大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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105話 イマ・ヌラネバー!

 

 

「……とまあ、大乱闘の世界にただ戻ろうとしただけなのになぜかオレ達全員新旧含めたどっかのステージにいて、なぜか別のステージに行ける入り口みたいなものを辿りながら、ボディと戦っている……ってところだ」

 

 

フォックスは話した。この世界に戻ってきてから今まで起きたことを。

 

 

「そうですか……つまり、元凶についての心当たりは現状ないと」

 

「ええ……探しているところでした」

 

「〜?」

 

 

小休止を挟みながら、これまでのことの情報共有を行うファイター達。

立ったまま、完全に警戒を緩めない者もいれば、座り込む者、寝そべる者と様々な温度差でその体を休めている。

 

その中で、神妙な顔を崩さないルキナは少し異端であった。そして、意を決したかの如く、真剣な顔をして口を開く。

 

 

「……この現象を引き起こした者について、確信……というほどでもありませんが、心当たりがあります」

 

「エ、本当カ?」

 

「はじめに聞いておきますが、みんなは大乱闘の世界に行こうとしたら何故かここにいた、という認識で間違っていませんか?」

 

「ああ、確かにそうだ」

 

「はい、パックマンは?」

 

「コクコク」

 

「同ジヨウダナ」

 

「……何かと戦って、気絶から回復したらステージにいた、ということは」

 

 

そういう具体的な聞き方はつまり。

 

 

「襲われたのですか……?」

 

「……はい。悔しいことに擦り傷も与えられませんでした」

 

「マジか……」

 

 

スマッシュブラザーズの一員で、ファイターで、絶望の未来でも戦い続けたルキナを完封。その者が今回の事件の背後にいると考えるとゾッとする。きっと、自分達が思っている以上に巨大な陰謀が渦巻いている。

 

 

「デモ、襲ッテスルコトガコッチニコサセルコトカ?」

 

「……納得いかねえな……」

 

 

始末するのが目的なら気絶していた時にやる。

身柄が目的ならば今頃合流できていない。

ほとんどの境遇が同じなのに、襲われて完封されたという事実だけが加わっているのが不可解だった。

 

 

「……駄目ね……とりあえずその襲撃者を見つけることも目的の一つに加えて進みましょう。これだけが敵の狙いでないのならば、いずれ巡り合うわ」

 

「コクコク」

 

 

ゼルダは早々に解決を放り投げた。今ある情報でわからないのならば、今どれだけ考えても無駄だ。パックマンも同意するように黄色い顔を揺らす。

 

 

「それもそうだな……」

 

「ウム」

 

「警戒だけしておきましょう」

 

 

彼らは十全となった橋を渡る。どこかでなにか進展することを望みながら。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、次にたどり着いたのはほのかに薄暗い場所。

 

 

「ん〜……なんか暗……」

 

「というより日陰ですね……」

 

 

しかし、そこは閉鎖的という訳ではなく、単純に別のものが影になっているだけである。周りを見渡せばカンカンと晴れ渡る空。灰色のコンクリートや道なりに舗装された上り坂はどう考えても。

 

 

「タチウオパーキング、でしょう」

 

「わかりやすー」

 

「コクコク」

 

 

今シーズンではじめて追加されたそこはここにいる全員が色濃く記憶に残っていた。

 

インクリング達のナワバリバトル用のステージであり、名の通り駐車場としても使われている場所、の模造品。流石にナワバリバトル用の地形をそのまま大乱闘の地形として扱うのは無理がある。ゆえに特徴的な高低差はそのままに、大胆なアレンジがされている。

 

余談だが、彼女曰く「チャージャーが有利に見えてボールドとかで駆け上がるのも楽しいんだよ!」とのこと。

ボールドが何かは知らないが、今いるのは最下層。インクリングではないが、駆け上がっていくべきだろう。

 

 

『……!』

 

「ビクッ」

 

 

パックマンの視界の端になにかがかすめた。反射的に驚いたが、落ち切ってしまったか、それともただの錯覚だったのか、下層の高速道路が見えるだけ。目を擦ってもう一度凝視してみる。

 

 

「……ジー……」

 

『……!』

 

「───ッ!!」

 

 

やっぱり落下していくボディ。気のせいではない。パックンフラワーの葉を引っ張って、落ちていったボディがいた虚空を指差す。

 

 

「ナンダオマエ……」

 

『……ッ!!』

 

 

そして、また落ちてくるボディ。しかしダメージが甘かったらしい。崖のぼりして上がってきた。虚なピチューの、何も宿らない瞳と目が合う。

 

 

「イルジャネーカ、敵! サッサト言エ、ぽんこつガ!」

 

「ええ!? というか、他にも降りてきてます!」

 

 

顔で打たれたパックマンに、どこから抜けてきたか、前方からもやってくるボディ。

 

 

「ぼでぃ、落チテ来テルゾ!」

 

「もしかして上でだれかがいるのでしょうか……」

 

 

戦闘の末に落下させたのだとしたら、上層には敵の敵、つまり味方がいるはず。ならば話は早い。

 

 

「突破する!」

 

「はい!」

 

 

突撃と共に突き出されたファルシオンの剣先が、ボディの持つ盾に塞がれる。足が止まった先にフォックスがかけた足払いが、ボディを崩し、掬い上げるような太刀筋が右肩を切り裂く。

 

 

「ポイッ」

 

「ふんっ」

 

『……ッ!!』

 

 

フルーツターゲットでリンゴをぶつけ、さらにパックンフラワーが息を当てることで反射させてさらにぶつける。

 

 

「そりゃ!」

 

『ッ!?』

 

 

完全な形のファントムがボディを切り裂く。フルーツターゲットは時間を稼ぐ手段でもあったのだ。軽いボディは真横にぶっ飛ばされて見えなくなった。

 

 

「オマエラ、普通二登レ。自分、外カラ行ク」

 

「わかった!」

 

 

真っ先に正道以外を思いつくのは、例え路傍の1輪と変わらぬ容姿でも悪の一味である。根元にある双葉をプロペラのように回転させ離陸する。

 

別にバカ正直に道なりに行かなければならない法律はない。地形の外だろうとステージの外でなければ大乱闘の舞台だ。先ほど落ちてきたボディ達を辿るように目的地へ行っても咎める者は誰もいない。

 

──それを考えていたのは、彼らも同じだったのだろうか。

 

 

「ウオッ、マタ落チテ……」

 

『……!』

 

「え」

 

 

とびだったところに影が差して、反射的に避ける。焼き増しをするように落ちてきたのは電気鼠のボディ。

そして、それにまっすぐ剣を突き刺すリンクの姿。唐突な出会いに思わず固まる両者。リンクは落ちながら。

 

 

「あ゛ー!! それどころじゃねええ!!」

 

「ピョン」

 

「あー!! マジ助かるー!」

 

「騒ガシイやつメ」

 

 

パックマンが用意したトランポリンのおかげでリンクは無事帰郷を果たす。故郷とは言っても、ほんのちょっと前にたどり着いただけの場所だが。

 

 

「あ、お帰りなさい」

 

「おう! やあやあボディ諸君もお迎えご苦労さん!!」

 

 

リンクは、リンク達もまた戦闘中だった。少し前にこことは違う別のステージで合流して、進んだところボディの襲撃を受けていた。気持ちのいい皮肉を言いながら大きく剣を振り抜き、ボディを切り裂く。おちゃらけた口調とは裏腹に鍛え抜かれた足腰で跳び回り、常にボディの頭上を取っていく。

 

 

「あ、そうだ。なんか花いたよ。あとパックマン」

 

「は、花?」

 

「せっかくの剣剣ケントリオが崩れるのはちょっと残念だけどな」

 

「でも、パックパックコンビが増えるんじゃないの?」

 

「おーい、オレを置いてけぼりにしないで~……ってか花ってパックンかー」

 

 

赤い胴着のケンが戦いの手も止めて言った。置いてけぼりがちょっぴり寂しい年頃なのである。

 

なんせ、好奇心のままに走り続けるリンクと天然の入った勇者イレブンが彼の連れなのである。誰かがストッパーにならなければどこに行ってしまうかわからない。

 

 

「騒ガシイ奴等ダッタカ」

 

「花ァ!」

 

「タダノ花ジャナイ、殴ルゾ」

 

 

植木鉢で頭を踏んづけながら、最上層に着地するパックンフラワー。ギラで足止めされたボディにシューリンガンと波動拳をぶつけていく。

 

 

「後、パックマンダケジャナイ。狐、ぴーち姫ジャナイ姫、女剣士。」

 

「あー、大体わかった」

 

「うりゃ!」

 

「ていうか来た」

 

 

リンクと同じ姿をしたボディがぶっ飛ばされながら、3人が乱入する。あれから他のボディが降りていったりはしなかったようだ。

 

 

「おっしゃ! 背中頼むぜ、ルキナちゃん!」

 

「え、あ、はい!」

 

 

名指しで指名されたことに困惑しつつも、ケンの背後のボディを仕留める。その脇でゼルダの頭上を襲ったボディを弓で射貫くリンク。助けられた姫は魔法をぶつけながら、味方の方へ走る。

 

 

「よそ見厳禁だぜ、ゼ~ルダ!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 

フォックスがリフレクターで身を守る中、パックマンがパクパクとピザ欠けパックマン状態に変身して突進するも、脇から蹴り飛ばされる。

 

 

「ヒャー」

 

「あっ!」

 

 

反射されたパックマンがリフレクターで弾き飛ばされてしまう。跳んでいったパックマンは誰もが予想できない方向へ、

 

 

「きゃー!」

 

「ぐぼっ!?」

 

 

リンクとゼルダの2人にぶつかり、巻き込んで、それでも速度がまだ落ちない。

 

 

「えっ……!」

 

 

いきなり眼前にせまったルキナの背中に人肌の感触があった。

 

 

「ヒュー!」

 

「ちょ、ケン!?」

 

 

背中を押して彼女をかばったケンは爽やかな笑顔でパックマンに激突していった。

 

 

「あんなに飛ぶんだね……」

 

「ソレドコロジャナイ!」

 

 

3人を巻き込んだパックマンは、空間の歪み、ワープゲートに吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

「うう……」

 

 

痛みに耐えて目を開く。しかし、視界の中にほとんど光が入らない。そこは夜。否、

 

 

「宇宙……でしょうか……?」

 

 

頭上、左右、下。360°の全方位が夜の星空。それはさっきまで共にいたフォックスの主戦場であった。

 





◯タイトル
スプラトゥーンシリーズのナワバリバトル(フェスバージョン)の最後の1分から流れる曲。
これ実は2のバージョンに面白い裏話がありまして、シオカラーズ好きなイイダちゃんは畏れ多いとのことで、通常バージョンはヒメちゃんしか歌ってないんですよね。ハイカライブバージョンで歌うようになりました。シオカラーズとの距離もいい意味で縮まったんやなって。


◯ルキナの境遇
クロム、ルフレと同じく。


◯勇者
名前はデフォルトのイレブンを採用。
ファイターではなくなっている、ということなので、使用呪文、特技が変化しています。簡単に言えば、メラ系ギラ系イオ系ラリホー系ホイミ系などです。ドラクエwiki、主人公(DQ11)を参照。
天然系のちょっとおっとり。呪文特技が変更していることには気づいていますが、話す余裕がなかったので一緒にいたケン、リンクにも伝えられていません。

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