大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
ピリピリと両者の間に火花が散る。
ドミノマスク越しの、黒い黒曜石のような純粋な目がしっかりと前を見つめていた。
「(あの牢獄の夢を見せていたのはお前だったのか?)」
『──その通りだ。君にこの侵略者の存在を知らせなければならなかった。だが、ペルソナを君自身が無自覚に封じていた以上、私も同様に封じられていたのだ。使えないという認知が、私ごと封じていた。』
「(最初は普通に使おうと思ったはずだが……)」
『ファイターの力が消えたという認知を、君は先に感じていたのだろう。』
「(……!ロックマンのあれか……!?)」
心の中で、言葉を発することなく2人が向き合う。今はこの世界の創造主たる存在を、自分の内側に感じ取っていた。
最初、ネッシーを打ち上げてしまおうとロックマンがスパークショックを撃った時、大乱闘の時と威力の違うそれに変化していた。本人すら気のせいレベルで感じた出来事は無意識のうちにジョーカーに刷り込まれていた。
『あの部屋も、本物とは違う。私が異変に気づかせようと接触を試みた結果、君があの部屋とそっくりそのままの景色を作りだしたのだろうな。』
「(無意識とか無自覚とかそんな話ばかりだな……)」
『認知とは得てしてそのようなものだ。しかし、今は討つべき敵をしっかりと自覚しているだろう?』
「(ああ!)」
ギラギラと敵意を滲ませるしかめた顔。先程までの余裕のある、嘲笑している顔とは違い、不機嫌かつ殺意すら込めた顔だ。
「まっさか、戦う力もなかった奴がマスターハンドを匿ってたとか思わねえよ。こんな村人Bみたいな奴が〜?」
「匿っ……!? どういうことだジョーカー? それにお前、いつの間にペルソナを……!」
「俺も知らなかったが……ここが切り札の切り時らしい!」
ペルソナによって強化された銃が撃たれた。翼で囲って体を守るが、火傷をしたように黒煙が立つ。かつては弾も出なかったモデルガンも今は頼もしい矛のひとつ。
「クソが……まじで取り戻してやがる……なら! そこらへんでのびてる奴らもろとも押し流してやる!
「またあの……!」
「……!」
あの大津波がまたくる。いち早く反応したジョーカーが周りを逃そうと動こうとするが、それをこどもリンクが静止した。
「いい! あんたはあんたの戦いに集中して!」
「……! わかった!」
近くの高い木にワイヤーを取り付け、スタイリッシュに頂点に着地する。下は迫り来る洪水模様。
「ジョーカーのジャマしないのはいいけど、結局どうするの!?」
「座してぶっかかるんだよ、覚悟決めろ!」
「「「ええええええっ!?」」」
まさかの発言。なにか手段がある訳でもなく、ただジョーカーを安全に流すことだけを重視した。
「いやあのふざけてる場合じゃ!」
「ふざけてない! 覚悟決めなよ男だろー!」
「バカーーー!!!」
シンプルな悪口と共に見えない森の奥まで流されていくその他のファイター達。
「みんな……!」
『君はこの戦いに集中してくれ。彼のことだ。本当に消耗するだけのことはしまい。奴の手を止めるのは君だけにしかできないのだ』
「後で、説明してもらう!」
大技後の反動をエイガオンで狙い撃つ。簡略版でも、反動はそこそこあるようだ。
反射的に撃ちだした水流をぐるりと錐揉み回転をしながら降りるジョーカー。重力と共に振り下ろしたナイフは、プレシアの竜穿の防御を崩し、懐へ一撃二撃。
「図にィ……乗るなァ!」
「なっ……!」
プレシアの全身から飛び出す凄まじい水の奔流に、押し流される。グルグルと曇天の空を渦巻き、目を開けるのも難しい大雨が降る。
「
ぐらりとジョーカーが片膝をつく姿を見て、プレシアは嘲笑を取り戻す。しかし、雨に紛れた冷や汗に、ついぞ気づくことはなかった。
「フンッ……どうかな」
「往生際わっる……あのな、たとえいくら心で踏ん張れても体が駄目じゃどうしようも……」
「いや……この意思があるのなら……力も体も! 後からついてくる!」
再び構えたナイフの刃に、いいようのない恐怖を感じて、先から滴る雨雫が血のような錯覚を覚えた。
その幻惑を、かぶりを振って取り去ろうとする。追い詰められているのは自分のような。そんなこと認めない。血走る眼で、プレシアは最大火力の大技、最初ファイターを散らせた大津波を起こそうと決断した。体の周りに水が渦巻き、両手に激流が溜まる。
「あっそ……どうせ死なねえならその肉体もろともバラバラにし……」
雨にも消えぬ炎の矢。突き刺さる一矢が腕の血管を貫いた。妨害されたせいで両手の先に溜まっていた力は破裂して落ちていく。
「二度も同じようにできると思うなよ……どーだ!」
「前半だけならぼくの真似できてたよ」
キリッと決めたこどもリンク……ではなくトゥーンリンク。背伸びをしたいお年頃の少年が妨害をした張本人。
「素直に退場しちまえばよかったのによ……」
「思いっきりぶっ飛ばしたからリタイアじゃない、仕切り直しできたんだよ……トゥーン、わかってるよね」
「うん!」
こどもリンクが時のオカリナを、トゥーンリンクが風のタクトをかまえる。何かを仕組んでいると察するのは十分だった。
「その余裕です~って面、気にくわねえなあ!
凍てつく霰のような水流が飛んでいく。ジョーカーが守りに行こうとするがこどもリンクと合った視線が、必要ないと語っていた。
「ハッ……!」
「どうだ!」
「コイツらさっきまで這いつくばってたっつーのに……!」
2人の上に陣取っていたロゼッタのアイテムキャプチャーが、全ての水の軌道を変え、ネスとリュカのサイマグネットが自身のエネルギーへ変換する。策の対策の対策ぐらい想定内なのだ。
結果、誰にも邪魔されることもなく、調べは奏で始める。それは雨の中でも魂に響く大冒険を想起させる嵐の歌。
「風が……!」
ひゅうという環境音が混じり、渦巻くような強い風が吹き始める。それを確認すると、トゥーンリンクもタクトを動かした。一番はじめに知った、世界と大海原を駆けるための風の唄。
「……!」
たなびくコートの裾が敵側へと向く。追い風が背中を押し、打ち付ける雨が少なくなったのを感じた。
「こい……つぅ!!」
それが全てプレシアの体を打ち付ける。まったく違う二つの曲はどういう訳かかみ合い、もう一つのまったく違う曲へと進化していく。
「よし! いけ、ジョーカー!」
「フンッ!!」
ワイヤーで首元を縛り付け、跳び上がって超接近するジョーカー。
「くるなら……来てみろぉ!」
ジョーカーの進行先に置かれた竜穿の足。それに気づいたリュカが悲鳴に近い声を上げる。
「ああ! 足が!」
「このままだと……!」
突き刺さって、よくて相打ち、悪ければ返り討ち。
「もう止まんねえだろ? 俺はもっともっと目立ちてえんだよ! 嘘だなんて言われねえようにな! アッハッハハハ!」
「どりゃあああ!」
「ハッハ……ガッ!?」
追い風ののったクラウンが激突し、足は人のそれと同じ姿に戻っていく。そのままクラウンを足場にしてマスクのないジョーカーが立つ。
「テメエ……!」
「エイガオン……!」
呪怨の大技、アルセーヌの力が至近距離で叩きつけられる。力なく落ちていくプレシア。勝てないと思ってしまった。もう、動かない。戦おうと考えてももう指の一つも動かない。
「(くっそ……でも、湖の中まで追ってきたりはしないはず。十分休んだらまた……!)」
指先がかたく冷たくなっていく。精魂尽き果てて動けないんじゃない。体を失いはじめたのだ。
「(ふざけんな……こんなところで……!?違う……!俺は……幻なんかじゃ……!)」
フィギュアであったはずの肉体から、意識が薄くなっていく。自分が消えていくような感覚。命の先まで戦い続けた肉体はフィギュアとなってエネルギーとして消滅していった。
長く長く息を吐く。刹那垣間見えた太陽が少しだけまぶしかった。
「ッ流石だなジョーカー!猫とみてたぜ!」
「テリー、だから……いや、今は間違ってないか」
「僕達何もできてなかったけどね」
戻ってきたテリーが肩を組んでジョーカーの背中をバシバシ叩く。最後の先頭に加われなかったテリー、ロックマン、クッパ、モルガナ、むらびとは周囲からボディがやってこないか警戒をしていたのだ。
「君が力を取り戻したのはアイツが言った通り、マスターハンドがあんたに宿ってたからってことでいい?」
「ああ、そういうことだろう?」
『そうだ。討伐、ご苦労だった。早速で悪いが、奴等のボディを完全に倒すには、ファイターの力が必要だ。君以外に力を与えるには、私は本体に戻らなければ。』
「……本体か。それはどこに……わかった」
「こっちは全然声、聞こえない……」
澄んだ瞳のまま、本体の方角という未来を見つめる。
「すまない、俺はマスターハンドを元通りにしなければいけない。悪いが……」
「もっちろんついてくよ!隊長命令だからね!」
「え、それまだ続いてたの?」
「いいぜ! 手間のかかる大人だな!」
「ジュニアが行くというなら仕方がない、ワガハイも助けてやろう!」
この中では一番断りそうなクッパも、反対することなく賛成の意を唱える。
少しの大人を混ぜた子供達が行く先は、まるで電撃のように輝いていた。
「なんか……物理的に輝いてねえか?」
少しだけ、不安が、ありながらも。
◯章タイトル
ペルソナ5、戦闘曲。
これの理由はもはや説明不要。代表曲らしく、とってもシャレオツ!(語彙無)
◯嵐の歌
ゼルダの伝説 時のオカリナとムジュラの仮面で登場する歌。なんというか効果のほどが、
・風車の回転が速くなる
・窪地に水がたまる
・特定の場所で穴が開く
・魚が釣れやすくなる(!?)
・魔法のマメのある場所から3匹の妖精が現れる
・ゴシップストーンの前で奏でるとハートを回復できる妖精珠が現れる
・とある所で聴衆に聞かせるとハートのかけらが貰える
とちょっとまとまりがない。本作ではシンプルに風を起こして嵐を生み出した。ちなみにピクミン4のお宝の曲に抜擢!
◯風の唄
ゼルダの伝説 風のタクトで登場する唄。
風の向きを変えることで、帆船でも行きたい方角へ行ける。
快速の帆? やめてあげてください……(ボソッ)
◯物理的な輝き
同じ世界である、7章でもこんな幕引きでした。
果たしてその正体は!?
◯今章のまとめ
重要な章、ということで、現在唯一のファイター、ジョーカーの覚醒となりました。
私がペルソナ5ロイヤルやっててちょこっと思ったこと。それは力があるからこそ反逆もできるのではということです。史実でも革命家はいい育ちだったりする訳で、本当に力ない者は反逆なんてできないのでは?
本作では少しそれをいじって、ジョーカーが無意識のうちに「力がないから何もできない」という思考になっていたということになってます。
でも重要なのは力の有無ではない、他のファイターに関しては、ジョーカーにとっての印象を考えて配置しました。
こどもリンク以外の子供達は情景。いわゆるこんなことしてた時期もあったなという感情。特にむらびとは力がなくても戦っていたので嫉妬すると同時に覚醒のためのキーとなります。
こどもリンクは歪。子供なのに大人っぽい。自分に1番近い印象。
テリーは擬似的な自分の父親であり、クッパは他人の父親。
ロゼッタは厳しくも優しい母親です。3人の大人組はジョーカーの大人になりきれてないという面を露出するために必要でした。
さて、私の見落とし等なければ、後登場していないファイターが、
フォックス リンク ゼルダ Mr.ゲーム&ウォッチ ピクミン&オリマー
ダックハント ルキナ パックマン Wii Fit トレーナー
ミュウツー クラウド ケン パックンフラワー 勇者 ソラ
であるはずです。抜けに気づいたら教えてください……
そして、彼らの活躍を待っていた方、もう少しお待ちを……
◯作者の気まぐれコメント
気まぐれと称した枠で話すことじゃないですけど、スプラに気を取られて今話ギリギリです……
というか、本編だけ間に合わせて後書きの欄は後から追加しました……
だって新シーズン、スロッシャー3個も追加されたんですよ!!
スロッシャー愛好家としては外せない……!
モップリンは酷評されてるほど弱くはないと思ってます。まあ、サメとは微妙に合ってないのは認めます。亜種はカニがいいかな。
スクネオはポイントセンサーをイマイチ使いこなせてないです。うへえ。
オバデコは意外とラインマーカーが活躍してます。ただ私、致命的にテイオウが使いこなせてないです。
数戦ナワバリに潜った程度の主観です。
あとスロッシャー種が、エクスとモップリンの亜種は確実で、ソーダも多分確定。後スクスロベッチューもおそらく。他にそれ以上の亜種が出るかがポイントですね。