巨人族の少女の航海録   作:蜜柑凪

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誇り高きウソつき

地図を道しるべに漂着したシロップ村。

そこでルフィ達一行は、村のうそつき少年 ウソップと仲良くなる。

彼に村を案内されながら、お嬢様の屋敷で起こった一騒動。そして、偶然にも知るキャプテン・クロの〝お嬢様暗殺計画〟。

 

ウソップが村のために決死の覚悟で駆けまわるも、誰一人として彼の言葉に耳を傾ける者はいなかった。

そして、無情にも陽は沈み、月が空へと浮かぶ夜半。

 

「おれはウソつきだからよ。ハナっから信じてもらえるわけなかったんだ。おれが甘かった!!」

「キミは全然悪くないでしょ。落ち込むことないよ。」

 

クロへの嫌悪感でディアンヌが顔を歪める。

彼女の励ましにも、依然としてウソップの表情は沈んだままだ。

 

「甘かったって言っても、事実は事実。海賊は本当に来ちゃうんでしょう?」

「ああ、間違いなくやってくる。でも、みんなはウソだと思ってる!!明日もまた、いつも通り平和な一日がくると思ってる………!!だから、おれはこの海岸で海賊どもを迎え撃ち!!!この一件をウソにする!!!!それがウソつきとして!!おれの通すべき筋ってもんだ!!!!」

『!』

 

グッと決意を込め、ウソップは高らかに立ち上がる。

どんっと胸を張り、そこには先ほどまでの沈んでいた表情は見られない。

 

「よし。おれ達も加勢する。」

「キミをほっとけないしね。」

「いい肩慣らしになりそうだ。」

「言っとくけど、宝は全部私の物よ!」

 

ウソップの決意に応えるように、続くルフィ達も宣言する。

若干、ナミだけ動機に不純が見られる気がするけど…。ま、やる気みたいだし。いっか!

 

 

 

 

 

 

**

 

「この海岸から奴らは攻めてくる。だが、ここから村へ入るルートはこの坂道1本だけだ。あとは絶壁!!つまり、この坂道を死守できれば村が襲われる事はねェ!!」

 

シロップ村の地理を聞きながら、ウソップ主導で行われる作戦会議。

それを聞きながら、ふと疑問が浮かぶ。

 

「あれ?でも、ボクたちが上陸した海岸もあったよね?あっちはいいの?」

「たしかにそうね。ここで密会してたからって、ここから攻めてくるとは限らないわ。」

「そういや、アイツらは攻め込む時間については話してたけど、上陸場所については言ってなかったしな。」

 

うーんと頭を悩ませる。

結局、ここで考えたところで、どちらから海賊が来るかの可能性は五分五分だ。

 

「とりあえず、どっちから海賊が来てもいいように二手に別れましょ。」

 

 

 

――そして、厳正なるクジ引きの結果…

 

『北の海岸』……ディアンヌ・ウソップ・ナミ

『こちらの海岸』……ルフィ・ゾロ

 

 

「きゃー!!やったわ!ディアンヌと一緒ね!嬉しい!」

 

ピョンピョンと全身から喜びを表すように、ナミはディアンヌへと抱きつく。

対して、ウソップの表情は鬱々としている。

ジーッと楽しげな女二人を見つめる。如何にもか弱く、強そうには決して見えない。

 

「たよりね~~。」

 

が、やるしかない。震えてなんかいられねェ!!

…何よりも大好きな村を守るために――!!

 

 

 

一方のディアンヌ。彼女もどこか不安げな眼差しでクジを見つめていた。

同じ海岸へと組み分けされたルフィとゾロを見やる。

戦力的にも人数的にも分散はできたと思う。だけど…

 

「二人とも…もし海賊たちが北の海岸に現れても、あんまり迷わないようにね…。」

 

たぶん、言っても無駄だろうけど。

一応、気休め程度にはね。

 

「あ?俺が迷うわけねェだろ。」

「心配すんな!」

 

いや、心配しかないけど。

キミたち、今までの迷子っぷりに自覚が無いのかな。…頭が痛い。

ともかく、こちらの海岸に海賊が来てくれることを祈ろう。

そうすれば、わざわざ移動して迷子になる心配もないし。

 

うん、とそう結論付け、気を強く持つ。

 

 

ディアンヌたちは、ルフィ・ゾロと別れて北の海岸へと赴く。

それぞれの想いを胸に夜は明けていく―――

 

 

 

 

 

 

**

 

「海岸についたぞォーーーーっ!!!」

 

陽が昇ると同時に漂着するクロネコ海賊団の海賊船。

海賊たちが坂を上り、襲い来る。

 

「どうやらアタリを引いたみたいだね。二人とも大丈夫?」

 

ウソップなんか足がガクガクと震えている。ナミも怖がりだし。

けどまぁ、ケンカできるだけの余力はあるのかな。

 

 

 

ディアンヌはスッと〝戦鎚ギデオン〟を構える。

 

「〝乱衝撃〟!!!」

「ぐわぁぁあ!!!」

 

大地が無数の拳となり、海賊たちを圧倒する。

 

「村へは絶対入らせないよ。どうしてもってなら、ボクたちを倒してからにするんだね。」

 

ギデオンを片手に凄む。

腰がやや引き気味になった海賊たちに対し、ウソップは驚愕の目をこちらへと向ける。

 

「すっげーー!!ディアンヌ!!お前、こんなに強かったのか……!!」

「さすがね!やっておしまい!!」

「…うん。頼りにしてくれるのは嬉しいけど、キミたちも少しは戦ったら?」

 

わーわーっと後ろから声援を送る二人に突っ込む。

まぁ、相手は大したことないし、ここはボクの能力にとって得意フィールド。ボクだけでも十分足止めはできる。

でも、さすがにこちらに頼り切りなのもどうかと思ってしまう。

 

「何言ってるの!私はか弱いのよ!!あんな大軍、相手にできるわけないでしょ!!」

「そうだ!!俺の弱さを見くびるんじゃねェ!!」

「…ボクだって、か弱い女の子なんだけど?」

「「嘘つけェ!!!」」

 

二人揃ってキレられる。さすがにヒドい。

そう思いながらも、ディアンヌはこちらの隙だと見て襲い来る海賊たちを躊躇いもなく沈める。

その様には説得力が皆無としか言いようがない。

 

ディアンヌが大地を操り海賊たちを攻撃する傍ら、弱いなりにもウソップとナミもまきびしやパチンコ玉、棒を使って、懸命に戦っていく。

戦況は明らかにこちらが優勢だった。

 

「おい野郎ども。まさか、あんな女一人にくたばっちゃいねェだろうな。」

「ですが…あの女、メチャクチャ強くて…」

「それに…悪魔の実の能力者のようで…おれ達じゃとても……」

 

海賊たちは立ち上がるものの、その目には気力が見えない。

もはや意地とキャプテン・クロに対する恐怖のみだ。

 

「知るか。いいか、おれ達はこんな所でグズグズやってるヒマはねェ。相手が強けりゃこっちも()()なるまでだ…!!」

 

ジャンゴがユラユラとチャクラムを振る。

 

「ワーン!!ツー!!ジャンゴ!!」

「ウオオオオオーーーーーーツ!!!!」

 

瞬間、先ほどまでやられて満身創痍だった海賊たちが雄叫びを上げ、襲い来る。

そのパワーは崖の一部をも粉砕するほどに。

なるほど。さっきよりは骨がありそうだ。あ、そういえば…

 

「ナミ。ウソップ。二人は坂の上に上がっていた方がいいよ。そろそろ効き目が切れそうだから………って早いね、ナミ。」

 

ディアンヌが言い切るよりも前に、既にナミは避難していた。

その危機回避能力には惚れ惚れさせられる。

 

「当ったり前でしょ!?巻き込まれるのはゴメンだもの!!ウソップ、アンタもさっさと離れた方がいいわよ!」

「ほへ?」

 

未だ状況が飲み込めていないウソップをナミが引っ張る。

二人がディアンヌから十分距離を取ったその時だった。

薬の効き目7時間が切れ、ディアンヌの姿が元に戻る。そう本来の巨人族のサイズへと。

 

「きょ、きょじんーーーーっ!!??」

 

ギデオンを振り回し、海賊たちを一掃。催眠も何もあったもんじゃない。

哀れにも一人ポツンと残っているのは、ジャンゴだけだ。南無。

 

「くっそ~~!!出遅れた!!!」

「何だァ?全員やられてんじゃねェか。おい、ディアンヌ!少しくらい残しとけ!」

 

やっと追いついたのか、坂の上からやって来るルフィとゾロの二人。

 

「遅れてくる方が悪い。それにどうせボクが倒したの、雑魚ばっかだし。催眠術師とキャプテン・クロは残ってるんだから、それでいいでしょ?」

「そっか!そうだな!!」

「チッ!」

 

ディアンヌはその場にドスンと腰を下ろし、観戦モードへと入る。

十分暴れたし、下手に手を出したら煩そうだ。

 

船よりニャーバン・兄弟(ブラザーズ)が降り立つ。

といっても、ゾロとルフィ二人の相手になる筈もなく、ものの数分で見事にぶちのめされたけど。

 

「よし!あとはお前だけだな!」

「!」

 

ひどい怯えによりジャンゴが震える。

けれど、それは目の前のルフィ達に対してではない。その背後に見える一人の男の存在。

 

「もうとうに夜は明けきってるのに、なかなか計画が進まねェと思ったら…何だこのザマはァ!!!!えェ!!?ジャンゴ!!!」

「!!!」

 

クロは全身に怒りを滾らせ、凄まじい殺気を放つ。

彼の目に映るのは、情けなくもやられた部下。そして、それを止めたであろう奴らの姿。

 

「ま…待ってくれ!キャプテン・クロ!きょ、巨人が相手だなんて、そんなことおれ達ァ聞いてねェ!!それにあとの二人も…とんでもねェ強さだ。あいつら三人に全員やられちまった!!こんなのは計画にねェ!!」

「だからどうした。」

 

あくまで、クロは冷徹に言い放つ。

クイッと眼鏡を上げる。それはまだこの男が戦いを忘れてない証拠。

 

「5分やろう。5分でこの場を片づけられねェようなら、ジャンゴてめぇどうなるか分かってんだろうな?」

「!!!!」

 

焦りと恐怖に身体を震わせながらも、ジャンゴはチャクラムを手にする。

 

「おい!巨人!!これを見ろ!!」

「ちょっと巨人って…ボクにはディアンヌっていうちゃんとした名前があるんだけど?」

 

ジャンゴの言い分に顔を顰め、ディアンヌは思わずそちらを振り向く。

 

「ワン・ツー・ジャンゴでお前は途端に眠くなる!!」

「ディアンヌ!ダメよ!!」

「へ?」

 

ナミが声を荒げるも、時すでに遅し。

 

「ワン・ツー・ジャンゴ!!!」

 

突如として、猛烈な睡魔が襲うと同時に、ドタンッと物凄い音を立ててディアンヌの身体が倒れる。

巨人族元来のサイズだけあって、その身体は坂全体を埋め尽くすほどだ。

 

「ディアンヌーーッ!!」

 

ナミが悲壮な叫びを上げ、懸命にディアンヌを起そうと奮闘するも全く以って起きる試しはない。

人間サイズならまだしも、本来のサイズとなったディアンヌにとってはどれだけ叩かれようと、精々何か掠めた程度にしか感じないだろう。

 

「へへっ…ハーレクイン♡」

 

想い人との夢を見ているのか、その表情はとっても幸せそうだ。

こっちは大変だっていうのに…。何だかいろいろと泣きたくなってくる。

 

「よし!一番厄介な巨人はこれでもう戦えねェ!!後はてめェらだけだ!!!」

 

グッとチャクラムを手に構える。

考えている暇はない。どのみち、コイツらを倒さなきゃ俺達に後はねェ!!

 

 

 

 

 

 

**

 

「――ん~~??」

 

ゴシゴシとディアンヌは目を擦る。

ぼんやりとした視界で見れば、海賊たちの姿はどこにもなく、地面には何か鋭い刀で斬り刻まれたような傷がいくつもあり、仲間たちはそれぞれの形で休息を取っていた。

 

「あら、やっと起きたのね。ディアンヌ。」

「うん…。でも、これ一体何がどうしたの??」

「全部終わったんだよ。てめェがグースカ寝てる間にな。」

「そっか。なんかゴメン。」

「気にすんな。大した事じゃねェ。」

「ニシシ!」

 

気安い空気が流れる。

何事もなく平穏に、今日もシロップ村の一日は始まる。いつも通りの朝だ。

あ。1ついつもとは違ったことがあったっけ。今日はウソップがまだ騒いではいないから。

 

彼がまたここで騒ぎを起こすのは、もう少し遠い未来。今はまだ先の話。

――それでも…

 

「海賊が来たぞーーーーっ!!」

 

意思は繋がる。

麦わらの一味は新しい船と仲間を加えて。それぞれの日々は続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

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