最近個性が芽生えました。   作:限界社畜あんたーく 

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一日放置して投稿したのが4000文字以内ってマジ?





午前十時十分。

 

雄英高校、校長室にて。

二つの影が向かい合う様に椅子に座っていた。

 

 

「久しぶりだね八木君」

 

「根津さんもお元気そうで何よりです」

 

 

小さな椅子に座るのは傷面のネズミ。

向かいに座るのはトゥルーフォームのオールマイト(八木俊典)

大きさ的にはあまりにネズミの方が小さいのに、何故だか八木の方が小さいように感じるのは、目の錯覚だろうか。

 

 

「君が雄英の教師をやりたいなんて言い出した時は、何の冗談かと思ったけどね。ああもちろん、やましい意味ではないよ。単に驚いただけさ」

 

「私がヒーローとして活動できるのも残り僅か。その間に、次世代を任されるであろうヒヨッコ達に、与えられるモノは与えておきたいんです」

 

「枯葉が若葉の養分となる、か。これまた風情だね」

 

 

皮肉に聞こえなくもないが、本人は至ってその話を真面目に聞いている。

それは八木も分かっているようで、特に反応することはなかった。

 

さて、と根津は引き出しから複数枚のプリントを取り出す──前に、八木へそのつぶらな瞳を向けた。

 

 

 

 

「ところで本題に入る前に・・・()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

八木の体がビクリと震え、そして硬直する。

しかしそれも束の間、すぐに強張った体を解すと、背筋を正して根津に向き直った。

 

 

「やっぱり分かっちゃいました?」

 

「そりゃ分かるとも。叫んだだけで吐血するような君が、今日は全く吐いてないんだから」

 

 

やはり判断基準は吐血か。

別に必要は無いと思うが、脳内のメモ帳に書き記しておく。

 

 

「しかし奇妙だね。胃袋全摘に呼吸器官の半壊。その他器官の損傷に加えて、後遺症とその他諸々を腹の中に抱え込んでた君が、まさかそこまでの健康体になるなんてさ」

 

「私もそれを聞かされた時は、思わず目が点になりましたよ」

 

「相手はリカバリーガール?いやリカバリーガールからはそんなことは聞いてないし、考えられるとしたら・・・デヴィット・シールドさんかな?」

 

 

いとも簡単に言い当てられるが、しかし驚きはしない。

根津の個性は『ハイスペック』。

その頭脳は人のそれを軽く凌駕しており、あらゆる事象、あらゆる物事に対しての洞察力は並のヒーローなど相手にはならないだろう。

そんな根津の頭脳をもってすれば、オールマイトの体を診たのが誰なのかを推測するなど、朝飯なんていらないレベルだ。

 

 

「それで?回復の度合いは?流石に全回復なんてことは無いと思うけど」

 

「それが実は・・・」

 

 

カクカクシカジカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えええーーーーーーー!?!?!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの小さな体から出たとは思えない、馬鹿デカい声が校長室内に響いた。

 

 

「全回復!?ええーー!?!?」

 

「ね、根津さん!?」

 

 

驚きすぎて痙攣している根津に、流石に心配の眼を向ける八木。

まさか自分の想定以上の答えが、しかも絶対にありえないと考えていた答えが返って来たのだから、そりゃ驚くのも無理はないだろう。

 

 

数分後、ようやく落ち着いたのか、コーヒーをガブ飲みしながら、ゆっくりと深呼吸をし始めた。

 

 

「個性の介入ね・・・確かにその線ならあり得るけど。でも、一体全体何が起こったらこうなるのさ?」

 

「それは私にも・・・」

 

「うーん・・・」

 

 

暫しの思考。

その間に根津の頭では何がどれだけ展開されているのか、八木は知る由もない。が、唯一分かるのは根津がいつも以上に熟考しているということだけだ。

 

そして幾秒か経った後に、まるで開き直ったように笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

「全く分からないね!ハハッ!」

 

 

 

 

 

 

 

流石の根津でもお手上げなのか、両手をブラブラとさせる。

 

 

「根津校長でも分からないことが?」

 

「私は全知全能という訳じゃないからね。ただの頭のいい小動物さ」

 

 

その頭の良さが人のソレを逸しているのだが。

しかしそこにツッコむことはなく、根津は淡々と話を進めていく。

 

 

「しかし、個性が完全修復・・・又は回復とはね。これまた凄い個性だ。そんな個性があるならヒーロー側(コッチ)に情報が来てもおかしくないんだけど・・・」

 

「ヴィラン、という可能性も・・・」

 

「じゃあなんでヴィランになったんだろう?家庭環境?友人関係?人格破綻?はたまたその全て?」

 

 

疑問をいくら深堀しても、出てくるのは疑問のみ。

熟考しすぎて疲れたのか、フウと息を吐いた。

 

 

「分からないね。取り敢えず、このことはヒーローと警察に任せるとしようかな。そっちの方が手っ取り早いし」

 

 

ヒーローの中には、探偵のように情報収集や事件解決などを旨とする者がいる。

そちらの方に頼んだ方が、自分たちの足で探すよりも早いだろう。

 

さて、と根津はこちらに目線を向ける。

その瞬間、全身の毛が粟立つような感覚と共に、上から下まで電撃が走った。

 

 

 

 

「本題に入ろう!これから君が教師になるにあたっての話だけど」

 

 

 

 

(来たか・・・!)

 

拳を強く握り、覚悟を決める。

 

 

「以前言った通り、君が教師になることに対して、反対の者はいなかった。そして先日、重役会議にて話し合った結果、君の雄英高校教師承諾が正式に認められた!」

 

 

根津は引き出しから資料を取り出し、それをババンとオールマイトに見せつけた。

確かにそこには承諾の文字と、その承諾の理由が細かく刻まれていた。

 

 

「ありがとうございます!」

 

「いやいや、むしろ君ほどの逸材が雄英高校の教師になるのに、否定やら不満やらの声が上がるわけがないからね」

 

 

ホッと胸をなでおろし、深めの礼をする。

 

 

このまま何事も起きなければ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あとは君が教員免許取るだけだね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

根津は引き出しから大量の資料と問題集を取り出しながら、ニコニコと笑った。

八木もそれに釣られるように、引きつるように笑った。

 

 

「本当に取らないといけないんですか・・・?」

 

「そりゃそうとも。君が最高無欠のヒーロー、オールマイトだとしても、無免許での教師活動は問題になるからね」

 

 

プロヒーロー免許はヒーローとしての活動は認められるが、その他の活動は原則として禁じられている。

例えば救助活動。被災地から人を救い出すことは問題ないが、救った被災者に対して治療や手術を行うことは禁じられている。

例えば教育指導。薬物指導等の臨時的な教育者として教育・教養を行うことは問題ないが、それ以外での場での教養・教育を行うことは禁じられている。

これを破れば、警察からの厳重指導や100万円以下の罰金、最悪プロヒーロー免許の取り消しもありうる。

 

 

「でも教員資格を持てば何にも問題は無いさ。それに君は既にプロヒーローで、しかもNO.1。ペーパーテストで合格点を叩き出してくれれば、即座に教員免許を取得できるよ」

 

「ペーパーテストだけですか?」

 

「うん。正直ペーパーテストも要らないかなって思ったんだけど。まあそれだと流石にズルいかなってさ!」

 

「・・・そう、ですか」

 

 

それならペーパーテストも要らなかったのに、と顔には出さないが落ち込む。

 

オールマイトは勉強が嫌いだ。

学生時代はそこまで苦手意識は無かったのだが、年を喰うにつれ何かを覚えるという行為に気怠さを感じるようになった。

その結果、見た目も中身も筋肉マッチョのヒーローが生まれたというわけだ。

 

 

「ちなみに合格点は・・・?」

 

「500点満点中490点で合格さ」

 

「OH・・・」

 

 

前もって取得しておけよと、過去の自分を叱咤したくなる。

しかしタイムマシンがあるならともかく、そんなことは出来ないので潔く諦めるしかない。

 

 

「ペーパーテストは申し込みをすればいつでも受けられるから。頑張って毎日コツコツ勉強するんだよ」

 

「まさかこの歳になって勉強をすることになるとは・・・」

 

「時代が進む限り、人生に勉強は付き物さ」

 

 

その言葉には、どこか遠くを見つめるような。まるで実体験をそのまま語らっているような感じがした。

 

 

「・・・そうですね。人は学習するために生まれたとも言いますし」

 

 

 

 

 

「尤も、私は人じゃないんだけどさ!」

 

 

 

 

そう言うと、根津はHAHAと笑った。

 

それに釣られるように、八木はまた引きつった笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・おっと、もうこんな時間ですか」

 

長話を一旦中断させ、時計を見れば、もう11時を過ぎようかと長針が揺れていた頃だった。

八木は立ち上がり、別れを告げるとその場から退場しようとした。

 

 

「帰るの?ならリカバリーガールに挨拶していきなよ。君、定期検査行ってないでしょ?」

 

「・・・あ!」

 

 

そういえば定期検査をするのをスッカリ忘れていた。

しかも何の連絡も送っていないので、さぞかし心配していることだろう。

 

 

「うわあ、絶対怒ってるよ・・・」

 

「愛の鞭ってやつさ!ベチンと叩かれてくるといい」

 

 

慈悲はないのかと涙目で訴えれば、心底面白そうな笑みを浮かべたネズミがいた。

しかもその片手には、大量の紙が入った紙袋を持っている。

 

(鬼だ・・・)

 

絶句、そして絶望。

勿論顔には出さないが。

 

 

「じゃ、じゃあ少し顔を出してきます・・・はあ」

 

「いってらっしゃーい!!」

 

 

手を振りながら、校長室を離れた。

その背中はトゥルーフォームとはいえ、とてもヒーローのものとは思えない程小さかった。

 

 

 




そういえば根津校長黒幕説ってどうなったんだろ・・・。


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