最近個性が芽生えました。   作:限界社畜あんたーく 

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アレ?なんか俺毎日投稿してない?





その日の夜。

 

ホテルの自室にて、八木俊典は机の上のパソコンと睨めっこをしていた。

 

少年の体を作り上げるべく、オールマイト直々に作ることを決定したトレーニングメニュー。

しかし人に教育を施す才が皆無なオールマイトにとって、他人のトレーニングメニューを作るなど、屏風に描かれたトラを縛り上げるが如く無理に近い。

不幸中の幸いか、トレーニングに関してはある程度の知識があるので、それをある程度参考にしつつ雲を形にしようとするが・・・。

 

 

「・・・駄目だ。学校での勉強も両立しながら、このレベルのトレーニングとなると、流石に緑谷少年の身が持たない」

 

 

言わずもがな、OFAの継承にはそれに合った肉体を備えなければならない。

一般人に月を一発で砂に変えられる量子咆を与えても、放つどころが狙いを定めることすらままならないのと同じだ。

そのため、緑谷少年の肉体をOFAを継承できるほどの器に仕上げる必要があった。

 

 

頭を悩ませ、首を回して、唸りに唸って。

張り詰めた空気は臨界点に達し、ついに爆発した。

 

 

「AHッ!もう分からない!私には無理だ!!もう無理!!」

 

 

パソコンを無理矢理シャットダウンさせると、ベッドにダイブし、そのままゴロゴロと横に回転する。

その時、そのダイブと回転の衝撃で、胸ポケットのスマホが落ちる。

スマホはベッドの上を数回バウンドし、そしてベッドと壁の隙間にストンと納まった。

 

 

「SHIT・・・はあ」

 

 

起き上がりベッドの隙間に手を伸ばす。

手にスマホの角が当たり、それを頼りに引っこ抜くと、パッと画面に明かりが付く。

どうやら電源ボタンか指紋認証ボタンに触れたらしい。

 

暫くその画面をボーっと見て、無料コミュニケーションアプリのRAIN(レイン)を開く。

『緑谷少年』と書かれたトーク画面を開き、そこに長々と書かれた自己紹介文と挨拶を読む。

 

 

「・・・ハハ」

 

 

ふと笑みが零れてしまう。

念願の後継者。それがここまで可愛い存在だとは、オールマイト自身思っていなかった。

彼もいつか、次世代のオールマイト(全てを救う者)になるのか。

その実感がふつふつと沸き、妄想が膨らんでいく。

 

「おっといかんいかん」

 

トーク画面を閉じ、パソコンに面と向かって座る。

さてどうしたものかとキ―ボードに文字を打ち込もうとした瞬間。

 

 

『レイン♪』

 

「うん?」

 

 

スマホからレインのメッセージ着信音が鳴る。

画面に目を向ければ、そこには懐かしい名前が載っていた。

 

 

 

 

 

「デイヴか!」

 

 

 

 

 

デヴィット・シールド

オールマイトがアメリカにいた頃の相棒。世界的な科学者で、多くのヒーローのサポートアイテムを開発している。

ルーキー時代のヤングエイジ。黒と赤多めにしたシック調のブロンズエイジ。赤と黄色と青がはっきり分かれて配色されたシルバーエイジ。そして現在身に纏っているゴールデンエイジ。

これらオールマイトのコスチューム開発も、全て彼が担当していた。

現在は人工移動島(I・アイランド)に研究所を構え、娘と暮らしている。

 

多忙な日々を過ごしており、簡単に連絡を寄こせるような状況ではないと思うのだが。

 

 

「ま、連絡送ったの私なんだけどね。HAHA!」

 

 

 

緑谷少年と件の話を終えた後、デイヴにあるメッセージを送った。

その内容を簡潔に述べると、

 

 

『連絡を取るのは久しぶりだなデイヴ!調子はどうだ?私は実は結構調子が良くてね!吐血することも少なくなって、マッスルフォームを維持できる時間も延びた!でもその原因がよく分からないんだ。そこで、君に僕の体に何が起こっているのか調べてほしいんだ!勿論その分のお礼はするよ!君は前から寿司を食べたがっていただろう?それを腹が破裂するんじゃないかってぐらい食べさせてあげようじゃないか!それじゃいい返事を期待しているよ!』

 

 

というものだった。

これでも結構長めに感じるだろうが、オールマイトはコレの32倍ぐらいの文量のメッセージを送っている。

 

 

さて、それに対するデイヴの返信はというと、

 

 

 

 

『分かったよ。明日そっちに向かうね』

 

 

 

の、たった一文だった。

 

 

「今忙しいんじゃなかったの・・・?」

 

 

事情はどうかは知らないが、唐突に日本へ行けるほど忙しくないわけでもないだろう。

しかし本人がいいというのであれば、つまりいいということではないのだろうか。

 

 

「・・・なら緑谷少年のトレーニングメニューも作ってもらえるように頼めばよかったかな?」

 

 

自分が作るよりかは遥かに良い出来のモノが作られるはず。

厚かましいが、頼めば作ってくれるのではないか。

 

 

「でも、了承を貰った後にこれを聞くのはちょっと・・・気まずくない?」

 

 

と言いつつも、ニッコニコで作ってもらえるかを頼んだオールマイトだった。

 

 

 

 

ちなみにこの後、『全然いいよ』と一言だけ返って来た。

 

 

「本当にいいのかな・・・?」

 

 

 

 

 

 

◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 

翌日の昼頃、八木俊典の姿(トゥルーフォーム)で駅前で待っていると、馴染み深い顔が現れた。

 

 

「久しぶりだなトシ」

 

「ああ、本当に久しぶりだな、デイヴ」

 

 

黒縁眼鏡に揃えた顎髭。

髪を短く切り、年相応の落ち着いた印象を受ける。

 

デイヴは両手をバッと広げた。

一瞬何をしようとしてるのか分からず戸惑ったが、その後すぐにハグをする気なんだなと察し、同じように両手を広げた。

そして互いに肩を抱き合い、ハグをする。

 

しかしデイヴはハグした瞬間、プロレスラーもびっくりの鯖折りを仕掛け始め、思わずウゲッと悲鳴を上げる。

 

 

「ちょ、キツイキツイ!!」

 

「・・・本当に吐血しないんだな」

 

「え?何て?」

 

「なんでもないさ」

 

 

するとすぐさま腕を解き、すまないと軽く謝罪された。

 

 

「さて、早速だがこれを」

 

「ん?コレは・・・」

 

 

右手に下げたバッグからファイルを取り出し、その中から束の紙を渡された。

表には『目指せ合格アメリカンドリームプラン』と書かれている。

 

 

「普通の中学生が君の個性の譲渡に耐えられるほどの肉体に仕上げるには、流石にコレぐらいしなきゃいけなくてね。少々ハードになっているが許してくれ」

 

 

パラパラと捲ると、八木俊典(オールマイト)も思わず顔を顰めるような、ハードトレーニングの数々が日程ごとにそれぞれ分けられていた。

しかも、トレーニングのためのバランスの取れた食事メニューや、授業中にも出来るトレーニングメニューの数々まで載っている。

 

 

「これを一晩で作ったの!?」

 

「いや、数年前にこんなこともあろうかと作っておいてね。それを少し書き換えただけだ」

 

「数年前からって・・・」

 

 

相変わらず、デイヴの用意周到さには驚かされる。

しかしだからこそ、疑問に思ってしまう。

 

 

「・・・本当に大丈夫なのか」

 

「大丈夫って、何が?」

 

「いやほら、君って今相当に忙しいそうじゃないか」

 

「・・・ああ、そのことか。それなら問題ないよ」

 

「本当か?」

 

「本当だ」

 

 

嘘を吐いている様子はない。しかしどこか引っかかる。

マジマジとデイヴの顔を見つめていると、流石に白状する気になったのか大きなため息を吐いた。

 

 

「・・・実はメリッサから、『パパは毎日お仕事しすぎ!今日から二日間、絶対に休むこと!!』と言われてね」

 

「ああなるほど。・・・で、日本に行くって?」

 

「伝えたら『それって休んでるって言えるの?』と言われたよ『息抜きには丁度いい』ってすぐに返したけどね」

 

「で、OKを貰えたのか」

 

「『じゃあお土産も買ってね』と釘を刺されたよ」

 

「道理で背中のリュックが(しぼ)んでいるわけだ」

 

 

背中のリュックはお土産用ということだろう。

 

 

「さて、会話も程ほどに、スシに行こうじゃないか」

 

「あまり食べ過ぎないでくれよ?私の懐が南極以上に寒くなってしまう」

 

「ならこれからリキシでも呼ぼうかな?」

 

「狭いカウンターに力士を並べるのか?それは相当暑苦しいぞ」

 

「なら懐も温まるんじゃないか?」

 

「ウマイ事を言うねェ」

 

「寿司だけにウマイって?」

 

「・・・もうやめよう。これ以上喋ると懐どころが体も凍える」

 

「そうだね」

 

 

 

 

 

二人で談笑しつつ、行きつけの高級寿司屋に向かう。

扉にはデカデカと『貸し切り』と書かれているが、それに構わず暖簾を潜った。

 

 

 

「・・・いらっしゃい」

 

 

 

深い皺と濃い眉が特徴的な板前が、少々暗めの挨拶で出迎えた後に、こちらをジッと見つめてくる。

 

 

 

 

「俊典。随分と老けたな」

 

 

 

 

男の名は板前(ばんぜん)三代(みしろ)

オールマイトの正体を知る知り合いの一人で、この寿司屋の三代目の板前でもある。

 

その昔、この店に突如現れた(ヴィラン)を退治したのがオールマイトの師匠グラントリノだった。

グラントリノと板前はその時に意気投合したらしく、それから何度か酒を吞み交わし、グラントリノは酔った勢いで板前にOFAのことを話してしまったらしい。

 

そしてその場にばったり出くわしてしまったオールマイトはその巻き添えを喰らい、今もこうして口止め料(お世話)になっているというわけだ。

 

 

「かれこれ数十年経ちますからね。三代さんも元気そうで」

 

「フン、景気は悪いがな。で、その横のが」

 

「ああ、デヴィット・シールド。私のアメリカ時代の相棒さ」

 

「初めまして」

 

 

デイヴは軽く頭を下げる。

鼻息荒く「フン」と一蹴すると、手に持っていた新聞紙を閉じた。

 

 

「うちにゃナイフとフォークはねえぞ」

 

「大丈夫です。ハシの使い方は前もって勉強してきましたから」

 

「・・・ふうん」

 

 

生返事を返し、せっせと準備を始める板前。

その間、デイヴはカバンからノートPCを取り出していた。

ノートPCからは黒いコードが伸びており、その先はPCを取り出したカバンに伸びていた。

 

 

「じゃあこれから内臓をチェックするから、上着を脱いでシャツを捲ってくれ」

 

「え?どうやって内蔵を見るんだい??」

 

「コレを使うんだ」

 

 

カバンから細長い筒のようなものを取り出した。

筒の先端にはカメラのようなものが付いており、それが光を反射して様々な色を放っている。

 

 

「ナニコレ?」

 

「これは僕が作った『内臓トカスケール君』だ。この先端のカメラを体に当てると、体の内部を一瞬でスキャンすることが出来るんだ」

 

「何そのハイテク装置!?」

 

「僕が作ったんだよ」

 

「それは今聞いたよ!!」

 

 

ツッコむのも程々に、上着を剥いでTシャツを捲る。

割れた腹筋と、そこにヒビのように生えた傷を見せると、デイヴは憎々しげにその傷を睨んだ。

 

カメラの先端にライトが灯ると、それを八木の腹に当てようと手を伸ばしてくる。

 

 

「痛くないよね?」

 

「痛くないよ。ほんの少し冷たいだけだ」

 

「OHッ?!」

 

 

思ったよりも冷たく、体がブルンと震える。

しかしデイヴは手を止めることなく、そのままくねくねと腹全体をなぞる様にカメラを回す。

 

 

「・・・オイ、イチャつきてェならここから出てけ」

 

「イチャついているわけじゃ・・・OHH!?!?」

 

「ったくよ。プロヒーロー様がなんつう悲鳴上げてんだ」

 

 

暫くして、十分データが取れたのか、デイヴは内臓トカスケール君をカバンの中に戻した。

そしてキーボードをパチパチと叩き始める。

 

 

「・・・で、なんで内臓なんて見てんだ?」

 

「いや実はかくかくしかじかで・・・」

 

「ヘェ。道理で吐血しねェ訳だ」

 

 

寿司を握りながら、渋い笑みを浮かべる板前。

 

さて、と一呼吸置くと、色とりどりの寿司が盛り付けられた皿が、カウンターにドンと二つ置かれた。

 

 

「あいよ。醤油とわさびは自分でつけな」

 

「うわー、美味しそう」

 

 

割り箸をパキリと折り、早速食べようとする。

が、箸先はマグロの赤身に触れる前に止められ、目線がデイヴの方向へ向いた。

日本に来たのは自分(八木)のためなのに、私が先に食べるのはどうかなと思ったからだ。

 

 

「・・・食べないの?」

 

 

真剣な顔をするデイヴに水を差すようで申し訳ないが、しかし早く食べたいという欲求が勝り思わず聞いてしまう。

 

しかし、返答は返ることなく。

 

 

「・・・・・・」

 

 

沈黙を二十秒間貫き通した後に、

 

 

 

 

 

「・・・は?」

 

 

 

 

 

煽りなど一切含まれていない、純粋な疑問と驚きによる素の声が、その口から漏れた。

こんな声を出したデイヴは見たことも聞いたことも無い八木は、素直に驚いてしまう。

 

 

「ど、どうしたんだ!?」

 

「ああ、いや、あまりにも衝撃的過ぎてね」

 

 

言葉自体は冷静沈着だが、声色は興奮状態。

声根の部分はブルブルと震え、それは指にも現れていた。

 

 

「・・・本当にどうしたんだ?」

 

「・・・トシ、これを見てくれ」

 

 

デイヴからノートPCをズイと渡される。

目の前の皿を横に寄せて、PCをテーブルに乗せると、その画面をまじまじと見つめた。

 

映っていたのは、CG化された内臓だった。

色彩は全て肌色に染まっているが、形だけ見ればそれが五臓六腑全てを表していることは、八木でも理解できた。

 

しかし、分からないことがある。

 

 

 

 

「デイブ。()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

医学的な知識はないが、その画面に映っているのはどうみても自分の内臓ではなかった。

 

八木俊典の内臓は胃袋が摘出されており、他の臓器にも肉眼で確認できるほどの深い傷が走っている。

不健康と言うにはあまりに不適切。言うなれば()()()()()とも呼べるほどの、あまりに凄惨な環境となっている。

対して画面に映っているのは、中学生の保険の教科書に載ってもおかしくはないほどに、全内臓が完璧な形と配置を保った状態で並べられていた。

 

 

「こんなに綺麗な臓器を比較に出されても、とてもじゃないが参考にはならないぞ?出すなら君の臓器の写真を見せてもらいたいね」

 

「その言い方だと僕の臓器が悪いみたいじゃないか。間違ってはいないけどね。でも、確かにこの写真に写っている臓器は綺麗だ」

 

 

まるで見とれるように、まるで魅入られたように、その臓器をマジマジと見つめるデイヴ。

そしてフウ、と決心がついたかのような吐息を漏らすと、八木を正面から見つめる。

 

 

 

 

「いいかい、よく聞くんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今映っているこの臓器は、君の臓器だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はへ?」

 

 




デヴィッド・シールド:デイヴ
ヒロアカ映画の第一作目に登場したキャラクター。
ちなみに投稿者は口調を覚えていないので、適当になっている。

板前三代
オリキャラ。個性は『長持ち』で、触れたモノの鮮度を三十分間の間新鮮なままで保つことが出来る個性。
頑固というより堅物なイメージだが、意外にもグラントリノとは仲がいい。
何なら酒を持たせて二人を放置すると、ツイスターゲームを二人で始めるレベル。
今後の登場予定は無し。ワンチャン登場かも。

口止め料
口止め料と書いているが、実際は「バラシはしないが、その代わりにうちを贔屓にしてくれ」というもの。

次回は流石に遅くなるだろ・・・遅くなるはず。多分。


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