【東方狂神父】アンデルセン神父が幻想入り 作:トマトマトトトママトマトトトマト
その宣言は明らかに何かしらの攻撃の予備動作であり、アンデルセンは妖夢の一挙手一投足も見逃さんと身構える。
すると、妖夢の姿がグニャリと歪んだ。
「!」
否、歪んだのではない。高速で移動し続け、残像が乱れていたのだった。
先程までとは全く異なるそのスピードに、ついにアンデルセンも両手の銃剣を用いて全力で防御にかかる。
「……………………ッ!!そこか!」
背後からの急襲を、アンデルセンはすんでのところで受け止めた。
かつて由美江の特訓に携わっていなければ、初見で回避は不可能だっただろう。
そして、慣性がたっぷり載ったその一撃は、アンデルセンの腕力と互角に近い程の重みがあった。
「このスピードにも着いてくるというのですか…?本当に化け物ですね…」
この発言に、アンデルセンは初めてピクリと眉を動かした。
「化け物、ですか。私をあの様な野蛮極まりない連中と一緒くたにしないで貰いたいものですね」
一言二言話している間に、妖夢の剣撃は10本近く飛んでくる。
この速度を維持して攻撃を展開できる妖夢も凄いが、これらを未だに正確にいなし続けられるアンデルセンも凄まじかった。
* * * * * *
「いや〜凄い応酬だわ。これはお金払ってでも見る価値があるわね」
一方、幽々子は一応審判としての役割もこなしつつ、大量のおむすびを傍に抱えて2人の試合に見入っていた。
(それにしても、何でアンデルセンさんはあんなに戦えるんでしょうね。彼はただの神父って言ってたけど、これは何か裏がありそうね)
幽々子本人も望んでいる訳ではないが,あの戦いぶりを見ているとどうしても詮索したくなってしまう。
同時に、自分が知っている神社の巫女が脳裏に浮かぶ。
「聖職者になるには高度な戦闘技術が要求されるのかしら?」
答える者は誰もいないその疑問は、2人の剣と剣が打ち合う音に掻き消され、消えていった。
* * * * * *
「ハァ…ハァ…しぶといですね。いい加減斬られてくれると有り難いのですが…」
「私とてそう簡単に負ける訳にはいかないのですよ。ご理解頂けるとこちらとしても助かります」
「ハァ…戯言を…………ハァ……」
スペルカードの宣言と同時に、今の今までこの剣速を維持し続けられたのは充分賞賛に値するが、妖夢の体力も限界が近づいていた。
このまま同じことを続けていてもジリ貧だろう。
そう悟った妖夢は、更なる一発逆転を狙うべく、一旦距離を取って跳躍した。
「あくまで剣の決闘に
ただの負け惜しみとも思えないその発言を訝しみ、アンデルセンも一応警戒する。
「切り札があるのなら、今のうちに使っておくべきです。私も特段気が長いわけでもないものでね」
「是非もなし。この勝負、勝たせて頂きます!」
目の前に立ちはだかる強大な相手をねじ伏せるため、最後のスペルカードを宣言する。
「『待宵反射衛星斬』ッ!!」
幽々子様の御前で醜態を晒す訳にはいかない。
出会って間もない男に負ける訳にはいかない。
その思いを胸に、妖夢は全霊の力を込めて刀を振り下ろす。
* * * * * *
おそらくこれが最後の切り札だろう。
この攻撃を受け切れば、十中八九妖夢は戦闘続行が困難になる。
ならば、この攻撃は受け止めるのが礼儀だろう。
そう考えたアンデルセンは何があっても対処できるよう、全神経を集中させる。
そして、妖夢が剣を振り下ろした。
周囲に稲妻が走り、気のような物が周囲に集まってくる。
すると、夥しい量の弾が、こちらに向かって来た。
「何ッ!?」
百戦錬磨のアンデルセンも、このような事態は初めてだった。
あちらの弾丸とは違い、現代ではあり得ない形状をしており、妖夢の剣から次々と生成されてはこちらに向かって来る。
必要最低限の動きで避けながら試しに何個か斬ってみると、殺傷力はそこまで無さそうだった。
アンデルセンの強化された肉体をもってすれば、この程度の弾など貫通することなく弾かれて終わりだ。
だが、その様子を妖夢に見せるのは気が引けた。
弾丸が効かない肉体を持つ
しかし、先程からの寸分の乱れのない剣捌きが、既に多少なりとも恐怖の対象となっていることを、アンデルセンは知る由も無い。
閑話休題。
かといって、この量の弾を避け切るのは密度の問題から不可能であった。
となると、アンデルセンに残された道は一つ。
「ならば…全て叩き斬ってみせましょう!!」
* * * * * *
妖夢は悪夢でも見ているような気分だった。
一体全体どの様な思考回路をしていたら、この量の弾幕を2本の銃剣のみで全て斬り伏せるという発想になるのだろうか?
そして、実際にアンデルセンは明らかに常人の範疇を超えた動きで弾幕を捌き続けている。
ただの一つの弾幕も撃ち漏らすことなく、だ。
何も知らない人物にこの話をしても、寝言は寝て言えと笑い飛ばされるだろう。
だが、その寝言は今現実として目の前で展開されている。
妖夢からすればふざけるなという話であった。
しかし、そんな妖夢にも一筋の光明が見えた。
アンデルセンは先程妖夢のラッシュを全て受け切っており、なおかつ現在進行形で弾幕を斬り続けている。
弾幕の量も残り少ない。このスペルカードが終わってしまえば、自動的に妖夢も終わることになる。
ならば──と妖夢は最後の特攻を仕掛けた。
* * * * * *
残る霊力を全て刀身に宿し、正面からアンデルセンに突貫する。
当然アンデルセンも気付いており、周囲の弾幕を急ピッチで排除して妖夢に備えている。
そして、妖夢の刀とアンデルセンの銃剣が空中で交錯し────
────アンデルセンの銃剣が、音を立てて折れた。
「……ッ!?!?」
いくらアンデルセンといえどもこの事態は想定できなかったようで、その表情は驚きを隠し切れていなかった。
これは、先程からの連撃でアンデルセンの刃は摩耗していただけが理由ではない。
妖夢の刀は“銘刀”にして“名刀”であり、そこらの得物とは格が違う。
対して、アンデルセンの銃剣は祝福儀礼こそ施してあるものの、それを除けば世界中で出回っている銃剣の一つに過ぎない。
この2つの剣が打ち合い続けた結果は、想像に難くない。
そして、妖夢は得物を失くしたアンデルセンの懐に潜り込み、そのまま斬りかかる。
「せめてもの情けとして、寸止めで手打ちにして差し上げましょう。これで、私の勝ちですッ!」
妖夢は、勝利を確信していた。
驚きに染まっていたアンデルセンの顔が、既に笑みに変わっていたと気付いた、その瞬間までは。
「!?!?!?」
突然アンデルセンのコートの袖口から、左右それぞれ5本、計10本の銃剣が飛び出し、妖夢に向かって投擲された。
恐ろしい速度で投擲されたそれは、妖夢の髪や頬を掠め、遥か後方に飛んでいった。
そして、遅れてやってきた凄まじい風圧と衝撃波により、妖夢は弾幕もろとも吹き飛ばされた。
「貴方も…切り札を隠し持っていたというのですか……グフッ!」
辛うじて受け身は取れたものの、直後に足元に飛んで来た銃剣によって、完全にバランスを崩す形となってしまった。
そして、妖夢が面を上げた時には、アンデルセンの銃剣がひたと首筋に押し当てられていた。
「寸止めも勝利条件の内…でしたね?」
「そこまでッ!アンデルセンさんの勝ち!」
アンデルセンの初陣は、華々しい勝利で終わったのだった。
どうも、赤い箱です。しなびたフライドポテトは好きになれません。
めでたく我らが神父の勝利でございます。
本当はもっと無双させる気だったなんて言えない……!
冷静に考えて本数無限の銃剣ってやばくないですか?
ところでこの小説の一話ごとの長さをば
-
長い。もう少し短くしてくれるとよきかな
-
ちょうど良い。そのままの君でいて
-
短い。儂は一話をたっぷり楽しみたいんじゃ