大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
『…………』
ばったり倒れたまま、身じろぎもしない相手の姿を、少女は黙ったまま見ていた。
その感情は絶望でも恐怖でも呆然でもなく、やっぱりという諦観だった。
『……だれか……』
自身の姿を確認する。
それだけで魂を奪う者に誰が近寄るというのだろう。
誰かと目を合わせたこともなく、多くの人間が持ち合わせるだろう目の光を少女は知らなかった。
自分がそれを求めた訳でもなく、理由もなく、自分は誰からも見られない、認識されない……一体透明人間とどう違うというのだろう。
見られなければ知られない。知られなければどこにもいない。どこにもいなければ見られない。
誰かと触れ合い、まっすぐ目を見つめて、誰かにとっての知人になりたい。友人でなくてもいい、恋人でなくてもいい。
ただ周りの人間が、誰かと関係を築いていく。その第一歩を自分も踏み出したかったのだ。
だから、例え自分が望む未来であろうと、その呪いだけには頼りたくはなかった。
縁を求めて何が悪い。私はただ、私の姿に怯えられないようになりたいだけ。この体はそれを可能にできる。呪いを力に格下げできる。
──でも、もし、それを邪魔するのなら。どうしても力でどうにもならないのなら。
──この呪いだって、利用してやる。
「倒れていた……人達だと……!」
リンクの声が震えていた。そこに恐怖はなく、ただ今にも噴火しそうな憤りが大蛇の蟠のように渦巻いている。
「見たんでしょ? お仲間達が倒れてたの、それは私がやったこと。この人みたいにね」
指を刺したのは、目を覚ます気もしないルキナの姿。マルスやサムス達、オービタルゲート周域のステージ外で隠れるように倒れていた彼らにはそんな背景があったのだ。
「抵抗できるような人がいれば私は今ここにいない……私の姿を見る、ただそれだけで貴方達の魂は体から抜けるのよ。今、この瞬間にもね」
「……!」
揃って腕で視界を覆う。神経を集中させて目以外で敵を認識し続ける。
「安心して。魂が抜けるといっても体が死ぬ訳じゃないわ。そして、
「(あの映像の……つまり、彼女達の目的とはジョーカーのところに隠れたマスターハンド!)」
「全部終わったらちゃんと帰してあげるから、一時的にそこに行っててよ」
全てが繋がる。
諦めて欲しいと語った情報で完全に理解した。
自分達の敵に回るだろうファイターや周りの者達を閉じ込めながら、マスターハンドを探していたのだ。
「──!」
飛び出すリンク。彼女の言い草に、ついに限度を超えたのだ。
本人の力だけではどうしようもない問題があるのかもしれないが、そうであってもそれが自分達やゼルダになんの関係があるというのだ。
ただ、倒して取り戻す。それだけだ。
「学習しな……!?(目を閉じてる!?)」
剣を振りかぶったままに突撃するリンクの目蓋が閉じられたままであることに驚愕する。
確かにそれならこの呪いは効かないが、子供が考えつく浅い手段を本気で採用してくるとは。
後ろへ跳んでかわすも、本当は目が見えてるんじゃないかと思うほどに追ってくる。
ルカリオが行える波導による探知。理屈を知っているだけのそれを、ほとんど不完全とはいえこの土壇場で再現してしまった。
「ドシン」
「ぐう……!?」
「最初ハ驚クガ、対処デキル!」
横っ腹にピザ欠けパックマンの突進が突き刺さる。
目が見当たらないピザ欠け状態、そして眼球の存在しないパックンフラワーにはうまく呪いが作用しないのだ。
キクが見た者ではなく、キクを見た者にしか通用しないのだから。
「(他の奴らは……!? 隠れたわね……!)」
その他はどうやら上か下の足場に隠れたようだ。ルキナの体も動かされている。脅すことはできない。視覚を奪うも当然の力でも、見られなければなんの効果もないのだ。
「それなら……!」
パックマンの突進をいなし、上空へ浮遊する。
ここから視覚に頼らず攻撃を当てるのはそうそうできないはず。
先程と同じように、ここのあたり一帯を焼き尽くす。足場を焼き落とし、届かない遥か上空へ行けば、奴らはどうしようもないだろう。見えない中で狙わなければならない飛び道具など怖くもない。
「まずは足場と隠れ場所、奪ってあげる……!」
「やば……!?」
足元が熱く崩れて、反射的に目を開きそうだったのを慌てて閉じて視線を下げた。ダークサムスが使うチャージショットを背中に撃たれて落下する。
「まずいっ!」
「あ、やべ!?」
落ちていくリンクの手を反射的に掴むのはエイト。それぞれ違うことを懸念した、2人の焦りの顔。
自身を縛る呪縛すら利用することを決めた少女は、身を乗り出した青年を見逃したりしなかった。目を背ける前に、視界に躍り出る。
「え?」
その声は、誰の声か。呆然としながら発したキクの声だったと気づくのに遅れてしまった。
少女の眼前を阻むように現れたドラゴンを模したような紋章。それの意味を正しく理解するのを認めたくなかった。
「なんで、いや、何かの勘違い……」
「まさか……」
何かを思いついたのか、トゲギミックの裏にリンクを潜らせると、体に龍のオーラを纏わせる。そしてそのまま空中のキクに突撃していく。正面から突撃してきたエイトを酷く焦った顔をしてシールドで防いだ。
「やっぱり……! どうして効かないの!?」
「ああ……そういうことだね……!」
その理由を知れるのは本人だけ。
幼少期に受けたその強固な呪いはその他の呪いを容易に弾く。
本人だけでなく、他人にとっても等しく呪いであったのだ。
「今更……そんな……!
私と友達になってください!!」
『ズコー!!』
「突然ナンダ!?」
隠れることも忘れて脈絡もない前後の文に一同でズッコケる。本人は顔を赤らめて指をつつき合っている。
「だって、その、あの、効かない人、はじめてだし、友達の作り方なんて知らないし、1対1で会話したことだって……」
「作り方以前の問題でしょう……」
「1対1トハ……?」
つい先程までドンパチやっていた敵と急に友達になりたいとは。人付き合いがわからないにも程がある。ちなみにこの中で2番目に人付き合いが苦手なのはゼルダである。
「……なんか変な空気になったけどさ、どうしてもマスターハンドを倒さなきゃダメなのか? なんでだ?」
戦闘中とは思えないのどかな雰囲気をぶち壊すようにケンが割って入っていった。
彼女は、根から悪人でこんなことをしている訳ではない。原因を解決できれば、和解の道があるのではないか。そう思ったのだ。
その言葉に我に返ったのか、顔の全体に冷や汗をかきながら譫言のように呟く。真っ青にした様子は見るからに哀れだった。
「ん……? ……ダメ、絶対、ダメ。僅かでもあの姿に戻る可能性があるなんて、無理よ。イヤ、私は、ここにいる。いるの、透明なんかじゃない……」
「あ〜、キクちゃん?」
「私は!! ここにいる!!!」
その瞬間、ステージが再び切り替わる。
朝焼けと夜が混じり合う世界、無機質さを宿した暗い金属のような舞台以外にはなにもない。
「終点……!」
終わりであり、始まり。
霧状の闇のようなものが、キクを包むように渦巻き、右手の形、マスターハンドの形をつくる。しかし、それは本物のそれよりも二回りほど巨大だった。
「スウォームまで……」
かつてマスターハンドが利用していた力、スウォームを見に纏い、マスターコアと同種の力を使う今の彼女はのちにこう呼称された。
アナザーマスター
◯タイトル
キングダムハーツシリーズに登場するワールドの一つ。
無機質な摩天楼といった雰囲気のワールドで、XIII機関の本拠地でもある。存在しない世界だと、ピーターパンのネバーランドと被るからか、存在しなかった世界(The World That Never Was)となる。なげーよ。
敵の本拠地であるため、2も3Dも終盤ステージだが、ロクサスが主人公のDaysでは拠点となる。
◯今明かされる衝撃の真実
神トラの闇の世界に似ていた5章の舞台は偽物の世界であり、魂だけの者達がいた世界。
タイトルなどにそれらしい伏線は散らしています。
◯エイト
ドラクエ8の主人公は呪いが効きません。ストーリー上でもそのおかげでピンチを切り抜けていますが、その理由がわかるのはエンディング後。8は物語がしっかりと作り込んであって完成度高いです。特に父親の血統がどうこうでああいう風に真エンディングに繋がるのとか。
◯呪い
彼女以外にとっても呪いのそれ。今話中にその呪い関係でとんでもない大ポカやらかしてます。
◯マスターコア
forにおけるマスターハンドの強化形態。
スウォームと呼ばれる霧状の何かを見に纏い、巨人になったり剣になったりする。アレって影蟲の親戚みたいなものなんですかね?
◯アナザーマスター
マスターコア達にキク要素をプラスした今章のラスボス。
せっかくだし、もう少しスマブラ要素をプラスしたいと考えた作者によって生み出された。今章、予定より1話延びます。
容赦がないので原作マスターコアより巨大になってます。マスターハンドではなく、キクの強化形態であるため、マスターは後につく。
◯作者の気まぐれコメント
キングダムハーツミッシングリンクのβテスト、当たりますよ〜に!
キャラメイク本当に楽しそうで、キャラメイクできるゲーム引っ張り出して欲望を抑えるためにプレイしてるんですけど、KHMLのキャラメイク一つの方がそのゲーム全体より面白いんじゃないかと失礼なこと思うぐらい楽しみです。
オッドアイとかまでメイクできるのやべー……
これで落選したらそこのへんで死んでしまうでしょう。誰か復活魔法唱えてください。