魔法科高校の劣等生 神のいる学校生活   作:梅輪メンコ

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火に油を捧ぐ所業

二〇九五年十月末の、大亜連合海軍基地を壊滅させた攻撃について、日本政府は詳細を一切明らかにしていない。外交チャンネルを通じた他国からの正式な問い合わせに対しても、マスコミからの情報開示請求に対しても、「国防上の機密」の一言で回答を拒んでいる。

あの大破壊に戦略級魔法が使用された事は状況から見て明らかだったが、日本政府はそれを認めなかった。そこには日本の軍事的な切り札となる得る「戦略級魔法師・大黒竜也特尉」の存在を秘匿するという意図が当然にあったが、同時に大量破壊・大量殺戮の魔法を実戦で使用する事を正当化するつもりは無いという側面もあった。それを認めてしまえば、他国から戦略級魔法による攻撃を受けるリスクも高まるからだ。

誰もが知っている秘密であっても、当事者がそれを認めないことに意味がある。公然と認めないということは、公然と使用しないということだ。二〇九五年十月三十一日のように、いざという時には使うとしても、決断に強い心理的なストッパーが掛かる。

実は公開されている大規模破壊兵器にも、同じような歯止めが存在する。大量破壊兵器を自分からは使用しないという建前だ。戦略級魔法も、この建前により実戦投入が控えられてきた。

しかし今回ブラジル軍は、戦略級魔法を他の兵器と同じように使用すると態度で示した。そういう声明を出したわけではなかったが、シンクロライナー・フュージョンの使用をあっさり認めるということは、そう言っているも同然である。あの魔法は隠蔽が難しいという事情は、使用した事を認める理由の一つにはなっていても決定的な要因ではない。戦略級魔法の使用は紛争解決の手段としてタブーではないとブラジル政府が判断した。それがシンクロライナー・フュージョンの使用と、それを認める公式声明をもたらしたのだ。

軍事の世界では『灼熱のハロウィン』により戦略級魔法使用に対する心理的障壁が大きく揺らいでいた。その障壁が今回、政治的にも決定的に崩壊した。それを理解した人々は、今まで以上に激しい反応を示したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月2日

 

朝早くから凛はGalileoで確認した情報を見て半分呆れていた

 

「何してんだ。これじゃあ、火に油注ぐのと同じだぞ」

 

「そうですね。これに駆り出されているリーナには同情を禁じ得ません」

 

そう言って凛はそこに写っている情報を見て苦笑してしまっていた。そこには北メキシコ州モンテレイで反魔法師団体による暴動に低レベル魔法師で構成された『ウィズガード』が出動し、余計に場を混乱させた状態となっていた

 

「いやはや、ウィズガードの指揮官は馬鹿なのかねぇ」

 

「それは分かりません。ですが確実にウィズガードを派遣したことは間違いだったでしょうね」

 

そう言って弘樹は地下室で実験をしている凛を見ながらそう言った

 

「そう言う姉さんは何を作っているんですか?」

 

「ん?ああ、ちょっとした工作。沖縄では間に合わなかった小型ターボジェットエンジン、これをスケートボードに載せようかなって」

 

「アニメじゃ無いんですから・・・」

 

そう言って弘樹は前に凛と見た推理アニメの主人公が使っているスケートボードを思い出すと呆れてしまっていた

 

「ま、そんな顔をするなって」

 

そう言うと凛は最後の部品をはめるとターボジェット付きスケートボードを完成させた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、アメリカのシカゴにあるシルバー家本邸ではジョンソンが頭を抱えていた

 

「全く、これじゃあリーナは便利屋じゃ無いか。なんとかしないとな・・・」

 

そう言ってジョンは頭を抱えていた。リーナから来た怒りと文句のメールでジョンはどうしようか頭を悩ませていた。するとそこに父のローズが入ってきた

 

『ジョン、入るぞ』

 

「父さんか、どうぞ」

 

そう言ってローズが入ってくるや否やジョンをソファーに座らせ、ある紙を渡した

 

「これは・・・」

 

ジョンはその紙の内容を見ると目を軽く細めた。そこには

 

Hold off on the action for a while(暫く行動は控えろ)

 

と書かれていた。その紙を見たジョンは遮音フィールドを展開し、口を覆うと小声でローズに聞いた

 

「これはどう言う事ですか」

 

「書いてある通りだ。お前は監視されている。しかもバランス大佐からだ」

 

「そうですか・・・」

 

そう言ってジョンはすんなりとその事実を受け入れる事ができた。するとローズはジョンに通告をした

 

「ジョン、気をつけた方がいい。いつ憲兵に・・・いや、CIAに狙われるか分からない。そのため、我々シルバー家は暫く行動は控えるよう閣下からお達しがあった」

 

閣下、それは凛からの情報という事だった。ジョンはローズの言葉に頷くと部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そんな事があるのか?」

 

バランス大佐は困惑していた。この情報は大統領から直接齎されたものでデータではなく、紙媒体で渡された資料だった

 

「ジョンソン元少佐から情報漏洩の可能性?」

 

そう言って紙に書かれていた情報を見た。そこにはジョンソン・シルバーがUSNA軍の情報を持ち出している可能性がある情報と彼の監視を指示する命令書だった

 

『しかし、彼は軍を退役した身だ。そんな事があるのか?』

 

ジョンはリーナが軍に入る時にリーナが強く所望した影響でスターズへ入隊し、リーナが昇進するとそれに釣り上げられる形で昇進した身であり、彼自身の魔法力は平均的であった。だが、彼の情報収集力と洞察力は頭ひとつ抜けていた。しかし、彼は軍を退役し、リーナの補助としてスターズの基地にいるだけであった。その為、機密情報に触れることはできないはずだ

 

『だが、彼の洞察力や情報取集能力を考えるとあながち間違いでは無いかもしれない・・・』

 

バランスは指示書を見ながらジョンの監視を指示するのだった

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