ようつべの方でカーネイジの予告の三週目を見てたら、ネタバレが流れて来ました。
怒りのあまりエアポッツの片方を無くしてしまいました~(勿論通報して別の動画見た)
誤字修正ありがとうございます。
十話も多分誤字満載なので、よく目を凝らしてみてください。
廊下を歩く八木。
道中で雄英生徒とすれ違うが、特に声を掛けられることなく(挨拶はされたけど)問題なく保健室までたどり着くことが出来た。
深呼吸をして、その扉に手を掛けた。
本当は鍵でも掛かっててほしかったのだが、扉は八木の指の力に反発することなく、そのまま慣性に従って開いた。
「こんにちは~・・・」
中心のソファーの上で横になる生徒に、診察をしていたリカバリーガールがクルっとこちらを向く。
八木を見るなり、その細い目を見開くが、すぐに穏やかな表情へと変えた。
「いらっしゃい。
声色と顔色に怒りは見えない。
が、もしかしたら必死に隠しているだけで、本当は内心般若の形相をしているかもしれない。
リカバリーガールは八木に向けていた目をすぐに生徒の方へ戻すと、診察を続けた。
そして一分経った頃合いだろうか。
「ハイ、ハリボー」
診察を終えたのか、生徒は礼をすると、八木の横を通り過ぎ教室へと戻っていった。
トボトボと自信なさげにリカバリーガールの元へ足を進める。
「お久しぶりです、リカバリーガール」
「全く。定期検査を一週間も遅らせるなんて・・・」
「それは本当に申し訳ない・・・」
「・・・はあ」
ため息交じりに呆れられる。
どうやらそこまで怒ってはいないらしい。
「ところで・・・さっきの生徒は?」
「なんでもメンタルが弱いらしくて、それを治してほしいって言ってたわ」
「・・・治せたんですか?」
「私が治すもんじゃないよ」
「ですよね」
リカバリーガールは聴診器やら精密機器やらの準備を行いながら、ふとこちらに目線を送って来た。
眼先は頭から足まで巡らせて、それを何度も繰り返して、ようやく何かに気付いたのか首をググと傾げた。
「俊典、
「根津さんもそうでしたが、気付くの早いですね」
「そりゃそうさ。私は医者だよ」
答えになっているような、なっていないような。
「気付いたのは・・・吐血ですか?」
「そうさね。アンタが吐血しないなんて相当珍しいことよ」
やはり吐血か。
デイヴと会った時も、板前に会った時も、根津に会った時も。
全て吐血で判断されている。
それ以外で判断をしてほしいとは言わないが、流石にここまで吐血だけで判断されると、何とも言えぬ心情になる。
「それで?何が起こったんだい?」
「実は──」
根津にした説明と同じようなモノをカクカクシカジカ。
「──という訳なんです」
リカバリーガールは驚きもせず、ただ神妙な面で机の上に目を向けていた。
「・・・まさか。いやそんなはず・・・」
ボソボソと何かを呟くリカバリーガール。
「あの、リカバリーガール?」
「・・・ああ、すまないね。つい考えこんじゃったわ」
俯いていた顔を八木に向ける。
いつもの顔に見えるが、どことなく何か悩みを抱えているかのようにも見えた。
「悪いけど、私も心当たりはないわね」
「そうですか・・・」
正直そこまで期待はしていなかったので、大したダメージは受けなかった。
それに今すぐに聞きたいわけでも、解決したい悩みである訳でもないので、急いで情報収集をする必要もないだろう。
勿論、体を治してくれた人が本当に見つかったのであれば、キチンとお礼はしたいが。
「それで、定期検査はこれからどうするの?」
そういえばそのことを忘れていた。
(正直定期検査要らないと思うんだけど・・・でも万が一のことを考えると、定期検査には来た方がいいよね?)
これから他の病気になる可能性もあるのだし、定期検査を受けておいても損はないだろう。
「・・・万が一もありますし、一応続けさせてもらおうかな、と」
「そう。分かったわ」
それじゃあ早速、とリカバリーガールがまた道具の準備をし始めた。
検査を終えた八木は元の服装に着替え、荷物を持った。
「それでは、失礼しました!」
「あいよ。次は来月の一日に来るんだよ」
八木が保険室から出ていくのを見届けた後、リカバリーガールはフウと重い溜息を吐いた。
「・・・黒い靄、ねえ。まさか・・・関りがあるとは思えないけどね」
言葉は彼方に消えた後、机の上のPCの画面へと向いた。
画面に映るのは、二年前のある事件について書かれた記事。
その見出しには、『隕石襲来!しかしオールマイトが木っ端微塵に!!』と書かれていた。
◇■◇■◇
平日はあっという間に過ぎ、休日に入った。
緑谷出久は自宅のベッドで死んだ魚のモノマネをしており、その眼は光を失っている。
(これからオールマイトと海浜公園でトレーニング。途中で家に帰って昼ご飯を食べて、少し休憩を挟んだら、また戻ってトレーニング。・・・分かってはいたけど、あまりにもキツイよこれ・・・)
折れぬ志を持っているからこそ保ててはいるが、それがなければ今頃ベッドの中でイビキをかいていただろう。
「・・・でも、これぐらい努力しないと、僕はヒーローにはなれないんだ・・・!」
PAN!!と自分の頬に強烈なビンタをかますと、気怠い体を持ち上げる。
「行くぞデク!ヒーローになるんだ!!」
震える脚にも喝を入れると、ジャージに着替えて海浜公園へと向かった。
「オールマイト?」
「・・・・・・」
海浜公園に着いた緑谷が目にしたのは、ゴミの山の上に座ったオールマイトだった。
片手にはミネラルウォーター、片手には本が握られており、見方によっては現代版二宮金次郎に見えなくもない。
まるで彫像のように動かないオールマイトをしばらく見つめた後、何か考え事してるのかも、と自分の中で解決させると、もはや日課となっているゴミ掃除を始めた。
(・・・あの本、何の本だろ・・・?」
表紙的には教科書か何かのように見えるが。
もしや、ドラマか何かの台本だろうか。
(邪魔するわけにはいかないよね。流石に音を立てずに、は難しいだろうけど・・・)
なるべく邪魔にならないように、と自分に言いつけながら、ゴミの山から木の柱を数本抜くと、それをトラックに運んでいく。
勿論オールマイトが見ていないからと言ってサボることは無く、黙々と作業を進める。
それから八往復した程だろうか。
タイヤを両手に通していると、近くのゴミの山が軋み、少し崩れた。
理由は勿論、あの人が起きたからだ。
「・・・緑谷少年?来ていたのか?」
ゴミの山からトウ!と降りるオールマイト。
笑みと驚きが六・四で混ざり合ったような、なんとも形容しがたい顔を浮かべながら近づくオールマイトは、ある意味ホラーだ。
「はい!なんか、集中してたので邪魔したら悪いかなって」
「そんなことはないさ。ただ勉強していただけさ」
「勉強?オールマイトが?」
その聞き方だと、見方によっては失礼な気もするが。
「ウム!おじさんになっても勉強することはあるのさ!」
「オールマイトはおじさんじゃないです!・・・それで、なんの勉強をしていたんですか?」
ヒーローが資格を取るために勉強をしたりすることは、それほど珍しいことではない。
プロヒーロー免許を所得すると、別の資格や免許を取るのが比較的容易になる。
分かりやすく言うと、通常は手続きやら試験やらを何度も超えないといけないところを、プロヒーローなら一回クリアするだけで合格、取得することが出来るようになるということだ。
「うーん、まあ君になら言ってもいいかな?実は前々から、学校の教師になりたいと思っていてね。そのために教員免許を取ろうってことさ」
「オールマイトが教師!?い、一体どこの学校に!?」
「そりゃあ勿論、雄英だとも!」
「ええええええ!?!?」
腰を抜かしてビビり散らかす緑谷。
「オールマイトが雄英の教師に!?えええ!?!?」
「そんなに驚くことかい?」
「いや予想は・・・していましたけど、まさか僕が通う来年からっていうのが・・・」
運命を感じた、というやつか。
「私ももう歳だからね。次世代を担う者たちに、教えられることは教えておきたいんだ」
「オールマイト・・・」
「・・・辛気臭い顔をするんじゃないよ!別に今すぐに引退するなんてことにはならないからさ!」
とはいえ、個性を譲渡して十数年もすれば、オールマイトからOFAが無くなってしまうだろう。
そうなる前には、後の世代に残せる何かはやっておきたい。
それに、個性が無くなる無くならない以前に、高齢者の仲間入りをするかもしれないし。
「それに・・・引退しても、今活躍しているヒーローの皆であれば、私程度の空白簡単に埋めてくれるさ」
脳内に浮かぶヒーローの面々。
どれも頼りがいのあるヒーロー達だ。
ふと緑谷の顔を見れば、心配そうにオールマイトを見上げていた。
「話はソレてしまったが、まあとにかく!私は雄英の教師になるために勉強をしている、というわけさ!」
「なるほど・・・でも、オールマイトが雄英の教師って・・・なんかすごいですね」
喜んでいるというか悦んでいるというか。
自分が学校でオールマイトから教養を受けているところを妄想しているのだろうか。
(・・・私が言うのもなんだけど、今の状況自体が凄いと思うんだけどね)
おそらくオールマイトの後継者になるという重荷と、デイヴ考案ハードトレーニングによって、感覚がマヒしているのだろう。
「これで雄英を志す理由がまた新しく生まれたわけだが・・・どうだい?」
耳元で軽く煽る。
「そんなの・・・そんなの・・・!!」
緑谷はそれに反応し、さらに多くのゴミを両手に持つ。
「絶対に雄英に行くしかないじゃないですか!!」
雄叫びを上げながらゴミを運ぶ緑谷の背中を見て、オールマイトはHAHAと笑うのだった。
ちなみに次の日、体中が筋肉痛で動けなくなり、緑谷がトレーニングを休んだのは別の話である。
◇■◇■◇
日が変わり、時計の針が一時を過ぎた頃。
いつもよりも若干長めにパトロールを行った八木はホテルに帰ると、すぐさま風呂に入りパジャマに着替える。
そして買っておいた五本セットの魚肉ソーセージを一本食べると、お茶を一杯飲んだ後にベッドへ潜った。
「朝は緑谷少年のトレーニングに行って、昼はヒーロー活動。夕方はまた緑谷少年のトレーニングに行って、そして夜もまたヒーロー活動に。しかもその合間合間に勉強をしないといけなくて・・・アレ?私って割とハードな日々を送ってないか?」
緑谷と比べればまだまだ余裕はあるとは思うが、しかし毎日八時間以上もマッスルフォームを維持し続けていると流石のオールマイトでも疲労は溜まっていく。
(でも、疲労感を感じるなんて久しぶりだな。前までの私であれば、疲労を感じる前にマッスルフォームの限界が来ていたから、そこまで疲れるようなことは無かったが)
皮肉にも制限時間が設けられていたことにより、毎日規則正しい生活を送れていた、というわけだ。
「やれやれ、マッスルフォームを維持できる時間が伸びても、いいことだけが起きるわけじゃないんだなー」
別に誰に言うわけでもないが、棒読みっぽく虚空に語る。
もしこの場にデイブが居れば、おそらく苦笑かツッコミの一つぐらいは飛んできただろう。
ふと、時計に目を向けると、もう長針が下を向くところだった。
「おっと。明日も早いんだった。早く寝ないとね」
薄めの布団を胸の辺りまでかけると、眼を閉じる。
睡魔と疲労感も相まって、深い眠りに素早く誘われたのだった。
『目覚めの時はもうすぐだ、待ってろよ?オールマイト・・・』
きっと最後のヤツは残忍な性格してるんだろうなぁ・・・。