『ゴブリンのでべそ』は今日も盛況。
そんな中、景気の悪そうな顔でやけ酒を飲む男がいた。
「あーあー、どっかに手頃な雑魚に襲われてる王族とかいねぇかなぁ〜」
今日も今日とて、アルトはしょうもない妄言を繰り広げ…いや、垂れ流している。
願望の内容も不謹慎にも程があるものである。
「ハァ…。そもそも王族の護衛軍がその辺の雑魚にやられるほど弱いわけないだろう」
ラスターはため息混じりに正論を突きつける。
「そもそも王の護衛軍でも敵わない相手にオレらが勝てるわけねぇだろーが」
ラッドがラスターに続けとばかりに畳み掛ける。
実際、国軍の中でも選りすぐりの国王護衛軍は実力にして一等冒険者相当だとか。
そんな彼らが苦戦を強いられるほどの相手。
仮に居合わせたとしても恥も外聞も捨てて尻尾を巻いて逃げ出した方が賢明だろう。
「わっかんねーだろー?実は秘密裏に姫さまが直々に何かを調べていて、それを政敵に見つかり亡き者にされそうに〜なんて〜」
「何かって何よ。絵物語の読みすぎー。そもそもアンタが一億歩譲って姫さまと結婚出来たとして甲斐性ないじゃん。いやぁ〜大変だよ〜?それまでが贅沢三昧だったお嬢様お姫様に一般庶民の生活を押し付けるってさ〜」
言って、アイーシャはかつての友人(仮)を懐かしむように酒をかっくらっている。
そんな時だった。
酒場の掲示板。まぁ、要するに冒険者ギルドの関係者が冒険者らの発奮と酒の肴にとニュースを張り出すことがたまにあるのだ。
その方向からざわつきが聞こえてきたのだ。
気になったのはパーティの四人全員である。
と言うのも、極々たまーーーーーに気前のいい貴族連中なんかが道楽で何かしらおこぼれをくれたりとかするのだ。
今回の騒ぎもそれ関係かなと思ったのだ。
むくつけき肉ダルマたちをかき分けて、何とか掲示板前にやって来た一行。
そこにある気になる内容とは
『姫君を助けた勇者、その名はクリス』
デカデカとそう書かれていた。
しかも内容は助けた姫から求婚されているとかなんとか。
彼は確か既婚者。それも新婚さんのはずだが。
「ダーっハッハッハ!!」
「まーた先越されてやんのー!!」
周囲から煽りに煽られる。
まぁ、冒険者連中の集まる場末の酒場ではよくある光景だ。
アルトは震える。
怒りから、嫉妬から、私怨からアルトは震える。
「くぅ〜りすくぅ〜〜〜ん。そうかそうかつまりキミはそう言うヤツだったんだな?」
「逆恨みがスゴイな」
ラッドが引きながら言い
「そもそも、あの子奥さん一筋でしょ?なんたかんだ断ると思うけど。断れるのなら」
アイーシャが呆れ
「まぁ、アイツも庶民の生まれ。王族と結ばれることもなかろうよ。姫君も一時の熱病だろうさ」
ラスターが事実を述べる。
「だっ、だよなぁ?」
その言葉を聞いたからか、アルトはすっかり落ち着いた様子だ。
それどころか
「姫さまとアイツの奥さんの修羅場とか見てぇわ〜」
と、また下らない妄想を肴に酒を飲み出した。
ホント、そう言うとこなんだよなぁ。
最近は安酒も美味いんじゃよ。