ゆかりさんと行く終末旅行   作:夏野とびうお

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ちょっと匂わせた後は、ほのぼの回が一番!

実況風に描写するの難しかった……




6.出発

 

あの後、ゆかりさんを起動してから、本人には異常はないと伝えた。

――あの映像の事は言わずに伏せておいた。

今は情報が足りないので、話すべきではないと判断したからだ。

本人も認識してないみたいなので、わざわざ触れる必要もないだろう。

 

ゆかりさんは、検査が終わってからやけにソワソワして、『き、昨日の記録見ました???』とか聞いてきたけど、見てないから安心してと伝えた。

それでも時々俺の顔を窺うように横目でチラチラ見てくる。

一応ゆかりさんのプライバシーもあるし、見てないんだけどそこまでされたらめっちゃ気になる……

まぁ見たら何されるか分からんし、今は見ないけど……………

 

あとチラチラ見てくるゆかりさんかわいい……

 

 

 

 

 

ゆかりさんの点検が終わったので、いよいよ旅をするための足を用意する。

最初は徒歩で行こうかと思ったが、流石に行動範囲も狭まるし、使えるものは使っておこうの精神だ。

要するに、レンタカー屋からキャンピングカーをパクっ……じゃなくて借りて行こうと思う。

昨日ゆかりさんのマップ機能で調べたら、少し遠いが歩いて行けるところにキャンピングカーをレンタル出来る店があるようだ。

 

 

 

「そういえばマスター。昨日時点ではマップ機能を使えていましたが、今朝になると表示出来なくなっていました。」

 

「――ついにインターネットが逝ったか……。マップは覚えてる?」

 

「はい!半径30㎞以内ならダウンロード出来てます!」

 

「流石ゆかりさんだな」

 

いつも通り有能なゆかりさんに感謝しつつ、マップに記されたレンタカー屋を目指す。

――もう少しインターネットが使えるかと思ったが、想定よりも早くお亡くなりになった。

まだ2,3日ほどは使えると踏んでいたのだが、人の管理が無いとすぐにダメになるらしい。

これからは本格的に、ネットを使った調べ物が出来なくなる。

一人だった頃はかなりまずい状況になっていただろうが、今はゆかりさんもいる。

そうそう困ることもないはずだ。

 

 

 

 

 

昨日とは違い、軽装で来たので1時間ほどで目的地に着いた。

空いていた正門から中へ入り、あたりを見渡す。

このレンタカー屋は、比較的大きな会社だったらしく、多種多様な車種が駐車されていた。

この中から目的のキャンピングカーを探す。

 

キャンピングカーといっても、種類はいろいろある。

軽自動車に取り付けられたような形の小型の物から、子供が多い家族が乗っても全員余裕で寝れる広さを誇る物まで、様々な大きさと機能性の異なる車種がある。

 

俺たちが探すのは、大きさよりも機能面に重視したキャンピングカーだ。

 

 

………………

 

 

「こっちの車はどうですか?キングベッド級の寝床が一つ、すっぽり入ってますよ」

 

「そこまで大きな寝床も要らないでしょ。てか、寝床は分けようよ……」

 

 

………………

 

 

「じゃあ、こっちのキッチン付きのは……」

 

「キッチンもいいけど、トイレも付いているものがいいんだよなー。……お、これはどうだろう?」

 

「キッチンとカセット式トイレ付きで、バンクベッドも搭載ですか……。機能面はいいと思いますけど、少し大きくないですか?」

 

「そこだよなー。本当は燃費が良いものを選びたかったけど、ここの中ならこれが一番いいと思うんだ」

 

バンクベット……運転席の上にある空間で、外から見たら少し飛び出している部分にあたる。

それぞれここと下で寝れば、睡眠スペースも分けることができるし、寝てない時は荷物置きのスペースとして活用できる。

この車のデメリットは、車体が他よりも一回り大きく、見るからに燃費が悪そうな点である。

だが、キッチンもトイレも無くて困るくらいなら、付いていた方がいいだろう。

 

「そうですね、どうせなら快適に旅したいですしね!」

 

「よしっ!こいつに決めた!」

 

「じゃあさっそくあっちの建物から、鍵をパクってきますね」

 

「…………俺も言えないけど、ゆかりさんってそういう行動に躊躇とか全然しないよね」

 

「そりゃ躊躇してたら、いつまで経っても先に進むことなんかできないですよ」

 

「確かにゆかりさんの言う通りだな」

 

「……まあ私たちががパクったっていう証拠は毎回、残らないようにはしてますけどね」

 

「そうだったのか……いつもありがとうな」

 

「きゅ、急に褒めないでください……。……ボイスロイドとして当たり前の行動をしたまでですよ」

 

毎度毎度、ゆかりさんの有能さに感動してるよなぁ、俺って。

でも、扉をピッキングしながら当たり前と言うのはどうかと思うけどね…………

絵面が完全に強盗なんだよなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

ゆかりさんの鮮やかなピッキング行為を見届けた後、俺は他のキャンピングカーから必要そうな装備をはぎ取り、これから乗り回す予定の車に積み込んでいた。

 

「そういえばマスターって免許持ってるんでしたっけ?」

 

「一応持ってるけど……」

 

「……これらの車すべて、自動運転機能が使えるか怪しくないですか?」

 

「それは考えてなかったな……」

 

 

自動運転技術が世の中に普及してからかなりの年月が立ったが、未だに車を運転するには運転免許がいる。

しかし時代が進むにつれて、運転免許は自動運転車の完全普及を目途に、車種問わず1種類になった。

つまり、この免許を取れればどの車でも運転出来るという訳で、取得難易度も高くない。

だが、この免許はあくまでも自動運転車の運転席に座ることが出来るというだけで、自力で運転出来る者であると証明するものではない。

今の時代の運転免許証は、運転できるというよりも車を所有できるという意味合いの方が強い。

 

実際、俺も免許は持っているが、自力では運転できない。

精々、クリープ現象を利用してゆっくりと進めたり、左右に振ったりできる程度である。

そもそも自力で車を運転する機会が少ないのだ。

万が一、車のオートドライブ機能が故障した際に、自力で運転して事故にならない位置に車を移動させたり、近くのサポートセンターまで運ぶ時にハンドルを握る程度である。

そんなこと、今まで起きたこともないが……

 

 

そんでもって、現状だとナビが使えずに位置情報も分からない、前後に取り付けられたカメラだけでは、完全に自動運転は出来ないということだ。

試しに無人の車で目標地点を設定して走らせてみたが、見事に30m先の建物に突っ込んで行った。

流石にこれを見て自動運転に頼るなんてことは出来ない。

俺も運転は出来ないし、自動運転も頼れないとなれば……

 

 

 

「私の出番ですね、マスター。任せてください!私、天才ですから!これくらい朝飯前です!」

 

「なんかちょっと不安になったけどよろしく頼むよ」

 

今はゆかりさんに頼むが、自分も運転できるようになっておきたい。

やっぱり頼りっぱなしはいけないというのもあるが、単純に自動ではなく、自力で運転してみたいからだ。

一昔前のレーシングゲームを遊んでいると、運転手が自ら運転していることがある。

あの風を切るような爽快感を、自身の目で、身体で体験してみたいと思ったのだ。

幸いにも練習するための車はたくさんある。

暇なときにゆっくり上達していこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆかりさんに運転してもらい、家の前まで帰ってきた。

なんやかんやで帰れたのは夜になってしまった。

今日は晩御飯を取ってゆっくり休もう。

明日中までに選別した荷物の運搬と最終確認をして、二日後に家を出ようと思う。

この家ともお別れだ……

一人、部屋でしんみりとしていたが―――

 

 

 

 

…………………………

…………………………

 

 

 

 

コンコン。

入りますよー

……ガチャッ

 

 

 

「マスター、ゲームしましょうよゲーム」

 

「急だな……。…………出発は明日だし、時間はあるからいいよ」

 

「ヤッタァ!」

 

積荷は全て載せ終わって時間が余っていた。

今はもう時間が遅いから出発したくないし、かといって特にやることもないのでゲームでもして時間を潰すか。

一応、ゲーム機も幾らか持っていくつもりではある。

娯楽が無いとこの先辛いし、ゆかりさんもやりたいと言っていたからだ。

 

「それで何のゲームをするんだ?」

 

「明日は私が運転するので、その練習も兼ねてこのゲームをしてみたいです」

 

ゆかりさんはキャンピングカーに積んだはずであった、カセットゲームの一つを持ってきた。

 

「……妨害ありのレーシングゲームか。別にいいけど、これって練習になるのか?操作方法コントローラーだけど。あと結構カオスだよこのゲーム」

 

「要はイメトレですよ。感覚が解ればいいんです。もしかしたら実際に、運転中に爆弾とか自動追尾のミサイルとかの妨害が来るかもしれないですよ?」

 

「俺らの住んでる所どんだけ世紀末なんだよ…………そういえばここもある意味世紀末か」

 

「まーそういうことです……とりあえず楽しめればOKってことで!」

 

「それもそうだな」

 

このゲームはマシンの性能はそこまで変わらず、それだけでは差をつけにくい。

差をつけるのは、操作技術とこのゲームの醍醐味の妨害行為だ。

相手にミサイルをぶつけるもよし、相手のタイヤを割るのもよし――

つまり、無法地帯でのレーシングゲームとなる。

アイテムは一定区間に配置されたアイテムボックスを取ることで、アイテムを取得して使うことができる。

ちなみに今回は、CPUキャラクターありの闇鍋カオスモードだ。

 

「じゃあ始めましょうか」

 

 

 

3...2...1...GO!

 

 

 

「よし、アイテム一番乗りです。これをこうして……ここ!」

 

「……惜しい。これ御返しね」

 

「ぎゃぁぁぁ!やばいです!CPUの勢いもすごいです!ちょ、ちょっと待って~!」

 

 

 

最初のレースは俺の圧勝だった。

仮にもこのゲームの所有者は俺。

ゆかりさんよりも長くやっているのだから、初手で負ける道理はないのだ。

だが、流石は高性能ボイスロイド。

すぐに学習して上達してくる。

これは腕の見せ所だな――

 

 

 

それから、段々白熱していき……

 

 

 

「よし、私がトップですね。このままリードを広げて一位でゴールしますよ!」

 

「それはどうかな」

 

「嘘だぁぁぁ!ゴール直前でまきびし粘着地雷花火だとォォォ!」

 

「詰めが甘いぞ!――はい、ゴー――ル!」

 

「イカサマです!不正です!どうやってあそこに設置したんですか!」

 

「一周前の周回で最下位になって置いといたのさ。ゆかりさん、ずっとトップ維持で大変だったから知らなかっただろ?」

 

「…っ!も………もう一回です、マスター!」

 

「望むところだ!」

 

 

 

 

「これならどうです!」

 

「ほぉ……車体をくっつけてゼロ距離バズーカか。だが甘い!」

 

「何ですかその変態挙動からの急加速は!」

 

「これくらい造作もないわ!ちなみにバズーカは当てないと反動で飛ぶ」

 

「……いや、まだ間に合う。このジェット推進機で逆転を……ちょっとCPU邪魔ですよ。どいてっt……うわぁぁぁぁ!」

 

「 ゆかりさんは 運悪く CPUの 特大ハンマーに 押しつぶされて 脱落した 」

 

 

 

「…………もう一回です!」

 

「何度でもかかってくるがいいさ!」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

――ただいまの時刻、午前3時。

 

 

6時間にも及ぶレース勝負も終わりを迎えようとしていた。

 

勝敗のきっかけは、ゆかりさんのとある一言だった。

 

 

 

お互いアイテムを持って、牽制しあっている対面で――

 

「そういえば、マスターと最初に会った時と比べて、話し方が少しフランク?になりましたよね?」

 

「え…………?そうか?」

 

「そうですよ。でも今の方が素って感じがして、私は好きです」

 

「お、おう……。俺は意識はしたことないけど、ゆかりさんがいいって言うなら、このままでもいいか」

 

「ふふ……そうですそうです、その方がいいでs―――今ァ!!!」

 

「オィィィ!他の事話してる最中に置きエイムロケラン吹き飛ばし即死コンボ決めてくるのは反則だろ!」

 

「隙を見せて油断した、マスターが悪いんです。ほらもう最終ラップも終わりが見えてきましたよ?」

 

「まだまだぁ!ここからでも全然巻き返せる!」

 

「喋ってる余裕あるんですか…………ってもう追いついたぁ!?――でもこの地獄の270度下り坂カーブがありますよ!速度落とさなくて大丈夫なんですかァ?」

 

「いけるいける!そっちこそコースアウトしないよなぁ?」

 

「この私が誰かわかって言っとんのかァ!我、天才美少女ゆかりさんやぞ!」

 

「……っ!くるぞ!」

 

 

 

「「 曲がれぇぇぇぇぇぇぇぇ! 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

すごい白熱したゲームだった……

最後の最後で、ゆかりさんに負けてしまった。

曲がり切った先で、並みのPS(プレイヤースキル)では扱うことのできない俺の変態急加速を使って、見事一位でゴールした。

悔しいが、素直に認めよう。

ゆかりさんは強かったと……!

 

 

 

 

「私、ゲームしたのは初めてだったんですけど、こんなに楽しかったんですね」

 

「ゆかりさんはゲームに慣れるのが早いから、すぐに上達するしな。また今度やろう、次は負けないぞ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

…………………………

…………………………

 

 

 

 

 

 

 

昨日の対決を終え、ついに旅に出る日がやってきた。

といってもそこまで緊張とかはしてない。

むしろこれからの日々が楽しみだ。

行きたいところに行ける。

やりたいことをやれる。

そんな開放感が今の自分にはある。

これまで社会の縛りから解放されたことよりも、ゆかりさんと過ごせることになったことの方が断然嬉しかった。

もちろんそれは今も変わらない。

だが、自分の積み重ねてきた日常を捨てて、見知らぬ地へ、新たな地へと足を向ける。

それが自身の冒険心を燻るのだ。

 

これからは今まで以上に、新しい日常が待っている。

 

 

 

 

 

 

 

「物資、燃料、シートベルト、心の準備……ヨシ!いつでもいける!」

 

「それでは行きましょう!」

 

「目的地は決めてない!」 

 

「ただひたすらに!」

 

「行きたいところへ!」

 

「「  さあ、出発だ!!! 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終回っぽい雰囲気出たけど、これからも続きますよ

 

 

 

 





皆様のおかげで、読み上げ機能でゆかりさんに読んでもらうことが出来るようになりました!
これからもゆっくりと頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします!

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