最近個性が芽生えました。   作:限界社畜あんたーく 

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右手が治りつつある今日この頃。

感想を見ていてそろそろヴェノムを参戦させなければと思い始め、取り敢えず投稿。
ちなみに見切り発車故に、今後の計画は無い模様。


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八月一日。

 

学生はいわゆる夏休みという期間に入っており、小中高問わず充実した日々を送っていることだろう。

例えば、海に泳ぎに行く者や、友達と買い物に行く者、家でひっそりゲームを楽しむ者もいれば、自由研究で苦労している者もいる。

中には就職先に面接に行く者もいるし、試験やら何やらで悪戦苦闘している者もいる。

 

 

 

 

「さて、そんな青春真っ盛りの時期だが!緑谷少年にクエスチョンッ!!」

 

「ハイッ!なんですか!!」

 

 

 

 

 

 

「君、夏休みは何か友達と予定とかないの?」

 

 

「ないですッッ!!」

 

 

「潔くて結構ッ!!ではいつも通りトレーニングだ!!」

 

 

 

 

この二人はいつもとそこまで変わらなかった。

しかし、これもまた青春なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

と、同じくボッチのオールマイトは内心泣いていた。

 

 

 

 

 

◇■◇■◇

 

 

 

 

 

海をひたすらに泳ぐ緑谷と、その様子を見ながら勉強に勤しむオールマイト。

時折海を泳ぎに来た人や、観光をしに来た人にサインやら記念撮影やらをしているうちに、緑谷の体力は尽き、と同時に太陽は真上に昇った。

 

 

「・・・もう昼過ぎか。・・・そろそろ行ってみるか」

 

 

腰を下ろしていた廃車の上から飛び降りると、プカプカ漂流する緑谷に声を掛けた。

 

 

「緑谷少年!そろそろ休憩の時間にしようか!」

 

「はい・・・」

 

 

海から上がった緑谷はその場で倒れ込み、肩で息をする。

その様子を労いながらも、オールマイトはわざとらしく咳をした。

 

 

「悪いが、これから少し用事があってね。しばらく席を外すが、許してほしい」

 

「どこに行くんですか?」

 

「雄英でちょっと、ね」

 

「雄英高校で?何をするんですか?」

 

「そりゃあ・・・まあ・・・テストだけど・・・」

 

「・・・あ、なるほど」

 

 

段々と声が薄れるオールマイトを見て、何となくの事情を把握すると、それ以上詮索しないようにと理解の相槌を打つ。

 

 

「ち、違うぞ!断じて勉強が嫌いという訳じゃないぞ!」

 

「いや何も言ってませんよ!?」

 

「いや!君の今の顔はそういう顔だったね!!」

 

「そんなことないですって!」

 

「・・・じゃあ君、現時点で夏休みの宿題どれくらい残ってるの?」

 

「全部終わらせて今は予習中です」

 

「この行動派オタクめ!割と本気で憎いぜチクショー!」

 

 

若さとはこうも偉大なモノらしい。

・・・若さだけではない気もするが、それは気のせいだろう。

 

 

「まあそういうわけで、引き続き頼んだよ!」

 

「分かりました!」

 

 

緑谷の深い礼を見届けると、オールマイトはウムと頷きその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 

雄英高校の四階には、計四つの待合室がある。

 

根津曰く、『学校の見た目にこだわってたら部屋が四つ余ったんだよね。だから全部待合室にしてみたんだ』とのことだ。

 

 

室内の広さは、教室の二分の一程度。

中に置いてあるのは椅子と机のみ。

それ以外に目立ったものは無く、強いて言うなら天井に設けられた換気扇のみ。

誰かを待たせるには少々物足りない空間であり、待合室というよりも尋問室の方が正しいのではないかと思うほどに閉鎖的。

 

そしてそもそもの話、人を待たせるという行為自体が基本的に無い雄英高校において、待合室という部屋は必要性が皆無といっても等しい。

 

 

 

以上の事から、この待合室と呼ばれている拷問室は、これまでもこれからも使われることはないと思われていた。

 

 

 

しかし意外にも、こういう場面では役に立つらしい。 

 

 

 

 

『八木君。準備はいいかい?』

 

 

 

目の前のスピーカーから声が響く。

 

待合室の中にいるのはトゥルーフォームの八木。

机の上には何枚にも重なった問題用紙とマークシート、そして新品のペンと消しゴムが並んでいる。

 

 

「正直全然出来てないです。そもそも今日は試しに来てみただけなので・・・」

 

 

祈る様に両手を握る。

スタートまでの時間が待ち遠しくもあり、同時に緊張してしまう。

 

 

『試しにっていう割には目の下に結構濃い目のクマが出来てるけど』

 

「え?そうですか?」

 

『うん。昔の君の痩せた顔だと分からなかったかもしれないけど、今の君ならちょっと顔見るだけである程度の状態を把握できるよ』

 

「・・・ム?それは一体どういうことですか?」

 

『え?気付いてないの?』

 

「何がですか?」

 

 

スピーカーから暫く無音が続く。

 

 

『・・・』

 

「・・・?」

 

 

首を傾げ、何か言葉を発そうと口を動かしたとき、その瞬間は不意に訪れた。

 

 

 

 

『それじゃあ早速やってみようか!はいスタート!』

 

 

 

「え!?ちょっと気になるんですけど!?」

 

『テストは待ってちゃくれないよ!気になることがあるならまずはテストを解いてからさ!』

 

「も、もう!分かりましたよ!!」

 

 

もはややけくそ気味にペンを握ると、テスト用紙を裏返し問題を手早く解き始める。

 

 

 

が、それは徐々に失速していき、まさにカタツムリの歩みが如く、その手は歩みを止めた。

 

 

『アレレ?まだ五十問目だよ?』

 

「いや、問題の数多すぎるでしょ!」

 

 

テスト用紙にはこれでもかと問題が敷き詰められており、最後尾の頭の数字を見れば、『問500』と書かれていた。

 

マークシート形式の問題とは言え、流石に多すぎではないのか。

 

 

『一問一点の計500問。でもこれは君が雄英の教師になるためさ。ほらほら、プルスウルトラ!プルスウルトラ!』

 

「そんな頑張れみたいに校訓連呼しないでくださいよ・・・」

 

 

途中途中煽られながら、文句を言いながらでダラダラと問題を解き進めていくこと、約一時間と三十分後。

 

ようやく500問目に辿り着き、その中から最も正しいと思える選択肢を塗り潰した。

 

 

『お疲れ様!さて、採点はこちらでやっておくよ」

 

マークシートをどこからともなく現れたマジックハンドに手渡すと、思いっきり背もたれに全体重をかける。

 

「いや、本当に多すぎ・・・」

 

 

くらくらと眩暈を起こす頭を両手で抑えながら、おやつ代わりに持って来ていたアーモンドチョコの菓子を食べた。

頭に糖分が流れ込んでいき、次第に眩暈が収まっていく。

 

しばらく背筋をだらりと崩し、そして段々と落ち着いてきたところで、いよいよ先程の疑問を持ち上げた。

 

 

「それで、さっきのアレはどういう?」

 

『本当に気づいてないんだね。君の見た目が結構変わっててさ。まるで八年前の君を見てるみたいで』

 

「八年前?」

 

 

八年前というと、ナイトアイと共にバリバリにヒーロー活動をしていた頃だろうか。

 

 

『体はまだ太さが足りていないけど・・・顔だけ見たらほんと、そんなに差はないよ?』

 

「そうですかね・・・?」

 

 

あまり実感はないのだが、しかし根津が冗談を言ってるとも思えず、うーんと口の中を鳴らす。

 

 

『ま、家に帰ってちゃんと確認してみたらいいよ』

 

「・・・分かりました。帰ったら確認してみますね」

 

『あと、帰りにリカバリーガールのところに寄っといてね』

 

「分かりました」

 

 

 

 

『・・・あ、それと今回のテスト不合格だから。また次回ね』

 

 

 

 

 

「分かりました・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへあッ!?」

 

 

 

 

あまりの衝撃に、思わず腰を抜かして椅子から崩れ落ちてしまう。

 

 

『しかも合計123点って。ギリギリでもなければ掠りもしてないし』

 

「123点ン!?!?」

 

 

もはや開いた口が閉じないレベルの衝撃を受け、椅子から崩れ落ちた体勢から立ち上がる気力も失せてしまう。

 

 

『正直助言も何もってぐらいだけど・・・まあ、その、もうちょっと頑張りなよ?』

 

「・・・はい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?もう一度言ってくれるかい?」

 

「記憶力が良くなる薬ってないですか?」

 

「あったら飲むのかい?」

 

「飲みませんね」

 

「じゃあなんで私に聞いたのよ」

 

 

ちなみにリカバリーガールは八木の心のケアはしてくれないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 

 

「オ、オールマイト・・・」

 

「・・・ああ、緑谷少年。私はもうダメかもしれない・・・」

 

 

緑谷が運ぼうとしていた冷蔵庫の上に座ったオールマイトは、クシクシと泣きながら夕陽を見ていた。

 

 

「重すぎ・・・るッ!」

 

「うう・・・あと残り八か月で教師になれるのかな、私・・・」

 

「話は後で聞きますから・・・早くッ上から降りてくださ・・・いッ!!

 

 

冷蔵庫に紐を括り、全筋力を用いて冷蔵庫を運ぼうとしていた緑谷だったが、オールマイトが上に乗ったことにより状況は一変。

それまで少しずつではあったが運べていた冷蔵庫は、まるで地面に根を張る大樹の如き不動さを持ってしまった。

それから何度も引っ張ろうと四苦八苦するが、しかし未だ冷蔵庫に動く気配はない。

 

 

「ただでさえこの冷蔵庫だけでも100㎏ぐらいありそうなのに・・・274㎏のオールマイトが上から乗ったらもう・・・!!」

 

「・・・いや、実は最近太ってね。今は293㎏あるんだ」

 

「なおさら運べないですよ!?!?」

 

 

ピクリとも動かぬ冷蔵庫にいよいよ体の方が悲鳴を上げ、ついに緑谷は力尽きた。

地面に横たわる緑谷を見て、それまで冷蔵庫の上で体育座りをしていたオールマイトはそこから飛び降りた。

 

 

「・・・緑谷少年。大丈夫かい?」

 

「ま、まあ何とか・・・」

 

 

紐を解き、緑谷を解放すると冷蔵庫を片手で持ち上げる。

そしてそれをトラックの方に運ぶと、荷台に積み上げた。

 

 

「クヨクヨしてても仕方ない、か。また一から勉強しなおさないとね」

 

「オールマイトでも悩みとかあるんですね・・・」

 

「人生悩みばかりだよ。・・・今の私が言うとちょっと格好が悪いけどね」

 

 

HAHAと笑うが、しかし真面目にこれからどうしようかと考える。

 

正直、今回は絶対の自信を持ってテストに臨んだ。

自分の渾身、全身全霊を叩き込んだつもりだったのだが、その結果はどうだろうか。

 

(・・・本当に教師になれるのかな?)

 

などと自分自身に質問を投げたくなるほどだ。

 

 

「僕に、僕になにか出来ることはありませんか?」

 

「緑谷少年・・・しかし駄目だ。これは私の戦いだ」

 

「オールマイト・・・」

 

 

戦っているのは自分の記憶力ということさえ除けば、めちゃくちゃにいい場面なのだが。

 

寂し気な背中は夕日と共に影に隠れていく。

 

 

「もうそろそろ時間だね。今日も一日お疲れ様!」

 

「あ、ハイ!お疲れさまでした!」

 

 

 

 

 

 

緑谷の背中を見送りながら、聞こえない様に重い溜息を吐いた。

 

(前まではタイヤ一つ運ぶのにすら苦労していたというのに。緑谷少年はこの短期間で既に、普通の学生とは比ではないレベルの肉体を作り上げている。・・・それに対して私は・・・)

 

身体を作ることと知識を頭に入れること。

道は違えど、どちらも相当の努力をしなければ身に付かないことだ。

緑谷はそれを二か月という短期間のうちに、しかも勉強も両立させながら着々と高めている。

デイヴのトレーニングプランのおかげかもしれないが、しかし元を辿ればそれは当人の決意と情熱、そして努力があってこそ。

 

だが、それに比べてオールマイトはどうだろうか。

 

 

「たかが教師と舐めていた・・・いや、舐めていたつもりは無くても心のどこかで慢心していた」

 

 

いつだってヒーローは命懸け。

いつだって全身全霊、本気で挑まなくてはならない。

たとえそれがゴミ拾いだろうとパトロールだろうとペーパーテストだろうと。

 

 

 

 

 

「それも出来なきゃ、ヒーローなんて名乗れやしない」

 

 

 

 

 

改めて決意を固めると、ページの端が既にボロボロになっている本を片手に、オールマイトは空へと跳んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『オイ、起きろヨオールマイト』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・んう?」

 

 

意識が覚醒し、目を開くと、そこは高層ビルの屋上。

細長いアンテナの上にオールマイトは立っており、町の輝きが瞳を焼いた。

 

 

「ここは・・・どこだ?」

 

 

目を細めながら、今の状況を整理しようとする。

記憶通りであれば、あの後ヴィラン事件を何個か解決した後にホテルに帰って、それから深夜の二時過ぎまで勉強をしていたはずだ。

 

しかし、眼前に広がる光景はもはや別世界。

 

 

 

 

故にこう考える。

 

 

「夢・・・?」

 

 

恐らくは勉強中に寝てしまったのだろう。

そしてそのまま夢の世界へと誘われたと。

 

 

「夢だろうな。夢に違いない」

 

 

思ったことを呟いただけの、ほんの僅かな独り言。

返事は期待してなどいなかったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夢じゃないゼ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで泥の中から呟くような、濁りのある返事がどこからともなく返ってくる。

 

 

『ヨウ、オールマイト。"久しぶり"だナァ?』

 

 

夜空を埋めるように端から現れる黒い影。

月明かりによって顔こそ見えないが、その影には確かに見覚えがあった。

 

 

「君は・・・あの夢の時の・・・!!」

 

 

声が出ないとはこのことだろうか。

様々な感情が色濃く渦巻き、口から同時にあらゆる言葉を打ち出そうとし、縺れて舌が上手く動かない。

 

(落ち着け、冷静になるんだ。ゆっくり深呼吸をするんだ・・・)

 

大きく深呼吸を繰り返し、脳の中身を整理する。

 

(とりあえずは一番気になることから先に聞くべきだ)

 

 

 

 

 

 

「君は・・・一体何者なんだ?」

 

 

 

 

 

 

安直だが、八木が一番に求めている答えはやはりこれだった。

 

 

暫くその黒い影は、首?の部分をクネクネと曲げながら、まるで何かを考えているかのような素振りを見せた。

 

 

『何者・・・そういや、俺はまだ自分の名前も考えちゃいなかったな』

 

 

縦に揺れ。横に揺れ。

その動作を暫く繰り返し、そしてビクンと動きを止めた。

 

 

 

 

GUU(グウ)、名前ねェ。俺に似合う素晴らシィ名前・・・』

 

 

 

 

と、その言葉がまるできっかけになったのかのように、月明かりは角度を変えて、黒い影に光を反射させ、隠れていた顔が浮かび上がった。

 

 

 

 

目元に浮かぶ白い模様。

口元に並ぶ白い歯と、それを濡らす真っ赤な舌。

 

 

 

 

 

 

『なら、こんな名前でドウだ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Venom(ヴェノム)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

I am Venom(俺はヴェノムだ)

 

 

 

 

 

 

まるでこの世に生まれたことを祝うように

 

 

 

 

 

ヴェノム(化け物)は笑った。




そういえばチョコレートには、サバとかイワシみたいに記憶力を高める効果があるらしいですね。
あと脳の中にあるフェネチルアミンとかいう物質もチョコレートは持っていると。



つまりサバ=チョコレート=脳だった・・・?
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