三階の覇王 ~異世界最強の覇王の肉体は、しかし異能力の才能までは宿していなかったようです~ 作:鷲野高山
一応、文中でも軽く説明出てますが、各学科の特徴を簡潔に表すと以下になります。
武戦科:接近戦
天戦科:天能術合戦
造戦科:鍛冶
【凄い動画見つけた、部活? 個人活動?】
1:武戦科生徒
これ、出演してるのがうちの生徒なんじゃないかって噂になってる
誰か何か知ってる?
https://~~~~XXXX
2:武戦科生徒
あ、見た見た!
なんかちょっと話題になってるみたいだよね
3:天戦科生徒
へー、見てみよっかな
4:造戦科生徒
右下で動いてるのは何かのアニメのキャラクター?
そっちは分からないけど、言われてみれば確かに制服はうちの学園っぽい
5:武戦科生徒
すげー動き。高等部の上級生の上位組かな
6:天戦科生徒
うわぁ、流石武戦科……戦い方が脳筋というかなんというか
7:武戦科生徒
>>6
は?
8:武戦科生徒
>>6
あ?
9:武戦科生徒
>>6
はぁ?
10:天戦科生徒
>>7-9
すみませんでした
11:武戦科生徒
>>10
分かりゃいいんだよ
遠くからへっぴり腰でポンポン術打ってくるだけの学科がよ
12:天戦科生徒
>>11
聞き捨てならないですわね
華麗に、と言ってくださるかしら
13:武戦科生徒
はっ、カレイでもヒラメでも勝手にやってろ
14:天戦科生徒
>>13
まあ、程度の低い返しですこと
もっとも、野蛮な戦い方しかできない武戦科に期待するだけ無駄でしたわね
15:武戦科生徒
>>14
なんだと?
16:天戦科生徒
>>15
なんですの?
17:武戦科生徒
まあまあ、落ち着きなってー
18:天戦科生徒
そうだ。武戦科には武戦科の、天戦科には天戦科のいいところがある
互いの科を意識するのは結構だが、貶める発言は慎みたまえよ
19:造戦科生徒
ふっふーん、やはり我らが造戦科こそ、至高……
20:天戦科生徒
>19
新たな火種を突っ込むのは止めなさい
21:武戦科生徒
話を戻すけど、結局これうちの生徒なの?
誰か、情報持ってる人~?
「……ふむ、これは?」
一通り目を通した後、播凰は端末から目を外し、矢尾に問いかけた。
「だから、東方第一の学内コミュニティ――要するに、この学園の生徒達の書き込み、その内の一部だ」
「播凰さぁん……どうするっすか。こんなの、話題になっちゃったら……」
じれったそうに矢尾が早口で言えば、情けない声で毅が漏らす。
だが、播凰には分からないことがあった。
「して、これが何なのだ?」
いまいちピンと来ていなかったのはそれである。
あの戦いが映像として記録されているのは分かった。そしてそれが話題となっているらしいというのも分かった。
だが、それが何だというのか。それが分からない。
よって播凰が心底不思議そうに尋ねれば、ポカン、と二人は口を開けて。
「「…………」」
しばらく、揃って仲良く間抜け面を晒す毅と矢尾の二人であったが。
「……そうっすね、播凰さんはそういう人だったっすね」
「普通、自分がメインで映ってる動画がネットでも学園内でも話題になってたらもっとこう、あるだろ……」
諦めたように苦笑を浮かべて毅が。
理解できないように、納得できないように首を横に振りながら矢尾が。
それぞれ呟く。
「これが、もし播凰さんだってバレたらっすよ。そんなの、少なくとも学園中から注目の的になるに決まってるじゃないっすか!」
「そうなのか?」
「そうなのかって……そんなの当たり前っ――」
「――いや」
気分が上擦った毅の声を、矢尾の一言が止める。
「まぁ、興味が向くってのはそうだろうな。だが……それは、バレたらの話だ」
そう言って、矢尾は端末をスクロールさせると再び突き付けてきた。
200:武戦科生徒
おい、造戦科の変人共!
まさかお前達がこのドラゴン造ったんじゃねえだろうな!?
もしそうだとしたら、俺様にも戦わせろ!!
201:天戦科生徒
確かに、造戦科ならやりかねない
202:造戦科生徒
いやいや、そんなわけないだろう
だけどもしそうなら、是非作成者に話を聞いてみたいものだね!
203:造戦科生徒
ちょっと! 造戦科の全員が変人に思われるのは心外なんだけど!!
そんなの、ごく一部だからっ!!
204:造戦科生徒
てか、あんな馬鹿でかいもの、造ったとしてどこに置いとくのさ……
205:天戦科生徒
ということはやはり、造り物にしてもCGなどの類ですか
206:武戦科生徒
それっぽい部活に知り合いいるから聞いてみたけど、心当たりないって!
むしろこの動画見せたら、凄い興奮してたよ!
うるさかったから逃げてきちゃった!!
207:武戦科生徒
部活関係あるの?
この右下の動いたり喋ったりしてるこれ、多分VTuberってやつでしょ?
あんまり詳しくないけど
208:造戦科生徒
VTuberって……なんだっけ?
聞いたことはある気がするんだけど
209:天戦科生徒(自分)
架空のキャラクターのイラストやCGを使って、それを演じる配信者のことだ
ゲーム配信とか雑談配信とか、色々なことを配信してる
結構面白いぞ
210:造戦科生徒
>209
へー、ありがと!
ってことは、やっぱりこれCGなんだね!
人と景色だけ本物ってことかな?
211:造戦科生徒
しかし映像のこの方、素手のようにも見えますが……
手に纏うタイプの天能武装でしょうか
212:造戦科生徒
見え難いだけで、小さい可能性はあるね。少し暗いし
ナイフ、小太刀とかもありえるかも?
213:武戦科生徒
小型の天能武装か
そうなると、結構絞られる気はするけど
可能性があるなら中等部の三年生か、高等部でしょ
武戦科の誰だろ
214:天戦科生徒
いやいや、敵がCGなら天能武装は使ってないんじゃねーの?
215:武戦科生徒
>214
でもそうしたら、天能武装無しで天能術使ってることになるよ?
詠唱は……聞こえないだけでしてるのかもしれないけど
流石に天能術無しでこの動きは無理でしょ
216:武戦科生徒
>215
そうすると、それが出来る人に限られるけども
そんなレベルの人達がこういうことするかなぁ
217:造戦科生徒
何らかの特殊なアイテム使ってるとか?
造戦科には頭のネジが外れてるようなやつがいるからな
自分で言うのもあれだが
218:武戦科生徒
うーん、にしても動きが自然というか、違和感がないというか
219:天戦科生徒
そもそも、武戦科なのか?
我らが天戦科という可能性も……
220:天戦科生徒
>219
ねーよ
221:天戦科生徒
>219
んなわけあるかボケ
222:天戦科生徒
>219
こんな動きをする天戦科がいてたまるか
223:天戦科生徒
>220-222
すみませんでした
224:天戦科生徒
天戦科だったら、もっと派手に天放属性の天能術で戦うでしょ
こういう肉弾戦じゃなくて
そりゃ、天戦科でも天溜属性の天能術が使えないわけじゃないけどさぁ
225:武戦科生徒
なんだと、俺達が地味だってのか!?
226:天戦科生徒
あーもう、本当メンドくさい!
227:武戦科生徒
くぅー、誰だか知らねえが、名乗り出て俺様と手合わせしやがれ!!
「――つまり、焦点となるにしても、武戦科の誰かだ。……そこで聞くが、三狭間播凰。お前は何科だ?」
端的な結論を、そして簡潔な質問を矢尾が播凰へと投げる。
武戦科とは、基本的に接近戦――主に肉体を強化する天能術を使い、己の天能武装で、肉体で戦うことに特化した学科だ。
そして天戦科は攻撃や守りの天能術を用いた戦いを、造戦科に至っては天能武装やアイテムを造り出すことを目的としている。
ならば、この動画の戦いを見て武戦科に結び付けるのは必然。
さて、それでは播凰の所属する学科はといえば。
「うむ、天戦科だな!」
「そういうことだ。……甚だ不本意だがな」
「あはは……うーん、まぁ播凰さんが天戦科っていうのは、確かになんというか」
表情は、三者三様だ。
播凰が胸を張って自信満々に答えれば、納得がいかないように口を尖らせ矢尾が、苦笑しつつ毅がそれとなく同意する。
「だから、俺達天戦科に目が向くことはほぼないだろう。自分から匂わせたり、馬鹿正直に言ったりしなければ、の話だが」
「…………」
じろり、と矢尾の視線が伺うようなものへと変化した。
有り得る、と毅もその視線を追うように播凰を無言のまま見る。
そしてそれは予想通り、というべきか。
「ふむぅ、隠す必要があるのか? 私と戦いたいと言っている者もいるではないか」
「……どうやって戦うんだ?」
「どうやっても何も、この身体以外にあるまい。私はまだ天能術が使えぬしな」
迷うことなく、堂々と。
いっそ憎たらしいほどに、さっぱりと告げられる。
それを聞いた矢尾は、はぁーっ、と大きく息を吐くと。
「あのなぁ……お前が、何つうか色んな意味で特殊っつうか特別なのは分かった。が、俺との戦いでもそうだったが、本来それは有り得ねえんだぜ」
次いで、逡巡するように目線を少し彷徨わせ。
今度は大きく息を吸い込み、意を決したように口を開いた。
「迷惑かけたからな、忠告はしといてやる。要するにお前――コネ入学みたいなもんだろ? 全く何の取り柄もねえってわけじゃないのは分かったが」
「ぬ、そうなのか?」
「いや、俺に聞くなよ……兎も角、暫く目立たねえようにするこった。どうなっても知らねえぜ」
きょとんとする播凰に、矢尾は肩を竦める。
しかしすぐに、咳払いをして切り替えるように。
「んで、問題はこの話は学内に留まってないってことだ。さっきも見せた通り、あの動画は普通に一般にも出回ってる。もっとも、学内と同じように、本物だと考えてる奴はいねーと思うがな」
「そういえば、造り物がどうだと書いてあったか。だが、明らかにあれは生きていたぞ?」
「お、俺も――信じらんないっすけど、あれは本当にドラゴンだったっす! CGなんて有り得ないっ!」
「……対峙したお前達がそう言うんなら、そうなんだろうな」
ドラゴンが生きた本物だったのか、造り物の偽物にすぎないのか。
書き込みの論調では、造り物にしても実体があったのか、映像上に過ぎないのかという話題には言及していた。しかし、それが生きた本物であったかについては一切触れていない。
それはつまり、言うまでもなく偽物であるという前提で話が進んでいる。
だが、当然その現場に居合わせた播凰と毅は意見を異にする。
そもそも、播凰に関しては物理的な接触をすらしているのだ。
「私はてっきり、お主が天能術で何かをしたのかと思っておったが……」
「ちげーよっ! 俺もさっぱり分かんねえって言っただろうがっ! そうじゃなくても、あんなことできるかっ!!」
眉根を寄せる播凰に、青筋を立てて矢尾が怒鳴る。
その反応だけで、彼にとって如何にそれが頓珍漢な問いであったかというのが窺い知れるだろう。
「……そうか」
天能術はこんなこともできるのか、とドラゴンを前に目を輝かせていた播凰である。
しょぼん、と残念そうに肩を落とすのであった。
「と、とにかく! さっきの動画のページを教えてやるから、お前達も自分の端末で見てみろ」
それが矢尾の中の罪悪感を擽った――のかは定かではない。
ただ、なにやら急かすように、二人に端末を出すよう促した。
問題の動画。それは先程見たものだ。
そしてその、コメント欄には。
・コメント:これなに、本物? CG? ゲーム?
・コメント:本物なわけねーだろ、アホか
現実性について触れているコメント。
・コメント:ワイヤーで吊ってんだろ
・コメント:肉体強化系の天能術使ってんでしょ
・コメント:天溜属性? ってやつだっけ
・コメント:いいなー、俺にも天能術の才能あればなー
・コメント:でも、天能術使うのって天能武装とか詠唱が必要なはず
・コメント:小声なんだろ(適当)
・コメント:見えないだけで、何か持っとんのやろ
・コメント:熟練者は、そういうの無しでも行使できるって聞いたことある
それ以上に活発な、戦いについて触れているコメント。
・コメント:服の色的に、東方第一の生徒じゃね? 高等部の
・コメント:あの名門なら納得かも
・コメント:生徒の自主製作かなんかか?
・コメント:なんでそれをVTuberが配信するんですかねぇ……
・コメント:ただの学生が、こんな動きできるんか?
・コメント:あの東方第一だぞ、いるんじゃないの
・コメント:天能術のエリート様達の学園だからねぇ
・コメント:偶々色が被ってるだけで制服と決めつけるのは早い
同じくらいの勢いで、そもそも何なのかを議論するコメント。
反応は、学内と概ね似たり寄ったりというところか。
流石に学内の方が、少し細かい話をしているが、どちらにせよ動画から得られる情報が少ないのだろう。これに関しては、夕暮れという時間帯と、若干のぼかしに少し距離があるのが幸いというべきか。
「で、だ。これがライブ配信ということは、ほぼ確実にこのVTuber――大魔王ディルニーンは、この場にいたことになる」
声に釣られて顔を上げれば、真剣な瞳で矢尾が播凰の顔を見ていた。
「それだけでも謎なのに、しかもだ。こんな状況を、ごく当たり前のように実況している。……おかしいと思わねえか?」
「あっ、確かにっす。普通、驚くっすよね」
「うーむ、言わてみれば、これはあの者か。……いや、しかしあの者であれば――」
――フハハハハッ!!
高笑いの幻聴が、播凰の頭の中で響いた。
それは
矢尾と毅は違和感と捉えているようだが、播凰は違う。予想していなかった展開であろうが、滅多なことでは動じず、悠々と受け入れた上で行動に移す。あの男ならばそれぐらいはできそうだと考えていた。
よって、真面目な面持ちで会話する二人の横で。播凰だけは一人、何とも言えない表情で虚空を見上げていた。
その、直後のことである。
――ぐぅーっ。
緊張感の欠片もない、音だった。それこそ、播凰の脳裏に木霊していた
しかして、高笑いは幻聴に過ぎないが、もう一方は実際に響いたものでもある。
その、正体は。
「おおっ、そういえば今は昼休みではないかっ! それは腹も減るわけだなっ!!」
なんのことはない、播凰のお腹が空腹を訴えただけであった。
「…………」
「…………」
流石にこれには声も出なかったのか。
もはや苦言も突っ込みも忘れ、二人はただただ呆れを隠そうともせず播凰を見るだけ。
それを気にせず、播凰は端末の時間を見て、昼休みが半分程過ぎてしまっているのを確認すると。
「そら、お主ら! 急がぬと、昼食を食べ損ねてしまうぞっ!!」
ぐっぐっ、と播凰は破顔しながら矢尾と毅の背中を押す。
「……お前といると、本当調子狂うな」
「慣れたつもりだったっすけど、甘かったっすね」
押されるがまま、強制的に移動させられる二人。
だが、当然いつまでもされるがままとはいかず、矢尾は距離をとって振り向くと。
「取り敢えず今の話、絶対に他の人が聞こえるところでするんじゃねーぞ」
最後に念押して、去っていこうとしたが。
その制服を後ろから播凰が掴むことで、問答無用で止めた。
ぐえっと、呻き声を上げる矢尾。それを意に介さず。
「折角だ、共に昼食をとろうではないかっ!」
「はぁっ!? 俺は別に、慣れ合う気は――」
抗議の声を無視して、三人は校舎へと戻っていくのであった。