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俺は気の強い女性が苦手だ、常に人の上に立とうとし上から目線で居るように感じて苦手だ。
昼休みに仕事を教われとの指示だ、だがこの少女東雲鳴《しののめめい》は苦手だ、何が気に入らないかは知らないが、教わる身としてはあまり空気が良くない、昔の職場にもこんな人間いたが、そいつは話せばどんな人間か分かった分だけましだ、この少女は取り付く島もない、何を話せばいいか分からない。
「えっと、まず、俺は何を教わればいい」
「まずは、一日の流れを教えてやる」
仕事の事は教えてくれるらしい、仕事の事を教われば余り関わらず過ごせばいい、これが上手くやるコツよ。
「まずは登校の準備だ、既にやっているだろ」
「屋敷の事はすでに教わっているからな」
「次は校内での移動だ、雪様は常に何人か生徒がついている」
「確かに今朝も生徒に囲まれていましたね」
「雪様はそれほど人気がある方なのだ」
なるほど、東雲は四月一日の事が好きなのか、確か四月一日と話すときは大人しかったな。
「移動時にお前のような男が一緒にいると不審者だ、だからあまりそばに近寄るのは許さん」
「その心配はない、入校書も持っている」
「違う、雪様の品格に関わる事だ、お前のような若い男が近くにいるだけで、噂というのは広がる。」
「でも俺はちゃんと雇われてここに来ている」
「だからだよ、四月一日家は大地主だぞ、お前がどの様な理由で雇われたかは知らんが雪様を好まない奴らだっている、そんな奴らがあらぬ噂を流してみろ、女社会は噂はすぐに蔓延する、人身売買や借金のカタなどで来たなど言われれば、四月一日家の沽券に関わる」
確かにそうだ、俺はちゃんと雇用されているが他人がそれを知っている訳ではない、もしも噂が広まり信用を失えばまたその信用を取り戻すのに多くの時間が掛かる、それこそ在学中に噂の払拭などは無理だろう、それこそ俺の立場だって危うくなる、あの両親の事だ俺の存在などどこかの土地に埋められても可笑しくはない。
「ならどうしたらいい」
「関わらなければいい、簡単だろ」
「だが、俺は雇われている、そう簡単に関わらないってのは無理だ」
「なら、お前の代わりに私がやればいい、私は元々雪様の付き人だ仕事も把握している、それに生徒からの信用だってある、ぽっと出のお前よりかはな」
本人の今後を考えればその方が良いだろう、元々この仕事もダメ元だったし辞めた所で後悔はあまりない。
「それをするには、まず、本人に聞かなきゃいけないだろ」
「なら、今から雪様に会いに行こう」
「分かった......」
これで俺は二度目の無職か、いや屋敷の事もあるから無職じゃないのか、もしもこの案が通ったらどうする、初日だぞ、あーなんて顔されるんだろ、あの両親に考えたくもない。
「雪様よろしいですか?」
着いてしまった、中庭だろうか、東雲が着た瞬間に、話していた生徒に別れを告げこちらを向いた
「なんですか?東雲さん」
「この大崎の事ですが」
「はい」
「学校の事はやはり私にまかせて貰えないでしょうか?」
「はい?何故ですか?」
いつもは大人しい四月一日の空気が変わった、これ以上無駄口をたたく様ならお前を消すそんな空気だ。
「やはり若い男性が雪様の付き人として校内に居るのはあらぬ誤解を招く可能性があり」
「それだけですか?」
「えっと、その」
「そんな些末な理由で役割を変えろと?」
「ですが、四月一日家にも関わる事かと」
「私があなたに科した役割は何ですか?」
「うっ......この大崎に仕事を教えることです......」
「では、それは終わりましたか?」
「......いえ」
「なら戻りなさい」
「ですが!!」
「聞こえませんでしたか?戻りなさい」
「......はい」
「それと雄一さん」
このまま、空気の様にしていようと思っていたのに。
「はい」
「私の事は気にせずにお仕事をしてくださいね」
見惚れる位の笑顔だよ、さっきまでと違い、優しい空気になった事に恐怖を隠せない、こうなればこちらも笑顔で返すべきだろうか、一応笑っておくか。
「分かりました」
「では、後ほど」
その後、東雲に仕事を教わる前に昼休みが終了し放課後に教わることとなり、授業はあっという間に終わり、放課後となった。
「......」
「......」
そうだよな、こうなるよな、空気悪くなるよな。
「まぁ、取り敢えず、俺が四月一日に雇われた経緯でも聞くか?」
「なぜだ」
「一応な、聞いておけば、もしも、変な噂が流れても東雲が真実を話せば何とかなるだろ?生徒からの信用もあるって自分で言ってただろ?」
苦肉の策だ、何とかこの空気を変えようとする為にこんな事は話したくないが、仕方のない事だ。
「それも、そうだな」
「そうか、俺は元介護士だった」
それから、俺は事の経緯を語った、正直話したくは無かった、でも話さなければこの空気のまま仕事を教わるのは、無理だと感じたから話すしかなかった。
「そうか、お前も苦労したんだな」
「まぁな」
「だが、なぜまた介護の様な今の職に就いた、介護が嫌なら他の職もあっただろうに」
「別に介護が嫌になった訳じゃない、あの職場が嫌になったから辞めただけだ、それに人の役に立つ仕事をしたかったからな」
「そうか、お前はすごいな」
「それと、ここは給料が良かったからな、正直十五万ちょっとで一人暮らし出来るかってんだ、自分の趣味も出来やしねぇ」
「ふふ、そうか」
初めて東雲の笑った顔を見た、意外だった、会ってから不機嫌な顔としょぼくれた顔しか、していなかったからだろうか、やはり人の笑顔は見ていて気分がいい。
「なら、ちゃんと仕事を教えないとな」
「教えてくれるのか?」
「ああ、お前の事なんとなくだが分かったからな」
それから、校内での仕事を教わり俺達は四月一日の元へと向かった。
「雪様、お待たせ致しました」
「雄一さん、仕事は教わりましたか?」
「バッチリ、東雲さんに教わりました」
「そうですか、先ほどは私も悪かったです、付き人とは言え東雲さんはお友達なのに......」
「いえ、私も考えずに物を言いましたし」
「お前ら友達だったのか......」
「「見えませんか?」」
「それより、口の利き方を直しなさい、私はあなたの雇い主ですよ?」
「そうだぞ、私はお前の先輩だぞ」
「また、肩身が狭くなった......」
女の子ってのは仲良く笑い合う、それが一番似合っている、この調子で仕事が出来れば一番いい。
「えっ......兄さん?」
「渚......」
やっぱりだ、こういう時に問題が起こるのが俺だ。