大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

100 / 157
99話 月魄のファントム

 

「「ぎゃああああ!? 魚おばけええええ!?」」

 

「ぼくだよッ!!」

 

「ぐっ……!?」

 

 

怒声と共にプレシア本人を傷つける両腕のヒレ。

 

湖から飛び出た魚おばけはプレシアを湖に叩き落とすと、踊るように、かつ無駄なく洗練された動きで敵を斬りつけていく。

 

 

「ぼくだよって言われても!」

 

「軽く察しなよそれぐらい!!」

 

 

なんとヒレを切り離してブーメランのように広範囲攻撃まで仕掛ける。6体いるボディに対してトドメにはならないものの、吹き飛ばすことに成功した。

 

 

「あの〜、お魚の大人の人には知り合いはいないんですが……」

 

「大人でもないし……」

 

 

そういうと、まるで顔を手で掴み、まるで取り外すように動くと、見上げていた視線の先の誰かが消えた。

 

自然に下に動かすと、見覚えのある緑の服。

 

 

「ええー!?」

 

「こ、こどもリンクだったんだ……」

 

「ぼくだとわからないのはいいけどさ、まさかおばけ扱いとか……洒落になってないんだけど」

 

「「よくわかんないけど、大変申し訳ありませんでしたっ!!」」

 

 

どうしてだろう。同じ子供のはずなのに、強制されていたわけでもないのに。どうしてだが人生経験豊富な大人に感じられてつい敬語を使ってしまった。

 

 

「っていうかまさか湖の中にいたの!? アイツがいたんだよ!?」

 

「知ってる、それよりこの霧に嫌な予感を払拭できなかった。あしらって離脱するくらいなら水中でもできるから」

 

 

簡潔に自分の考えだけを述べる姿は、無駄を嫌う大人に近いのかもしれない。

 

ブクブクと湖から湧き出す水柱、その頂点に片膝をつくプレシア。得物を構え直し鋭く前を睨む。

 

 

「やってくれんじゃん……てっきり霧の外に逃げたかと思ったら、まさか水中にいたとはな」

 

「なんとなくそんな気はしてたよ、君が生みだした霧なんて百害あって一利なしだ」

 

「ことわざ使って頭いいアピールかぁ? 気にくわねえな」

 

 

龍のようにうねる水が襲いかかってくる。鋭い目が更に鋭くギラリと細くなる。冷たき衝動の裏の戦意は互いに研ぎ澄まされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒れた息を整えるファイター達。ボディを倒し、撃退した姿を蓮は直視することができずに目を背けた。

片膝をつけたまま呆然とし、それから自分の中の感情に気づいて、そしてそれを完全に押さえ込むことが出来なかった。

 

 

確かに子供達の遊びに付き合う予定だった集団から見れば、高校3年生は大人と呼べるだろう。

 

だが、まだ親の庇護下にいてもおかしくない年齢ではあるのだ。自身を守る立場である両親から離れていた1年間はつい最近のこと。

 

佐倉惣治郎も大人だが、究極を言えば血もつながず庇護される責任のない他人だ。どれだけ信頼していても、親への対する感情とは別物。

 

甘えを許される人のいない1年は感情の制御を無理やり行わせ、たった今その反動がきている。

 

大人じゃない。でももう子供とも言えない……

 

その感情は口に出さない。だが、態度を隠しきれない。だからこその中途半端な対応。中途半端な歳だから。

 

 

「……おい、どうかしたのか蓮?」

 

「なんでも……ない」

 

「とてもそうは見えねえぞ」

 

 

その感情が自分勝手で独りよがりだからこそ、見え見えの見栄を張る。伝えたくないから。そうすると、モルガナは何か言いたそうにしながらもなにも言わなかった。

 

 

 

力のない自分は、なにもできず誰か任せにしながら事態が好転するのを待つしかない。

 

もし、その誰かが負けてしまったら? その後のことは考えたくなかった。

 

 

 

 

「……はあぁ〜! ほんと助かったぁ〜! 一大事だったよ〜!」

 

 

敵を全滅させ、思わずへたり込んだむらびと。つりざおも放って、ここが家だったらベットに飛び込んでいただろう勢いで力を抜いた。

その姿が、今は1番見られない。

 

 

「そんなキケンだったのか? その割にはガンガン戦ってただろ」

 

「キケンだったよ〜。僕はなぜか戦えなくなってたし、こう見えておっかなびっくりだったんだからね」

 

「それでも前に出たか、その意気は悪くないな、ガハハハハッ!」

 

「そうだろそうだろ!」

 

「親父くさーい」

 

 

よその子にも父親面する姿にトゥーンリンクは引き気味だ。祖母と妹の女家庭で育った彼には少し縁遠かった。それよりも多少もの静かでも優しく見守るロゼッタの方がいい。背中に回ってジトで見る。

 

 

「えー、父さんがボクの友達ほめてるんだから別にいいじゃん」

 

「ほめられるのはそりゃあわるい気はしないけどさ、上から目線っていうかなんというか……」

 

「そうかな? 僕は嫌いじゃないけど」

 

「……あっ違う! 友達じゃなくて家来だ!」

 

「どこで見栄はってるの!?」

 

「ほめられたの僕のはずなんだけどなあ」

 

 

血のつながりのない他人と身内の受け取り方は違う。見栄故に言い直すクッパJr.と普段の雰囲気を取り戻していく子供達。その中でポンと両手を叩いたロゼッタ。まだやることがあるのだからとチコを抱き上げ頭を撫でながら話し出す。

 

 

「みなさん、戦績を讃え合うのは構いませんがまだ全員が合流できていたわけではないでしょう?」

 

「タタエ?」

 

「あー、そういりゃあそうだな。ネスにロックマンにこどもリンクか」

 

 

テリーがいない人間を指折りで数える。まだ問題は残っているのだ。

 

 

「うむ……まずどこにいるかが問題か。やみくもに探しても見つからんぞ」

 

「オカリナの音がなってる方に……」

 

「トゥーン、こどもリンクもこの状況でオカリナ吹かないと思う……」

 

「あそっか」

 

 

うーん、と考える中、数瞬の後にむらびとが言った。片手を上げながら。

 

 

「もうメンドウだからアイツたおしにいっちゃおうよ。これだけ集まれば十分でしょ。他は後から探してもいいし」

 

「それもそうだけど……むらびとはどうなの? 戦えるの?」

 

「……!」

 

 

ピクッと無意識に跳ねる体を押さえ切れなかった。過敏に反応してしまったのだ。彼を置いて話が進んでいく。

 

 

「うん、力がなくてもなんとかできるってわかったから」

 

「…………」

 

「蓮……オマエ……」

 

 

ここまでくればわかった。今の雨宮蓮の胸中を占める感情がなんなのかを。

 

しかしそれをどうしてやればいいのだろう。ファイターの力をなくし、その原因がわからないのだからどうしようもないのだ。

モルガナもまた戦う力もない。怪我をしても治療もできない。蓮が無力ならばモルガナもまた無力である。気の利いた言葉も思い浮かばなかった。

 

 

「……でも、危険でしょう。戦える者がいるならば他にまかせても……」

 

「まあ待てよ、別に1人に任せるわけでもないし少し目を瞑ってやってもいいんじゃねえか?危なくなったら後ろに行かせれば」

 

「だいじょうぶ、ひきぎわってヤツを見極めればいいんだよね。やれないことまでやるつもりはないし、大事なのは気持ち。うん」

 

「あっ……」

 

ぶつかる気持ち。

ロゼッタの母親として子の身を案じる思慮。

テリーの父親として心を尊重する気持ち。

現実になるのはどちらかだけだが、その心は気持ちは、どっちも間違ってはいない。

 

 

黒にも明るさと暗さがあるし、赤には青や黄が混じってるかもしれない。

 

大人も大人ってだけで悪いわけではない。自分達のことを見守ってくれて、自分だけでなく誰かのために動ける大人とも出会ったはずだ。なのに、パレスで改心させた大人の印象が強くなりすぎた。

 

いじめをしていたという同年代の人間を改心させたこともあったし、人のおもちゃを奪うような子供も、子供というだけで善良というわけではない。自分がどうあるかに、どうありたいかに年齢などなかった。

 

 

「(大事なのは気持ちで……心で……)」

 

 

先ほどまで感じた感情も完全にではないが消えていた。無意識に、無自覚に、むらびとは蓮の気持ちを救う。

 

 

何かを思い出して、前に進めそうな気がした。

 

 

 

 

『────────────────!』

 

「ッ!」

 

「蓮? どうした?」

 

 

内から声が聞こえた気がして、反射的に視線が動く。一見、他の方角となんの違いもない道。それをすっとにらみつける。誰かがこっちだと言った気がした。

 

 

「こっちに何かあるのか?」

 

 

問うても何も応えない。応えたのは爆発音、戦闘音だった。ならば、戦っているのは。

 

 

「行こう」

 

 

アイコンタクトだけでその意図が伝わる。走り出すファイター達の後方でテリーの体が倒れかける。足で押さえて地に足以外をつけることはなかったが、自認より重い体に動揺を隠せない。

 

 

「なんだ……っ?」

 

「どうしたテリー!?」

 

「なんでもねえ!」

 

 

そういったクッパも息が整っていないような気がする。それでも子供達が頑張っているのだからとふんばって足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは湖。戻ってきたのだ。探検のはじまりに。

 

「うげっ、全員いる」

 

「ったく、くるの遅いって!」

 

正反対の悪態をつく、振り回す尾と剣がぶつかりあう。片膝をついたネスとロックマンが出迎える。

 

クライマックスへの幕が上がる。

 





◯タイトル
星のカービィ スターアライズDLC第三弾で追加されたBGM。
星のタランザのバルフレイナイト戦で流れる曲。
クィン・セクトニア戦の3曲を混合アレンジしたいわばセクトニアメドレーともいうべき曲。アレンジ元のイントロの使い方が最強。お金払わせろ


◯ゾーラリンク
ゼルダの伝説 ムジュラの仮面で登場する、こどもリンクがゾーラの仮面で変身した姿。水中での動きが抜群によくなり、ヒレで攻撃するようになる他、オカリナがギターに変化する。しかし、氷や火に極端に弱くなる。
仮面の元になった方は亡くなっているのでお化け扱いは洒落にならない。TAS動画でいうところのとどめの歌。


◯ペルソナ5の大人達
ペルソナ5のコープやキャラクター達ってほとんど年下がいないんですよね。双葉とかすみちゃんと織田くんくらいですかね? 双子やソフィアに年齢という概念はないとして……
構造上悪人は大人ばかりだし、プレイヤーもその印象が強いでしょうが……いじめっ子がメメントスにいるので、悪人がみんな大人という訳ではないわけです。当たり前ではありますが。
つまり、悪やら正義やらを決めるのは内面なのではないでしょうか。


◯作者の気まぐれコメント
ピクミン4が落ち着いたので、先々週くらいにポケモンスリープはじめました。イーブイいるしリーフィアはいいとして……ランターンたそいますか? えっ、明るい子は向いてない? アハアハアハハハ……

そしてスプラトゥーン新シーズン!
新スロッシャーのモップリン! また癖強いのきましたね。曲者スロッシャー種か……
そしてお願いがあります。これ以上スロッシャー種にラインマーカーをつけないでください。起伏の激しいところが好きなバケツ種と全然合ってないんです。せめてエクスにつけてください……
シールドォ!オフロはシールドがいいんだあああああ!
てか、シールドじゃなくてもクイボあたりかなって思ったんですけど!? オフロに恨みあるんか……
スクネオは……ポイセンかポイズン、あとソナーがつけば無印と差別化できそうで面白そうです。
とにかくクラス分けの帽子に合わなきゃ……ラインマーカーはやだラインマーカーはやだラインマーカーはやだ……

これで使ってみて相性よかったら天性のおまぬけになりますね……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。