大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「うおっとっと……ん、ここは?」
KOFスタジアムのフィールドから脱出し、客席裏から出口を探そうと、足を止めず走ったままでいると、周りの景色が歪み、いつの間にやら全く違う場所へと辿り着いていた。
足元は柔らかな質感、人工物のようにふわふわした大地と縫い目の見える土地。
「確か……ここって」
ボソリとその先の言葉を続けようとした時だった。ふかふかのフェルト生地が走ってへこんでいくのが感覚でわかる。足音は吸収されても、その感触と各々の声は健在である。
「ええ!? ゼルダ!?」
「あ! フォックス!」
スカートの裾を両手で持ち上げながら、走ってこちらにやってくるゼルダ。髪が乱れても気にする余裕のない少女。
「ごめんなさい、助けて!」
「助けてって……おいっ!?」
『……』
ゼルダを追ってくる大勢のボディ達。優に二桁はいる敵達。どうやら見つかり応戦していたものの、あまりの数に逃げ出したようだ。よく見れば焦げのついた敵が混ざっている。
「ったく! しっかり掴まれ!」
「ええっ! もっと丁寧に……!」
焦ってゼルダを横抱きにし、ジャンプする。空中から吊り下がっているモビールの上に乗り、遙か足下のボディ達を見下ろしてとりあえず囲まれて戦うという必要はなさそうだ。
「私、この場所知らないわ……!」
「ん? ああ、そうか。今のシーズンじゃ使ってないか」
戸惑いながら周りを見渡すゼルダに数瞬の時間を用いた後、その理由を理解した。
「ここはヨッシー ウールワールド。前のシーズンで使ってたステージだな」
ヨッシー ウールワールド。
毛糸やフェルトや綿のような布製品できた世界。あみぐるみのような姿をしたヨッシーが仲間を助けるために冒険をした世界。
もちろんここはマスターハンドが創った大乱闘用の模造品。しかし、今は真贋の違いなどどうでもいい。そもそもこのステージは、今は使用していないのだ。
今までの大乱闘を五つのシーズンに分けるのならば、このステージは四回目のシーズンで使われていたものである。まるで老人のような認識だが、どのステージがどのシーズンで使われていたかなどぱっと出てこない。フォックスのようにはじめから参戦しているのならなおさらだ。
しかし、このゼルダは今シーズンで参戦したばかりだ。過去でしか使用していないステージなど知るはずもない。
「え、もう使っていないものを残しているの?」
「……せっかく創ったものだしって認識なんじゃないのか? 作り直されて復刻したってステージもあるし」
「歴史を感じるわ……」
「お、おう」
自分の世界を十全で完璧なものにするために妥協をしないかの創造の化身が簡単に削除したりはしないだろう。目を閉じて全身で歴史を実感するゼルダに適当な言葉が浮かばない。
「って、そんなことじゃない! オレ達はどうしてここに来てなんでボディがいて追われてるんだ!?」
無意識に現実逃避していたようだ。目を背け続けても何も変わらないのに。
今は使っていないステージなど、何の用もない。だからこそ誰かが望んで来るはずもない。つまりフォックスはもちろん、ゼルダもおそらく何かしらの原因で迷い込んだのだ。
そして、その原因はきっとボディが出現したことに関係ある。
「突然のことで驚いちゃったけど……冷静に考えれば……こんなところに来たのもボディ達が関係しているのね」
「だったら叩くしかないか……」
今後の方針が定まるが、フォックスの顔色は優れない。この数だ。かなり骨が折れる。それにこれだけで済むとは思えない。援軍がでるかもしれないし、この数のボディがまた襲ってくる可能性もある。
「ヒットアンドウェイで……いくか!」
「あっ!」
それでも前に進まなければ変わらない。危険は承知でフォックスは死地へ飛び降りた。
「ハアア!」
一番近くの敵に足払いをしかけ、その後方にいた敵を蹴り飛ばす。踏み台代わりにし後ろへ引く。片手をついて低い低い体勢で、前をにらみつける。できるだけ被弾面積を小さくし、やられる前に仕掛ける。
『……!』
「(やっぱり多い……!)」
心の中だけで弱音を吐く。銃弾を避け、距離を詰めて体を翻して尻尾ではたく。顎を揺らしてぐらりと体勢を崩した敵。かばうように間に入ったボディの肩を踏み台にして飛び上がり、足で踏みつけて、敵の目を目掛けてブラスターを撃つ。火力の足りないこの銃でも足止めの役目を果たせるように。
「……ッ!!」
ただ戦うことだけを考え、口からは呼吸だけが行き来する。回し蹴りでまとめて蹴りつけて、普段あまり振り抜かない拳がこめかみへ吸い寄せられる。
自分の中に獰猛な獣でも飼っているような闘争心が湧き上がってくる。今は戦いのことだけが頭にある。ああ、そのぐらいが丁度いい。今を乗り切るには。
「えっと……フォックスの邪魔をしないように……」
モビールの上にいたままのゼルダはそこから援護することにする。逆立ちしてもゼルダにはあの立ち回りはできない。大勢の敵に囲まれてもなおスピードで翻弄するようなことはできない。ならば高い場所から狙撃するのが一番だ。フォックスの邪魔だけはしないように、細心の注意を払いながらディンの炎を放つ。1体にぶつかり、起爆し、周りも巻き込む。
『……!』
「きゃ……!」
真下を覗いていたゼルダの背後に重量級のクッパのボディ。糸だけで吊された足場がグラグラと揺れる。足を取られて体勢を崩れかける。どしどしと近付く中で足場が傾いていく。
「きゃあああ!?」
「あ!」
そして落下する。フォックスが駆け寄る余裕もなく、直接墜落したゼルダが尻餅をつきながら腰をさする。地面が柔らかい布生地なので衝撃はない。
「いたた……あっ……どうしましょう……!」
「くそっ!」
飛び膝蹴りを正面の敵の腹部にたたき込んで、無理矢理道を作る。反射的に周りのボディに魔法をぶつけて対処するゼルダの近くに立ち、どうにか2人で隣同士でボディ達と相対する。
しかし、スピードを活かした大立ち回りはできない。ゼルダは1人でこの数を対処するのが厳しいからだ。元々派手に戦って魅せることを前提としたフィールドでは、地形を活かして数の利を覆すというのも難しい。
「また跳んでモビールの上に戻れば……!」
「でもまた落とされそうだし……」
先ほどと同じことにならないかと思案したフォックスがふと思い出す。
「このステージってことは……」
周りを見渡す。見ていたのはボディではなく周りの景色、つまりステージ。
「よし! 2人で上に行くぞ!」
「わかったわ!」
よくわからないが、自分よりも戦いに長けたフォックスの指示通りに動くべきだろうと、少し遅れて跳ぶ。もちろんただで見過ごされる訳でもなく追ってくるボディ。
「どいて!」
『ッ!?』
後ろをつくボディに後ろ足で蹴り飛ばす。稲妻の魔力を込められた攻撃は手痛いダメージを与える。そして空中のモビールに着地した。
「よし! いいタイミングだ!」
「あら、地面が……!」
下の地面がさらに下がっていく。落ちて落ちて遠い位置へ。
ボディ達も慌ててモビールへ上がろうとするが、大勢のボディで一斉に跳び上がったために互いが互いの邪魔をして上がりきれない。
取り残されて地面と共に落ちて、暗闇の中で姿も見えなくなる。
「このステージは時間で地面がなくなるんだ。……というかまだ動くんだな」
「これも誰かの仕業かしら……」
悩み、複雑怪奇な現実が目の前に渦巻く。
2人が見上げた先には、先ほどフォックスが使った空間の歪み、次のステージへの道があった。
◯タイトル
星のカービィ スターアライズにて初登場のバルフレイナイトの二つ名。夢啜る極蝶なんて呼び方もあるが、こちらの方が近いので。
しいたけが定番となっていた中、意表をつくために没デザインから引っ張り出されたバルフレイナイト通称バイト。歴史の闇に葬られたとか言われているからそういうこと。
◯ヨッシー ウールワールド
スマブラWiiUのみで登場したステージ。システム面での解説はフォックスがやっているのでそちらを参照。
スマブラforだけのステージは3DSだけ、WiiUだけみたいなステージも多いので、本当に印象が薄くて……でも、オービタルゲート周辺の漫才は好きです。そんなことはなーい!!
◯原作通りの力
なんか最近ここが曖昧になってきてる気がするので今の2人に関して追記……
フォックスは元のゲームが戦闘機メインということもあり、ほとんどがスマブラオリジナルです。士官学校にいたという経歴があるため、肉弾戦もできておかしくないです。上B横Bみたいな技は戦闘機関連で似た技ができることからですが、まあこれだけできなくてどうなるんだという感じなので素でもできることにしてます。
ゼルダは微妙ですが、原作からしてテレパシー、魔法は使えると判断。神トラの世界そのものも、別に魔法が浸透してないというわけでもなさそうなので、迷いましたが、スマブラ内の魔法も使えることにしてます。
◯作者の気まぐれコメント
あの……私はマリオRPGと2Dマリオの新作で全力出してるな〜と思ってたわけです。甘かったです。
完全にリミットをブレイクしたマリオ陣はもはや予測もできません……! ペーパーマリオRPGってマジか……!
あとFZERO難民もこれで成仏しましたね……! やはり願い続けてれば夢は叶う……! ならば私も……とりあえずパルテナ新作とポケモンレンジャー新作とポケダン空のリメイクとエアライドリメイクとマリギャラ続編と(以下略)