【東方狂神父】アンデルセン神父が幻想入り   作:トマトマトトトママトマトトトマト

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イェーイ!イェ…ゴホッ!ゴホッ…
お、お礼に連続更新しちゃうもんね…あと前回のお詫び


第10話 銃剣(バイヨネット)は人外に牙を剥く

 目の前に突如として現れた恩人は、しかし安心してはいけないような剣呑な雰囲気が漂っていた。

 

「怪我は無いですか?お嬢さん」

 

「え?うっ、うん…」

 

 そのオーラとは裏腹に、彼女に向けられた言葉はとても穏やかだった。

 もっとも、それ以外の要素が濃すぎて安堵するには程遠いが。

 

「ここは危険です。私が何とかしますから、貴女はすぐにお友達の所に戻りなさい」

 

 柔らかな物腰だが、その言葉には有無を言わさぬ迫力があった。

 しかし、そこで引き下がらないのが彼女である。

 

「ダメだよおっさん!あんたみたいな唯の人間が敵うわけが…」

「早く逃げなさい!!」

 

 今まで温厚だった者から突然怒鳴られれば、誰だってぎょっとするだろう。

 彼女からしてみればあくまで彼の身のための発言だったが、思いの外強い言葉に仰天し、それどころではなくなってしまった。

 もともと彼女の頭には同時に2つのことを考えるだけの処理能力が備わっていない。

 

「おっ…おう…おっさん死ぬなよ!」

 

 思考を放棄しそれだけ伝えると、人里に向かって一目散に向かっていった。

 

 

 * * * * * *

 

 

 最後の最後まで自分の身を案じてくれたあの子は、根は悪くないのだろう。

 ただ、少しばかり状況判断能力に欠けるようである。

 

 初撃で重傷を負った獣の妖怪は力の差を本能で感じ取り、早々に逃走の構えを見せていた。

 しかし、化け物ならば大小強弱問わず皆殺しにするのがアンデルセンであり、彼に目をつけられた妖怪は限りなく不幸であった。

 

「か弱い子供を襲っておいて逃走とは良い御身分だな化け物……」

 

 逃走手段を封じる為、妖怪の足に再び銃剣を投擲する。

 それらは一切の乱れなく妖怪の腱を貫き、金切り声を上げる。

 

「貴様には地獄は似合わん……」

 

 これから始まろうとする神罰は、名も無き妖怪にとっては余りにも過酷だった。

 

 

 * * * * * *

 

 〜人里〜

 

「よし、準備は出来たな?行くぞ!」

 

 一方そのころ、慧音は自警団を率い、教え子を救出するために出発しようとしていた。

 だがその目の前に、彼女が今まさに助かるべき存在が現れる。

 

「チルノ!?どうしてここにいる!?」

「急に変なおっさんが出てきて、あたいを妖怪から守るために時間稼ぎを…」

 

 最強を自称する彼女らしくもなく、慧音に縋り付く。

 

「あのままじゃ危ない!早くおっさんを助けにいってあげて!」

 

 普段のチルノからは想像も出来ない姿に、慧音は感心する。

 

「分かった。私たちが責任を持って助けに行こう。だがその前に聞きたいことがある」

「?」

「そのおっさんというのは、灰色のコートを着て丸眼鏡を掛けた背の高い男じゃなかったか?」

 

 慧音の質問の意図が分からなかったが、チルノは答える。

 

「そうだよ!それが何だっていうのさ!」

 

 早く助けに行けと急かされながらも、二転三転する状況に冷静さを失わずにいられるのは、彼女の優秀さを雄弁に物語っていた。

 

「いや、何でもない。自警団に次ぐ!助けるのはチルノから外来人の金髪の男性に変更する!出立するぞ!」

 

 命令を聞いた自警団は、すぐさま気持ちを切り替え、慧音の後を追って里の外に飛び出していった。

 

 一人ぽつんと残されたチルノは、はっと思い出す。

 

「そういえば、剣持ってたこと言うの忘れてた…」

 

 

 * * * * * *

 

 〜霧の湖〜

 

「こっちだ!」

 

 普段から授業に遅刻するチルノを叱りにいく都合上、妖精達の遊び場は熟知していた。

 予想通り、そこには妖怪の物とおぼしき足跡が森の中に向かっている。

 

 そして、アンデルセンの物らしき足跡も森の中に続いていた。

 

(せっかくの外来人を死なせるわけにはいかない…生きて帰って貴方が助けた子供の笑顔を見て貰わねば!)

 

 慧音とて教育熱心な人物は大歓迎である。さらに外来人とあっては、恐らく外の世界の貴重な知識を保有しているだろう。

 絶対に助ける必要がある。

 

 暫く走っていき、やがて森の奥へと続く道の前で足を止めた。

 

「………ここか」

 

 成程微かに血の匂いが漂っている。半獣である慧音だからこそ嗅ぎとれた匂いである。

 

 しかし妙なことに、この血の匂いは人間(ヽヽ)のものではない。

 そう、例えるならまるで妖怪(ヽヽ)のような……

 

(……まさかな)

 

 一瞬だけ思い浮かべた可能性をすぐさま否定し、自警団の士気を高め、救出に向かう。

 

「行くぞ!」

 

 しかし、

 

「その必要はありませんよ」

 

 奥から飛んできた言葉が一同を押し留めた。

 

 出てきたアンデルセンは汚れ一つないコートを翻し、自警団を一瞥すると慧音に向き直った。

 

「随分と心配をかけたようで、申し訳ありません。しかし、子供達は勿論、私もこの通り五体満足ですよ」

「……妖怪が出たと聞いてきたはずだが、それはどうしたんだ?」

 

 慧音の質問にアンデルセンは笑みを崩さず、首を傾げた。

 

「妖怪ではなく、獣でしたよ。それはそれは大きな猪でした。子供のことです、気が動転していたので見間違えたのでは?お嬢さんを避難させた後、追い払っておきましたよ」

 

 アンデルセンは立板に水のように状況を説明した後、徒労となってしまった自警団一同に感謝と労いの言葉をかけ、頭を下げた。

 

「…了解した。すまないが、先に帰ってくれないか」

 

 再び頭に浮かんだ可能性を否定出来なくなった慧音は、自警団を先に帰らせた。

 

 二人きりとなったアンデルセンと慧音は、お互いに真顔で向き直る。

 先に発言したのは慧音だった。

 

「本当のことを教えてもらおう。お前、妖怪をどうした?」

 

 暫しの沈黙の後、アンデルセンは口を開いた。

 

「子供には見られないよう、先に帰らせたのでご安心を」

「外の世界から来たのに戦闘ができるのか?」

「元の世界では戦闘を繰り返していたもので」

 

 慧音は一層警戒心を高め、更に質問する。

 

「人間…ひいては子供達に危害を加えるつもりはあるまいな?」

 

 その発言にはムッとしたように言葉を返す。

 

「教え子がいたというのは本当です。成熟した者は私と共に戦闘に参加しましたが、年端もいかぬ子供には断じて正体を悟られぬようにしていました」

 

「…そうか。なら良い」

 

 その宣言を聞いた慧音は警戒を解いた。

 

「お前の言葉からは確かに悪意を感じなかった。一方で人外に対しては強い殺意を抱いているようだが…詮索は無粋だな」

「話が分かって助かります」

 

 慧音は笑顔で手を出し、握手を求める。

 

「信用しよう。私と共に教師として勉学を説いてくれないか?」

 

 アンデルセンもふっと笑い返し、手袋越しにその手を握り返す。

 

 

 

「その役目、是非引き受けましょう」




どうも、赤い箱です。スペアリブって信じられないほど柔らかいです。

第一被害者:獣のモブ妖怪

チルノにもアンデルセンにも傷一つありません。
穏便に済んで本当に良かった良かった(白目)
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