大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「ボディ……でも喋るし……ということは……」
「──!」
「リンクッ!?」
その姿を認めるや否や、真っ先に飛び出したのはリンクだった。見開いているはずの鋭い眼光が、振りかぶった腕の上からキクを見据える。
咄嗟にシールドを貼って防いだ敵側の少女は斬られた方向へ大きく引き摺られた。
「なんで……ここだけは見つからないと思ったのに……!」
「ここは……!」
キクのいた場所は大滝のぼり。
巨大な滝が流れる中、細かく足を登っていかなければスクロールに置いていかれるステージだ。ここも今は使われていない。少女はだからこそ見つからない自信があったのか。それとも。
「正直状況を読みきれていないのが本音ですが……あなたを逃してはいけないのはわかります!!」
「逃げ場なんてないわ……! ここで蹴散らしてみせる……!」
マスターハンドから奪い取った創造の力。それによって金色のチャクラムを創りだす。1つ目を囮として、2投目でルキナのマントを巻き込んで壁に縫いつけた。
「ルキナ……! どんどん上に上がっていく……!」
ルキナに手を貸して、フォックスが苦虫を噛み潰した。
宙に浮かぶ少女はするりするりと滝を上がっていく。重力に逆らう動きで追わねばならないスマッシュブラザーズは中々追いつけないのだ。
大滝のぼりは戦闘領域が上へ上へと進んでいくステージ。大乱闘ではないので取り残されてもミスになることはないが、キクとの距離はどんどん離れていく。
しかし、それでも追いつくものは追いついてくる。
「舐めるなァ!」
「きゃっ」
リーバルトルネードで急上昇をかけたリンクが、浮いたままのキクの足を掴んだ。宙で回ったり、急に止まったりして振り払おうとするが、額に血管を浮かべて離さない。
「はなしなさい!」
「うぐっ」
顔面に至近距離で爆発を受けて、思わず手を離した。どんな武器かは一瞬過ぎてわからなかった。
「……なら、これよ!」
「わっ!? ステージ変化か!?」
ステージの地形が足元から離れて、感じた浮遊感はすぐに消えた。まったく違う地形が入れ替わって現れたからだ。
「うおお!?」
「なんかデコボコ……でっけえゼニガメ!?」
空中に投げ出されたリンクが頭から落下する中、ケンが目を見開いた。自分が足場にしているそれは、巨大なゼニガメだったのだ。周りを見渡せば、さまざまなポケモンが浮いている。
「ポケモン亜空間!? いつぶりなんだよ!?」
「なんなんだよこの高熱の時に見る夢みたいなのは!!」
「知るかオレに聞くな!」
先程から古参のフォックスにばかり八つ当たりする気がして、本人からすれば理不尽である。この面子で初期から参戦している者はフォックスしかいない。
「この世界の
「空中に……!」
足場が不安定で動きにくいが、それはキク以外の話である。彼女は空中に浮かんだままに、行動を行えるため、ステージの特徴が不利に働かないのだ。
両手から放たれた拡散するレーザー。範囲から出ようにもゼニガメの肩付近やに追い込まれてり頭頂部で視界が潰れてヒットしてしまう。
「(それよりも単純にステージが狭い! 4人でしか戦えなかったステージで10人超えてるなら当然か!)」
純粋に戦場と人数が合っていないのもあり、簡単に逃げ道が塞がってしまう。ステージ変化なんてこちらから期待できるものじゃない。
「いーや!! 別にゼニガメくんちゃんの上にいつまでもいることないだろ! あのウチュウでのこと忘れたか!!」
「ッ!!」
ウチュウ、オービタルゲート周辺で見つけたのはなんだ? どこにあった?
大乱闘、とは違う。戦闘領域から離れたところでミスになったりはしないのだ。
「ドウダッ」
「……! 背後から……!」
アンノーンの目玉部分を足場として、8号がスプラチャージャーでキクを射抜く。顔にピンクのインクがかかり、視界の半分が潰れる。
「サイッテー……! 見た目には気を使ってるのに……!」
「これなら……!」
「メラゾーマ!」
「邪魔しないで……!」
視界の潰れた方から強襲するルキナの一振りには、火球の呪文が込められていた。だが、振り切るより先に、魔力の籠った足で踏みつけられる。そのまま地面まで叩きつけられた。
不機嫌なキクはインクのついた顔を擦りながら、指を鳴らす。
「あ、ここはオレにもわかるぜ! ジャングルガーデンってあ゛!?」
ルキナの背をつけていた地面は急流の川に早変わり。腹部を踏みつけにする足はどかないままに彼女を落としていく。
「悪いな嬢ちゃん!」
フォックスの飛び蹴りが、屈んだケンの頭上を通っていき、キクが退く。ファルシオンを握っている手首を捕まえると、なんとか家の建ってある木板にぶら下がった。
「あっぶねー……」
「おい、また変わるぞ!?」
続いてのステージはエレクトロプランクトン。電子プランクトンが踊るように行き来する、一輪のシンプルな花の咲いたステージ。
「ぬお!?」
「地面が!」
変化によって旧ステージは新ステージの下へ沈んでいく。このままだと、2人は崖を掴んだままステージ外に落ちていってしまう。
「まずは2人よ……!」
「あれは……!」
キクが構えたのは巨大な火球。もっと言えば、イレブンが先程ルキナの剣に撃ったものと全く同じものだった。
「やめろ!」
「ふんっ」
フォックスのブラスターが、エイトのデインが、彼女を襲うも鼻を鳴らしながら気にも留めない。なんならノーモーションで同じ技をそれぞれに返すほどだ。
「くたばりなさいッ!」
「……っ!」
だが横から掻っ攫うように2人を救出したのは8号だった。
「やるねハチちゃん〜」
「集中」「シテクダサイ!」
「あ、はい」
真面目な2人に同じように言われ、ケンも茶化した自分を恥じた。3人が花の咲く葉に着地するのを忌々しげに見るキク。不機嫌な顔のままに指を鳴らす。
「今度は!?」
「ミッドガル!」
「イフリート! 力を貸しなさい!!」
ステージ内に存在するマテリアを握ると、巨大な炎の怪人が現れる。このステージはフィールドに出てくるマテリアを使うと、召喚獣が味方になってくれるのだ。
「これでどうかしら?」
ステージを吹き上げる炎。それは一時的に全体を傾けてしまうほどに強い炎だ。足腰に力を入れて、すっ転ぶのを避けている。
「ポイッ」
「ふふっ、まだ終わりじゃない。私の力を使えば……」
「あれは……まさか……!」
1番最初に受けたイレブンが気づいた。
パックマンの投げたボス・ギャラクシアンを手で捕えると、キクはイフリートの放った炎に自ら身を投じる。しかし、彼女を燃やさない。膜が張っているように彼女だけを避け、そしてステージ真ん中の上空から同じ炎を呼び寄せる。
「気づいたかしら? なんでも模倣できはしない。でも、こういう実態のない攻撃は効かないどころか自分のものにできるのよ……!」
「うあああ!?」
バランスも被害も考えない広範囲高威力の獄炎。逃げ場なんてないように、焼き尽くし焼き尽くし。
「ふう……なんとかなったわね。さて、どうにか調べた後に……」
ステージを大滝のぼりに戻す。ここには入り口があるのだ。
途中で気づかれてはいけない感じ、違和感なく場所を切り替えたものの、
誰から調べようかと何気なく周りを見渡した時だった。
「はあああっ!」
「っ!?」
下の足場から自分の心臓を狙った一閃。ルキナの一突きに完全に意表を突かれた。
確かに軽くないダメージを受けた。回避できなかったし、守りもほとんど意味がない。
だが、勇者が共にいたのだ。ベホマラーの全体治療で回復して、動けるようになるまでに戻した。種は簡単なものだった。根性の反撃のために背中を押すような。
「ああん、もう!!」
しかし、種は向こう側にもあったのだ。
届きそうな一閃は届かない。剣は取りこぼし、ルキナ自身は、まるでおもちゃの電池が無くなったように突然力を失い倒れていく。
「ルキナちゃん!?」
「…………」
ギョッとして全員でルキナに駆け寄る。キクは1番忌々しげな顔をしながら離れていった。
「これは……!」
「コクリ」
「ああ、姫様やマルス達とおんなじだ……!」
まるで、魂が抜けたように。
「……わかってたわ。本当はこれが一番早いって。でも嫌だった。
例え敵でも、その力を、呪いを頼りたくなかった。
「諦めなさい……私を見ないで戦うなんて不可能よ。そしたら、痛くしないで貴方達全員、倒れてた人達のいる場所に送れる」
取り繕った冷酷さが、この場の全員の心を貫いた。
○タイトル
大神のボス戦BGMの一つ。その名の通り、黄金魔神モシレチク・白銀魔神コタネチクとの戦闘BGMである。
今作の曲は琴など和風モチーフの曲が多いのだが、この曲はダンジョンモチーフもあってか時計仕掛けの音も混じり、ボスの見た目もあって親和性が高め。
○大滝のぼり
Xに登場した上に登っていくタイプのスクロールステージ。
細かな仕掛けが多く、Switchの携帯モードを想定するととても復活できなかったんじゃと思います。
○ポケモン亜空間
DXのみ登場したステージ。どこかの空間で登場するポケモンを足場にしているステージ。カントー地方と紹介されているものの、こんな場所カントーにあってたまるかい。
たくさんのポケモンを登場させたかったなどと供述しており……
そんな背景だからSPには場違いな気はするものの、あったらあったで面白かったと思います。
○ステージ変化
大乱闘の途中で、全く別のステージに変化するシステム。
SPの目玉の一つとして紹介された割にはそこまで話を聞かないような……と感じているものの、私自身使ったことなかったので何も言えなかったのであった。ちゃんちゃん。
ここで言うのも何ですが、ステージに関しての解説はSPにないステージだけを解説してます。全部やると長くなるので。
○キク
彼女の力は、彼女自身を見た者の魂を抜く力でございます。
非実態の力や技を吸収して自分のものにする力はいわゆるおまけみたいなもの。本人的には積極的に使いたがりません。理由は次回で。
彼女のモチーフは輪入道という妖怪です。ただし女性要素もあるため、同一視されている片輪車の要素も入っています。