最近個性が芽生えました。   作:限界社畜あんたーく 

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他作品に浮気していたけど、モチベが帰ってきたのでヒロアカにまた手を付けます故、暫くのお付き合いをお願いします。
また久し振りに書くので色々とおかしい部分があるかもですが、ご容赦頂けますようお願い申し上げます。


というわけで本編です。
次回が多分長くなるのでその前座みたいな感じです。


17

時刻は朝の五時五十分。

若干厚めのコートで身を包んだオールマイトは、その道をマッスルフォームで進む。

右手に持つのはその体躯には似合わない携帯電話。

それを耳の近くに添え、顔に浮かぶ黒い影をより一層濃くしていた。

 

『やっぱり、君の意志は変わらないんだね』

 

「・・・はい」

 

電話相手の根津は、諦めたような口調だった。

 

 

数か月前。

根津にヴェノムと共に生きることを伝えた時は、最初は顎が脱臼するレベルの反応を取っていた。

そして根津の熱烈なる説得との戦が始まり、累計7時間以上の激闘の末、ある約束をすることでヴェノムとの共生が認められた。

 

 

その約束とは、『ヴェノムのことが世間一般にバレた瞬間即刻ヴェノムを処分する』こと。

 

 

とは言っても、このことは根津に話す前からヴェノムと事前に決めていたことだ。覚悟は出来ていたし、そもそもそのつもりだったので驚きは少なかった。

その契約を書面とボイスで記録した後は、雄英に務める教師一堂にヴェノムのことを明かし、なるべく火や高音波を──特にプレゼント・マイクを──オールマイトに寄せないように伝え、一先ずその場はお開きになった。

 

それからいくつかの会議と手続きを重ね、そしてついに入試当日の早朝、つまり今に至るわけだ。

 

『別に謝るようなことじゃないよ。それに、今更ヴェノム君を隔離しますとか言われたら逆に怒っちゃうよ』

 

これまでした会議と手続きの日数は、延べ一ヵ月を超える。

そしてその大半はヴェノムに対するものであり、オールマイトに関して見れば一日にも満たないだろう。

 

「その節は色々とお手数おかけしましたァ!!」

 

『本当に、色々疲れたよ。雄英の中の設計を一から見直したり、監視カメラの位置を少しズラしたり。その全ての許可やら確認やらを全部押し付けてくるんだから・・・うわ、今思い出すだけでも鳥肌が立ってくるよ』

 

電話越しでも頭が上がらない。本当に根津校長にはお世話になってばかりだ。

 

 

『・・・まあ暗い話はこれまでにして!それより、今日は期待の星達が集う入試当日!そして君は今回試験の審査官とその後の合否発表の役目を背負っているわけだ。どちらも欠かせない重要な仕事だ、無いとは思うけど遅刻しないように!それじゃ!!』

 

 

その言葉を最後に、根津からの電話は途切れた。

 

『話の長ェネズミだな』

 

「そう言わないでくれよ。・・・まあ話が長いのは私も思わなくもないけど」

 

『だろ?』

 

前に比べると随分と流暢に喋れるようになったものだ。とはいえ聞き取りづらいことには変わりない。

 

『しかし、今日が坊主の入試の日とはな。個性の継承はこれからするんだろ?大丈夫なのか?』

 

「それは緑谷少年次第さ。・・・ちょっと前にオーバーワークでブッ倒れちゃったけど」

 

ちなみにその日の夜は、プランを勝手に書き直してデイヴに叱られた。そしてデイヴがより良いプランに変えてくれた。

やはり持つべきは友である。

 

「でも、それぐらい緑谷少年の決意は固くそして熱い。だからきっと大丈夫さ」

 

『だが、まだ個性の使い方も教えてないだろ?』

 

「それはぶっつけ本番ってことで!」

 

『本当に大丈夫かコイツ・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうこう喋っている内に、無事海浜公園の入り口に辿り着いた。

そのオールマイトの目に映ったのは───。

 

 

 

 

「おい、オイオイオイ!!!嘘だろう!?!?」

 

 

 

 

時刻は午前五時。

 

視界に澄み渡るは端から端まで全てが白い砂浜だった。

 

 

 

「指定した区画以外まで、チリ一つなくなってやがる!!」

 

 

 

その砂浜に前まで埋まっていたゴミ共は、皆すべてが入口の隅に寄せられている。

棚から冷蔵庫、ドラム缶からパイプ、有刺鉄線から廃車まで。

 

 

全てのゴミが積もったその山の頂上。

 

 

 

 

 

そこに立つのは、まさしく勝者であった。

 

 

 

 

「完成以上に仕上げやがった!!オーマイ、グッネス!!!!」

 

『入試当日に無理しやがって!クソカッケーじゃねえか、あの坊主!』

 

 

 

だが、流石にその代償は重かったのか。ふらりと揺れると、緑谷はうつ伏せに倒れ込みかけてしまう。

 

「お疲れ!」

 

「オールマイト・・・僕・・・出来た、出来ました・・・!」

 

「ああ!本当に驚かされたよ!見てよコレ!10か月前の君!」

 

ひょろっひょろの身体に情けない顔で這いつくばる緑谷の写真。

こういっちゃなんだが待ち受けにしてるぐらい気に入ってるその写真を、火照る緑谷にドっと見せつける。

 

「よく頑張ったよ、本っっ当に!!!とはいえ蜃気楼の入り口が見えてきた程度だけど!確かに器は完成した!!」

 

「・・・なんか、ズルだな・・・僕は・・・・・・」

 

 

瞳から鼻先まで伝う大粒の涙。

それが堪らなく泥臭く、それでいて美しかった。

 

 

 

 

「オールマイトにここまでしてもらえて・・・恵まれすぎてる・・・」

 

 

 

 

『ケッ自分の努力の賜物のクセしてよく言うぜコイツ』

 

全く持ってその通りだ。

彼が努力したからこそ、彼がそれを望んだからこそ、オールマイトに認められたのだ。

とはいえそれを本人に伝えても謙遜されるだけろう。ゴホンとわざとらしく咳をすると、緑谷の視線を自分へ向かせる。

 

「その泣き虫も治さないとな!さァいよいよ授与式だ、緑谷出久!!」

 

「・・・はい!」

 

髪の毛を一本抜くと、それをそよ風に見せびらかすように靡かせる。

 

「これは受け売りだが、最初から運良く授かったものと認められ譲渡されたものではその本質が違う!

 

 

 

肝に銘じておきな。これは君自身が勝ち取った力だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴクリと生唾を呑み込む。

そうだ。今から僕はオールマイトの力を、コミックもびっくりの現実をその手に掴むのだ。

緊張と興奮が入り混じり、変に呼吸が荒れる。

しかしどのように個性が譲渡されるのだろうか。

気を与えるように、オールマイトが力むと個性が自然と譲渡されるのだろうか?それとも何か儀式的なものを施すのか?はたまた現実的に注射器を使ったり───

 

「食え」

 

 

───いやオールマイトに限ってそんなことはないだろう。それこそ想像もし得ないようなファンタジーかつ王道な方法で個性を───

 

 

「食え」

 

 

 

───ま、まさか髪の毛を食えだとか、そういうロマンも見栄えも悪い個性の譲渡は・・・無いと信じたかった。

 

若干光が消えた瞳でオールマイトの握る髪の毛を見る。

 

 

 

 

「食え」

 

 

 

 

「・・・えぇ?」

 

 

 

別に髪の毛を食べるくらいなら問題は無いが、にしてもロマンというか見栄えというかなんというか。とりあえず良い気はしない。

 

「別にDNAを取り込められるなら何でも良いんだけどさ!さァ時間が勿体無いぞ!」

「思ってたのと違いすぎる・・・!」

 

しかしオールマイトの言う通り、四の五の言ってる時間は無い。

オールマイトが握っているピンと立った髪の毛を丁寧に受け取る。

その毛は黄金に輝いており、風で靡く姿は別の生き物のような生命感とも言うべき神秘さを感じられる。

人の毛に対し何を言っているんだと言われそうだが、その毛には確かに意思のようなものがあるように感じられた。

 

だからなのだろうか。どうしても拒絶心というか、オールマイトの力と同時に何かいけないものを取り込むような、謎の恐怖に駆られてしまう。

 

(いやいや落ち着け!これはオールマイトの力を継ぐための神聖な儀式なんだ!髪の毛の一本くらい、朝のスムージーを飲むような感覚で────)

 

 

「ほらほら!早く食べなサイ!!」

「ングッ!?」

 

 

オールマイトに強く背を叩かれ、口に含もうとしていた髪の毛を勢いのまま飲み込んでしまう。喉と食道を通り過ぎる異様な感覚は体に拒絶反応を引き起こし、自然と嘔吐反射を行おうとする。が、それをなんとか耐え忍び一気に呑み込むとそのグロッキーな表情をオールマイトへと向けた。

 

「よし!食ったな毛!」

「食べました・・・があまり体に変化が感じられないんですけど」

「そりゃそうさ!君は胃腸をなんだと思ってる!」

 

それはそうだが、もう少し譲渡の方法はどうにかならなかっただろうか。DNAならもっと別の・・・いや、それはそれで嫌ではあるが。

 

 

「あと2〜3時間もすれば実感が湧くさ。入試試験が始まるのが今から3時間ぐらいだから・・・雄英の門を潜るぐらいには個性が身についているんじゃないかな?」

「そうですかね・・・って!あと3時間!?早く帰ってシャワー浴びてご飯食べないと!!」

「あぁそれと!家に戻る前にこれだけは伝えておこう」

 

オールマイトからの最後のアドバイスを脳裏に刻むと、急ぎ足で家へと戻った。

 

 

 

 

これまでは遠かったはずの家への道が、今日だけは妙に短く感じる。トレーニングのおかげなのか、はたまた背を押してくれたオールマイトのおかげか。

胸高らかに走ると、決意を固め天を仰ぐ。

 

 

 

 

「なるぞ!オールマイトみたいなヒーローに!!」

 

 

 

 

 

入試まであと3時間。

 

果たして緑谷の運命や如何に




ちなみに次回からは緑谷の入試試験編です。オールマイトの出番はまた今度〜。
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