孤児のシスマ   作:とんとなま

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脊髄化け物猫耳おばさんの特化が終わったので初投稿です。
一応メインストーリー準拠でいきます。とりあえず前半は過去話なんで無視しても良いと思う(適当)


初対面なのに態度悪いってそれ一番言われてるから

 

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎年/ウルサス とある寒村

 

雪原に囲まれた小さな村。

その端にポツンと立っている小屋は、寒風を凌ぐにはいささか頼りない。

ボロボロの木板で何度も補修された壁は、時折ギシギシと軋んでいた。

そんな小屋の中、唯一暖かいと言える質素な作りの暖炉の前に、痩せこけた男が座り込んでいた。

 

 

「ふ、不思議なもんだな」

 

「不思議?」

 

 

頭から被った毛布から顔をのぞかせたウルサス人の男は、自身の身体をまさぐっていた。

魔法にでもかけられた様な、呆けた表情でサンクタの青年を見つめる。

 

 

「薬を使ったわけでもないのに、痛みがスッと引いちまった。アンタのアーツなのかい?」

 

「確かに俺のアーツによるものだ。だが過信はするなよ。飽くまでも、一時的なものだ」

 

「また痛み始めるって事か?治ったわけじゃないって事か?」

 

「急性の発作は治まったが、鉱石病を患っている事実は変わらない。緩やかに進行していくか、または急激に進行していくかはわからん。どうあれ病で死ぬか、監視官に殺されるかだ。幸か不幸か、寿命が少し伸びただけと思え」

 

 

微笑を浮かべながらの容赦ない物言いに、ウルサス人の男は悲観に暮れる。

苦しみから抜け出せる、そんな希望が崩れ現実を突き付けられたのだ。天使というのは、必ずしも救いを与えるわけではないらしい。

 

 

「そんな……」

 

「俺は単なる浮浪者であって医者ではない。人を救うような柄でもない。偶々この村に辿り着き、一宿一飯の恩を返しただけだ。直ぐに立ち去る身、これ以上治療も面倒を見てやることも出来ん。それでも生き残りたいなら、村を出て鉱石病の治療施設でも見つける事だ。もっとも、この世にそんなものがあるとは思えないが」

 

「……そうか。そう、だよな。ははっ、鉱石病なんてそんなもんだ。一瞬でも夢見た俺が馬鹿だったよ。そうなると……死に場所、探さなくちゃな」

 

「死に場所?」

 

「そりゃあそうだろ。どうあれ死ぬにしたって、この村の中で死ぬわけにはいかねえ。爺さん婆さん、歳の近い連中、若い連中、そんでガキども。みんなみんな巻き込むなんざゴメンだ。俺がもし感染源になっちまったら、監視官の奴等が来くればみんな連れてかれて収容所やら採掘場送り。最後には惨たらしく殺されるんだ。死体だって荒野に投げ捨てられてお終いだ。だったら、一人でひっそり死ぬべきだろ」

 

「成る程。……では餞別だ、恩人殿」

 

 

徐にサンクタの青年は何かを差し出した。

スプーン一杯ほどの、白く半透明の結晶性粉末だ。

何処となく、青年の翼に近い質感がある。

 

 

「何だコレ。薬か?」

 

「そうだな。一度限りだが、発作を抑えるモノと言っておこう。もし症状が悪化したら飲むと良い。使う使わないも自由だ。その余生、どうか悔いのないよう祈っておく」

 

 

……。

…………。

………………。

 

 

「グリーシャ、見つかったんだって?」

 

「村の外れ、小さい林があるだろ。ほら、奴さんの親御さん達の墓があるとこだよ」

 

「あそこを死に場所にしたって訳かい」

 

「それがよ、衣服だけ墓の前に残ってたんだとよ。死体なんか血の一滴残っちゃいねえ。もしかしたら気でも狂って、どっかほっつき歩いてんじゃねえかって話もある」

 

「はあ?どうあれ凍死するだけじゃねえか」

 

「まあ、もう戻ってはこないだろうさ。俺たちまで巻き込まれちゃ参っちまう。最近はどうも監視官様の機嫌が悪いしな」

 

「陛下の体調が悪くなってるとか聞いたな。はっ、どうせ監視官共は元々腐敗してんだ。ご機嫌取りも楽じゃねえわな。……グリーシャには悪いが、アイツはここ数年働ける様な身体じゃなかった。こちとら口減らしになっただけ有り難え」

 

 

……。

……………。

……………………。

 

 

「久しぶり。そして哀れだな、恩人殿。ふっ、随分と小さくなった」

 

『………………』

 

「そう嘆く必要はない。除け者にされようと、貴方はあの村を愛したのだろう?それだけでも十分、貴方は立派だ。……この世に救いなどない。我らが主は、何者をも見守り、何者をも救いはしない。だが、もう大丈夫だ。救いなどなくとも、我らは皆供に在る。孤独に喘ぐ事など、真実何処にもありはしない」

 

『………フル、サト』

 

「ああ、このウルサスの地に残ることを望むなら尊重しよう。俺と、俺の(ともがら)が安寧を約束する。どうか、達者で」

 

 

 

 

 

 

p.m.10:14/龍門第5区 外部検疫所

 

検疫所はチェルノボーグ事件の影響もあってか、通常よりも厳重な警備態勢が敷かれていた。

地上には無骨なライオットシールドとサーベルで武装した隊員が、高所にはクロスボウで武装した隊員が眼を光らせている。

彼等の視線の先の多くは、チェルノボーグの生き残りだ。

感染者と非感染者が入り混じった人の群れは、狭い検問所の門に押し寄せている。

数十kmに及ぶ避難によってか、彼等の衣服は土に塗れ、顔には疲労と焦燥が浮かんでいる。

騒がしく、重く沈んだ空気の中、聞き心地のいいアナウンスがひどく浮いていた。

 

 

「お待たせいたしました」

 

「ロドスとの面会は10時からの筈だったが?」

 

 

ひしめく避難民の間を縫うように、アーミヤを筆頭としたロドスの面々は、検問所のすぐ近くまでたどり着いた。

近衛局員に囲まれるように立つ若い龍の女性は、僅かながら落胆の表情を浮かべている。

 

 

「14分の遅刻だ。この状況下で私の時間を14分も無駄にしたというわけだな」

 

「失礼いたしました、チェンさん。先程レユニオンの……」

 

「……構わない。事情は把握している。それで、こちらが?」

 

「はい、ロドス顧問のドクターです。ケルシーから龍門にお知らせした通りです」

 

「……どうぞよろしく」

 

「……あぁ。では、そちらは?」

 

 

チェンはドクターから視線を外し、その後ろに控える男を見やる。掠れた半透明の翼が赤色灯に反射し、赤い後光を纏うようで嫌でも目に映る。

 

 

「あ、お伝え出来ていなかったでしょうか?彼はドクターの……」

 

「オーファン。先程名前の挙がったケルシーからの指令を受け、ドクターの警護に当たっている。以後お見知り置きを」

 

 

アーミヤを遮るように、オーファンは穏やかな微笑を浮かべ、慇懃な礼をしてみせた。しかし、チェンの表情はどこか冷ややかだ。

眼を閉じ、側からみれば眠っているように見える男だ。

第一印象としてはお世辞にも良いとはいえないが、何か訳有りである事は察せられる。要人の警護を任される時点で只者でない事くらい、チェンには容易く理解できる事だった。

 

 

「サンクタか?」

 

「然り。なにか、気を害すような事でも?……いやなに、不躾ながら厳しい視線だと思ってね」

 

「気にしなくていい。貴殿に対することではないからな。ただ、厄介事ばかり起こすサンクタを思い出しただけだ。まあ奴よりはよっぽどマシだ。なにせあの眩しい輪っかがない」

 

「ははは。先天的な奇形でね。だが苦労した事はないし、寧ろ有り難くすらある。なんでも同族は皆、光輪のせいで寝付きが悪いと言うからね」

 

 

オーファンは気難しげなチェンを気にしないらしい。軽口すらたたくほどだ。チェンも特に不快感があるわけではない様で、彼女に若干気圧されていたアーミヤやドクターも少し空気が和らいだ様だった。

もっとも、周囲の隊員達は日頃からチェンに扱かれている分、気が気でないのだが。

 

 

「話が逸れたな。オーファン殿は兎も角、メンバーは揃った。では――」

 

「チェン隊長!緊急です!感染者がまた――」

 

「慌てるな!第一中隊、警戒態勢!狙撃中隊、配置に付け!」

 

群衆の一画で感染者らしき数人が激しい抵抗を見せていた。レユニオンではなさそうだが、何か差別的な扱いでも受けたのだろうか。

号令を受けた隊員達が各々の持ち場に着く。余程鍛えられているのだろう、ものの数秒で陣形が出来上がった。

チェンの携えた剣や厳かな雰囲気から相当な実力者であることは窺えたが、指揮能力も相当なものらしい。

暴徒化寸前の感染者達は、瞬く間に拘束される事となった。とはいえ、情勢を考慮してか過剰な武力行使は行われていない。武装は飽くまで警告に留めている。

 

 

「凄いな……。一言であれだけの人数を動かせるなんて」

 

「近衛局は治安維持を主としているが、歴とした軍隊だ。個より全を重視する故、大規模な作戦指揮は彼方が上手かもしれんな。少数での作戦行動が多く、個々の能力が重視される我々ロドスとは指揮系統が異なる」

 

「心配ありませんよドクター。ドクターの指揮も負けていません!一人一人の能力を完璧に把握して適切な配置が出来るんですから!」

 

 

何故かアーミヤが自信満々に胸を張る。

 

 

「え?あ、ありがとう?別に自信が無くなったとかじゃないんだ。単純に感銘を受けていたっていうか」

 

「……失敬。こちらは片付いた。話を戻そう」

 

 

鎮圧が完了したらしく、チェンが戻ってきた。

先程よりも若干眉間の皺が深くなった気がする。

 

 

「予定より随分と遅れたが、仕方あるまい。ロドスの者はアーミヤとドクターのみ私に着いてきてくれ。それ以外の者は残り、周辺警備にあたってくれ。……PC94172、ロドス隊員に任務の分配を。今夜はこれ以上問題の起きない様に」

 

「了解しました、隊長」

 

「少々よろしいかね」

 

 

待ったをかけたのはオーファンだった。

 

「なんだ」

 

「先程述べた様に、俺はドクターの護衛としてここに来ている。せめて会合場所の手前くらいまでは同行の許可を頂きたいな」

 

「……悪いが貴殿はアポイントメントがない。現在我々は飽くまで協定を結ぶ前段階に過ぎない。要人同士ならば兎も角、一隊員が関わるには限度があるとご理解願いたいな」

 

「ふっ、はははは。ぐうの音もでないものだ。なに、貴女達も職務でやっていることだ。……やむを得まい」

 

「えっと、オーファンさん。ドクターの事は私に任せてください。近衛局の皆さんとの協力、お願いしますね。あと……」

 

 

アーミヤがオーファンに近付き、耳打ちをする。

 

 

「機密に関わる様なお話があるかもしれません。()()()()()()()様な事は控えてくださいね」

 

「……ああ。CEOからの指示だ。大人しく待たせて貰うさ。会合が終わり次第連絡してくれ。場所さえわかれば直ぐにでも合流しよう」

 

「話は済んだか?……では、ついてきてくれ」

 

 

チェンを先頭に、3人は検疫所の先へ消えていく。

 

 

(アレがチェン・フェイゼ。臆病さはとうに消え失せたか。

うん?……あぁ、心配はいらないさ。君たちが言うより、彼女はよっぽど強いだろうよ。……少なくとも強がりではない。とりあえず問題はこの後だな)

 

 

手持ち無沙汰になった訳ではないが、オーファンとしては少々懸念があるものだ。ドクターやアーミヤについてはその気になれば容易に追跡は出来る。問題は任された警備任務だ。

元々単独での任務が多かった以上、数十数百人単位での警備任務などした事はない。何事もなければ良いが、先ほどの様な事態が起きてもおかしくない状況だ。

 

 

「では、ロドスの皆さん。ブリーフィングを始めましょう」

 

 

先程PC94172と呼ばれた隊員が招集をかけた様だ。

大袈裟に肩をすくめながら、オーファンは検疫所から踵を返した。

 




プロファイルとか作るべきなんですかね?
あ、危機契約中は更新しないかもしれません。
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