【東方狂神父】アンデルセン神父が幻想入り 作:トマトマトトトママトマトトトマト
そしてこれを読んでいる皆さん、明けましておめでとうございます。
〜『あの世』〜
「はぁ、憂鬱だ…」
地獄の死神、小野塚小町は自分の上司の執務室へと嫌々ながら向かっていた。
あの後、アンデルセンの魂を血眼になって探していた死神一同であったが、当のアンデルセンは既に幻想郷へと
そして、タイムリミットが来たと言わんばかりに、小町は
彼女の話は常軌を逸して長いことで有名だ。
曰く、「夕日が暮れて影が差しても前置きすら終わらない」。
曰く、「同じ内容について百を超える角度から説教される」。
曰く、「鉄壁の理論武装で異論を持つことすら許されない」。
等々、人間・妖怪を問わず悲鳴が上がっており、彼女の名前は恐怖の対象となっている。
名高い妖怪の賢者が不得手としている数少ない存在でもあるらしい。
故に、後ろめたい事柄がある状態での彼女からの呼び出しは小町にとって死刑宣告に等しい。
「風邪を引く予定でも作って帰ろうかな……」
直属の上司からの命令には流石の小町も逆らえない。痛む胃を押さえつつ、重い足取りで上司の待つ執務室へと向かった。
* * * * * *
「映姫様、ただいま参りまし」
「遅いです小町。今日は一体どこで油を売っていたのですか?」
意を決してドアを開けた途端、小町を待っていたのは容赦ない叱責だった。
小町は既にここに来たことを後悔していた。
「今日呼んだのは他でもありません。貴女が処理し損なった
やはりきたか、と小町は戦々恐々としていた。
その間に目の前の上司ーーー四季映姫は淡々と現状を述べた。
「貴女が逃したその魂については既に此方で発見、監視しています。貴女、今それが何処にいるか分かっていますか?」
死神総出で見つけられなかったその存在を既に捕捉していたことに驚きを隠せないが、今の小町にとってはその所在の方が気になった。
答えあぐねている小町に肩をすくめ、映姫が答える。
「幻想郷です」
「なっ…………!?」
一瞬、小町には何を言っているのか理解できなかった。
映姫の言うことが正しいのならば、死者の魂が現世に顕現したことになる。本来、輪廻の輪を外れたなら外れたで、その魂は消滅するのがオチである。
「貴女の疑問は尤もです。ここからは私の推測になりますが、彼は前世で神に対する信仰心が異常な程高かったうえ、その類稀なる心技体を用いて自分の信じる神の御心のまま尽くしてきました。」
ここまでは良いのですが、と映姫は息をついた。
「問題はここからです。彼は死に際に
小町は、自分が何を聞いているのか分からなくなってきていた。
たった1人の人間が魂として独立するほどの精神力など前代未聞である。悟りを開いた者でさえ不可能に近いだろう。
だが、次の発言で小町はアンデルセンの真の恐怖を思い知ることになる。
「恐らく彼は、彼一人、唯一人の存在で、独立して輪廻を構築しています」
「!!!!!!!!」
小町は戦慄した。
いよいよもって只事では無い。
輪廻の輪というのは、本来死んだ人間の魂が『あの世』で裁かれ、生前に積んだ善行悪行によって振り分けられる、そうして相応しい道を辿って転生し、新たな命を授かる。そうして輪廻は成り立っているのだ。
「たった一人で輪廻を司るなど以ての外じゃないですか!今すぐ行って処断しますか?」
映姫は少しの間目を閉じ、やがて口を開いた。
「いえ、今は必要ありません」
「何故です!?これ以上野放しなにすれば…!」
「貴女が思っているほど、彼は脅威ではありませんよ」
映姫は落ち着き払って言った。
「輪廻が独立したということは、裁かれるという工程を省いたことになります。つまり、一度でも死ねばその時点で魂は消滅します。そして、彼自身も思想を除けば極めて温厚な人物です」
子供を肩に乗せて笑っているアンデルセンの姿が、小町にはどうしても想像ができなかった。
「それに、何か問題を起こせば彼は幻想郷から淘汰されるでしょう。何やら
映姫は立ち上がって言った。
「しばらく泳がせましょう。それからでも事は遅くありません」
それを聞いた小町は、しばらく経ってからぱあっと笑顔になった。
「じゃあ、私のミスも無かったことに」
「それとこれとは話が別です」
* * * * * *
晴れて寺子屋の臨時教師となったアンデルセンは慧音と別れた後、一度自分が助けた子供達のもとに顔を出していた。
「失礼。ただいま戻りましたよ」
五体満足で戻ってきたアンデルセンの姿に大妖精とチルノは歓喜する。
「アンデルセンさん!無事でしたか!」
「おっさん!生きてたのか!」
「ええ、勿論。
「まぁ最強のあたいからすれば大したことは…って?教師?」
慧音との会話でつい先ほど決まった内容を説明すると、また違った意味で2人は歓喜した。
「つまり最強のあたいと最強のアンタが組むってことね!これはもう無敵と言っても過言じゃないわね!」
「チルノちゃん、何も戦いの話だけじゃないと思うんだけど…でも嬉しいです!チルノちゃんを助けてくれた恩人の貴方が先生になって見守ってくれるなんて」
正直、窮地のところを助けたとはいえ、そう簡単に子供達が警戒を解いてくれるとはアンデルセン自身思っていなかった。
それどころか自分達の敵わなかった化け物から傷ひとつなく戻ってきたとなれば得体の知れなさが付き纏い、永久に打ち解けられない可能性をも危惧していた。
だが今、目の前にいる2人は一点の曇りもなく自分を信じてくれている。
表現方法は異なるが、現に自分の着任を2人とも喜んでくれている。
救った甲斐があるものだと、アンデルセンは心が暖かくなった。
「次の授業からは、私も教鞭をとります。楽しみにしておいてくださいね」
2人は無邪気に喜び、二言三言交わした後、アンデルセンは博麗神社への帰路に着いた。
どうも、赤い箱です。2022年最後の食事は塩むすびでした。
最近更新できてなくて本当すみません。
不定期だろうと更新はするので、気と首を長くして待っていただけると幸いです。