥべえの表情が変わる。
ゼノンが何気なく口にした言葉に深い意味を感じ取ったようだ。もちろんゼノンもそのつもりで言っているのだが。
「もう一つ、おまけの情報を提供しよう。きっとまだキミたちも知らない情報をコチラが掴んでいる」
『どういう意味だ?』
「城戸真司と葛葉紘汰以外にキミたちの世界にはまだ未知なる騎士が潜んでいるということさ。数はわからないが、一人くらいは引きずり出せる」
『ほう。ありがたいね。そりゃ』
交渉成立だ。ジュゥべえはエネルギーの小判を吸収して即座に適応させていく。
一方で、ずっと沈黙を保っていたキュゥべえが目を光らせた。
『キミたちは何をしているんだい?』
「?」
『そちらにも龍騎はいるよね。でもそれは城戸真司じゃない』
「条戸真志だ。ボクらが選び、創った龍騎だ」
『中身を見せてもらったよ。城戸真司と同じエネルギーが流れているが――』
「クロスオブファイア」
『そう。そのクロスオブファイアの量が少ない。わざわざ劣化品を量産させて、何がしたいんだい?』
「フッ!」
ゼノンはハットを整え、歪んだ笑みを見せる。
「キミたちインキュベーターは神崎からデータを受け取り、ゲームを開催した。いわばそれは、"カットアンドペースト"だ。そしてそれが可能であるということは、世界なんてものは所詮PCとそう変わらないんだよ」
データであるということは、その成分を解析できるということだ。
「モノはいずれ劣化していく。花はやがて枯れるだろう。だがまだ開花していない蕾をバラの花よりも美しくないというのはおかしな話だ」
それに、と、ゼノンは人差し指を立てる。
「品種改良は、繰り返すことに意味がある」
『なるほど』
「フフフ、それじゃあまた連絡させてもらうよ」
そう言ってゼノンとフルーラは帰っていった。鼻を鳴らすジュゥべえ。
『ありゃ絶対悪いやつだね。先輩、貰うモノは貰っておいて、無視しちまおうぜ』
『いや、コチラにデメリットはない。交渉のための品ももらったし、協力してあげようじゃないか』
『流石先輩! 器がでっかい!』
余った本物の饅頭をムシャムシャ食らいながらジュゥべえは耳で拍手をしていた。
そして今に至るわけだ。廃教会に集められた参加者たちはバラバラに座っている。
『まあ、つーわけで、お前ら、な? よろしく頼むわ』
「イヤよ」「嫌です」
シザースペア。
「くたばりなさい」「失せろ」
ライアペア。
「あ? 殺すぞ」「殺す」
王蛇ペア。以下、似たような意見なので省略。
死ね、消えろ、クソ運営。様々な怒号が飛び交い、ジュゥべえは固まる。
「おい、何とぼけてんだ、ケツみてーな口しやがって。マグナム眉間にブチ込むぞ」
『酷すぎだろ神那ニコ。つうかオメーらマジなんなんだよ。ちょっとはオイラの意見を聞けよ』
「そうだよみんなぁ、ジュゥべえがかわいそうだよ!」
まどかが困り顔で、ジュゥべえを庇うように前に立った。
『流石だよ鹿目のまどかちゃんは。他のカス共と違って話が分かる』
うるせー! 黙れーッ! 再び怒号が飛び交い、ジュゥべえは耳をふさぐ。
「いくらなんでも勝手が過ぎると思わないの?」
織莉子の言うとおりである。
魔法少女になれ。次は殺しあえ。次がいきなり見ず知らずの高校生たちに協力しろ。
しかも今回、説明の内容が――
『あー、今からミニゲームはじめっから。オイラたちはゲームキャラになってぇ、高校生の遊びにぃ、付き合うかんじぃ? みたいなぁ? やばくなーい?』
あまりにも適当である。不満の声が出てくるのは仕方ない。
『いいじゃねぇか、テメェらにデメリットねぇだろ! 特訓だよ特訓!』
たとえ致死量のダメージを受けてもデータ態なので死にはしない。それでいいではないか。なにをグチグチと文句を言ってるのか? ジュゥべえには理解できなかった。
『ましてや未曾有の侵略者から己の身を守ることができる。最高だろうよ』
「ていよく使われてる気がするのです!」
『バッキャロー、なぎさバッキャロー。一番はな、困ってる人を助けたいという純粋なオイラの想いだよ! それをおまっ! バッキャロー……』
ふざけんな。帰らせろ。
周りがギャーギャー騒ぐなか、やけに澄んだまどかの声が聞こえてきた。
「困ってる人がいるなら助けたいな。それが、わたしが魔法少女になった理由だもん」
「俺も俺も。騎士になったのは、みんなを守るためなんだから!」
「なんというか解釈一致ではあるものの、ぉぉ、まどか様ァ! 我が親友ながらまぶしーッ!」
「そうだ城戸、考え直せ! お前らの甘さにつけ入る気まんまんだ。見てみろあいつの顔を!」
ジュゥべえを見ると、ちょっと口を突き出して首をかしげている。
「くそっ、どういう顔だあれ……! とにかくむかつくな! わかるだろ? ろくなこと考えてない!」
北岡のいう通りかもしれない。
真司の表情は歪んだが、まどかは相変わらずキラキラとした目で参加者たちを見ている。すると隅のほうに座っていたユウリが勢いよく立ち上がった。
「いいじゃない! 予行練習! どうせ全員殺すんだから、その前に一度合法的にヤれちゃうわけでしょ、イレギュラー」
「おいユウリ!」
榊原の叫びを無視し、ユウリは参加者たちに銃を向ける。
「ユウリ様と遊びたいヤツは一緒に行こう? それとも尻尾を巻いて逃げるわけ?」
そこでユウリは指で何かを挟み取る。
眼球めがけて猛スピードで飛んできたのはポッキーだった。
「上等だ。殺してやるよ」
ニヤリと笑う杏子に釣られてユウリも同じ顔をしながらポッキーを齧った。
杏子は浅倉を見る。言葉は返さなかったが、少しだけ笑った。
『それでいい。善悪を超越した戦いにこそ、テメェらの意味が出てくる』
こうしてフールズゲームの技術がゼノンたちに提供されたのだった。
そして今に至る。
異なる世界の技術を使用して作られたガシャット、フールズゲーム・エボリューション。
五人一組のチーム戦で、未来の騎士や魔法少女のデータも注ぎ込み、究極のレベルアップを目的とする。
「まどか☆マギカ……、だとッ?」
椿は汗を浮かべ、肩を震わせていた。
「……? 椿、なんだそれは?」
すると、椿はゆっくりと顔を咲夜に向け――
「まどマギww知らねぇwwとかww! んんww! にわかかよカス女、出直して来いザコ!」
「一つゲームをしようか。私がお前のケツを蹴り、どんな悲鳴が出るのかを当てるゲームだ」
「―――」
え?
「アオタァアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!!!!」
「わかるわけねぇだろ」
司から大きなため息が漏れた。
こんなのにいちいち付き合っていたら時間がいくらあっても足りない。
『チーッス。オイラはジュゥべえさ。出てきたキャラクターの説明をしてやるよ。お前が引き当てた
「……なるほど。よろしくね鹿目さん」
「はいっ! よろしくお願いします!」
仕組みは理解した。司は残りのボックスのボタンを連続で押していく。
一斉に現れる戦士たち。まずはチェック柄のシャツにオレンジ色のダウンを着た青年が着地した。
「お! 俺にお呼びがかかったみたいだな!」
『コイツは未来の騎士だな。
「鎧武……?」
司は、鎧武は知っているが紘汰は知らない。するとゼノンがニヤリと笑う。
「ま。本物さまだよね」
「レジェンドライダーってことか! へ、へへーッッ!」
頭を垂れる司。ライダーファンとしてレジェンドは雲の上の存在。
敬わなければならないというのがポリシーだ。ともあれ今は一緒に戦う仲間であり、司は『リーダー』なのだから、そこはしっかりせねばなるまいが。
「へへ、よろしくな司」
「よ、よろしくお願いします」
すると鈴の音が聞こえてきた。銀髪の少女が司を睨む。
「……よろしく」
「あ、ああ。よろしく」
突き刺さるような視線だ。すぐに説明を行うジュゥべえ。
『
あと一人。スカイブルーのダウンに赤いシャツ。
城戸真司は、白い世界に降り立つと、司と目を合わせる。
「あれッ、司くん! どうしたの、久しぶり!」
「真司さん!」
『ん? なんだテメェら? 知り合いか?』
いや、それはおかしい。ジュゥべえは司を知らない。
門矢士ならば知っているが、聖司など聞いたこともない。
箱庭に封じられていたはずの真司が、なぜ運営が知らない情報を知りえるだろうか。
すると、ゼノンがわざとらしく鼻を鳴らした。
「キミはまだ、世界の可能性というものを理解していない」
『?』
「"パラレルラトラパンテ"。まあ、いずれわかるさ」
『ケッ、ますます胡散臭い野郎だぜ』
まあいい。ジュゥべえは大きく咳払いをして、司たちを黙らせる。
『うし! つーわけで!』
まどか。真司。紘汰。すずね。
『そしてリーダーである司! テメェら五人がチームってわけだ! 仲良くしろよ!』
マギアレコードに七瀬ゆきかっていう魔法少女がいるんですけど、声優さんが仮面ライダーファンならおなじみの鷲見友美ジェナさんということでね。
鎧武コラボですね(適当)
まあ、よくないんですけどね、あんまりこういうのは。
でもね、やっぱりドラマとかでもね、ライダーで見ていた俳優さんとかが出るとね、テンション上がっちゃいますね。
オタクなんでね。ごめんなさい。ゆるして……(´;ω;`)