Episode DECADE×FOOLS GAME 桜花ルート5034   作:ホシボシ

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第8話 変身者たち(後編)

 

直接殴り合うだけがレベルアップの方法ではない。

ジュゥべえは次のステージを準備すると、一旦ゲームを打ち切った。

焦る気持ちはわかるが体調を万全にするのは大切だ。

というわけで、食事休憩の場が設けられることに。

 

 

「うぉ!」

 

 

司は思わずのけぞった。

真っ白な空間だと思っていたら、突如ニュッと、本当にニュッとレストランが『生えて』きたのだ。

看板には『Walnutω』とある。

 

 

「あっ、お尻だ」

 

「おしりが書いてある……」

 

 

椿とニコがボソっと頭の悪いことを口にしたが、一同は無視してレストランの中に入っていった。

仮想世界の筈ではあるが、なんだか建物を見ていたらおなかが空いてきた。

中に入ると、まず緋色の髪の女の子が目についた。

既視感。笑う口が、看板にあった『ω』にそっくりだ。きっとあれは彼女のことを表していたのかもしれない。

 

 

「いらっしゃいませ参加者の皆さん! 私はこのウォールナッツの総料理長。胡桃(くるみ)まなかと申します! とびきりおいしい料理をたくさんご用意しましたので、心行くまでお召し上がりください!」

 

「料理長ぉ? チビガキの作った飯なんて美味いのかねぇー?」

 

 

人間性を疑う発言は北岡のものだ。

一同がそれぞれ引いている中、まなかはむしろ自慢げな笑みを浮かべる。

 

 

「そう思うのも無理はありません。ですので、その舌で確かめてもらいましょう!」

 

 

まなかが指を鳴らすと、奥からムスっとした表情のウェイトレスさん、水波(みなみ)レナが出てきてオムライス、サラダ、スープを乗せたキャスターワゴンを押してくる。

 

 

「水波さん。丁寧にお願いしますよ」

 

「わかってるわよ。まったく、どうしてレナがこんなこと……」

 

「はいはい。お客様の前で文句はなしです。後で甘くて美味しいあんこパフェを作ってあげますから」

 

「本当でしょうね。嘘だったら承知しないんだからっ!」

 

 

ツンギレウェイトレスさんは誰とも目を合わせず、料理を運んでいく。

まなか自身も手伝って、あっという間にみんなの前にオムライスが到着した。

北岡は訝しげな表情を浮かべながらスプーンで、ひとつ掬うと、匂いを確認してそのまま口に運ぶ。

 

 

「!」

 

 

そして目を見開いた。

 

 

「こ、これは……!」

 

「ど、どうしたの先生!」

 

「めぐみの作ったパスタの六億倍は美味い……ッッ!」

 

「六億!?」

 

 

友情のために口にすることはなかったが、吾郎の料理にも匹敵――、いやそれ以上であると思ってしまった。

いずれにせよ北岡が言うのならば信頼できるのか、みんなバクバク食い始め、すぐにうまいうまいと聞こえてくる。

 

 

「むふーっ!」

 

 

満足気に胸を張るまなか。お口がとっても『ω』になっている。

オムライスだけではなくスープも美味しいし、サラダもドレッシングが他とは違う。さらに一緒に出されたティラミスも絶品ときた。

これにいち早く反応したのが、凰蓮だ。プロのパティシエから見てもスイーツのレベルは高い。

司は気になって、聞き耳を立ててしまう。

 

 

「あら! 神浜に本店が?」

 

「ご存じですか?」

 

「ええ。傭兵時代の友人がメイド喫茶をやっていて」

 

(傭兵――、メイド喫茶……?)

 

 

気になったが真司が口を開いたので、意識がそちらのほうに集中する。

 

 

「それにしてもさっきの真志くんのあれ、凄かったよな」

 

 

座席はグループごとに固まっている。

拓真なんかは死んだような表情でオムライスを食べる――、ことすら許されていない。

杏子と浅倉に奪われるようにしてバクバク食われていた。

その点、司のグループの雰囲気はいい。まどかはオムライスが美味しかったのか、口にたくさん詰め込んでいるから言葉が出せず、コクコクと頷くだけだった。

 

 

「見たところ複数のライダーシステムを合わせてるみたいだった」

 

 

紘汰も戦極ドライバーとゲネシスドライバーという複数のシステムを使用しているが、ロックシードという点で見れば共通している。

しかし先ほどの龍騎は、それこそ世界を超えた技術を使用していたように思えた。

 

 

「リジェクションが起きてなかったら……」

 

 

司はそんな言葉を漏らす。

真志は『何か』から逸脱しようとしている。今のところ美歩やかずみと楽しそうに喋っているが、ふとした時、笑顔が消えて目つきが変わる。

遠くを見ているようだ。果てしない向こう側を睨んでいる。

オムライスの進みも早い。半分以上食べている。司はまだ半分もいっていない。

美味しいが、こうレジェンドに囲まれていては、という思いがあったからだ。

でも真志は違う。当たり前なはずなのに、司は大きく怯んだ。

きっと真志は自分よりも答えを先に出す。そう思った。

それが怖いのか? 焦っているのか? 司はよくわからなくなって、真志から目を逸らした。

 

 

「ッ」

 

 

すると前にいた鈴音が目に入った。

今は戦いじゃないのだから、魔法少女たちは変身を解除して私服姿である。

鈴音はボックスから出てきた時点で変身済みだったので、変身を解除した姿は初めて見た。

シンプルなものだ。下はジャージのハーフパンツで、上はたった一言『こんびーふ』と書かれた白Tを着ている。

 

……いじってほしいのだろうか? そんなキャラには見えないが。

しかも紘汰や真司たちも、一切触れずにスルーである。

何より鈴音も涼しげな顔をしていた。

もしかしたら彼らの世界ではおかしな服ではないのか? そもそもよく見たらシンプルでいいじゃないか。

ダサいとか、ダサくないとか、そういう物差しでは、本当のおしゃれというものは語れないのでは?

 

そうだ。

そもそも司だって服に詳しいわけじゃない。

言われるがままに真志やユウスケに勧められたものを着ていただけだ。

そういう意味では、鈴音のように着たいから着ているのだと思われる行動のほうが、はるかに高尚であり――

 

 

「………」

 

 

鈴音は全て食べ終わるとスプーンをおいて立ち上がる。

 

 

「んぉ? どこ行くんだ? みんなと喋ろうぜ」

 

「興味ない」

 

 

鈴音が踵を返す。司は見た。鈴音の白Tの背中側に書かれていた文字を。

 

 

『ごちそうさまでした』

 

「……? …? ………。……! っ、っ……? ? ッ!? ッ、…ッ…?」

 

 

………。

 

 

「ださくない?」

 

 

その後もカチャカチャとスプーンが皿に当たる音が聞こえてくるが――

 

 

「すいませーん、おかわりくださーい!」

 

 

手を上げるかずみ。しかし、まなかは困り顔だ。

 

 

「も、申し訳ございません。材料の都合上、一食分しか用意できていないのですよぉ」

 

「そっかぁ、じゃあ残念だけど……」

 

「ピザでも頼めばいいじゃん。この前お店に入ってたチラシ、レナまだ取ってあるけど」

 

「ピ、ピザですかぁ?」

 

 

レストランでピザを頼むなんて聞いたことがない。

とはいえ、指定された量の食材しか持ってこなかった点は、まなかとしては反省点である。

おかわりの可能性は考えておくべきだった。彼女にとって一番重要なのは店の味に満足してもらうことだが、同時にお客が最高に幸せな状態で店を出てもらうということがある。

 

 

「ですが、そもそもここは異世――」

 

「ふぅ↑ チャーリオース! ドラドラピザですあァーッい↑↑↑」

 

「うそぉ!?」

 

「あ! こっちこっち! そこの黒髪の女の子にあげちゃって」

 

「了解ですしおすしぱるしフゥー↑ あーいッ↑↑ こちらマックスフレア、ファンキースパイク、ミッドナイトシャドーのMサイズ三枚セットですフゥーッッアッ!」

 

 

真っ赤なトマトソースに、とろけるチーズ。少しピリ辛のホットチキンと、チョリソーが乗ったイチオシのマックスフレア。

スパイシーなグリーンカレーをベースにしたファンキースパイク。

ニンニクとオリーブオイルにつけた香ばしい揚げナスがたっぷり入ったアンチョビをきかせたミッドナイトシャドーの三枚が、かずみの前に置かれる。

かずみがうまいうまいとバクバク食べている間に、店員は司のもとにくる。

 

 

「ふぅ! 司さんお久しぶりですあーい! 4600円ですフゥ↑↑↑」

 

「あ、俺が払うんだ……」

 

「あーい↑↑↑ デシッッ」

 

「でし?」

 

「ディシィッッッ」

 

「は?」

 

「司さん凄い! ピザ屋さんと知り合いだったんですか?」

 

「知り合いっていうか……、凄いかなぁ」

 

 

司が金を払うと、ピザ屋はトライドロンに乗って帰っていった。

こうして一同は食事を堪能して、レストランを後にする。

残ったレナとまなかが、片づけをしていると、黄色い髪の少女が入ってきた。

 

 

「よーっす」

 

 

十咎(とがめ)ももこ。このウォールナッツで雑用を中心として働いている。

ちょっとした用事で出ていったらしく、その報告を手早く済ませていった。

 

 

「ところでさ、まなかから聞いたんだけどさ。やっとウェイトレスの制服着たんだって?」

 

「は?」

 

 

レナは不機嫌そうに腕を組んでそっぽを向いた。今の彼女は私服である。

 

 

「どうして自撮り送ってくれなかったのさ」

 

「いちいちそんなもん撮るわけないでしょ。レナ、ナルシストじゃないんだから」

 

「ばっちり撮ってたじゃないですか。しかもポーズも試行錯誤しながら何パターンも。しかもしかもブロッサムのほうにはちゃんと送ってたでしょう? しかもしかもしかも」

 

「まぁーなぁーかぁー……ッッ!」

 

「これは失礼。でも何を怒ることが? 似合ってましたよとっても」

 

「……へ?」

 

「なんだよぉ、いいなぁー、かこちゃんたちに見せたんならさぁ、アタシにも見せてくれてもいいだろー?」

 

「あれはッ、向こうが送れってうるさいから! 仕方なく……!」

 

「頼むッ、お願い! アタシにもッ! 水波様ッ!」

 

「………」

 

「やれやれ、さっさと見せればいいのに」

 

「まなか!」

 

 

レナは携帯を取り出すが、明らかに躊躇を見せる。

 

 

「……笑わない?」

 

「笑うわけないだろ!」

 

「絶対?」

 

「あたりまえだって!」

 

「じゃあ、はい。勝手に見れば?」

 

 

ももこに見せようとするが、手をすぐにひっこめる。

 

 

「やっぱり待って!」

 

「くどい」

 

 

ピロンと、まなかが持っていた画像データを送信した。

 

 

「ちょっと!」

 

「うおぉぉ! かわいいぃい!」

 

「……え?」

 

「めちゃくちゃ可愛いじゃんかレナ! 全然ビビることないのに!」

 

「ほ、本当にかわいい?」

 

「もちろん!」

 

「どれくらい? か、彼女にしたいくらいが80点だったら――」

 

「激めんどくさいですね……」

 

「まなかッッ! キレるわよ!」

 

「もうキレてますよ……」

 

「まあまあ。ところで、それって何点満点中?」

 

「……ひゃく」

 

「じゃあ120点で!」

 

「………」

 

「あれ? 微妙な表情」

 

 

きょとんとするももこ。レナは不満げに腕を組む。

 

 

「うそくさ」

 

「うわーぉ、鬼めんどく――」

 

「ま・な・かッッッ!」

 

「ひぇ」

 

「あはは! ごめんごめん。でも本当に可愛かったよ。な? まなか」

 

「それはもう! もう少し愛想をよくすればすぐにウォールナッツの看板娘は確実です! レナさん目当てにお客さんも来るかもしれないので! ぜひ前向きに検討をお願いしますね!」

 

「ん」

 

「さてと。じゃあそろそろ行きますか」

 

 

ももこがレナとまなかを背を叩く。レストランが消え、三人は歩き出した。

 

 

「………」

 

 

レナはももこの背中を見ながら、もう一度自分の携帯に保存してある自撮りを見る。

 

 

(……120点)

 

 

レナは顔を綻ばせ、二人の後をついていった。

だが、しかし、すぐに不満げな表情になる。

 

 

(なによ。20点しか上限超えてくれないんだ)

 

「………」

 

 

まなかは振り返ってレナの表情を見ていた。

たぶんまた、極(ごく)めんどくさいこと考えてるんだろうな。

そう思ったし、極正解である。

 

 

 

 

 

「第二試合! クイズバトルーッ!」

 

 

キラキラのスーツに身を包んだ神那ニコがマイクを持っている。

 

 

「司会は私、神那ニコと、アシスタントは隣にいるジュゥべえさんです!」

 

『ジュゥべえです。よろしくな!』

 

 

さっきまでバトルフィールドだったものは、今はテレビのクイズバラエティーのようなセットになっていた。

そこに先ほどのチームが集まり、それぞれ回答席に集まっている。

 

 

「なん、だ、これ……?」

 

 

司が呟くと、ニコが指を鳴らす。

 

 

「肉体的な強化は先ほどのゲームで行われた。今回はスキルを重点的に強化したい。今からいくつか問題を出すから、わかったらこのボタンを押してほしい」

 

『さやカァス!』

 

「このようにボタンを押したら」

 

『さやカァス!』

 

「音がなるから、早押しで」

 

『さやカァス!』

 

「では第一問!」

 

「待て待て待て! いくないくないくな!」

 

「え?」

 

「いや次にいくな! おい! 誰だ? ボタンSE設定したヤツ誰だ!?」

 

「………」『さささささささささささやカァス!』

 

「連打すんな!」

 

『さやさやさやさやさ・さ・さ・さ・さやカァス!』

 

「テンポよく押すな!」

 

「あー、もういいだろ。いくよ?」

 

 

よくねーよと聞こえてきたが、ニコは咳ばらいを一つ。

 

 

「というわけで第一問!」

 

『さやカァス!』

 

「ほへ?」

 

 

ニコは一度問題から目を離し参加者を見て、再び問題を見て、もう一度参加者を見る。

見間違いかと思ったが違う。しっかりと拓真の前に赤いランプが点灯していた。

しかし問題があるとすれば――

 

 

「えーっと、なにを……」

 

「何をもクソもあるか。早いほうがいいんだろ? ほら、答えな」

 

「……でも、問題が」

 

「間違えたら殺す」

 

「すぅー……」

 

「殺す」

 

「………」

 

「………」

 

「はい、じゃあ拓真リーダー、答えをどうぞー」

 

「あの、ヒントとかって」

 

「んー、まあ、一般人が思っている以上に高い」

 

「……富士、山」

 

「ブブー! はずれー。正解はポケモンカードでした。あ、拓真さんが殺されてる。かわいそう」

 

 

拓真がしばかれていると、浅倉がニヤリと笑って席を離れる。

 

 

「アァァ……、祭りの場所はここかァ?」

 

「ちがいまーす!」『ミキ・さやカァス!』

 

 

ニコが手にしたボタンを押すと鎖が発射されて浅倉を縛り上げて、強制的に元の場所に戻す。

すると拓真たちがいた場所に大きな穴があいて、彼らは悲鳴と共にどこかに落ちていった。

 

 

「……あの、一つ、いいですか?」

 

「ん、なんでしょう司の兄貴」

 

「彼らはどこへ……?」

 

「深い闇の中」

 

「あの、あたしからも、いいでしょうか?」

 

「はい美樹さん。なんでしょう?」

 

「ミキ・サヤカス、とは?」

 

「……続いての問題ッ、でんがな!」

 

「おいッ!」

 

「いきまっせよ第二問! 魔法少女がグリーフ――」

 

『さやカァス!』

 

「はい! 天王路双護! 早い! しかしいいですよ。これが早押しの醍醐味! ほな、どうぞ!」

 

「サラダバー!」

 

「残念! 深読みしすぎたか! サラダバーは違う! え? ん? でもどういうルート? 今の文脈からサラダバー導ける要素あった?」

 

「くそッッ!」

 

「ま、いいか。ではもう一度最初から。魔法少女がグリーフ――」

 

『さやカァス!』

 

「おっと! また? 誰……!? おっとまた天王路双護!? お手付きはマイナス20ポイントですが?」

 

「構わん。答えはニラレバ・マイナス2だ」

 

「残念! ちがいます! 大きく違います!」

 

「クソッッツ!」

 

「確認したいんだけどさ。この世にあの答えが正解になる問題ってある? まいいか。いいか? いいか。では問題です。魔法少女がグリーフ――」

 

『さやカァス!』

 

「………」

 

「東京スカイツ――! 違う! 乳しぼりミルク牧場!」

 

「さっきから何と間違えてんの!? ちげぇわ聞けよ! 一回問題を聞けよ! なんの自信だ! なんでその答えになる!?」

 

「クソォオオオオオオオオオ!」

 

「どういう感情で悔しがってんだ! 次やったらマイナス一億だかんな! はいじゃあ今度こそちゃんと問題を聞いてください! 魔法少女がグリーフシ――」

 

『さやカさやさささやカァス!』

 

「そろそろ手ぇ出しそう! はいどうぞ双護はんッッ!」

 

「……いやッ、ちょっとまだそこまでだとわからないなぁ、さすがに。もっと問題を聞かないと」

 

「オラァッ! 死ねぇーッ!」『ミキ・さやカァス!』

 

 

落下していくカブトチーム。これは、やむなし。

 

 

「ついでにほォオい!」『ミキ・さやカァス!』

 

「うわあああああああああああ!」

 

 

落下していく響鬼チーム。

 

 

「や! え!? なんで落とした!?」

 

「なんとなく」

 

「嘘だ!?」

 

「本当だよ。ニコちゃんてば、たまにこういうことするから気をつけてなマジで。じゃあ次の問題にいくわ。三問目かな? ででん!」

 

 

ニコが指を鳴らすと、いきなりステージが外になる。

草原にあるのは三メートル程のロケットだ。そしてそこに、ジュゥべえがくくりつけられている。

 

 

『ほにゃ?』

 

「アシスタントとして今まで仕事がないと思ってただろ。あるんだよ、これが。というわけで今からコイツを飛ばす。何メートルでロケットにガタがきて爆発するか答えよ」

 

『おいテメェ! ふざけんなガチで! おかしいと思ったんだよ突然アシスタントとして立ってろって! おい! 聞いてんのか神那ニコ!』

 

「何? 仕方ないよ。問題なんだから」

 

『なんにも仕方なくねーわ! そもそもロケットの飛行距離を問題にするならオイラを縛り付けておく必要がないだろうがぁああ』

 

「確かに正論だ」

 

『おう!』

 

「………」

 

『………』

 

「………」

 

『はずせよ!』

 

「はいフリップ一斉にオープン!」ドン!

 

「ディケイドチームは、1kmだ!」

 

「クウガチーム、4km」

 

「ブレイドチーム、28km」

 

「電王チーム13500km!」

 

「龍騎チーム8km」

 

「キバチーム14km」

 

『なんで普通に答えてんだよ。おいマジでッ、ガチで! おい! ざけんな! おいなんかカウントダウン聞こえてるぞ! おい外せまじでニコ!』

 

「ほな、正解はこちらです。ぽちっとな」

 

『おい! ちょ! まじふざけ――ッッ!』

 

 

ロケットから炎が噴射されたのは一瞬。

すぐに消え、代わりに噴射口からドリルが伸びてきた。

ギュイイィイイイィン! けたたましい音を立てながらロケットが地面を掘って沈んでいく。

一同の顔の向きが、上を見ていたのから次第にゆっくりと下を向くようになる。

そしてしばらく掘り進めていると、やがて地下深くから爆発音とジュゥべえの悲鳴が聞こえてきた。

 

 

「テメェにゃ空じゃなくて地獄(そっち)が似合いだよ」

 

 

ニコは険しい表情で穴の中を見つめて、そう言った。

 

 

「はい、というわけで空には上がらなかったので、正解は0でした!」

 

「わかるかーッ!」「いんちきだ!」「なんだよコレまじで!」

 

「差が一番大きかったチームをほいしょーッ!」『ミキ・さやカァス!』

 

「やめてぇえええええええええ!」

 

「おぃ、せめてあたしは最後まで残しとけよーッッ」

 

 

落下していく電王チーム。さやかが何かを言っていた気がするが、ニコはそういうの気にしない。

 

 

「……ふぅ。では次の問題です! 今日の私の朝ごはんは何!」

 

「なん――ッ! え? わからな……。まあいいか」『さやカァス!』

 

「はい。司くん!」

 

「……コーンフレーク!」

 

「ぶっぶー!」

 

「司、浅いわそれは」『さやカァス!』

 

「うん? 守輪椿くん。わかったのかな? どうぞ!」

 

「食ってない!」

 

「なるほどー。でも違う! 食べました!」

 

「ハニートースト!」『さやカァス!』

 

「違う」「ふりかけごはん」「違う」「ステーキ」「まさか」「うどん」

「惜し……、くはないか」「そば」「全然」「ホットドッグ」「ノー」

「おかゆ」「爺かよ。高見沢じゃねんだよ」「それは言い過ぎだよ」「ごめん」

「パリッとしたウィンナー」「下ネタか! え? 違う……? やべっ、滑ってる。空気終わってる」

「わかった! 納豆!」「ニチャァァ……!」「いやどっちだよ! 正解か?」「はずれです」

「魚」「広すぎだろ。絞って」「ブルーギル」「なんでそっちに絞った。せめて鮭とか……、まあいいや」

 

 

笛を吹くニコ。タイムアップだ。

 

 

「正解はブルターニュ産オマール海老のゼリー寄せ、世界三大珍味が織りなす風と、季節の野菜のムースを添えて。でした」

 

「わかるわけねーだろ! ふざけんなッッ!」

 

「適当に問題つくってんじゃねぇーッ!」

 

「うるせぇええええ! 私がルールなんだ! 絶対なんだーッ! おーん、なんだ芝浦その目は。押しちゃうぞー!『さやカァス!』 はい押したーッッ!」

 

「おあああああああああああああああああ」

 

 

落下していくクウガチーム。

 

 

「いい加減にしろよなんなんだよこの時間は! まだ一回もまともなクイズやってねぇじゃねぇか! どうなってんだ!」

 

 

椿がブチギレていた。なるほど正論であるとニコは強く頷く。

 

 

「でも、さようなら」『ミキ・さやカァス!』

 

「おいぃぃぃぃいいいい!」

 

 

落ちていくブレイドチーム。ニコはサムズアップで見送る

 

 

「なんで落とした!」

 

「ノリ」

 

 

残りは三チーム。龍騎チーム。キバチーム。ディケイドチームである。

 

 

「残念ですがここでランダムに一チーム消します」

 

「なぜだ!?」

 

 

あまりにも何故かわからなかったのか、思わずリーダーではない戒斗が口を開いた。

 

 

「なんでも」

 

「『なんでも』はなんでだと聞いている!」

 

「だって二チームのほうがわかりやすくていいじゃん」

 

「サイコか貴様は!」

 

「ニコニコにこちのいうとおり! ん・り・ん! ぴ! ピッ! はい決定さよなら龍騎チーム!」

 

「どぉぉいう決めかたぁぁあああぁぁあ」

 

 

消えていく真志や戒斗。いつの間にか、本当にいつの間にやら次が最終問題である。

 

 

「問題! なぜ空は青いのでしょう」

 

「「………」」

 

 

亘と司はわずかに視線を交差させ、そして亘が先に動いた。

 

 

「はい」『さやカァス!』

 

「はい聖の弟のほう。どうぞ」

 

「みんなの心の色がきれいな青だったから、それが世界を包む色ならいいな。なんて。へへっ!」

 

「ガーチで意味わからん。え? 普通にきもくね?」

 

 

亘は本気でヘコみはじめたが、そこで彼のチームメイトが声をかけはじめた。

 

 

「亘おにいちゃん! ゆまはとってもいい答えだったとおもうよっ!」

 

「うん! とってもロマンチックで素敵! ね、千里」

 

「はい。私もそう思います。すごく詩的で。メリッサさんはどう思う?」

 

「いいと思います! 私たちの色も青ですからね。奇麗だなんて嬉しいです!」

 

「えーっ! 本当ですかー! いやぁ、そう言ってもらえると助かっちゃうなぁ! うへへへ!」

 

 

それが亘の最後の言葉だった。深い穴の奥から深い悲鳴が聞こえた。

 

 

「優勝! ディケイドチーム! おめでとうございます! 司さん! 何かいうことありますかい?」

 

「勝った気がしません」

 

「また謙遜を! いずれにせよ大量経験値獲得です! おめでとう!」

 

 

レベルアップの音声が何回も繰り返される。

こんなんでいいのか。こんなもんなのか。

そうは思ったが、その後もレベルアップは繰り返される。

一同が招かれたのは、現実世界を精巧に再現した仮想世界。

そこにはゲームケイジのように本物の人間と変わらないNPCたちが見える。

 

先ほどと同じスーツを着たニコがルールを説明する。

ここにいるキャラクターたちはみんな困っており、彼らを助けることができたなら、レベルアップのための経験値がもらえるのだと。

よくわからないが、さっそくフィールドに送られる参加者たち。

司はいち早くまどかから、向こうにいるおばあちゃんが困っていそうだと相談される。

 

 

「よし! 行ってみよう!」

 

 

駆け寄ってみると、おばあちゃんは大きな荷物を持って歩道橋の前でオロオロとしていた。

どうやら青信号から赤信号になるまでの時間が短すぎて、無事に渡れるかがわからず不安になっているようだ。

 

 

「荷物、持ちます」

 

「一緒に行きましょう」

 

 

ニッコリとほほ笑むまどかに心を許したのか、おばあちゃんは司とまどか一緒に青信号を無事に渡りきる。

 

 

『どうもありがとう。とっても優しいんだね』

 

「そんなこと……、ありがとうございます」

 

 

するとレベルアップのアナウンス。

 

 

「やったね司さん!」

 

「ああ。ありがとうまどかちゃん!」

 

 

微笑みあう司とまどか。

一方、NPCから声をかけるケースもあるようだ。

おじいさんは地図を片手にウロウロとしている。道に迷ってしまったようで、近くにいた男に声をかけた。

 

 

『もし、そこの人、この場所にはどうやって行けば――』

 

 

秋日和ジジイの顔に鉄パイプ(5・7・5)

 

 

『ぽぬよ!』

 

 

浅倉に殴られたおじいさんはきりもみ状に三回転ほどしてから倒れると、そのままピクピクと動くだけの置物になった。

 

 

「ピピーッ! え? いや……、え?」

 

 

ニコはホイッスルを片手に浅倉に近づくが、二度見してもわからないので五度見ほどしたが、それでも意味はわからなかった。

 

 

「ンンンン……、ジジイ、目障りだ。消えろ」

 

「ピピーッ! ピ……、ピ? ピュ! ピピィイイッ!」

 

 

ニコはレッドカードを浅倉にたたきつける。浅倉はそれをムシャムシャ食い始めた。

 

 

「全部怖いなお前! でもはい、聞きます。なんで? これなん――……? え? どゆこと?」

 

「戦い続ければいい。それが俺たちの証だ」

 

「名言みたいに言うのやめてください」

 

 

そこで音がした。

ニコが空を見ると、おばあちゃんが手足をバタつかせながら吹っ飛んでいる。

 

 

「おああああああああああああああ!」

 

 

秋高しビルのガラスに婆かな(5・7・5)

 

 

「ぐああああああああああああああ!」

 

 

おばあちゃんがビルのガラスに突っ込み、宙ぶらりんになっている。

杏子が投げたのだ。ニコはホイッスル片手にそちらに走っていく。

こいつらマジでふざけんな。怒号が飛び交い、ギャーギャーと吠える声に混じってレベルアップの音声も続いていく。

ベノスネーカーの口からおばあの下半身だけが伸びていた。

 

おばあさん紫コブラにハモられた(5・8・5 中七字余り)

 

上半身をがっつりいかれて、持ち上げられているのだ。

あれは大丈夫なのだろうか? いや、大丈夫ではない。

 

 

「はぁはぁはぁ……!」

 

 

三十分後、なぜか司会のニコが一番呼吸を荒げていた。

 

 

「つ、次はジェンガ対決でレベルアップを……」

 

 

沈黙し、しばし何かを考える。

用意したジェンガを、そっと、浅倉の前に置いてみた。

 

 

「ちょっと、試しに一回やってみて」

 

「ォウアァアアアアアアアア!」

 

 

浅倉は頭突きでジェンガを破壊すると、暴れ始めた。

散らばったブロックを何本か齧って口に咥えたまま鉄パイプを振り回している。

 

 

「カオスすぎる!」

 

 

誰かが叫んだ。それがすべてだった。

 

 

 

メンバーに選ばれない魔法少女や騎士は真面目にその様子を見ているものもいたが、待機所に用意された教会のような建物で各々の時間を過ごしているものがいた。

たとえば美国織莉子は礼拝堂にあるピアノを弾いている。

目を閉じていたからか。あるいは心がそこにはないからか。

織莉子はギャラリーがいることにしばらく気づかなかった。一曲目が終わった後の拍手がなければ、最後まで気づかなかったかもしれない。

 

 

「見事だね」

 

 

気まずい空気が流れたと、思っている。

織莉子は上条になんと声をかければいいのか、わからなかった。

利用していた手前、何を言ったところで。

 

 

「今となっては感謝してるよ」

 

「え?」

 

「この道に立ってみて、見えるものも多かった」

 

「………」

 

「魔女や魔獣を相手に生身でいれば怪我の確立も高くなる」

 

「それは……、気を遣わせていますね」

 

「いや、本心だ。できれば敬語もやめてほしい。僕もやめさせてもらうよ。失礼であることは承知しているけれど――」

 

 

織莉子は目を細めた。上条の目は、あの頃の面影を残している。

 

 

「キミの殺意が見たい。織莉子」

 

「………」

 

「誤解しないでほしいんだ。少し、焦っているだけで、僕はもう大丈夫。とにかく何が言いたいのかというと……、そう、そうなんだ。別に楽なら敬語のままでいいんだ。とにかく君の中にある衝動に触れたい」

 

 

殺意であり、熱意であり、上条を利用して勝利を目指そうとした貪欲な殺意と希望。

 

 

「よくないことだけど、そういう刺激がほしいのは事実なんだ。でなければ僕の音は常識を超えてくれない」

 

「何かあったのですか?」

 

「ヴァイオリンのことで少し。織莉子はピアノが弾けるだろう? プロを目指そうと思ったことは?」

 

「考えたこともありませんでした。それは今も」

 

 

ピアニストになるよりも、もっと大切なことが彼女の中にあった。

 

 

「無限に。有限に」

 

「……もしもそれが解決した時は? どうする?」

 

「それは、その時になってみたいとわからないわ。進みたいと思えば進むだけ」

 

 

上条は頭を押さえた。頭痛がする。気分が悪い。

 

 

「ゆまちゃんを手にかけた時……、僕は楽器を捨てた」

 

「私のせいだから。あまり気にしないほうが……」

 

「やめたいと……、思ってる。正直希望が見えない」

 

「心は自分で変えられますよ。殺意に触れることが音を豊かにするとでも?」

 

「それはわかってるつもりなんだ。しかし過去、多くの作曲家や演奏家が死の中にいた。争いや狂気、あるいは病の中に身を置いた」

 

 

蝉堂の演奏が胸に残っている。

彼の音はまさにその時代が見えてくるかのような『殺意』があった。

奇麗だとか、感動するとか、この時代に至るまでに腐るほど投げかけられた賛辞ではなく、まさに恐怖や憎悪。へばりつくような悪意が音に乗っている。

耳が腐り落ちそうな感じ、しかしそれは音が魂にまで達しているからだ。その演奏を邪魔すれば殺されると誰もが思ったはずだ。

だから音が止まれば、溢れんばかりの拍手が巻き起こる。

一番小さな拍手をした人間は、蝉堂に殺される。そう思わせるだけの力があった。

 

 

「あまり、考えすぎないほうがいいかもしれないわ。私がいう資格は……、ないのかもしれないけど」

 

 

なぜならば上条の悩みこそ長い歴史で見ればあまりにもありふれたものだからだ。

才能があるからこそぶつかる壁もある。誰でも悩む。スランプ。まあそういう言葉を投げるのは簡単だが、織莉子はそれをしなかった。

利用していた関係とはいえ、少しは上条を知っている。

だからひとついうなれば、そう、原点回帰だ。

 

 

「上条くんは何故ヴァイオリンを?」

 

「特別じゃない。話すほどのことでもない、ありふれた理由さ」

 

「でも今日まで続けたモチベーションは己の才能だけかしら?」

 

「え……? まあ、そうだね。周りの人間が僕の演奏を見て驚愕したり、尊敬の眼差しを向けてくれるのは気分がよかったよ」

 

 

上条は口を閉じたが、織莉子は続きを待った。

やがて小さな声で彼は、ポツリと、呟く。

 

 

「そういえば、さやかが笑ってくれたっけ。ああいう顔を見るのは好きだった。自尊心も高まるし自信にもつながる……」

 

 

上条から続きの言葉が出ることはなかった。

 

 

「素敵な演奏をありがとう」

 

 

そう言って、上条は礼拝堂を出ていった。

 

 





まどマギ系は、結構マイナーなカップリングにはまっちゃうんですけど。
ももレナがその一つですね。
これ予告なんですけど、後半がすべて更新し終わったらフールズゲームの外伝として別連載枠でももレナ中心のやつを掲載すると思います(´・ω・)b
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