忠義者の伯父上   作:(๑╹◡╹)ノ

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第5話▲軍略・上 1333

 諏訪大社・奥社殿。秘中の秘の会議をする時にのみ使われる特別な場所らしい。

 そこに、殿と俺は諏訪到着の翌朝から招かれていた。

 

 案内役が戸を開けると、既に時行様や頼重殿など数名の人間が集まっている様子が見える。

 こちらに気付いた頼重殿が笑顔で声を掛けてくる。

 

 ……本日も発光しており、絶妙に胡散臭い。

 

「お早う御座いまする、邦時様! 朝からお呼び立てして、まことに申し訳ありません」

「おはよう、頼重殿。此方は居候の身ですから、お呼びとあらば何処へでも参じましょう」

 

「やや、私は決してそのようなつもりではなく! ただ余人交えぬ語らいの場をと…」

 

 胡散臭い笑顔のままめちゃくちゃ慌てだす頼重殿に場の一同から笑みが溢れる。

 殿もちょっと吹き出しながら、頼重殿にフォローの言葉を告げた。

 

「ごめんね、ちょっとからかっただけさ。時行も、ここにいるみなさんもお早う御座います」

 

 俺は身分的に割りと劣る*1ので、手を付いてお辞儀をすることでご挨拶とさせていただいた。

 殿の言葉に時行様が勢いよく反応する。

 

「おはよう、兄上! ……えへへ、やっぱり夢じゃなかったんですね」

「言っただろう? 僕は生きてるって。……まぁ、胡蝶の夢かも知れないけれどね?」

 

「……こちょうのゆめ、ですか?」

「夢か現かなんてのは当人の気の持ちよう次第ってことさ」

 

「な、なるほど…」

 

 頷きつつも考え込んでしまった弟の頭を、殿はポンポンと優しく撫でた。

 

「ま、どうせ夢ならお互いより良い夢を見られるようがんばろうよ。それなりにね」

「……は、はい!」

 

「ん」

 

 弟君の言葉に殿は何処かまぶしげに、そして満足そうに頷かれる。

 きっとこの後の決意が関係しているのだろう。

 

 しかし当たり前のように胡蝶の夢を知っていてサラッと解説するとは、殿の教養が半端ない。

 うちの甥っ子が今日も賢い。脳筋にとっては目映い限りです。

 

 俺は満足げに肯きつつ周囲の気配をそっと探る。

 聞き耳を立てている者は… 恐らくはいない、か。案内役もこの場を離れたようだ。

 

 鎌倉武士ならば異物の気配くらいは察知できて当然。

 でないと奇襲受けたら即死する雑魚になっちゃうからね。主君の顔に泥を塗ってしまう。

 

(そんなことでは武士失格だからと気合を入れて探ってみたが、大丈夫そうだな…)

 

 勿論俺の能力を超えた隠密が潜んでるという可能性は十二分にあるだろう。

 しかし、その時はその時だ。もしもの場合は俺が命を捨てて殿をお護りするまでのこと。

 

 考え過ぎて縮こまってしまっても逆効果。警戒と怯えは違うのだから。

 

 直義には「主の命を預かる身なればこそ君自身ももっと大切に扱い給え」と叱られたものだが…

 まぁ、有能な家来が山程いる足利と小粒の反乱分子の我々とでは台所事情が違うというもの。

 

 ここでの話を聞いているのはこの場にいる数名のみ、という前提で構えていよう。

 

 

 

 

(さて…)

 

 まずはここ諏訪の領主にして諏訪大社の大明神として扱われている頼重殿。

 そして、我が殿・邦時様の実弟であらせられる時行様。

 

 時行様の背後には昨日、俺を穴が空くほど見詰めていた子供が3人いる。

 やはり時行様のこの諏訪の地での世話役か、あるいは将来の郎党候補なのだろうか。

 

 まだ俺を見詰めてきている。なんだか少々気不味い。

 

 ……そして、昨日は見掛けなかったいかつい武士が三名。

 

「ご紹介致します。之なるは海野(うんの)幸康(ゆきやす)祢津(ねづ)頼直(よりなお)望月(もちづき)重信(しげのぶ)。諏訪神党が誇る三名将です」

 

 俺の視線に気付いたのか、頼重殿が三名を時行様と殿に紹介してくれる。

 

 その声に応じるように、若干訝しげな表情を浮かべつつも三名は平伏の姿勢を取ってきた。

 頼重殿の丁重な振る舞いから、恐らくは我らが目上の立場であると判断したのであろう。

 

 殿は感心したようなため息を吐き、言葉を返された。

 

「これはこれは… 諏訪神党、と申されますと確か頼重殿の郎党でしたね」

「えぇ、そのとおりです。邦時様はよくご存知で」

 

「有名ですから。なんでも諏訪明神への信心厚く、武芸豊かにして死をも恐れぬ豪傑揃いだとか」

 

 邦時様の言葉に気を良くしたような表情を浮かべる武将たち。

 ……俺は知らなかった、ごめん。

 

「……私は知らなかった、ごめん」

 

 時行様、仲間ですね。俺もちょっと心細かったので、そういう反応すごく助かります。

 でも声に出して言っちゃダメだと思います。武士って少々面倒くさい人種なので。

 

 幸いにして聞こえなかったのか、特に彼らは時行様の言葉に反応を見せることはなかった。

 ひょっとしたら、ただ見逃してくれただけなのかも知れないが。

 

 ……ただ海野に根津(祢津)に望月、か。

 

(確か、どれも真田十勇士の講談とかで聞いたことあるような名前だなぁ)

 

 アレは創作にせよ、元となったり拾ってきたりする程度の逸話はあったということだろうか。

 そんなことを考えているうちに殿と頼重殿の話が進んでいる。俺は注意を二人に戻す。

 

「しかし頼重殿。ここに時行と僕と郎党の方々を同席させるということは…」

「えぇ、ご賢察のとおり。本来ならば、時が(きた)るまで時行様の身上は伏せるつもりでした」

 

「なるほど… 僕らの諏訪入りがその予定を狂わせてしまった、というわけですね?」

 

 (つね)浮かべられている緩い笑顔のままに殿が切り込む。

 それに対し頼重殿も内心の読めぬ表情のまま肯く。

 

「……悪い言い方を申せば、然様、仰る通りかも知れませんね」

「そんな! 頼重殿、あなたは兄上がこの地に来られたことが迷惑だと言われるのか!?」

 

 兄を慕う時行様が興奮のままに立ち上がり、頼重殿に掴みかからんばかりに声を荒げる。

 殿はそんな時行様の裾を掴みそっと首を左右に振ると「座りなさい、時行」と自制を促した。

 

 時行様は気不味そうに兄・邦時様を見詰められると、息を吐いてもう一度腰を下ろされる。

 その様子を確認した邦時様はやんわりと微笑んで、頼重殿に詫びの言葉を紡がれた。

 

「弟がすまないね、頼重殿」

「……いえ、私も申し上げる言葉がやや直截(ちょくさい)に過ぎました故」

 

 殿と同様か、それ以上に申し訳無さそうな気配を滲ませつつ頭を下げる頼重殿。

 緊迫に彩られかけた場の空気がゆっくりと弛緩していくのを感じる。

 

 しかし、そこで殿が居住まいを正し咳払いをされる。一体、どうされたのだろうか? 

 

「……諏訪頼重殿」

「はっ!」

 

 殿の言葉に平伏をする頼重殿。

 

 殿からゆっくりと溢れ出す威厳に思わず目を見開く。

 俺だけではない。この場にいる全ての人間にとってそれは同様であった。

 

「北条高時が一子、北条邦時が申し伝える」

 

 その言葉に三名将の表情が驚愕に彩られる。

 

 それも当然であろう。

 正体不明の子供が、一気に鎌倉殿のご落胤に姿を変えてしまったのだから。

 

 本来ならば、そうは言ってもたかが言葉の上での話。そのはずであった。

 少々見栄っ張りな子供が背伸びをしてホラを吹いたのだと思われても仕方のない戯言である。

 

 にもかかわらず… その気品が、佇まいが、何よりオーラが絶大な説得力を伴っている。

 

(コレが北条得宗家という名家によって代々磨き抜かれてきたカリスマの力か…!)

 

 自然と背筋が伸びる思い。感動の震えが止まらない。

 今すぐ戦場に飛び出て敵の首級の1つ2つと言わず挙げてきたい、そんな気持ちにさせられる。

 

 かの元寇に立ち向かった北条時宗様もこういったオーラをお持ちだったのではないだろうか。

 

「嘘偽りなく我が問いに答えられよ」

「はっ!」

 

「……この状況、我らにとって不慮の事態であるか?」

 

 殿のその問いかけに、頼重殿は満面の笑みを浮かべてこう言い放った。

 

「いいえ。……私めはこの状況をこそ『好機』と捉えております」

「……そうか。時行、おまえはどうだ? 勝てると思うか?」

 

「は、はい! ……きっと勝ってみせます! 兄上と一緒なら! 足利高氏にだって!」

 

 暫しの沈黙。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、あるか!」

 

 そして殿は破顔一笑された。

 

 場を彩る威厳が静かに薄れてゆく。

 そして、いつものごとく緩やかな空気を纏うと静かに口を開かれる。

 

「ならば、『話し合い』を始めるとしましょうか」

「御意」

 

「その前に…」

 

 殿は用意されていた上座から立つと、ゆるりと移動して… 時行様の前に平伏をされた。

 当然、俺も殿の動きに合わせて深々と平伏をする。

 

「……えっ!?」

 

 恐らく時行様は今、理解できないといった表情のままに驚愕されているのであろう。

 ……しかし、これこそがなにより必要な手順なのである。

 

「時行様。この邦時、これよりは貴方様の家来として忠義を以ってお仕え致したく存じます」

「な、なんで…」

 

「………」

 

 その問いには答えるわけにはいかない。……俺も、もちろん邦時様もだ。

 理解し難い事態故か、時行様はか細く震えられている様子である。

 

 狼狽している時行様を見ていられなくなったのだろう。頼重殿がそっと近寄り耳打ちをされる。

 

「……旗印が二人いてはいざ動く際に混乱を招きます」

「だったら! 兄上が!」

 

「あなた様しかいらっしゃらないのです。……北条得宗家の嫡流は」

 

 時行様の方からヒュッと息を呑む音が聞こえた。

 

 ……正直頼重殿には助けられた。

 後で厚く礼を申し上げねばならないだろう。

 

 実の兄から「自分は嫡流じゃないから父の後を継げないのだ」と改めて口にさせる。

 それはなんと残酷なことだろう。……恐らく殿は気にされないだろうけれども。

 

 けれど。

 

 時行様は殿ご自身にそれを言わせてしまった場合、己を強く責めることは想像に難くない。

 鎌倉にいた頃からとてもお優しい御方であったから。

 

 殿は、邦時様は時行様のお声があるまで頭を下げ続ける。

 それを理解されたのだろう、時行様はくしゃくしゃに震えたお声で言葉を紡がれる。

 

「……ありがとう。あなたの忠義、心より嬉しく思います。……兄上」

「有り難き幸せで御座います。……殿」

 

 (おもて)を上げる許可を得たので揃って顔を上げる。

 

 そこには打ちひしがれたかのような暗い表情をしている時行様がいた。

 かなり心が痛い。もう一人の甥っ子にこんな顔させたくなかった。

 

 けれど、殿も俺も旅の途中にお互いよく話し合って納得したことなのだ。

 ……やはり北条を継ぐ方は時行様しかおられない。

 

 俺の絶対の忠義は誰よりもまず邦時様に捧げているが、それでもだ。

 何故ならば時行様は言ってのけたのだ。

 

 足利高氏に勝ってみせる、と。……『あの』足利高氏にである。

 それこそが、血筋よりもなによりも北条得宗家の棟梁として重要なこと。

 

 あの怪物の強さを思い知りながらも、倒すことを、(おびや)かし続けることを決して諦めない精神性。

 そんな方こそが、幾度破れても、幾度逃げ散る羽目になったとしても…

 

 きっと、最後に目的を遂げられるのだろうと俺は思う。

 

 とはいえ、その表情を曇らせてしまうのは本意ではなかった。

 如何に英雄の素養を持ち合わせるとはいえ、家族を喪ったばかりのまだ8歳の子供なのだ。

 

 このままでは、旅立ち前に殿の御心を傷付けてしまった時のような失敗を繰り返す羽目になる。

 俺はなんとしたものかと内心で気を揉みつつも様子をうかがう。

 

 しかし、どうしたことだろう。

 

 時行様のお顔に、まるで小さな救いを見つけたかのような淡い微笑みが浮かばれたのだ。

 一体どういったことかと少々考えたが、すぐに疑問は氷解した。

 

 その視線がまるで縫い付けられたかのように殿に注がれていたからだ。

 きっと殿が「大丈夫だよ」というふうに、いつもの調子でへらりと笑われたのであろう。

 

 ──ほら、僕の間抜け面を見て時行が安心するかもだろう? 

 

 殿は出発前に告げられていた言葉を有言実行された、というわけか。

 やれやれ、弟離れできない兄君で困ったものだ。

 

 ……まぁ、俺も甥っ子離れなんて出来る気がしないから人のことどうこう言えないけどな! 

 

 そもそも上下の序列を作るのは対外的な体面上の問題なので、内実については別に良いのだ。

 良いということにしよう。……うん、甥っ子たちが悲しそうだと俺も辛いし。

 

 暗かった空気が、優しく暖かなものに変化していくのを感じる。

 諏訪殿もそれを肌で感じられたのか、穏やかな表情でため息を吐くと口を開かれた。

 

「頼もしき家来の加入、御目出度う御座います。時行様」

「あ。う、うん…」

 

「では改めまして、『我等の今後について』の話し合いを始めるとしましょうか」

 

 居並ぶ一同が表情を引き締めて、思い思いに首肯を返す。

 ここに『北条家が力を合わせる』という舞台は整った。けれど、これからが本番なのだ。

 

 頼重殿が招いたということは、この三名将は信頼できる武将なのであろう。

 しかし、諏訪の地とて決して一枚岩ではないはずだ。

 

 小笠原貞宗のような例もある。

 諏訪の地に住まう武士の、全てが全て頼重殿に従う武将とは限らない。

 

 むしろ足利の天下であるのだから周囲は敵だらけ、と考えたほうが健全ですらある。

 当然、それらに見合った小競り合いが舞い込むことも覚悟するべきだろう。

 

 だからこそそういったトラブルの中で俺たちの価値を示し、認めさせていかねばならない。

 そうすることで歴史に介入できるようになり、足利の天下を潰すことに繋がるのだから。

 

 俺が内心肯きつつ今後の展望に思いを馳せていると、時行様が殿にお声を掛けられた。

 

「ところで兄上、先程は何やら今後についてお考えがおありのようでしたが?」

「おっ、流石は時行様。目敏いねぇ」

 

「ちょうど頼重殿を始め重臣一同が揃っているのです。なにかお考えがおありでしたら是非」

 

 時行様がそう仰れば、居並んだ諸将が期待に満ちた表情で肯いてみせる。

 その様子を見て殿は何処か愉快げに微笑まれると…

 

「だそうだよ、宗繁。せっかくなので君がこの場のみなさんにご説明して差し上げなさい」

 

 俺に向かってとんでもない無茶振りをしてきたのである。俺、一御内人なんですが!? 

 

「ほほう?」

 

 それを受けて三名将の一人、海野殿の眼光が鋭く光る。

 さっきから気になってたけれど、オマエ誰やねん? と問われているのを視線で強く感じる。

 

 俺が場違い感に震えていると、殿が心なしか胸を張り俺を紹介してくれやがったのです。

 

「之なるは五大院宗繁。我が伯父にして忠勇無双、知勇兼備たるまことの侍に御座います」

 

 ……返す返すも武士とは少々面倒くさい人種である。

 当然、自分より強いと評判の人間を無視することなど出来ない。

 

「若! 俺たち差し置いてあんなこと言ってるぜ! 良いのかよ!?」

「えっ、でも伯父上が忠勇無双なのは当たり前のことだし…」

 

「ほほう、『当たり前のこと』と… これは面白い」

「然り然り。名にし負う坂東武者*2の力、なんとも興味がありますなぁ…」

 

「………」

 

 だから虚実はどうあれ、俺への注目度が爆上がりしてしまうのも必然だったのであろう。

 ……でも時行様、火に油を注ぐの止めてもらって良いですか? 

 

「あぁ、そうそう。一つ言い忘れておりました」

「……殿!」

 

 俺は殿の言葉を、まるで地獄に垂らされた一筋の蜘蛛の糸のごとく有り難く仰ぎ見る。

 

「僕からの説明では、北条一門ということでみなさんにも遠慮も出てしまうことでしょう」

「……殿?」

 

「なので宗繁からの説明には遠慮せずガシガシと詰めてやって下さいね! お願いします!」

 

 なお、糸は目の前で断ち切られた。

 

「ほほう! それは楽しみですなぁ! ささ、宗繁殿! 存分に我等に講義をお願いしますぞ!」

 

 そうして頼重殿の後光が一際明るく煌めいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よっぽど俺は裏切られたような表情を浮かべていたのだろう。

 殿が小声でコソリと耳元で囁いてきた。

 

「僕も要所要所で援護はするからさ。まずは伯父上のやりたいようにやってみてよ」

「……しかしですね」

 

「旅の道中で聞かせてくれたような考えがあるんでしょ? あれらは伝えるべきだと思う」

 

 確かに旅の道中で甥っ子に伝授したことは、何もサバイバル技術ばかりではない。

 前世を思い出したことによる歴史知識をもとに、ある程度の構想も語ってきたのである。

 

 徐々に歴史が変わり始めたこの世界で何処まで役に立つかは分からない。

 けれど何かの取っ掛かりになれば、と思い付く限りを甥っ子に伝えていたのだ。

 

 だからこそ殿は、目一杯頼重殿や三名将とやり合える場を整えて俺にバトンタッチしたのか。

 

 作戦会議で遠慮や忖度が蔓延るようでは腐敗まっしぐらである。

 俺たちにそう多くのチャンスが残されていないことは明らか。

 

 加えて諏訪の人々に認められるためには一刻も早く実力を示す必要がある。

 故に多少挑発的に構えてでも、遠慮会釈のない本音をぶつけ合える状況が求められたのだ。

 

 みんなで『力を合わせる』ために。

 

(よし、腹は括った…!)

 

 俺と殿は互いに視線を交わすと、どちらからともなく肯き合う。

 

 すぅ、と深呼吸を一つ。

 そうして俺は口を開いた。

 

「……それでは不肖、五大院宗繁。殿に代わり今後の軍略について申し上げ奉り候」

 

 やれ脳筋だ、自分に向いてないだなどとは言ってられない。

 本来の歴史の流れをぶっ壊すならば、足利尊氏に勝つつもりならば、やるしかないんだ。

 

(だったらやってみせろ。武士ならばやってみせろよ、五大院宗繁…!)

*1
諏訪は北条家譜代の家臣であり更に言えば古事記や日本書紀の時代から存在が覗えるほどの名門である。オマケに現地で絶大な信仰を集める現人神としての性質を持ち合わせるため、北条家一門ならばまだしも御内人から見れば身分違いも甚だしく、例えるならば大臣と官僚かそれ以上の差が開いていると言っても過言ではない。

*2
関東一円を支配領域とする武士の総称であり、古くは平将門公の時代より尚武(武力を尊ぶ)の気風が受け継がれてきた土地に根ざす武士のことを指す。鎌倉が存在する相模国(さがみのくに)も関東一円に入るので主人公も坂東武者扱いとなる。当然他の地方の武者から見れば対抗意識を刺激される存在である。




逸話『諏訪大社軍略講談』(※五大院宗繁と諏訪宗重の同一視による解釈[*要出典])

諏訪神党四天王が一人・諏訪宗重(五大院宗繁と同一視されている)が北条時行・邦時兄弟や諏訪頼重らを前に諏訪大社奥社殿にて語ったとされる軍略思想。当時の足利家の抱える政情不安や鎌倉統治の脆さを遠い諏訪の地からまるで見てきたかのように言い当て、今後の取るべき軍略について説き明かしたとされている。特に『足利家と護良親王の決別』『足利直義の鎌倉赴任』などを尽く言い当てたとされるその鋭い戦略眼は今日も尚高く評価されている。
(詳細は次話にて)
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