借りた馬を駆って、帰路を急ぐ。
驚くべきことに馬を提供してくれたのは、つい先程まで争っていた小笠原党であった。
小笠原の戦馬は優秀であることが諸国に知れ渡っている。
本来すべきではなかった不本意な戦の後始末として、これで完全に水に流したいとの申し出。
諏訪の名代として若様がこれを了承し、両者は改めて固い結束を約すこととなる。
その決断の裏に早速軍師として活躍する吹雪の助言があったことは言うまでもない。
……と、こう書くと小笠原が進んで提供してくれたように聞こえるが事実はそうではない。
鍾馗と吹雪が帰ろうとする市河殿を捕まえてネチネチと戦の賠償を要求しだしたのだ。
立場上、中間管理職に過ぎない彼にろくな決裁権があるわけでもないであろう。
それを良いことにあれこれ言う二人を見かねてついに若様が仲裁に入られた。
市河殿も若様の人柄に感じ入り「これらの馬は戦で失ったこととします」としてくれたのだ。
互いに妥協点を見出した会談のように見えるが、鍾馗と吹雪は邪悪な笑みを浮かべていた。
あの二人にとっては若様(あるいは俺)の仲裁すらも予定調和だったのかもしれないな。
……すまぬ、市河殿。
「あの吹雪という小僧、鍛えればなかなかモノになりそうですな」
「ははは… 程々に頼むぞ。なにより今はまず武田を追い払うべきだろう。切り替えてくれ」
「はっ! 無論、心得まして御座いまする」
この腹黒い軍師どもを相手にさせられた市河殿に心から同情する。本当にすまなかった。
諏訪大社(この場合は本宮だ)に戻れば、辺りには怒声と剣戟の音が響き渡っていた。
「伯父上、兄上はまだご無事でしょうか!?」
邦時様がご心配なのであろう、若様がお声を掛けてきて下さる。
「無論、殿も北条のご血脈なれば! 斯様なことでは窮地のうちにも入りますまいッ!」
喝破一声。
馬に気を込めると、俺は集団から抜け出る形で一足飛びで間合いを詰める。
「はぁああああああああッ!!!」
そしてそのまま、諏訪本宮を襲おうとする者たちの背後に十文字槍ごと突撃する。
斬り、払い、突く。
ただその繰り返しだけで異様なほど簡単に敵がバタバタと倒れてゆく。
「流石は殿だ! ヒャハァ! おまえら、よく持ちこたえたなぁ! もう安心だぜェ!!」
忠義党幹部として家来に名を連ねる腐乱が喝采をあげる。
ヤツの甲高い良く通る声は、ただ、それだけで本宮に籠もる一党に力を与えたのだろう。
「わぁああああ! 宗重殿がお戻りになったぞ! こうなれば百人力よ!」
これを機にと立て籠もる者のうち誰かが周囲に檄を飛ばすことで、一挙に士気を高める。
乱戦のさなかにおいては、こうした声の掛け方一つで戦局は猫の目のように変化する。
精神論や根性論に頼り切るのは論外にせよ、心が折れては何も出来ないのも一片の真実だ。
しかし、俺はそんな中で槍を振るいながら奇妙な感覚に襲われていた。
(……妙だな)
弱すぎるのだ。
……いや、敵を侮るつもりはない。
元々確かな力量を持っていたことに加え俺が直々に鍛え上げた忠義党に及ばぬのは分かる。
しかし、恐らくはこの地域一帯の平均値であろう諏訪神党にも遠く及ばぬ力なのだ。
これがおよそ二百年後には精強さを遍く天下に轟かせた武田の武士団とは到底信じ難い。
そもそも彼らの動きを一つ一つ注視するにその練度は悪くないように感じる。
いかに俺が付け焼き刃の知識で塹壕を掘ったり防御陣地を整えていても*1、これは不可解だ。
諏訪神党の力量を軽んじるつもりはないが諏訪の地はもともと古来より開かれた地。
だからこそ発展し栄えてきたのであろうが、それは裏を返せば守りの脆さを意味する。
攻撃のタイミングも決して悪くなかった。
国司の失策により小笠原守護と睨み合う形となり、保科党が滅亡寸前にまで追い込まれた。
諏訪としては、どうしてもそこに主力を向かわせざるを得なかった状況となる。
そこを過たずに殴り込まれたのだ。
数百年後に戦国きっての謀略家となる武田の面目躍如といったところであろうか。
(……であるならば、これだけの力量があれば、既にここを落とせていなければおかしい)
……この不可解な現象は一体何だ?
かと言って気の進まぬ戦に駆り出されたせいで士気が低い、というわけでもなさそうだ。
俺の暴れっぷりを見て、それで彼らが怖気付くというわけでもない。
むしろ歯を食いしばり遮二無二反撃を仕掛けてくるくらいだ。
前後を挟まれた上でのその対応の不味さはあれど、心が折れていないのは間違いないだろう。
(練度は問題なく、士気も挫けてはいない。ならば…──)
思い付いたことがあり、敵襲が途切れた合間を縫い仰向けに倒れている仏様*2に槍を向けた。
そしてその腹を裂き、胃袋の中身を確認する。
……流石に罰当たりなことをしてる自覚はあるので、自己満足なれど合掌は忘れないが。
何故このようなことを俺がしたのか。無論、トチ狂ったわけではない。
空腹に耐えかねて襲ってきたという線はどうだろうか? と思ったのだ。
甲斐の地は満足に住める場所は猫の額の如く狭く、常に食糧問題と戦ってきたと聞く。
もしそうならば、戦が泥沼化の様相を呈してきた時には交渉の手札に使えるかもしれない。
そのように考えたのだ。
無論、諏訪とて無償で他国にバラ撒くほどに備蓄に余裕があるわけではない。
しかし、この信州で信仰を集める諏訪大社の威光は伊達ではない。多少の無理は利くだろう。
(ただ、そうだとしても戦の前に食糧援助の一つくらい願い出てもおかしくは…ッ!?)
敵兵の腹の中では、二十一世紀を生きていた俺から見てあり得ざるものが『蠢いて』いた。
……実物を見たことはないが、これは間違いない。
そして、甲斐の武田がどうしようもなくなって諏訪に侵攻してきた理由も分かってしまった。
「クソ、足利だけでも手一杯だってのに… 『厄災』まで迫ってくるのかよッ!!」
そんなことを吠えながら、俺は追いついてきた郎党の助けを得て敵の撃退に成功した。
忠義党の面々は無論のこと、弧次郎や亜也子もよく働いてくれた。
しかし、俺の気分は晴れないままであった。
「おお、宗重殿! お陰様で助かりましたぞ!」
「伯父上! 時行も! 僕たちも塹壕のおかげで持ちこたえて戦えたんだ!」
頼重様と殿が駆け寄ってくるのを、しかし、俺は馬上のままで相対する。
当然、とてつもなく無礼な行為である。
「馬上にて失礼! 御二方の御無事を確認できましたこと、祝着至極に存じ奉りまする」
「……伯父上?」
「されど! この宗重めはこれより甲斐… 武田の館に向かわねばなりませぬ」
周囲の者が息を呑む様子が伝わってくる。
「……どうしてもやらねばならぬことが。ことは日ノ本の未来に関わりますれば」
今この俺しか感じ得ない危機的状況をどれだけ言葉を尽くせば伝えられることだろうか。
今この時ほど、不出来な自身の頭が恨めしいと思ったことはない。
……当然、他者から見れば狂乱としか思えないこの暴挙に人を付き合わせる訳にはいかない。
「無論、これはこの宗重一人めのやるべきこと。皆はどうぞお体を休められよ」
そう言って馬首を返そうとした俺の背に声が掛けられる。
「殿、手柄の立て収めとはあまりにも水臭い仰りようでは御座いませぬか」
「ヒャハァ! そッスよぉ。死蝋にだけ褒美渡して仕舞いなんてちぃと贔屓が過ぎるっしょ」
「……クク、殿あっての忠義党。忠義党あっての殿。違いますかな?」
「親父殿! どうか、俺たち忠義党に『黙ってついてこい』って命じてくれ!」
鍾馗の、腐乱の、白骨の、四郎のその言葉に俺は「……すまん」と返すことしか出来なかった。
俺は仲間に恵まれている。
こんな素晴らしい者たちが歴史に埋もれたまま名を残せなかったなんて不思議でならない。
「……伯父上、どうしても行かねばならないのだね? 理由を聞いても良いか?」
邦時様が、静かな表情でそう確認してくる。
「はっ! ……武田は死病に冒されております」
俺の言葉に周囲のそれぞれが大小様々な反応を示す。
いち早く立ち直って献策してくるのは、やはり鍾馗と吹雪である。
「死病? ならば仮に移るにせよ、打って出るのはむしろ危険ではありませぬか?」
「然様にて。敵が病に冒されているならば守りを固めそのまま自滅を待つが上策でしょう」
「……これは普通の病であるならば、それも必要な対処であろう」
この病は、特定の罹患経路しか持たないいっそ弱いとすら言える特殊な病である。
それこそ、甲斐の地を離れれば目にすることは滅多になくなるであろう土地に根付いた病。
しかし、罹れば最後『命はない』とまで恐れられた病。
故にこそ、その病を指して『風土病』という通称が広まることとなった。
今から数百年後、二十世紀において漸く根絶が叶ったという『神の呪い』とも言える病。
日本最悪の風土病として終世まで語り継がれるであろう厄災。
──日本住血吸虫症。
ミヤイリガイを中間宿主とする寄生虫・日本住血吸虫によって引き起こされる疾病である。
このミヤイリガイは流れの淀んだ湖沼地帯に多く住み着いている。……甲斐のような。
中間宿主にはなんら悪影響を与えない本種は人間に感染すると激しい症状を及ぼす。
発熱から始まり、内臓に卵を植え付けられ繁殖すると結節を引き起こし死に至らしめるのだ。
外科手術もなく特効薬も発見されていないこの時代でそれが意味するところは唯一つ。
「この病は、治らない。根絶しない限り人は死に続ける。そして万一にも拡大すれば…」
──日ノ本が滅びる。
俺は、一片の冗談すら介在する余地のない苦々しい表情で、その最悪の可能性を口にした。
そして、俺はそれが決して絵空事ではないと感じ始めている。
武士だからこそ、勝ち目が見えない状況下でも乾坤一擲を狙って侵攻してきたのだ。
だが甲斐には武士以外の人間も住んでいる。領民だっているのだ。
むしろ武士よりもただの領民の方が多いことだろう。
そんな人間が武士のように後生大事になにがなんでも土地を守り続けるだろうか?
……全てが全てとは言わないが、土地を捨てて別の場所に移り住む可能性もあるだろう。
そんな人間と接触し、極小さな確率ででも感染してしまったらどうなる?
あるいはミヤイリガイの生息地域が何かの拍子で広がってしまったらどうなる?
万が一にでも諏訪湖に住み着かれてしまっては諏訪に未来はない。
そもそもミヤイリガイの生息に適した湖沼など日本全国探せば幾らでも出てくるはずだろう。
(……だから、動くならば今しかない)
「わかった。……ならば僕も行こう。時行たち逃若党はここで交代だ。諏訪を頼んだよ」
「殿!?」
「兄上!?」
「なにか驚くことかな? 僕と伯父上は一蓮托生。ならば僕には見届ける義務がある」
「し、しかし殿! 先程も申し上げました通り、これは非常に危険な…」
「だからこそだよ。これが本当に神仏の呪いに等しいならばそれを退けてこその足利打倒だ」
まるで悪戯好きの少年のように、殿は屈託ない笑みを浮かべるのであった。
甲斐・武田館。
一人の壮年の武士が、浮腫に侵されながらも一歩一歩主人のもとに近付いていく。
結節が生まれ、身体のそこかしこが膨れ上がり皮膚が濃い黄色に染まっている。
しかし、死を覚悟した者のみが持ち得るであろう強い眼光が己が主君を見据えている。
男は主の前に辿り着くと腰を下ろして、深々と頭を下げた。
浮腫により膨れ上がった身体ではその仕草も奇妙な形となっている。
しかし、そんな彼の姿を無様だと笑う者はこの場にはただの一人も存在しなかった。
「失敗しました。申し開きの仕様も御座いませぬ。斯くなる上はこの腹を掻っ捌き…」
「よせ。散るに任せるより最後に一花という決断に、皆の者揃って賛同したはずだ」
上座に座る主・武田政義(石和政義とも)は重苦しい表情のまま簡潔にそう述べた。
今上天皇の乱に呼応した先見の明を以って、甲斐守護としての地位を確固たるものとした。
そういった才覚を持ち合わせながら、今、甲斐武田は滅亡の危機に瀕していたのである。
それは誰のせいでもなく、ただ病のためにこれまでの労力を歴史より消さねばならないのだ。
武士としてその無念、如何ばかりであろうか。
この甲斐の土地に根付いたとしか思えぬ連綿と続く原因不明の病。
もはや万策は尽き果て、これからの飛躍を前にしながら滅びを待つ身となってしまった。
斯くなる上は恥を覚悟で神仏に縋ってみるしかない。
だからこそ、諏訪明神にて最近話題になっている神酒*3を求めていたのだが…
「小笠原殿に先を往かれてしまったからなぁ。……かの御仁も中々に抜け目のない」
政義は顎を撫でながら大きなため息を吐いた。
武家の同盟とは即ち利権である。
食料援助程度ならまだしも、諏訪の秘蔵の品を同じ守護の頭を超え要求する訳にはいかない。
他者の利権に手を突っ込む行為はいつの時代も殺されても文句が言えない所業。
かといって小笠原に頭を下げて庇護を求めれば良いかというと、ことはそう簡単ではない。
……そう、信濃守護・小笠原家と甲斐守護・武田家。
この両者の立場がなまじ対等であるがゆえに、事態は余計に拗れる羽目となった。
折しも時節は今上天皇の乱が成功し、鎌倉幕府が倒れた直後、建武の新政の真っ只中。
この状態で領地を近しくする守護同士の力の均衡を崩しては要らぬ波紋を呼びかねない。
武田が滅びるというだけならまだしも、この地域一帯に大乱を起こしては目も当てられない。
だからこそ最後の最後、小笠原と諏訪の内乱に乗じる形で賭けに出たのだ。
速やかに任務を果たせれば諏訪の土地は返還しても構わない。
土地はタダでくれてやるには惜しいかもしれないが、血脈の命には替えられない。
まして自分たちにとっては諏訪の地など『ついで』のようなものに過ぎないのだから。
後は小笠原と少々揉めるかもしれないが何人かの命を差し出せば問題ない。
あるいは当主である自分の首を差し出せば小笠原といえど強くは言えるものではないだろう。
彼、武田政義にはそういった目算があったのだが…──
「はは… すまんな、読み誤った。儂は武田を滅ぼすとんだ無能であったか」
想定以上に敵は強く、そしてこちらは弱体化していたのであった。
焦った末の暴発じみた行動であったが、それでもなお遅きに失したということなのだろう。
もはや乾いた笑いしか出ない、というのが武田政義の現状であった。
「なんのなんの! 殿、緒戦は相手に譲りましたがまだまだ戦はこれからですぞ!」
「まったく、諏訪で死んだ連中が羨ましい! さぞ名のある豪傑に討ち取られたのだろう!」
「然様然様! 病魔に冒され、ただくたばるよりもよっぽど上等な死に様ではないか!」
意気軒昂。
この期に及んで腰が引ける者はただの一人とて存在しない。
全く、自分には勿体ない家来に恵まれたものだと武田政義はひっそり頬を綻ばせる。
しかし、状況は絶体絶命。
このままでは、分家にあたる安芸(現在の広島市付近)の武田信武に全てを奪われかねない。
……いや、既にその兆候は出始めている。
今上天皇の乱に乗り遅れる形となった信武だが、馬が合うのか尊氏からの寵愛は妙に厚い。
建武の新政が行われている今は天皇の手前大きな影響力は持たないが、時節変ずれば…──
(……それは、少々気に入らないな)
分家とは言え同じ血族の者なのだ。そう嫌うものでもないだろう。
冷静な思考が訴えかけてくるも、どうにもままならない。
この土地は、この苦しい土地は自分たちが血反吐を吐きながら守ってきたものなのだ。
それを安芸でふんぞり返っていた者が横から奪っていくなど、血族だからこそ認められない。
これはもはや意地のようなものだ。
そんな鬱屈した内心と裏腹に、武田政義は常変わらぬ冷静な面持ちで家来たちを嗜める。
「今更是非に及ばぬことよ。今は周囲を威圧する形で守りを固めようか」
「はて? それはどのようなお考えから?」
「今はまだ周辺諸国は我らを孤狼の無頼と思っていよう。そんな連中と進んで争いたいか?」
「……はっ! 誰しも先んじて火傷をするのは嫌がるものでしょうな」
「そうだ。そうして膠着状態を作り出し、水面下で小笠原と落とし所を探る」
「なるほど、いちいちご尤も! しかと心得まして御座いまする!」
まさに棍棒外交もかくやというやり口であるが、どうせ今の甲斐武田に先はない。
ハッタリだろうとなんだろうと使えるものは何でも使って時間を稼ぐより他はないのだ。
しかし、運命は尽く武田政義に敵対した。
「大変でございます! 諏訪領内より逆侵攻を受け、関が突破されました!」
伝令により告げられた内容は、その全てをぶち壊しにするものであった。
「……早すぎるなぁ。見事なものよ」
こうまで手も足も出ないままに先手を打たれるといっそ清々しいほどである。
絶句する諸将に代わり、いち早く冷静さを取り戻した政義が感慨深げにそう呟いた。
もはや一刻の猶予もない。
「殿、出陣の御下知を!」
「斯くなる上は、一人でも多くの武者の命を道連れにして果てましょうぞ!」
「………」
武田政義は家来たちの言葉を前に、顎を撫でながら瞑目する。
脳裏に浮かぶのは家来のこと、この甲斐の領地のこと… そして幼い嫡男福寿丸のこと。
ややあって、目を見開いた政義は静かに言葉を放つ。
「……無為に命を散らすこと罷りならぬ」
果たして武田政義は諦めてしまったのか? ──否である。
「すまないが、皆の命を最後にもう一度だけ儂に預けて欲しい」
そう言って、武田政義はゆっくりと立ち上がる。
うっすらとした笑みを浮かべながら。
散華の突撃は気持ちが良いがそれだけである。
どうせならもっと『有効的な使い方』がしたくなったのだ。
(……今上天皇の乱に続いて、なおもこんなに大きな『博打』を持ちかけられるとはなぁ)
甲斐にいながら後醍醐天皇の乱の成功の気配を感じ取り、真っ先に馳せ参じた戦の勘。
確かに足利高氏の歓心は勝ち得なかった。
しかし抜け目ない工作で小笠原との友好関係を築き甲州での政治基盤を確固たるものとした。
その外交政治センスを足利は警戒し、結果として彼は歴史の影に埋もれたのかもしれない。
「さて、小笠原… いや違ぇな、諏訪のお歴々。……アンタらは
いの一番に要求するのは臣従か? それとも自分の首か?
なんだって構わないさ。
この土地と武田の名を倅ともども護り切れるというのであれば。
どんな屈辱も甘んじて受けよう。
そうして、諏訪の一の家来としていずれ全てを貰い受けよう。
失敗してもたかが死ぬだけ。博打にしてもぬるすぎる。
(……儂の全てをくれてやるさ。だからテメェらにゃ儂ら全ての未来を譲ってもらう)
本来の歴史では滅びの道を辿り、分家にその名と土地を譲った甲斐武田の石和政義。
稀代の勝負師が舌舐めずりをしながら五大院宗繁の到着を今か今かと待ちわびるのであった。
次回、決死の覚悟で交渉に挑んだ政義殿に襲いかかる伯父上の洗礼!
伯父上「あの! 土地とか命とかどうでもいいんで日本住血吸虫を根絶させてください!」
鍾馗「土地の工事だけ終わったら帰りますね。味方? 別にどうでもいいです」
武田「!?」
麻呂「麻呂はどうしてここに…」
兄上「今上帝が国司様を派遣してくださったんですよー。みなさんは見捨てられてないんですよー」
武田「!?」