沈丁花の影へ、枯れ落ちて。   作:氷桜

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本来一話になるんですけど前後編で投げておきます


Act01-07

 

奇妙な程に輝く、一筋の反射する糸。

正しく言えば。

先程、彼女――――九重さんが引き抜いた、長い髪の毛の一本。

それが巻き付けられた左手の手首を、持ち上げながら目視する。

 

(……ふぅむ。)

 

そうされてから、少しだけ()()()()()()()()()()()ように感じていた。

目の前で、二重結びで縛られたそれは長袖の内側に綺麗に収まっている。

けれど見ようと思えばすぐに見えてしまう、そんな境目に縛られていた。

 

「何だか、少し変わった気がする……?」

 

多分、何もなければそのまま眺め続けていたと思う。

 

「……恥ずかしいからやめて。」

 

それを彼女の目の前で見ている、という事実がなければ。

 

「あ、ごめん。 ええ、と……。」

 

何と口にすれば良いのか。

彼女、のように二人称で考えることは単純なのに。

彼女本人を指して、きちんと話す場合は何と表現すれば良いのか言葉に詰まる。

 

「……何でも良いよ。」

 

だから、そんな俺を見かねてだろう。

彼女は、そんな言葉を口にする。

 

「……え?」

「九重、でも悠月でも。 ……好きに呼べばいいよ。」

 

見かねてだろう。

或いは、()()()()に興味を抱いていないからか。

少しだけ吹いた風に持ち上げられた、前髪越しの眼が見つめている。

俺自身ではなくて。

少しだけ――――肩越しの、後ろ側を。

 

ひゅっ、と息を吸い込んだ。

けれど、そこまでで抑え込んだ。

それを気取られないように。

彼女に対してではなく、それ以外のナニカにこれ以上何も感じられない為に。

 

「それなら……九重、さん。」

「……はい。」

 

名前で呼ぶ勇気もなく。

そして自分で言ったように。

大したことではないように、気にせずに。

当然のようにその呼び方を受け入れて。

 

「俺は……ううん、俺達はどうすれば?」

 

周囲の、男女の喧騒……好いた腫れたという話からはかけ離れた。

薄ら寒い、今の現状に関してを巫女の少女に問い掛ける。

 

「……まず、今から離れるのは無理。」

 

横目で一度、入口を見て。

その後に、俺を見ている……というのは、視線から何となく分かった。

好意や敵意と言った、一般的な異性から向けられるようなものとは明らかに別の感情(それ)

そんなモノを受けて……少しだけ、彼女のことが気になる俺も何かが狂っているのだろう。

 

「……学校での繋がりもあるけど。 それは……月読君も、余り気にしないよね?」

「まあ、逃げなきゃ不味いっていうのなら逃げられるけど……。」

 

何しろ今回は頭数合わせ、という側面が大きいのだし。

それは九重さんも同じようで。

少しだけ、やっと同類項を見い出せた気がした。

 

「それよりも……問題は。」

「うん。」

 

目線を、俺から外さないようにしながらの周辺視のようにして。

ナニカの動きを追いかけるようにしながら、話を続ける。

 

「今は、君も……私も、この公園からは出られない、ってこと。」

「……それは?」

 

ぽつり、と。

呟くように紡がれた、そんな言葉に問いかければ。

 

「一度、相手とチャンネルが合っちゃったから。」

 

そんな言葉を、口にした。

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