ウマ娘、それは神秘の存在。
人とは違う耳を持ち、尻尾がある。
身体能力は驚異の域であり、人の英知を集めた車を笑いながら追い抜かす。
彼女らは皆、見た目麗しく男性からも女性からも人気が高い。
人々から好かれ、身体能力も高く、人からチヤホヤされやすいそんな彼女たちにも避けられない定めがある。
そう、名前だ。
彼女たちのウマ娘としての名前は彼女たちが母親のおなかの中にいるとき、母の頭の中に名前が下りてくることで決定する。その下りてくる時期はまちまちであり出産直前だったり、新たな命が芽生えた時だったりする。
余談になるが海外では神から与えられた名前と言うことでとてもそれが大事にされるが、古来より本当の名を明かすと呪いなどがかけられてしまうと恐怖を持っていた私たち日本人は人としての名前とウマ娘としての名前、二つ持っていたりする。駿川たづな氏がそう……、いや、忘れてくれ。
下りてくる名前はターフやダートを彩る彼女たちに相応しい名前であるが……
時たま、いやクラスに一人ぐらいの確率で思わず聞き返したくなるような名前を授かることがある。
ところ変わって日本の府中。
中央トレセン学園。その空き教室にて不定期でひっそりと行われる集会があるらしい。
なんでも主要なメンバーたちに紹介された者たちのみ参加できる特殊な会であり、その存在を知るものはそんなに多くない。
しかしながら、人づてに調査を進めていくと面白いことが分かってきた。
なんでも、その集会に参加する者たちは決まって『珍名』・『奇名』をもつウマ娘らしい。
この物語は何の因果かどんでもないお名前をもらってしまったウマ娘たちのお話である。
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「と! 言うわけで! 今回は珍しくゲストなしでやっていきましょう! ほら拍手~!」
「うぇ~い。」
「うぇ~い、って言うと思ったかこのあんぽんたん。“と言うわけって”どういうわけにゃ。コレガワカラナイ。」
並べられた机たち、所謂お誕生日席に座り拍手を強要するは桃色髪のウマ娘。名を“スモモモモモモモモ”、母親がこの名前を授かったはいいがもらった本人さえ正確な“モ”の数を把握していないかわいそうな子。この集会、正式名称『珍名奇名同好会』の会長を務めている。
その左側に座りやる気のない『うぇ~い』を口からため息のように吐き出した白髪で若干ビワハヤヒデやちみっこウマ娘。名を“モチ”。自身の胸部装甲が名前の通り徐々に膨らんでいくことを望んでいるが全くその兆しが見えない彼女。自身の名前のせいでお餅が食べられているのを見ると生きるのを諦めたチベットスナギツネの顔をする女の子である。
そして最後に語尾に『にゃ』が付いているウマ娘。黒髪ショートで耳が小さめのためウマ娘ではなく黒猫娘に見えてくる彼女の名前は“ネコパンチ”。巨大勢力を誇るネコ軍団の姉貴分でありレース走者とボクシングを掛け持ちするヤベー奴。なお必殺の右フックはトレセン一頑丈な男として有名な沖野氏を一撃でノックアウトするほど。
「ほ~ら二人ともテンション低いよぉ! アゲアゲで行きましょうとも!」
「どうせまたゲストさん呼ぶの忘れてただけでしょ~。」
「無理やりテンション上げてごまかそうってつもりだにゃ。」
『ウグッ!』という情けない声を挙げながらダメージを受けるスモモ。彼女たちの活動方針としては毎週金曜日に自分の名前で困っている人をお呼び、もしくは拉致してきて空き教室で一緒にだべりましょうというものである。今回はスモモモモモがゲストを連れてくる担当だったようだが何らかの理由で失敗してしまったようだ。
「い、いや~。声かけたはいいけどその子自分の名前に誇り持ってるタイプだったみたいで、『お前みたいな意味不明な名前と一緒にしないで!』って怒られちゃった。」
「う~ん、ささる。」
「てかそういうのはもっとちゃんと相手の目見るにゃ。ここに連れてこられる奴らは大体世の中の理不尽に嘆いてる目をしてるにゃ。圧倒的情報収集不足なのにゃ。」
「そうなんだよなぁ……、というか私の名前自分でもはっきり解らないしどうしよって言うんだい!」
「ゆーの名前はスーモ。でん、でん、しゃ~。」
「誰がみどりの不思議生物じゃい! 私はお家紹介できんぞ!」
「じゃ、ま。とりあえず今日はスーモちんの愚痴聞く感じでいきましょうにゃ。」
【ウマ娘・スモモモモモモモモについて】
戦績 12戦1勝
中央に所属しているがハルウララと同じように中央から地方に遠征してレースに参加しているウマ娘。基本的に大井のダートが主戦場。何度か掲示板にギリギリ乗るような成績を収めていたが最近何とか初勝利。その名前の珍妙さからか結構コアなファンが多く勝利時はファンに囲まれて胴上げされた。
「ってな感じだにゃ。にしても最近やっと勝てたんだよね、おめでとにゃ。」
「おめでと~。」
「やっとファンの皆様の声に答えられて一安心ですよ。……というかマジでこのまま私がやり玉ですか!?」
「しかもきれいに外から追い込んでゴールしてたしいい感じじゃにゃいですか。『圧勝!』って言われてましたし、これは連勝いけるんじゃにゃい?」
「がんばれ~。」
「ちょっと! うやむやにしないでくださいよ!」
褒められてテレテレ~、してたところから急に切り替えてツッコミ。この切り替えの早さは私じゃなくても見逃しちゃうね……。にしても競走馬ではできない勝利時の胴上げとかができるなんて走者としてもファンとしてもうれしいですね。
【名前についての悩み】
「と、言うことで本題ですにゃ。正直私ら長いこと一緒にいるんで名前とかの愚痴とかそういうのは聞き飽きてるけど一応同好会だから記録として残しとかないといけないのにゃ。なんできびきび吐くにゃ。」
「吐け吐け~。」
「ぬぅ……! パンチだけじゃなくモチまで敵に回ったか!」
と、言うわけでスモモモモモモモモモモモモモの名前についての悩みになります。
「まぁやっぱり“モ”の数だよね。知っての通り私たちウマ娘の名前は母親から生んでもらう時に下りてくる。二人のように比較的わかりやすい名前ならよかったんだけどね……。」
「母さんが言うにはちょうど陣痛の時に下りてきちゃったみたいで
『お子さんの名前はスモモモモモですよ』
『え! ちょ、ま! 今痛いから! 痛いから書き留められないんだけど! ちょっと待ってメモ用意するから』
『(ちょっと待って)お子さんの名前はスモモモモモモモモモモモです。』
『えっと、“す”“も”“も”“も”………、え、っちょと“も”の数いくつですか!?』
でそのまま神様消えちゃったみたいで……、結局私の名前わからずじまい。マジで何文字なんだ?」
「それで~、とにかく多かっただけは覚えてるから日本のウマ娘の名前で最長である9文字に収まるようにして登録したんだよね~」
「そうそう。でももしかしたらそれより短いかもしれないし、長いかもしれない。というかそれ以上に私の名前何!? なんで“スモモ”じゃないの!? 絶対タイピングの時ふざけて連打したでしょ!?」
「まだペットならわかる……いや解らにゃいにゃ。ウマ娘のお名前じゃないのにゃ。まぁブーメランだけどにゃ……。」
「実況のあんちゃんにいっつも言われるんです! 『言いにくい』って! モ連打はどう訓練しても無理って! そんなの私に言われてもどうしようもないィィィイイ!!!」
と、言うわけで今回はこれまでとなります。
次回はモチちゃんがお婆ちゃんの英語教師を連れてくるようですよ。
モチ
「ジャガイモは食べれる。でも先生の大好物なのはちょっと理解できない~。」