でもそのかわりちょっと短め。
警察の元へ向かいながら、先ほどの少年のことを考える。
本当に、アレでよかったのかと。
無個性の子をヒーローにする方法を、オールマイトは持っている。
だが、それを行うに値する相手かと言われれば、正直首を傾げてしまう。
(せめて彼に、ヒーローとしての素質があるのであれば・・・)
何かしらの形で、自分にヒーローになりうる可能性を見出してくれればあるいは。
「うお!?オールマイトさん!?」
「・・・ワッツ?もう着いたのか!」
どうやら思考の方にリソースを裂き過ぎて、自分が警察所に着いたことに気が付かなかったらしい。
二人の警官がオールマイトに羨望の眼差しを向けつつ、しかし職務を全うするという確固たる意志がそのまっすぐな背筋に現れていた。
「一体どのようなご用件で?」
「
「なるほど、
一人の警官たちが動き、裏から拘束用の四輪車を持ってくる。
一本の柱に六本のベルトがぶら下がっており、そのベルトを胴体に巻いて拘束する仕組みだ。
しかし、それは自分が求めているものではない。
「オット、説明が足りなかったね。液体状の
「カプセル式ですね。・・・して、その
「ほらここに・・・ここに・・・?アレ?」
ズボンのポケットの部分に手を当てるが、叩けるのは自分の太もものみ。
両方の太ももを触り、ポケットの底の布を抜き出したりしてみるが、ペットボトルが出ることはなかった。
(まさか・・・あの時か!!)
少年が足にしがみついた時。
あの時オールマイトは少年を引き離そうと足を振り回していた。
恐らくその時に落ちたのだろう。
「・・・オールマイトさん?」
「SHIT!どうやらヘマをしてしまったらしい!!」
「「え、えぇーー!?!?」」
(どうする?町の中に落ちただけならいいのだが。だが、キャップが取れて、中の
最悪の予想をした瞬間、遠方から爆発音が響いた。
しかも連続して爆発を引き起こしており、それが個性によるものであると察した。
(ヒーローの中で爆発系の個性を持っている者は静岡県内にはいないはず。また、この連続爆発の仕方は意図的に連続させているものではなく、まるで何かから逃れようとするかのような、なりふり構わず爆発させているような連続の仕方だ。つまり、爆発させているのは一般人で、その近くに
遠くで響く音だけでここまでの分析を終えると、すぐさま地面に足を踏ん張る。
「お、オールマイトさん!?」
「クゥ?!どうやら取り逃がした
「「了解!!」」
まるで軍の指揮官が自衛隊に命令を下したかのような統率力で、警官一同はせっせと袋を用意し始めた
それを見届けた後に、オールマイトは今日で三度目の跳躍を行った。
ちなみに急ぎ過ぎて思った以上の高度まで跳んでしまったが、それはまた別の話である。
◇■◇■◇
爆心地には多くの人だかりができていた。
一同が見ているのは
『オォオオオオオ!!!」
道が細く動けないヒーロー、爆炎が苦手なヒーロー、消火活動に勤しむヒーロー、流動性のため
場にいる民間人の多くはヒーローの活躍を求め、ヒーローはよりこの状況に対応できるヒーローを求めていた。
故に誰も動かない。
故に誰も助けない。
より優れた誰かが来るのを待っている、その希望と期待が渦巻くからこそ、人の波は一向に揺らぐことは無かった。
そんな人だかりの中に、一人の少年が紛れた。
(そんな・・・まさか僕があの時、オールマイトの足にしがみついてたせいで・・・!!)
少年の心にあるのは、深い懺悔と後悔。
もし、自分がヒーローに憧れていなければ。もし、自分が今よりもっと前に折れていれば。
こんなことにはならなかったかもしれない。
「つかまってるの中学生だってよ」
「スゲータフネス」
「てかヒーロー何してんの?」
傍観者の一部の声が聞こえ、苛立ちが募る。
(この場にいるヒーローにはこの状況をどうにかする方法が無い!だから動けないんだ!)
状況が理解できない民間人と、理解していても何もできない自分に、呆れと憤りが重なる。
その感情を吐き叫びたい気持ちで一杯になり、しかしその口は自分の手によって押さえられる。
(僕が叫んだってどうにもならない。大人しく有利な個性持ちが来るのを待つしかない)
潔くその場から離れようとする。
どうせここにいたって自分は何もできないのだから。
(同じ中学生なのに、あんな苦しいのを耐えれるなんて・・・でも、僕には何もできないから。ごめんなさい・・・あともうちょっとでヒーローが助けてくれるから頑張って・・・)
どこか名残惜しい気持ちを抑えながら、
その顔が見えた。
まるで誰かに助けを求めているかのような、悲しそうな顔を浮かべていた。
刹那、自分の足は頭が命令するより前に、既に動き出していた。
否、もしくは命令なんてしていなかったのかもしれない。
だが、勝手に足は動き出した。
本能がそうしたいと叫んだ。
故に少年は、大地を踏みしめ敵に向けて駆けた。
「馬鹿ヤロォーー!!!止まれ止まれ!!!!」
背後から聞こえるヒーローの声。
少年もまた、自分がなぜ走っているのかは理解できていなかった。
『
(どうしよどうしよ!こういう時は・・・25
25P。
シンリンカムイの代表的な技であるウルシ鎖牢について書かれたページである。
ウルシ鎖牢は相手の全面にツルを伸ばし、それにひるんでいる隙に相手を拘束する技である。
被害を抑えるには最善の一手であり、対
その技を真似るように、背負っていたリュックを
「しぇいッ!!」
『ぬ"っ!?」
視界が遮られているその隙に、少年は中に取り込まれている者の傍へと近寄り、周りを縛る液体を振り払う。
「かっちゃん!!!」
顔の部分の液体が取り除かれ、かっちゃんと呼ばれた少年は荒い呼吸を何度も繰り返す。
そして息がある程度落ち着いたところで、大きく息を吸い込んだ。
「何でテメエが!?」
必死そうな、しかし相手に対する苛立ちを抑えられない、聞き慣れたその声が鼓膜を揺らいだ。
理屈や理由はいくらでもあったと思う。
ただその時は、その時に最初に浮かんだのは──。
「──ッ!!!!!!!」
その時、空の遥か上空で、その様子を見る者がいた。
その者は数分前の、自分が少年に向けてかけた言葉を思い返していた。
『悪に屈せぬ強き心や、正義の名を背負う重圧、またあらゆる状況場面に適応し、柔軟に対処する頭脳が必要なんだ』
彼のあの姿は、
(少年はその全てを満たしている!!そして、もう一つ!!)
彼は何のために今、あの場に立っているのか。
ヒーローに憧れたから?
違う。
自殺志願者だから?
違う。
目立ちたかったから?
違う。
彼は人を助けるために、本能のままに動いたのだ。
そして不完全ではあるが、助けられるその前提まで一直線に攻略したのだ。
「
感動により引き起こされる激情。
体の芯から震えが走り、一筋の涙が頬を伝う。
これは感動の涙でもあり、後悔の涙でもあった。
──どうやら私は、彼のことを
空から急降下し、少年のすぐ真横に降りると、左手で二人の少年を引っ張り上げ、右拳を力強く握り込んだ。
脈が浮き、筋肉は隆起し、そして金属のように硬質な輝きを放ち始める。
「プロのヒーローがッ原石の輝きを見出せないなどッ全くもって情けない!!」
放つ拳はフルパワー。
質量に似合わぬ超高速を纏った拳は、
豪腕から爆発するように広がった超高威力の風圧。
敵の姿は見る影もないほどに吹き飛ばされ、その威力は静岡県内全域の風の向きを変える程だった。
ポタ
圧倒的な風圧により上昇気流が生まれた結果、一帯の空気が上空で冷やされ、その結果雨雲が出来たのだ。
圧倒的な力は、
「おいおいおいおい!!!」
「まさか右手一本で天候が変わるなんて!?」
「スゲェェェェェエエエエエ!!!!これがオールマイト!!!」
「半端ネエエエエエ!!!!」
民間人、ヒーロー、そしてその場に偶然通りがかった記者や取材陣に取り囲まれ、賛美と羨望、驚嘆と畏怖の喘ぎと叫びが辺りを包んだ。
そんな中、オールマイトは地面に横たわる一人の
(よく、よく頑張ったな少年。
空跳ぶオールマイト。
あまりの高さまで一気に飛んじゃったせいで、降りるのにしばらく時間がかかったオールマイト。その代わりにデクのヒーローとしての才覚を見いだせたので、結果ヨシ!
ラストの方のオールマイト。
セリフが思いつかなかった・・・。
次回も短めになる予定。
投稿日は未定。
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