大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「あーあ、これじゃ逆戻りだ」
心底飽きたと言わんばかりに気落ちするリンク。その口ぶりからすればここからタチウオパーキングへ来たという訳で。
「あなたは、ここのことを知っているのですか?」
「そこまでは知らないけどなー」
「姫さんとパックマン、しっかり捕まってないと落っこちるぜ」
「わわ、わ!」
「アタフタ」
動いていた足場がギュンと急降下して、体勢が崩れる。膝をつきながら、見たその足場がどこかで見たことあるような気がした。
「えっとえっと……そう!フォックスのきりふだ!」
「そうそう!本人いたし聞いときたかったのにこの始末だぜ⭐︎」
「だぜ⭐︎ってなんだよだぜ⭐︎って。確かアーウィンって名前の戦闘機だ」
そう、彼らが足場として乗っているのはフォックス達の戦闘機アーウィン。ここはひたすら静かな宇宙ではない。隕石とエネルギーショットの飛び交う星空の戦場である。
「アワアワ」
「んあ? なんかパックマンくんさんがなんか言いたげだぜ?」
「あっ、ここもステージなのですね。私たちは知らないだけで……」
「ま、ファイター換算ならオレ達の先輩だしな。……ちょっとだけ。」
パックマンだけが既視感のあったそのステージ。
まるで一種のアトラクションの如く、戦況が切り替わり、戦闘機が右往左往。
オービタル周域と呼ばれるステージの原典は珍しく、場所というより戦闘が元である。
「さっき、ここ通ってあっちに来たんだけどさ、まあ、通るってよりは乗ってだけど。そんなことよりたまにこれ回るから注意くぼぉ!?」
「わあ!?」
足場のアーウィンが回転して危うく落ちそうになる。回避行動のためのローリングと呼ばれる動作だが、それのせいで振り落とされそうになった。搭乗者に優しくないが、そもそも機体の外で乗ることなど想定していない。
「あ、あなたたち、こんなところでも大乱闘きゃっ!?」
「コクコク」
「ホントどこでも大乱闘にするなうおっ!?」
たまにしがみつきながら、こんなステージで大乱闘をしていたパックマン達にズレた尊敬の念を抱く。
「まあ、それはともかく。一周すればさっきのトンネルにも戻れるだろうし、流れに逆らわず進ませてもらおうぜ」
アーウィンからミサイルに飛び降りるケンとリンク。パックマンもそれに続き、ゼルダも遅れて降りた。
「あー、でもそれじゃ戻るだけだし……」
「そうですね、このまま進んでもリンクやケンが歩いた場所ならば新たな手がかりなんて」
「お、激突するから捕まってなよ」
ミサイルがフォースフィールドに激突し、4人は伏せて足元を掴む。衝撃に耐えながら、リンクに妙案が降りてきた。にこりと明るい表情。
「なあ、これステージの外ってどうなってんだ?」
「………………はあ?」
珍しく、ルキナは混乱していた。
彼女、絶望に関してはいくつも味わってきたのだが、突拍子もない展開、いわば並べられたハードルを蹴り倒して進むような状況にはてんで耐性がない。
スマッシュブラザーズとしてアクの強いファイター達と友好を深めてきたのだが、完全に慣れた訳でもない。
「なんで……あの人、カッコつけて、巻き込まれていったん、ですか!」
「う〜ん……そういう年頃なんじゃない……かな? 僕もあったよ」
「明らかに貴方の方が年下ですよね!?」
「後でいいから!! とりあえず片付けて追うぞ!」
ほら、今もちょっと気の抜けた返答についていけていない。スルースキルに関してもフォックスの方が上だった。
「あ、でもすごく夜って感じのステージだったよ。どこなんだろう、あそこ」
「イレブンの、知らない場所か……? 今は使われてないってことだよな」
「……ドノすてーじ、似テルカ?」
「それだっ!」
「えっ、うーんと……ごめん、ちょっと待って」
既存のステージと似ているかを聞くファインプレー。イレブンは苦い顔をして考えながら、はやぶさ斬りをぶち当てる。上記の会話もまだ戦闘中であった。器用な3人と1輪。彼ら全員にとって、戦いが身近なものだからという理由もあるだろうが。
「ドケッ!」
「やっぱり何度見ても痛そうだよ」
「そんな感想いいから考えろよ!! 片付けて直接見た方が早くなるぞ!」
しかし、イレブンの興味はフラフラする。パックンフラワーの頭部が黒く棘のついたものに変化し、ボディをぶっ飛ばす様子に今更ながらの感想を述べる。とはいえ、考えていない訳ではなかったのか、ハッと述べた。
「あっ! そうそう、ライラットクルーズとかマリオギャラクシーに似てるんだ!」
「ってことは……宇宙か!」
「うん! あとフォックスとファルコが乗ってる青い鳥みたいなのに乗ってて……」
「えっ、ってことはあそこかよ……また面倒なステージで……」
「……ああ〜……確かに……」
先にフォックスが、遅れてルキナも見当がついた。ノンストップで動き続けるあのステージの探索は大変だろう。
「でも、追われると余計面倒になるな。1人残らず倒していくぞ!」
「わかった!」
デインの雷が響き、ルキナが投擲した槍が足を縫う。フォックスの炎をまとった突進がボディに迫っていた。
「だ、大丈夫なのでしょうか?」
「まー、なんとかなるなる」
アーウィンの上で立ち、タイミングを見計らうリンク。
飛び回るアーウィンは同じルートを通る。一度ミサイルが破壊され、フィールドがアーウィンへと戻った後に、トンネルを潜り抜け、別のミサイルへと乗ることになる。
リンクはそのトンネルに向かって飛び降りてみようとしているのだ。
「雑だな……で、ピチューンって光になるだけだと思うんだが、大乱闘みたいに戻ってこれるのか?」
「大乱闘みたいにピチューンするとは限らないっしょ? 行けるとこはどこまでも! それがオレのモットー! 今決めた!」
どこまでもリンクは頑なである。やんわりとした説得ではどうやら止められないようだ。ため息をついてケンは、残る2人と目を合わせる。
「って、ことだけどどうする?」
「うーん……正直危険以前にうまく着地できるのかが怖いところですが……」
考えながら言葉を発していたようで、僅かな沈黙の後の言葉は繋がらない。
「仮に今がマスターハンドの目が届かないだけだとしたら、事故でどうにかなってしまうことになりますよね。そんな欠陥を……」
「ピコーン」
「ああ! 事故でピチューンしなかったら危険になる……なんてことにはマスターハンドはしてないってことか!」
「はい」
上手く言語化できたケンの意見に同調する。確かに可能かどうか、やって何が得られるかは置いておいて、宇宙に放り出されて戻れない、なんてことにはならないだろう。
「おーい! 別に1人でもいいけどさ、ついてくるならもうすぐじゃね?」
「ええっ!?」
「あ、着いてくるかまでは考えてなかったじゃねーか! あーえっとーええい、ヤケだ!!」
「ビュン」
ヤケクソでリンクに続いて、ケン、パックマン、そしてゼルダが飛び降りる。
強い衝撃が両足に響き、思わず身震いをした。アーウィンは頭上を通り過ぎていく。
「おお……本当に無事でした……はっきりとした自信はなかったわ」
「ヒヤヒヤすんなぁ……」
「〜♪」
鼻歌交じりに探索で進み始めたリンクを尻目に3人は、ちょっと臆病になっていた自分を戒める。
「しかし、ここに何が━━」
「〜♪━━えっ」
しかし、リンクの鼻歌は急に止められる。出入り口か非常口か何か、開け放たれた室内には倒れて目を閉じたままの数えきれない人々。
マルス、ピット、しずえ、サムス、スティーブ、ミェンミェン、プリン━━彼らの仲間達の顔も。そして、彼にとって、もっとも敬愛すべき女性も、また。
「やっと戻ってきた━━」
「アワワ!?」
「えっ、貴方達は一体……?」
遅れてフォックス達がこのステージへ降り立ち、グレートフォックスに足をつける中、2人の若者と出会う。
タコの触手のような髪をした少女とオレンジのバンダナを着けた旅人のような格好をした青年。
「もしかして……君たちがファイターかい?」
驚いたように目を丸めながら、青年が口を開いたのだった。
◯タイトル
初代スターフォックス、スターフォックス64で登場する宇宙空間。
初代スマブラでもステージとして採用され、今作で1番広いステージに。SPでも日の目を浴びることはなかったが、ほとんど惑星コーネリアと同じ形なので……
作者的に広いステージといえばニューポークシティなのですが、初代ではここというのは、時代の進歩を感じます。
◯オービタルゲート周域
スマブラWiiUに存在する、制作に一年を費やしたというステージ。ディズニーのアトラクションでありがちに、物語をなぞるように足場や背景が移り変わっていく。フォックス、ファルコが対戦で登場していない時に限り、スマッシュアピールでスタフォ勢の掛け合いが楽しめる。シリアスな原作風とおちゃらけたスマブラ風の2種類の掛け合いがあるぞ!
SPでは未登場。全俺が血の涙を流した。
◯ローリング
アーウィンでの回避行動。機体を横に回転させて弾を振り切る。
ただローリング直後に隙ができてしまい、灯火の星ムービーではファルコが後隙を狩られている。
◯倒れている面子
色々足りなかったりしますが……
◯作者の気まぐれコメント
ついにWiiUと3DSのオンラインサービス終わってしまう……
初代スプラトゥーンもそうですが、天使の降臨とか夢見の館とかも消えてまう……
やばい、ちょっと泣けてきた……