ミッションの注意事項   作:場所は伏す

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 球と共にはリアタイで追ってました。完結したときにはハメにGANTZ原作で完結作品なかったためすっげ嬉しかった覚えがあります。後追いで完結作品がさらに増えると期待したんですが、原作終了から時期が過ぎてたのもあってか……。
 後続完結作品は某魔法少女の登場を待つことになります。ハリウッドがどうとか風の噂に聞いたのでたぶん今が書きどきだと思います。


間話1

「……いや、弱すぎでしょ」

 

 6回目のミッションの後、俺は毎晩のように『あいつ』に付きまとわれていた。

 

「なってないっすよ。なってないっす」

 

 地面に()()()()俺を見下ろしながらあいつはため息をついた。

 

「そんなんで、俺にいざってことがあったときに()()()()のことを守れるんすか?」

 

 俺の手をとって立ち上がらせながら、あいつは言った。

 

「さぁ、今日の()()は先輩が俺から一本獲るまで終わらせないっすよ」

 

 8月の暮れ。世間ではガキどもが夏の宿題に泣かされている時節。

 

「もう一回行くっすよ。意識を奪う絞め技とかの類は無し。スーツに違和感を感じたら、即報告・即終了。メーター部分は狙わないけど、基本的にかばう感じで……いいっすね?」

 

 呼吸を整えながらやつの言葉にうなずく。

 

「殺す気でかかってきてくださいっす。俺もその気で行くっすよ。スーツが生きてればどうせ問題ないっすから」

 

 町外れの廃工場で、俺とあいつは部屋のスーツを着て向かい合っていた。

 

「さぁ、いつでもかかっ……!」

 

 あいつが言い終わる前に、虚を突いて掴みかかる。

 

 俺とあいつは真夜中のミッションを生き残るため、お互いを高め合う……というより押しかけてきたあいつが俺に稽古をつけるような形で共に訓練していた。

 

 ◇

 

「あ、店員さーん。焼鯖定食1つ。で、先輩は何注文するんすか?」

 

 訓練の後、毎回のように俺はあいつにメシをたかられていた。

 

「もしかしなくても、先輩って()()()っすよね」

 

 俺にメシをたかっている立場にもかかわらず、あいつは毎度毎度平気な顔で俺を煽ってきた。

 

「筋肉はつけるべきっすよ。こう、たかまるっすよ。自信がつくっす」

 

 あいつがメシのたびに筋トレを推してくるが、それについては毎度毎度受け流す。

 

「それに多分……鍛えておかないと、()()()()()()()()()()()()()()

 

 だが、あいつは俺を煽っていたばかりでもなかった。

 外での会話だからトーンを落として、気づいたことに関して意見交換していたのだ。

 

「スーツを着るとただでさえある差が恐ろしく開くっすね……やっぱ強化の方式は()()()なんすよ。あのボスと殴り合っていたのが俺だったら、それこそ指先1つでダウンだったんじゃないすかね?」

 

 ……意見交換の合間にも煽りを入れてきはしたが。

 

 とはいっても、真面目に部屋の装備の解析作業に取り組んでいたのはあいつだけだった。

 俺といえば、「装備の仕様の確認」というのはあいつが俺にメシをたかりに来る口実……その程度に捉えて全く本気ではなかったのだ。完全に相槌を打つのが仕事になっていた。

 

 あいつを追い返さなかったのは「借りがでかい」自覚があったのと……交友関係がさほど広くなかった俺は、うざく絡んでくるあいつのことを別に()()()()()()()()()のだ。

 ……後者の理由を自覚したのは7回目のミッションが終わったずっとあとのことだが。

 

「榎本さんはああ言ってたけど2番の強化武器ってのがどんなやつなのか気になるっすね。けど、それを取るときにはそもそも部屋からおさらばできるわけで……ままならないもんすね」

 

 思考に没頭するたびあいつは箸を止めていた。

 

「先輩は何か気付いたっすか?」

 

 そして、行き詰まるたびに俺に質問を投げかけてくる。

 ここで「特に無い」と言うと怪訝な顔をされるものだから、俺は考えている風を装って適当なことをよく口走っていた。

 

「……なるほど、いい視点すね。やっぱ先輩頭いいっすね」

 

 俺が何か言うたびにあいつは大袈裟に頷いていたが……誰がどう見ても「部屋における優等生」はあいつの方だ。だから、あいつがそう言うのを俺は皮肉程度にしか受け取っていなかった。斜に構えたりしないで、本当はこのときにもっと真剣に話を聞いておくべきだった。

 

「あー……くっそ。そもそも今の()()()()()()()()ってどこまでなんすか? こんなことなら物理の授業をちゃんと聞いとくんだったっす」

 

 そうすればもっと早く、東京部屋のサイト管理人に俺はコンタクトを取れていたはずだ。

 

 ◇

 

 7回目のミッションの前日、俺とあいつはやはり同じようにメシを食っていた。

 会話の最後の方で、かねてから気になっていたことを尋ねる。

 

 ステルスがあるんだから、わざわざハードな訓練しなくても良くないか、と。

 姿を隠して一方的に撃つ。考えてみたら、これで終わっているはずだよな?

 

「……先輩、ときどき途轍もなくポンコツになるっすよね」

 

 あいつが苦笑した。あいつの言い方だと俺にポンコツじゃないときがあるみたいだが……そこは敢えて訂正しなかった。

 

「連携が難しくなる。激しい動きで解除される。まぁ他にもステルスの欠点はあるんすけど……あ、これが一番わかり易いっすかね?」

 

「先輩、サッカーは好きっすか?」

 

 ……なぜ急にスポーツの話題になったのかはわからなかったが、とりあえず肯定で答えを返す。

 

「OKっす。じゃあ、()()()()()()()()()のと、それとも()()()()()()()()()()のとでは、どっちが好きっすか?」

 

 少し、考えて「する方」と答えた。

 

「そうっすよね。そっちが大多数っす」

 

 俺がそれまでのあいつの話を真剣に聞いていれば、この質問の時点であいつの言いたいことを理解していただろう。

 

「そもそも、ステルスが完全なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 だがポンコツだった俺はあいつの話をちゃんと聞いていなかった。

 そして俺のことを信頼してくれていたあいつは、それまでの話が全て俺に通じていると信じていたのだろう。メシを食い終わるのもあってそれ以上の説明はしなかった。

 

 あいつがいなくなってしまったのもあって結局しばらくの間、俺の「部屋の仕組みは()()()()()()()()()()()()()」という勘違いは放置されたままになる。




プロット組んでないから間話を挟むハメになるんだぞ……反省しなよ。

ここまでの脳内設定。

主人公:
 初期玄野君から戦闘の才能をまるまる引き算。物理と工学の分野に一般教養程度に知識の持ち合わせがある。知識C賢さC強さE。

『あいつ』:
 長生きしない(いいやつだから)。頭は良くない(と本人は思っている)。知識E賢さA強さB。

比較対象:
西くんが知識S賢さS、玄野くん(カタス時)が強さS。

『あの人』:
 榎本さん。知識? 賢さ? 強さ?

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