奇妙な程に輝く、一筋の反射する糸。
正しく言えば。
先程、彼女――――九重さんが引き抜いた、長い髪の毛の一本。
それが巻き付けられた左手の手首を、持ち上げながら目視する。
(……ふぅむ。)
そうされてから、少しだけ
目の前で、二重結びで縛られたそれは長袖の内側に綺麗に収まっている。
けれど見ようと思えばすぐに見えてしまう、そんな境目に縛られていた。
「何だか、少し変わった気がする……?」
多分、何もなければそのまま眺め続けていたと思う。
「……恥ずかしいからやめて。」
それを彼女の目の前で見ている、という事実がなければ。
「あ、ごめん。 ええ、と……。」
何と口にすれば良いのか。
彼女、のように二人称で考えることは単純なのに。
彼女本人を指して、きちんと話す場合は何と表現すれば良いのか言葉に詰まる。
「……何でも良いよ。」
だから、そんな俺を見かねてだろう。
彼女は、そんな言葉を口にする。
「……え?」
「九重、でも悠月でも。 ……好きに呼べばいいよ。」
見かねてだろう。
或いは、
少しだけ吹いた風に持ち上げられた、前髪越しの眼が見つめている。
俺自身ではなくて。
少しだけ――――肩越しの、後ろ側を。
ひゅっ、と息を吸い込んだ。
けれど、そこまでで抑え込んだ。
それを気取られないように。
彼女に対してではなく、それ以外のナニカにこれ以上何も感じられない為に。
「それなら……九重、さん。」
「……はい。」
名前で呼ぶ勇気もなく。
そして自分で言ったように。
大したことではないように、気にせずに。
当然のようにその呼び方を受け入れて。
「俺は……ううん、俺達はどうすれば?」
周囲の、男女の喧騒……好いた腫れたという話からはかけ離れた。
薄ら寒い、今の現状に関してを巫女の少女に問い掛ける。
「……まず、今から離れるのは無理。」
横目で一度、入口を見て。
その後に、俺を見ている……というのは、視線から何となく分かった。
好意や敵意と言った、一般的な異性から向けられるようなものとは明らかに別の
そんなモノを受けて……少しだけ、彼女のことが気になる俺も何かが狂っているのだろう。
「……学校での繋がりもあるけど。 それは……月読君も、余り気にしないよね?」
「まあ、逃げなきゃ不味いっていうのなら逃げられるけど……。」
何しろ今回は頭数合わせ、という側面が大きいのだし。
それは九重さんも同じようで。
少しだけ、やっと同類項を見い出せた気がした。
「それよりも……問題は。」
「うん。」
目線を、俺から外さないようにしながらの周辺視のようにして。
ナニカの動きを追いかけるようにしながら、話を続ける。
「今は、君も……私も、この公園からは出られない、ってこと。」
「……それは?」
ぽつり、と。
呟くように紡がれた、そんな言葉に問いかければ。
「一度、相手とチャンネルが合っちゃったから。」
そんな言葉を、口にした。