AIが書いた間違ったボーダー青春ラブコメ   作:taiken

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二宮隊、鳩原隊員の追放処分。それがもたらした波紋は、少しずつ広がっていく。


七月某日 鈴鳴支部

*********

 

 七月に入り、晴れの日の鈴鳴支部。

 今結花は、一人黄昏ていた。

「今ちゃん、今ちゃん。」

「えっ!?」

「どうしたの?今ちゃん。」

「ううん。なんでもないよ!」

 今が見ていたのは、ボーダーの公式サイトにある隊員の名簿。何度見返しても、数日前まであったA級隊員の中に二宮隊はなく、B級隊員として記載されている二宮隊の中に、鳩原の名はない。

「……今先輩、鳩原先輩と同じクラスだったんだ。」

 由比ヶ浜が言う。

「……そうみたいだな。」 

 八幡は、特に何も感じていないよふうを装った。あの気丈な今先輩が、ここ数日は太一を咎めない。太一も気落ちしてしまい、ここ数日はいつものやらかしがなくなってしまっていた。

「……そう。」

 雪ノ下は、それだけ言って黙り込む。村上先輩のときとは違い、今回の別離はもう決定的で、取り返しがつかないことだ。

 ボーダー隊員の大半は、学生として学業生活を送りながら防衛任務と訓練に勤しむ。ボーダーに関することは秘密にせざるを得ないことも多く、学校での友人関係も隊員同士となることが多いのだという。

「国近先輩とか、当真先輩のことは聞いてたけど……」

 由比ヶ浜も雪ノ下も小町も、支部の女子として今先輩には指導されている。その中で、鳩原先輩については話題になることはなかった。

「本部で、未来に何かおかしい事は無かったか、って聞かれたの。犬飼くんの誕生日に焼肉に行くって言ってたし、何もおかしい所は無かったのに……」

「鳩原が居なくなったのは、今のせいじゃない。」

 村上先輩が煎じた抹茶を飲み、今先輩は考えにふける。

「……こんなことになるなんて、思ってなかったもの。」

 今先輩は、どこか自嘲めいて話す。

(村上くんの時、あんなことを思っておいて……)

 今先輩は、自分の考えの浅はかさを後悔していた。

 絶対に壊れない人間関係などない。だが、心のどこかで、こんな壊れ方をすると覚悟できてはいなかったのも確かだ。

 ならば、もっと鳩原とクラスで話をすればよかったのではないか。そうすれば、隊務規定違反の前に、何かが変わったのではないか。

 

「……でも、なんで本部は私に話を聞いたんだろう。」

「鳩原について、確認しておきたいことがあったんだろう。」

「・・…それは、多分そうね。柚宇と勇くんも話を聞かれていたから。」

 鳩原先輩のほかのクラスメートにまで、調査は及んでいたようだ。

「でも、未来に問題があったって言える?そりゃ、遠征行きが無くなってから落ち込んでいたけれど、最近は持ち直していたのに……」

 ならば猶更、鳩原先輩が隊務規定違反となる理由が分からない。

 今先輩の話では、鳩原先輩は先日八幡たちが話をしていたような、民間人との争いになるような人柄でもない。

 謎は深まるばかりだった。

 

「……今ちゃん、このお菓子美味しいよ。一つどうだい?」

 来馬先輩は煎餅をとって今先輩に手渡す。その後、八幡たちにも配られた。

「ありがとうございます!お兄ちゃん、取り過ぎだよ。」

「いいじゃないか。」

「良くないです!皆さんに出す分が無くなっちゃいます。」

 人が増えたことで、鈴鳴支部のお菓子事情は逼迫していた。

「大丈夫だ、それなら……」

 

「鋼さーん!抹茶が切れてたんで買ってきました!!」

 買い出しに出かけていた太一が支部へと帰還した。

「……抹茶ならあったぞ?」

「えっ!?ウソォ!!?」

「太一先輩、左の棚に入れるって決めたじゃないですか。」

「そっかごめん!忘れてた。」

(……気を使わせちゃったわね。)

「何がどこにあるかはちゃんとラベルで貼っておくわ。これなら間違ったり、忘れたりしないでしょう?」

「おお、本当だ!」

 太一は基本的に、悪意をもって行動することもあるが、善意で行動する事の方が割合として多い。

「本部の発表に間があったってことは、本部内でも分からない点があったって事だろうね。今ちゃんに話を聞いたのは、鳩原ちゃんの件が発表された後だから……」

 来馬先輩が時系列と事実を整理する。

「鳩原先輩について分からないところがあって、それを関係者を通して後で確認したことになる。でも、それっておかしいですよね?」

「それが引っ掛かっているの。」

「何、何?どういうこと?」

 由比ヶ浜が八幡と雪ノ下にツッコミを入れる。

「記憶封印処置をしてボーダーを辞めさせた後で確認というのは、順番が逆だろう。普通は、事実確認の上でどういう処分を下すか決定するはずだ。」

 村上先輩が補足を入れる。

「えっと……つまりどうなってるのかしら。」

「……鳩原先輩に関して、まだ分かってないことがあるということだと思います。」

「……それは、どうしてかしら。」

 今さんも考えてはいるのだが、思い当たるところがない。

「……事情があるんでしょう。」

「……そうよね。」

「俺達は支部の末端隊員だしな。知らなくていいことだって、きっとあるんだろう。」

「うん……。」

 小町はうつむく。今先輩は小町に優しい言葉をかけてくれるけれど、その優しさは小町に対してだけではない。今先輩は誰に対しても優しく、そして厳しい人なのだ。自分に対してですら。

 

「……犬飼くんたちも心配よね。とてもいいチームだったから……。それが。」

 今先輩は沈痛な面持ちで言う。

「……そうだね。」

 来馬先輩がそれを肯定する。

 実は彼は、かつて二宮から鳩原たちについて相談を受けていた。主に、精神面のケアについて。

 最近はまた笑顔も見れるようになったと、二宮も喜んでいたのだ。しかし、そんな彼の喜びは、一瞬にして打ち砕かれた。

「……二宮さんと、未来とで何かがあったんですか?」

 今先輩が来馬先輩に尋ねる。

「……いや、僕にもわからない。」

 来馬先輩は、相談されたという事実も、相談の内容も話す気は無かった。

 結局、謎は謎のまま、鳩原先輩が居なくなったという喪失感だけが、鳩原先輩の友人たちの間で残された。

 

*********

 夜。鈴鳴支部の第二隊室で、由比ヶ浜は一人悩んでいた。

 今回の事態を予測して、止められる可能性のある人物に心当たりがあったからだ。

(でも……)

 もう、鳩原先輩はボーダーを追放されてしまった。電話をかけたとして、何をどうしようというわけでもないし、そもそも由比ヶ浜は鳩原先輩との面識すらない。

 それでも、どうにかならなかったのだろうか。

 隊員に対して支給されたタブレットを操作し、その人物へと電話をかける。

「……もしもし。」

『はい、実力派エリートです。』

 何か困ったことがあれば相談に乗る。そう言って、迅さんは由比ヶ浜に電話番号を教えていた。

「あ、あの、夜分に電話をかけてすみません。あたし、この間お世話になった由比ヶ浜結衣っていうんですけど……」

『……ああ、君か。久しぶり。元気だった?』

 

「……はい。私は、まぁなんとか。それで、ちょっと聞きたいことがあるんですが。」

 私は、の部分を強調して、由比ヶ浜は言う。

『何かな?』

「……最近、変なこととかありませんでしたか?」

 ……由比ヶ浜に、鳩原先輩の件について直接聞きだす勇気などなかった。回りくどく、迅さんに世間話について尋ねるかたちで話を聞いてみる。

 

『んー。特に何もないよ。』

「本当に?」

『本当だよ。……電話をしたのは、鳩原ちゃんの件についてだね。』

「は、はい。」

 由比ヶ浜は驚く。思えば迅さんは、初めて会った時からこちらが何を言うのか、これから何をするのかを見通しているようだった。

『……正直に言って、俺のサイドエフェクトで見れる未来には、鳩原ちゃんは居なかった。けれど、それを止められる未来は無かった。』

『……すまない。』

 伝えられたのは、あまりにも残酷な真実だった。

 未来は決まっていたというのだろうか。鳩原さんが居なくなり、大勢の人たちが悲しむことを迅さんは知っていたというのだろうか。

(そんなの、辛すぎる……)

「いえ、こちらこそ急にすいません。ありがとうございます。」

 由比ヶ浜は通話を切る。

「……。」

由比ヶ浜はスマホを持った手を下ろし、うつむく。

 迅さんの言葉は、残酷な可能性を示していた。

 未来が一つの大きな流れに沿って出来ていて、決まっているということだ。

(ふざけんなし……!)

 由比ヶ浜は自分の頭をぐしゃりと掻く。

 

 例えば、鈴鳴支部の誰かが。例えば、香取と染井が。例えば、学校の友人たちが、ある日突然居なくなる。

 四年前の大規模侵攻で、だけではない。その可能性は、常にある。そして、その可能性を誰かが変えてくれる、という訳ではない。

 由比ヶ浜は鳩原先輩の心配をしていたわけではない。迅さんと話すことで、安心したかっただけなのだ。

 そして、そんな甘い話はこの世のどこにも無いことが分かった。

「だったら、私も強くならなきゃ……!」

 由比ヶ浜は決意を固める。

 強くなって、誰も失わないように。

 そんなことは無理だと分かっていても、願わずにはいられなかった。

 八幡に教えられた走破訓練のコツを試すべく、由比ヶ浜は訓練室に入った。

 

***************

 深夜。由比ヶ浜からの着信履歴を見て、迅は思う。

(これは、自分の責任だ。)

 

 一体今までに、何度未来を犠牲にしたのか分からない。これから先、何人の未来を犠牲にするのかも、まだ定まっていない。

 最悪の、或いは最良の未来へと繋がる最後の鍵に、まだ会えていないのだから。

 それでも。

「……大丈夫だ。

俺のサイドエフェクトが、そう言ってる。」

 迅悠一は、揺らがなかった。

*************




登場人物紹介

犬飼先輩/スミくん 展開の都合上誕生日を間違えられた被害者
犬飼先輩の誕生日は展開のために犠牲になりました。
原作での先輩の誕生日は五月一日ですが、本作では独自設定で七月一日。

今結花/今先輩 時系列ガール
加古(過去)、鳩原(未来)と並ぶ時系列ガール。当真や国近の勉強の面倒を見ていたという設定、鳩原のクラスメートという設定から本作で無理矢理鳩原と友人だったという設定を捏造された。鳩原の事情を知っていないので、当真さん、国近さんともども鳩原とは永遠の別れをすることになったと思っている。

別役太一/悪童系スナイパー
定期的に汚名返上と汚名挽回を繰り返す人。鈴鳴支部のコメディリリーフ。

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