「センパーイ!助けてください〜!!」
そう言って場末の酒場『ゴブリンのでべそ』に駆け込んできたのはアルト達の後輩にして、今の噂の渦中の人物クリスである。
金髪碧眼で少々童顔のイケメン。普段は気弱だがやる時はやると言う絵物語の主人公のような彼だが、どうやら今回は本当に弱りきった様子だ。
なにせいい大人が半ベソをかいているのだ。ほとほと参っているのだろう。
普段よく困り顔を浮かべてはいても、ここまで不安を表に出すのも珍しい。
「なーんだよー?姫さまに求婚された色男様よぉ?」
アルトはまだ荒れている。なかなか根に持つ男である。
「分かっているなら話は早いです!実は先輩方にお願いしたいことが…」
「知らねぇーよ、テメーでまいた種だろ、テメーでどうにかしろや」
あからさまに知ったことかという態度を取るアルト。
「ちょ、アルト、真剣に相談に来た後輩にそんな仕打ちは無いでしょー?」
アイーシャがすぐにアルトを咎める。
「まぁまぁ、話聞くだけ聞いてやろうや。お願いを聞くかはそれからでいいだろ」
ラッドはラスターの方をチラリと見ながらそう言う。
ラスターも頷き返すと
「そうだな。そもそもここで後輩の頼みを無下に断るようではそれこそ嫁の
「ダーメー!リーダー権限使ってでも断る〜!」
「こんなしょーもないことに何言ってんだ」
この男、こんなんでもリーダーである。
だから、大事なことで話がまとまらなければアルトがリーダー権限を用いてまとめる。という方針をこのパーティは取っている。
実際、リーダーというのは結構大変だ。華々しいだけでは無く、地味な仕事なんかもその役目の内なのである。
こんなんでも仲間なのだ。こんなんでも。
「お願いですー!マナと離婚なんてしたく無いんですー!!」
「えっ、なに?離婚の話まで持ち上がってんの?」
「嬉しそうにしない!!」ペシッ
「そもそもこのオレをご馳走…じゃなくて式に呼ばなかったことだって忘れてねーからな!」
見苦しすぎるのである。
因みに他のメンバーは普通に呼ばれた。
「そもそもお前が後輩の結婚式の度に料理を食い散らかすから嫌がられるのだろうが」
「殴んねーだけマシだろ?」
「おーい、ここに賊がいるぞー」
「衛兵に突き出してやろうか」
あまりの論法に周りまで悪ノリし出す。
「すんませんでした」
「あの、一応報酬も用意してあるんですが…」
クリスは恐る恐ると言った風に羊皮紙を差し出す。
「なーんだよ!それならそうと早く言えよー水くせーなー!」
「この手のひら返しの早さよ」
「でー?額はどんなもんなわけー?」
「まぁまぁ待ってろ。えーっと報酬は…え?」
アルトは紙を開いたままフリーズする。
「どした?」
ラッドは固まったままのアルトからヒョイと紙をひったくると
「はぁ!?」
と驚きの声をあげる。
まぁ無理もない。
何せ提示された金額は……
「えーっとちょっと待て〜、ここがこうしてこうなってああするとそうだから〜軽く見積もっても三年分…三年分!?」
そう彼ら四人の年間の収入額の三年分が書かれていたのだ。
四人が愕然となっていたその時である。
「あ、それ前金です」
その言葉を聞いてアルトは靴を舐めん勢いで後輩に媚び始めたのだった。
次はいつになるんやろか