大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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9話 イキキル

響応虎落笛(きょうおうもがりぶえ)

 

「…っ!!」

 

 

電撃を纏わせた斬撃がこちらへ飛んでくる。2発3発… クラウドの破晄撃に似ているかもしれない。まっすぐとぶから、普通なら回避できるだろう。だが、現実は足の脛を掠る。体が追いつかないのだ。

 

 

「(まだ痺れてる…!!)」

 

 

錯乱したインクリングを正気に戻すため受けたピチューの手加減ない攻撃、さらには敵から受けたいかずち。2つの強力な攻撃を受けたことで、既に満身創痍で戦っているのだ。

 

 

「…逃さなきゃ……にが、さなきゃ……」

 

 

小声で自分を叱咤する。先程消えていった命とピチューの姿が重なる。やだダメだ、あんな静かなのピチューには似合わない。

 

 

「近づく…!」

 

 

遠くにいても電撃がくるぐらいなら、近くにいた方がいい。刀の攻撃が怖いが、そんなもの気にしている暇はない。

それに応えるように敵はバックステップで距離をとろうとする。それを許さなかったのは彼女の投げたクイックボムだった。着弾で爆発するボム。威力はないが牽制に便利なものを足止めに使った。

 

 

『…!』

 

「チャンス!」

 

 

スプラローラーの振り下ろしを囮に使い、刀の防御を使わせた隙に顔面らしきところにスプラシューターをぶち撒ける。そのインクの勢いにインクリング自身が負けるほどだった。コロコロと後ろへ転がる。

 

 

「はあ… はあ…」

 

『やってくれたな…』

 

 

顔にはりついたインクを手で拭う相手。顔があるのか? 少なくとも視界はあるらしい。大きく一撃をくらわせたのだからここから反撃を…!

 

 

『だがお前は勝てん。わかっていないのか? 大乱闘のルールが適応されない、ということは相手が同類でない以上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだぞ?』

 

「…ッ…!!」

 

 

そうだ。ここが大乱闘の世界じゃないなら、いくらインクをぶつけたところでぶっ飛ばせない。ダメージを増量させる効果もない。奴を殺さねば勝てない。その前に勝てるのか? 無力な自分で?

 

 

「あ… あああ゛あ゛あ゛!!!」

 

『確かに体術は効くが… ふんっ』

 

 

現実を直視したインクリングは無我夢中で殴りかかる。こんな感情はじめてだ。ただ殴りたい。ぶっ飛ばして負かして、何もなかったことにしたい。

 

そんなやぶれかぶれな攻撃が通じるはずもない。少しの間でも戦って、実力の差は知れたというのに。

 

突き出した手首を掴み、腕力で体を回して地面に叩きつける。吸った空気が全部出た気がした。

 

 

「あうぐっ… うっ…」

 

『これでもファイターの力を使わない… こいつではなかったか… いや、もしや自覚がない? 試してみる価値はありそうだ』

 

「(なんのことを… いってるの…?)」

 

 

喉も動かない。言っている意味がわからない。

その感情が顔に出ていたのか、刃を向けながら、敵は言った。

 

 

『俺たちはマスターハンドを追い詰めた。しかし、逃げられた。ファイターの誰かの元へだ。仲間の力を駆使し、一部は調べたが結局見つからなかった。ならば、探っていないファイターの誰かにマスターハンドはいる。そいつは奴が行動不能になっているこの状況でもファイターの力を行使できるはずだ。』

 

「(…………あたしの所にマスターハンドがいたなら… フィギュア化することで死ぬことはない… でも、そんなのいない…)」

 

 

そうか、自分は死ぬのだ。あの男のように。

敵の刃が振り下ろされる…!

 

 

『俺の思い過ごしであれば… その力を見せてみろ!』

 

「(だれか…!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の片隅に炎が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インクリング!!」

 

「あう… ロ…ィ…」

 

「遅くなってごめん… ピチュー、インクリングをお願い」

 

「ピチュ…!」

 

 

白刃の軌道は逸らされ、封印の剣が輝く。人の意思に呼応する剣は静かに炎を燃やしていた。

 

 

『お前は… なるほど、ファイターであり将だったか…』

 

「ロイ。あなたがこの透魔兵を率いている指揮官… 名前は?」

 

『ナカツナ。これで戦争を続ける理由はなくなったか…』

 

「勝手なことを言うな! どうしてこんな戦いを始めたんだ! 誰も死なないなんてこと考えてなかっただろう!」

 

 

激情を秘めたるロイに対して、敵… ナカツナは冷淡だった。

 

 

『それでも戦いに出たのはお前たちの選択だ。死の責任をこちらに押し付けるな。生き残れなかったから死んだ。それだけだ。』

 

「一方的に襲ってきておいて、抵抗するなとでも言いたいのか?」

 

『甘いな、戦なんて放っておいて逃げ出せば良かったのだ。守りたいものだとか言うのは自分が生き残ることを放棄した言い訳でしかない』

 

「ズレてるよ…!」

 

 

刃と刃が交わり、剣と刀が斬り結ぶ。

首元を狙われたロイは膝から力を抜いて急速に屈む。そこから突きを繰り出し、ナカツナの腰付近を貫いた。

 

 

『…っ、秋雨乃燕(あきさめのつばめ)!』

 

「(足払い!)」

 

 

痛みに膝を折ったかと思ったら、屈んだだけだった。そこから足払いのように刀を振るう。後ろへ跳んで回避する。

 

 

『甘いな!』

 

「ぐぅ…!」

 

 

かわしたと思ったのに、残像から放たれる電撃がロイの足を痺れさせる。ルフレのサンダーソードを思わせる攻撃。確実に脚にダメージを与える技だと理解した。

 

 

「(ピチューが攻撃しようとしないのはこれか…!)」

 

 

ピチューの電撃じゃナカツナにダメージが入らないのかもしれない。その上でインクリングが()()されたのだから、打つ手がなかったと。二人が屈した図式がなんとなく見えてきた。

 

動きが鈍くなったロイは相手の動きを見極めるカウンター戦術に切り替えることにした。再び響応虎落笛(きょうおうもがりぶえ)での斬撃がとんでくる。シールドが使えない、回避もできないなら受けるしかない。インクリングがまずい、と声を上げたが、ロイは落ち着いて斬撃を斬り捨てた。

 

 

「どうだ!」

 

『まだだ!』

 

 

一直線、走ってくるのと同時に突き攻撃を繰り出してくるナカツナを待ち構え、剣を構える。だが、それを見た途端、ナカツナはジャンプ。封印の剣を踏み台に後ろへ飛び越した。振り返ると同時に振るった刀はすぐに動かした剣に止められる。

 

 

「…今のは…」

 

『考え事か…!』

 

 

得物を通して通電する電気。更にロイを痺れさせ、動きを鈍くした。

 

 

「ぐう… けどさっきのは…!」

 

 

違和感を持ったせいで攻撃をくらったというのに、ロイはその疑問を拭えない。

 

 

「…さっき、高く跳びすぎだね」

 

『何を言っている?』

 

「わざわざ封印の剣を踏み台に高度を稼ぐ必要はなかった。素で跳んでも十分後ろを取れた。むしろ()()()()()()()せいで僕に攻撃を止められた」

 

『…黙れ』

 

「おそらくだけど… 君は透魔兵じゃないんだろう? 他の兵士達も多分。」

 

「はっ…? ろ、ロイどういうこと!?」

 

 

ロイの中では既に答えはでていた。それがなぜこのように見えるかまでは不明だが。

まず、領民から兵士へ、兵士からロイへ情報が届いた。姿の見えない賊がいると。それに偽りはなかった。…ダメだ、ヒントにもならない。

 

 

『…おまえは厄介だ。まさかそこまでたどり着くとは… 大人しく惑わされてればいいものを…』

 

 

刀を持ち直し、構え直す。不愉快な表情を隠すことなく。

 

 

「インクのかかった顔で言っても説得力ないよ…!」

 

「インク…? 何を…」

 

『…何もできないのに口は達者だな。いいだろう。少しだけ、本気を見せてやる』

 

 

見えないはずの目に、インクリングは睨みつけられたような気がした。

 




○タイトル
ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生のチャプター1のタイトル。そして、収録されている曲。生ききると息killのダブルネーミング。ダンガンロンパの曲名、センスがよくて好きです。エコロシアとか。


○大乱闘の世界にいないということは…?
大乱闘の世界にある、ファイターの力を均一化するための制限がないということです。
元々まともに戦う手段を持たないぶつ森やらフィットレやらは戦う力を持たないということです。体術は一応効きますが、インクをインクリング族以外にぶつけても、目眩しや足止め程度。一応勢いをつけて出せば怯ませるくらいは可能ですが。
逆に素の方が強いのなら、強化にもなります。パルテナとかは露骨ですね。


○敵の目的
上記を含めたファイターとしての制限やらを持っている誰かです。その人のところにマスターハンドがいると予想している模様。既に一部は調べているようですが、それが敵の誰かの能力のヒントになる… かもしれない。というか、その他にもプロローグから伏線はばら撒いております。怪しいところはチェックすると面白いかもしれません。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「でんきとくさタイプ… カットロトムを除けば初か?」
『モンスターボールに合わせているのか…』
「爆発はホウセンカみたいに種子を撒き散らすための行為… なら原種の爆発は何故? …自爆やら大爆発やらで身を削って… もしやその行為は人の手による改造か? サクレショイグモでもあるまいし、自爆前提の生態は… ゲーフリならやりかねん」
『誰が生んでくれと願った…』
「憶測で映画をはじめるな」


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