リミメアと水着コルワいるから超速で周回できて快適ですねえ。
マンモスくんゴリゴリ溶けて楽しいから皆も古戦場走ろう!
悪い やっぱ辛えわ
⬛︎⬛︎⬛︎年/ サーミ 氷原
万年に渡り純白に染まるこの地に、生けるものはない。
過去、現在、未来。命知らずの幾百幾千もの探究者達の足跡すら、その亡骸と共に氷雪の海に沈むのだろう。
今も、風の悪戯で掘り起こされた氷塊から何者かだった腕が虚空を掴もうとしている。
この地ではありふれたものだ。特別驚くようなものでもない。
しかして、この地に何か生きるのだとすれば、それはまごう事なき魔物なのだろう。
「非情だな、キミ」
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
応えは不明瞭な
吹雪に溶け込むソレは朧げな輪郭でありながら、確かな気配を持って青年へと向かっていく。
「寒いな。なるほどなるほど、凍てつくとはこういう事か。ウルサスの厳冬以上とは思わなかった。見たまえよ、指が全て砕け落ちてしまった。キミ、そんな非情ではなかったろう?恩を忘れた事などないさ、流浪していた俺を招いてくれたんだ」
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
くつくつと笑う青年に、ソレが返すのは変わらず歌声だ。
何を込めているのかはわからないが、凡そ感情らしきものはない。言うなれば傀儡の類だろうか。
ソレが距離を詰める度、青年の身体は凍り付き、崩れ落ちていく。
「姿形は違えど、友と呼んだ者との再会だ。祝杯の一つでもあげようと思っていたが、こんな土地なものでね。酒などとうに凍ってしまったよ。それなりの品を用意したつもりだったが……あぁいや、キミは神職だったか。寧ろ不用意な酒はご法度で、酒が飲めなくなったのは都合が良かったか?」
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
ソレが青年の間近に迫った時、青年はがくりと崩れ落ちた。脚は直立したまま、胴はうつ伏せに雪に沈んでいる。
『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』
「―――」
青年は瞬く間に雪に埋もれる。掠れた翼も、最早見えなくなった。歌は絶えず響き渡り、吹雪は一層激しさを増す。
浮かぶソレだけが、吹雪の中で確かに存在していた。
…………。
…………………。
…………………………。
『凍え死んだのは初めてか?』
『初めてだな。噂に聞く矛盾脱衣とやらは起きなかったようだ。少し興味があったんだがな』
『嗚呼、高い酒が……。掘り起こせるのかアレは?』
『どうも女運には恵まれないらしい。見ただろうあのザマを。何の躊躇いもなく氷漬けだ』
『そもそもなぜ祝杯などあげようとした。あの状態では現状意思疎通など出来まい』
『……浪漫というやつだ、恐らく。ほら、前に
『口説きにかかったと?それにしても回りくどいだろう。それより本来の目的を忘却か放棄していたのでは……』
「――かつてこれ程無意味な問答があったか?埒が明かないぞ」
『『『『『『おはよう、次はキミか』』』』』』
「流石に喧しいな。本当になんだって言うんだ、女1人相手にあれやこれやと」
『何をしれた事を……。この大地では幾千幾万幾億と繰り返されてきた事ではないか。
『そもそも人の常識、営みを
『酒が……、ガリアのリキュールが……』
『やましい事考えているから氷漬けにされるのだろうが、たわけ』
『いやそれ以前の話として、彼女はもう人ではないだろう。不用意に近づいた結果ではないか』
『だから浪漫というやつだろうと……』
「わかった。わかったから少し黙りたまえ。
◆
p.m11:45 / 龍門第5区 外部検疫所
警備といっても、やることといえば巡回や監視程度だ。
先程のような感染者の暴徒化などもなく、検疫所は至って平穏かつ正常に運営されていた。
初めは浮き足立っていた避難民も、疲労から寝転んだり、壁に寄りかかったりと身体を休めるものが目立つ。
検疫所に併設された監視塔は、検疫所前を最も明確に俯瞰出来る場所だ。
「状況から見るに、レユニオンが混じっている様子はないな」
「……なにか確証が?」
近付いてきたのは近衛局隊員PC94172。
声音は若いが隊長であるチェンから任務の分配等指示されるあたり、それなりの立場にいるようだ。
「確証というのは、客観的なものでなければ成立しない。俺個人が判断したとして、貴方達にそれを示す術がない」
「つまり直感というものですか?……いえ、それが悪いものとは言いません。ご存知がどうかわかりませんが、龍門はマフィアの抗争などがよく起こるんです。私も鎮圧の為に駆り出されますから、直感というのには何度か救われたもんですよ」
近衛局隊員はオーファンの横に立ち、視線を検疫所ゲートに向けた。
タクティカルヘルメットに覆われ、その表情は窺えない。
「ですが、この状況においては直感だけで判断するわけにはいきません。テロリストが紛れ込んでいる可能性については、此方も警戒していますから。ロドスの方の前で言うのはアレなんですが、非感染者は殆ど問題なく受け入れても、感染者はそうもいきません。私個人感染者を敵視しているとか、差別している訳ではないんですが……龍門は感染者に寛容とは言えません。ウルサスなどと比べればマシかもしれませんが、差別的な民意が強いのは事実」
「私は感染者になって長いが、差別やら排斥なんぞもう慣れたものさ。其方が気負う事はない。それに、距離が近い事もあるが、感染者にとってウルサスよりマシと言うだけで龍門は逃げ込むに値する場所というものさ。……それで、だ。どうやら思い違いをしているようなので言わせてもらう。私は別に直感で話している訳ではない」
「――?」
「私のアーツは少々特殊でね。源石由来であればその規模や形状等を把握できる。何が言いたいかというと、今現在検疫所に集っている避難民の中に、武装した者はいない。通信機器を持っている者もゼロだ。仮に陽動の類だったとしても、重要な任務中に眠りこけるなど考え難いだろうよ。他にも根拠はあるが……先も述べた通り、貴方達にそれを証明する術がない」
「ふむ……。では武装していないと言いますが、源石製の武装とは限らないのでは?」
「ははは。この世が源石に依存し始めて、どれだけの年月が経ったと思っている?刃物であろうと、鋳造の過程で源石の粒子が混ざるなどよくある話だ。貴方達非感染者でも、血中に極細かな源石が流れているのと同じでね」
「そんなごく僅かな物でも判別出来ると?俄には信じ難いですが……。――あぁでも、そういう事なんですか?」
「何がだ?」
「先ほどから気になっていたんです。オーファン殿はずっと眼を閉じておられるでしょう?なのに何故周囲の状況が把握出来るのかと。飽くまで聴いた話ですが、視力が弱い人は稀に聴覚が発達し、音の反響などである程度周囲の状況を把握できるといいます。貴方もその類なのかと思いましたが、アーツを用いているなら或いは、と。コウモリなんかが使う超音波みたいなもので、反響した物体、特に源石由来のものから形状や位置情報を得ているとか」
オーファンは一瞬呆けた。正誤は兎も角としてこの隊員、妙に頭が回るらしい。
流石というべきなのだろうか?
「ドクター殿はロドスの重鎮なのでしょう?その警護を任されるのですから、相当な技能を持つとお見受けしましたが……どうです?」
「残念ながら違うな。だが、源石に特化しているのは事実だ。原理については、企業秘密という事にしておいてくれ。なにぶん、
「はあ。訳ありなんですね。いえ、深くは詮索しませんとも。今はお互い協力し合う仲ですし」
もう日付が変わる頃。睥睨していた近衛局員達にも疲労が見え始めている。
居眠りする様な失態は起こさないだろうが、真夜中にひたすら立っているだけというのも堪えるものだろう。
そろそろ交代の時間だが、こういう時ほど時間は長く感じるものだ。
龍門入りを待つ避難民も初めの頃よりだいぶ減ったが、この調子では朝方までかかりるだろう。
「――。来たか」
ヘッドセットに内蔵された源石回路に、電流が走り小さな電子音が鳴る。
それも一瞬のもので、この3年で聴き慣れた子うさぎの声が響いた。
「こちらオーファン。――それはよかった。此方も特に問題は起きていない。そろそろ交代の時間だとも。合流は――アップタウン?いや、それだけわかれば十分だ。俺についても長官殿に話はつけたのだろう?――了解した、引き継ぎ次第すぐ向かうさ」
「アーミヤさんですか?」
「どうやら無事協定は結べた様だ。ついでに、俺の仕事についてもご理解頂けたらしい。俺含めロドスの人員は好き勝手動くことは出来ずとも、龍門は我々を歓迎するそうだ」
「では早速護衛に?」
「そうさせて貰う。まあ今の所トラブルの心配はなさそうだがね。厚かましいものだが、引き継ぎについてはお任せしても?」
「配置換えだけですし、すぐ済みますよ。慣れた仕事ですし気になさらないでください」
快諾してくれるらしい隊員にひらひらと手を振りながら、踵を返す。
適当な検査と身分証明の後、オーファンは龍門に入る事ができた。
既に近衛局本部から通達されていたようで、想像よりも早く入場手続きが済んだ。
「さて……」
オーファンは偶々目に入った路地裏に足を向ける。まだ検疫所からほど近い場所だ。
路地裏のような目立たない場所の方が、彼にとっては色々と都合が良いのだ。
◆
p.m11:50/龍門アップタウン
ウェイ長官との会合の後、ドクター、ケルシー、アーミヤの3人には重苦しい空気が流れていた。
会合の精神的疲れもあるが、最たる原因はやはりケルシーにあるだろう。
彼女にしては珍しく、目の前のドクターに対して警戒や不信の感情を露わにしている。
「キミの帰還を歓迎するよ」
「あ、あぁ。よろしく、ケルシー」
口ではそう言うが眉に皺を寄せた、所謂顰めっ面だ。
会談の直前から察していたが、明らかに歓迎されていない様子にドクターは戸惑う事しかできない。
一体過去の己は彼女に何をしたと言うのだろうか。
必死で記憶を探るが、結局は徒労に終わる。
お互い無言のまま、重い空気が変わらず流れる。
と、不意にドクターの肩に手が置かれた。
「うぉっ!」
「気に病む必要はないぞドクター。まあ俺自身何があったのかは詳しくは知らないがね。今はあのケルシーが表情筋を動かした貴重な瞬間を見れたと、ラッキー程度に思っていれば良い。彼女の悪い癖だ、極力自分の事は話そうとしないのさ」
「……来たか」
「お疲れ様です。随分早かったですね」
「え、いつの間に?」
何の前触れもなく現れたオーファンへの反応は三者三様だ。
ドクターは混乱するが、ケルシーとアーミヤは慣れたものといったところだ。
彼の登場で場の空気は幾らか霧散したようだ。
「それで……CEO。龍門からの要求は?」
「はい、1つは近衛局の皆さんと共に龍門の脅威となるレユニオンを排除し、またこれに関わる情報を共有する事。2つ目はまだ詳しい説明を受けていないのですが、想定以上の損害が生じた場合の対応と処理を、と」
「ふむ、対等な協力関係というよりは都合の良い駒だな。まあ、元々立場的には我々が下。妥当な落とし所か。ではケルシー、俺は何をすれば良い?」
「キミの言う通り、龍門におけるロドスの立場は決して対等なものではない。そして龍門がレユニオンの脅威を正確に把握しているかは微妙な所だろう。ウェイ長官は兎も角として、近衛局がどこまで対応出来るかは未知数だ。我々は感染者に関わる事象、その対応への経験と知識に優れるが、人員は彼方が遥かに上だ。情報の共有とその浸透には時間がかかるだろう。つまるところ、正確かつ迅速な連携を取る事が困難な状況にある。本来ならば1人でも多く、龍門側の要求を実現しつつ作戦遂行の為人員を割きたい所だが――」
「良くわかった。俺は変わらずドクターの警護に専念、状況によっては両立する形で作戦に参加だな?」
「……その認識で構わない」
言葉を遮る形になったが、既に夜も更けている。
オーファンとしてはケルシーの悪癖というか、彼女特有の長話に付き合うのは楽しめるのだが、先程から状況に振り回されるドクターがいささか不憫だった。
「明日からまた忙しくなるのだろう?よく休んで備えようじゃないか。貴方もそう思わないか、ドクター?」
「……そうして貰えると助かる、かな?」
かつての初恋は実らないどころか砕かれて冷凍保存されましたが、青年は今も元気なので何の問題もないね。