大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

101 / 157
100話 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた理由

 

「チッ……全員そろってきやがって……めんどくせぇ!! Eyre(エア)!」

 

 

捩れながらに向かう水。その矛先はたった今合流したファイター達。

 

 

「甘いっての!」

 

 

四散して散っていくファイター達。広範囲攻撃が得意な敵にくっついて戦うのは不利である。プレシアを除いても今だ4体のボディが健在である。しかし、敵の数を上回ったため背後を狙われる可能性は低くなった。集って戦う理由が薄くなったのだ。

 

真っ先に跳びだしたのはテリーだった。その拳に炎を灯し挨拶代わりの一発とぶん殴る。腕を交差してガードするプレシアにブーメランで追撃するこどもリンク。さらに撃ったチャージショットは湖からせり出した水壁が行く道を防いだ。

 

 

「ったく!凍え散れ!Vostok(ボストーク)!」

 

「バッ!?ちべてぇ!?」

 

 

指から銃のごとく発射した一水はクッパJrの顔面を直撃する。ジメジメと湿っぽい環境から冷たい一矢。顔を振って水を飛ばすが、急激に体温が低下していくのを感じる。クラウンを操作する指がかじかむ。

 

 

「うう……!くっそそそそ……」

 

「とりま1人!」

 

「キサマ!」

 

 

カムイのボディの力、竜穿の腕が迫り来る。間に入ってかばうクッパの腕、鋭く綺麗な切り傷は傷の範囲以上に血を吹き出す。

 

 

「2人になにするんだよ!」

 

 

振りかぶったバットを湖に潜ることで回避したプレシア。すぐさまネスが治療に移ろうとするがそれをクッパ本人が止めた。

 

 

「お父さん!」

 

「バカモノ!この程度の傷なんてことはないわ!」

 

「でも……!」

 

 

納得しきれないネスが食い下がるが、手負いを悟られぬ動きでボディ1人を切り裂いた。強がりな面も少なからずあるだろうが、ぱっと見では影響のほどは見られない。

 

 

「(まだまだ!傷口に水をしみこませてやるぜ、Vostok(ボストーク)!)」

 

「クッソ、水中から!?」

 

 

湖から襲いかかる先ほどと同じ技。しかし、湖の水面全てからガトリングの銃口のように多数の水飛沫が飛んでくる。あまりの数にシンプルな悪態をつくテリー。動きづらさを感じるのは腕や足で防ぐことができず、かわすしかないからだ。体に当たったらダメージは抑えられても体温の低下は免れない。

 

 

「ワー!!」

 

「くっ……!」

 

 

木陰に隠れた1人と1匹。濁流と錯覚するような降り注ぐ水飛沫を背中で受け止める。腕の中のモルガナをかばう位置だ。離すものかと強く抱きしめる。

攻撃が落ち着いたところで戦場の方へ振り向く。一番心配なむらびとは釣り竿片手に湖へ駆けだしていた。

 

 

「だったら一本釣りだー!」

 

「釣れるわけないだろ!!」

 

「だいじょうぶ! ジンベイザメも釣ったことあるし!」

 

「そもそもひっかかるほどバカじゃないだろうが!!」

 

「っ! また来ます!!」

 

 

珍しいこどもリンクの大声。茶番をいさめるロゼッタの目には再び氷雨が降り注ぐ。前方に躍り出たロゼッタがアイテムキャプチャーで弾の軌道をずらしていく。

 

 

「どうか対策を!」

 

「ならもう一度これで!」

 

「おっと、させるかよ! Superior(スピリオル)!」

 

 

ゾーラの仮面をとりだしたこどもリンクに反応したのか、湖から飛びだしたプレシアの背後に巨大な津波。

 

 

「もしかしてぼく達をバラバラにした技!?」

 

「いーや、いわゆる劣化版だぜ。反動は減ってけど」

 

 

それだけ言って襲う波。確かに前のよりは勢いが弱まっているが、何かに捕まっていなければ押し流されてしまいそうだ。

 

 

「ぐうう……!」

 

 

木の幹を片手で抱くように掴みながらモルガナを強く抱きしめる。鞄と残っていたボディはどこかに流れてしまった。

 

 

「……っ」

 

「おい、蓮!」

 

 

さきほど体温を奪われ、たっぷり波に浸かった体はさらに冷えていく。震えも止まらない。モルガナをギュッと強く抱きしめながら戦場を見る。強く強く抱きしめても文句を言うような状況ではなかった。

 

 

「みんな……!」

 

「へっ、軽い軽い」

 

 

得意げに鼻をかくプレシアの目の前には仲間達が倒れていた。

 

 

「さてと、まず優先に潰すのは回復役だよな」

 

「テメッ、やめろ!!」

 

 

鋭い刃に変化させた腕をネスに向けて振りかぶろうとする。凍えた体を無理矢理起こしてタックルにかかるテリーを軽くいなし、尾で手首をつかみ空中へ持ち上げた。

 

 

「もっとシャキシャキ動いたらどうだ? たっぷり冷えたその体でな!」

 

 

頬に純粋な平手打ちがかかる。倒れたテリーの顔を踏みつけ、ぐりぐりとえぐるように踏みしめる。

 

 

「くっそ……! 体が思うように動かねえ!」

 

「離れて……! うわっ!」

 

 

炎の超能力を当てようとするリュカに軽く指の水鉄砲。木の幹まで叩きつけられる。

 

 

「リュカ! って蓮! おまえもなんか辛そうだぞ!」

 

「うぅ……なんだ……」

 

 

体がだるい。大したことはしていないはずなのに、疲れて疲れて仕方ない。元々水だったのか冷や汗なのかわからない顔の水を拭う。

それを見て、こどもリンクの顔が硬直した。いけない事実に気づいてしまったように。

 

 

「まさか……この霧……」

 

「クックック……アッハッハッハッハ! やっと気づいたかお間抜けどもめが! Huron・Michigan(ヒューロン・ミシガン)……! この霧はな、自覚もないほど小せえダメージを蓄積させていくんだよ! つぅ、まぁ、りぃ! テメエらは戦う選択をした時点で敗北していたんだよ!」

 

「なっ……!?」

 

 

絶句して次の言葉も出てこなかった。この一帯にいるだけで少しずつ削られていく。霧を警戒して湖に潜ったのは間違っていなかったのだ。だが、他よりダメージがないだろう自分でこれなら、他の仲間は。自分でもわかるほど顔から血が引いていく。背中の悪寒は体が冷えたからではない。

 

 

「ま、やっぱり俺の勝ちってことだな。わかってたけど。ちょっと群れただけでは強大な力には勝てねえってことだ」

 

「ふざけるな……」

 

 

ボソッと無意識に呟いた言葉は思った以上に大きかったようで、不愉快だという顔をしながら蓮の方を見る。蓮の口からその言葉が出たと、自分でさえ気づくのが遅れる。

 

 

「そういえばいたねえ、群れる理由もない、なんの力にもなれないババ抜きのババみたいなヤツが」

 

「……っ」

 

「ゴラァ! コイツはな、ババはババでも切り札(ジョーカー)なんだよ! なんにでもなれる最強のワイルドカードなんだよ! 舐めてんじゃねえぞ!」

 

 

それでも言葉に怯んだ蓮を擁護したのは、腕の中から飛び降りたモルガナだった。

 

 

「はあ? 舐めてるもなにも……何ができるってんだ? 戦うこともできないのに?」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

── 違うな。

 

 

「……っ!?」

 

 

声がする。自分に呼びかける、自分だけに聞こえる声。自分の声。

 

 

── 可能かどうかなど問題ではない。

 

── その意思そのものが重要なのだ。

 

── それを、お前は理解したのではなかったのか?

 

 

理解……心持ち……叛逆の意思……

 

 

 

── 思い出せ。お前がはじめてその意思(ペルソナ)を得た当時を!

 

 

 

はじめて、ペルソナを持った時のこと……

 

 

 

竜司と一緒に、鴨志田のパレスに迷い込んで、動揺している間に地下牢に閉じ込められて。

 

目の前で竜司がシャドウに殺されそうになって。でも、止めようにも自分もシャドウに押さえ込まれてて、それで……

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

…………違う。

 

 

 

 

はじめて、叛逆の意思(ペルソナ)を持ったのは。もっと前だ。

 

女性に乱暴している獅童を、止めようとした時だ。

 

助けてという言葉を無視することなんてできなかった。

 

許せなかった。止めたかった。

 

結局、無罪だとわかったとはいえ、一時的に前歴がつくことになってしまったけど。

 

例えそれがわかっていたとして、前歴が消えなかったとして、見て見ぬふりをしただろうか?

 

男の正体が当時からわかっていたら、暴力で反撃されたら。

 

 

 

 

 

……できるはずがない。

 

無視なんてしない。間違いな訳がない!

 

あの時、特別な力なんて何もなかった!

それでも助けるために動いた!

 

 

── ……手間がかかる。

 

── ようやく思い出したのか。力ありきの叛逆など、ただの傲慢だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう二度と、見失うものか! この意思を!!」

 

 

拳を握って走り出した。勝算はない。助けられるかわからない。そんなもの理由にならない!

制止の言葉は聞こえない。周りがしゃべっていても聞こえない。

 

 

「なんだコイツ……冷やしてやるよ、その頭をな!」

 

 

軽く、手をかざすと生み出される、ねじれる水流。

 

横ステップでかわした()()()()()は懐に入り、顔面に拳をたたき込んだ。

 

 

「プレシアッ!!」

 

「がっ……!?」

 

 

思いっきり殴られて湖までたたき落とされる。思った以上の一撃。プレシアはすぐに跳びだしてきた。

 

 

「よ~くわかったぜ。そこにいたんだな……マスターハンドォ!!

 

 

無言で、顔面のドミノマスクを剥ぎ取った。蒼き炎と鎖が形作るのはシルクハットに叛逆の翼。

 

あらわになるのは彼の本質。

 

 

「ペルソナッ……!アルセーヌ!!」

 

 

ただ1人、黒き怪盗服と真っ赤な手袋に身を包んだファイター、ジョーカー。

 

彼こそがスマッシュブラザーズの切り札なのだ。

 





◯タイトル
ダンガンロンパの6章タイトル。エピローグ前の最終章にあたる、いわゆる謎の解明回である。


Huron・Michigan(ヒューロン・ミシガン)
プレシア屈指の絡み手。イメージとしては、隠密性と範囲に優れた代わりにダメージが小さくなったフォックスのブラスター、もしくは透明になった毒のフィールドギミックと考えてくれれば。


◯プレシアの技名
彼の技名は湖の名前が元となっています。
湖ということで、アレが元の技名も当然設定されています。


◯ジョーカー
お待たせしました。マスターハンドの逃げた先であるファイターであり、本作の主人公です。本名を知られていないため、キクとダブルの裏技的捜索を潜り抜けています。
彼が選ばれたメタ的な理由としては、DLCファイターの一番槍……ではなく、DLCファイターの中で素で戦う力を持たないのが彼だけだったからです。
力での改心や戦闘を続けていたあまり、無意識に力がないからなにもできないと思い込んでいたが、叛逆に必要なのは力ではなく意思なのを思い出す。こういったストーリーは一瞬で完成しました。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。