大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「んー」
固まった自分の体をほぐすために、両手の指を組んで上に伸ばす。腕、肩、背筋、足……体全体を意識しながら伸ばすと、それだけで肉体が覚醒するような感覚を覚える。
「よし、動きとしては……」
Wii Fit トレーナー、皆からはトレさんなどという愛称で親しまれている彼女は、空気の綺麗な森林で本を読んでいた。
勿論、小説といったような本ではない。ストレッチや体操、健康法などといった本である。
人に指導をし、教える側であるトレーナーとして、最新の健康法の知識を取りこぼす訳にはいかない。読み耽り、時には実践してみることで、活字から得られる情報との齟齬をなくす。
それに感覚として理解はできても、側から見たらどのようなポーズになっているのか、ということは自分の目では捉えにくい。
その点、本の中の図式は単独でもわかりやすくまとめられている。
ざっくりまとめてしまえば、よりよいトレーナーであるために努力は欠かさないということだ。
両足を地面につけて、徐々に開脚。無理だけはしないよう両手を前につけて。少しずつ少しずつ。
「……あら?」
「オーン」
足の間からひっくり返って見える景色に、自分と似た白い色のピクミンが映っていた。
「(さて、守る、はいいが……そんなことをしたことはほとんどないぞ)」
オリマーの緊張感は最高潮。
護衛戦らしき経験など、せいぜいブルーファルコンに乗ってメタリドリーと戦った時程度だ。
気配を察知し、敵に見つかる前に仕留める……そんな空想のようなこともスマッシュブラザーズの中にはできる者もいるのだろうが……勿論オリマーにはできないこと。
「しかし、何があってマスターハンドがこんな姿に……」
この世界の支配人が簡単にこうなることはない。一体誰が下手人なのだ。その誰かがボディに頼らず直接やってきたら……どうしようもないことは考えないことにする。
マスターハンドが起きてくれれば、全てが判明するだろうが、起きる気配はゼロである。ピクミン達が上に乗ったり、指の間から顔を出したりと遊んでいるが、なんの反応も示さない。
「君たちは好きに遊んで……この世界を創った神様だというのに、まったく……」
「フン?」
不敬もいいところの現状。呆れながらも気の休まったところに、ザクザクと足音が聞こえる。味方か……という希望にはあまり期待しない方がいいだろう。
「くるか……!」
「フア?」
戦闘のための顔となったオリマーを、首を傾げて見つめていた。
『…………』
「フニャー!?」
「まってまって〜!」
ミュウツーがなんとも言えない目で見る先。
なぜか追いかけっこをしている青ピクミンとMr.ゲーム&ウォッチ。
『……何をしている』
「おにごっこ!」
「オーン」
少し不服そうに座り込んだり他所を向くピクミン達。おそらくMr.ゲーム&ウォッチが勝手に追っているだけだろう。本気で鬼ごっこのつもりで、悪意も何もなく。
『何故、ピクミンと?』
「さっきあったから!」
ピクミンといえば、オリマー。とはいえ、いつも一緒にいる訳ではないだろう。しかし、あまり他の者達と一緒にいるイメージがない。
『……?』
「オン」
1匹のピクミンがミュウツーの足を叩く。
同種であるポケモンは勿論のこと、他の動物等が相手でもテレパシーでの意思疎通ができるミュウツーだったが、植物に近いピクミンの意思は伝わりづらい。
見た目で判断しようにも、ピクミンの表情は目ぐらいしか動かないし、マイペース故に仕草も決定的な資料にならない。
『オリマーは、じっと観察すれば個体の識別ができるとも言っていたが』
「ポケモンもおなじじゃなーい?」
『……私からしてみればその違いは容易にわかる』
「ハァ」
ため息をつかれたのはわかった。伝わらないから、ガッカリしているということも。
反省して今度こそわかるように注視してみようとするが、その必要はなかったのだ。気配に、別の者がいる。
『……! いるな、不純物が』
「ふじゅんぶつ?」
鈍く光る、ボディの得物。プレッシャーを放ちながら、するどくにらみつけた。
「……ッ!」
『……ッ!』
駆け出したのは同時だった。
図体の巨大なリザードンのボディ相手に懐へ入り込み、岩ピクミンを振り回す。
体への攻撃と同じように、顎を殴りふらふらさせたところへ、背後から赤ピクミンを投げつける。
『……!!』
思わず飛び上がり、体を回して振り落とすも、新たなる増援として紫ピクミンがはりつく。
せわしく翼を動かすものの、高度が上がらずに落ちていく。完全に墜落する前に、ピクミン達を呼び寄せた。
「まずは1体!」
『……!』
「ピー!」
「なっ……!?」
少し安堵したのも束の間、背後からの剛腕に赤ピクミンと紫ピクミンの1匹ずつが命を散らす。
密林の王者に、医者に平面人間。今度は3体。
「くっ……!」
『………………』
3体ともなると及び腰になり、後退りする。ピクミンを失って動揺する気持ちを抑えて一挙一動に目を離さない。
『…………!!』
「これなら!」
ドンキーコングの形の剛腕を避け、医者のキックを流し、顔面へ鞭状に繋がったピクミンをぶつけた。1番前は岩ピクミン。ヴァンパイアキラーの先の棘鉄球と同じ仕組みである。
「うおおおお!」
「ワー!」
『ッ!?』
鞭状に連なるピクミン達をそのまま振り回す。
近づかせない。近づきはしても近づかれたら終わりだと考える。
肉弾戦なんて四十を過ぎた男にさせるもんじゃない。今も体の節々で悲鳴が上がっている。ファイターの力がない今、サポートなしにこの身ひとつとピクミンいっぱいで戦わなくてはならないのだ。
「(こう……乗り物みたいなものがあったら……! もしくは巨大なチャッピーに乗ったりできたらもっと楽だったんだが……!)」
目の前にない理想が頭をよぎっても、現実は変わらない。探索ならまだしも、自身を主に攻撃してくる相手との戦いは、大乱闘を除けばほとんどしたことがない。腕力が悲鳴を上げて自然に手を離す前に速度を落としてピクミン達を下ろす。
『……!!』
「ピキー!?」
「ぐっ……!」
ドクタートルネードで近くにいたピクミンが薙ぎ払われる。そして椅子を持って迫るボディ。
体に鞭を打ってバックステップでかわすと同時に、緑色の斬撃が飛んでくる。
「ク、クラウド……」
「なにやら、大変なことが起きてるみたいだな……」
少し難しい顔をしながら言う彼は、そう言った。
キーラらとの戦いを終えて再会した彼は、少し時が経って成長していた。固かった表情も、ちょっとわかりやすくなったし、声に柔らかさが混じっている。
「すまない……少し限界だ……ちょっとだけ若者に頼むよ……」
「若者……あんた、いくつなんだ」
「もう四十にもなるからな……大乱闘も引退が近いかもしれない……」
「………………そうか」
意味を理解するのに時間を要して、なんとか短い返事を出す。
ドンキーコングのボディの剛腕を真正面から受け、真上に弾く。そして、己の大剣から素早く2本の剣を取り出した。
「なっ……!? 剣から剣が……!」
そういえば、最後の切り札でそんなことをしていた気がする。どこからかチャッピーが出てきて他のファイターを襲ったりと奇想天外なのはいつものことだから、得物が増えるのも気にしたことがなかった。
「はああっ!」
横2列に胴を切り裂き、大剣を地面に突き刺しながら、一本を投擲する。マスターハンドのいる竪穴の真横の崖に白衣を縫い留め、新たに抜いた1本とともに椅子ごと敵を打ち砕く。
そして、手の2本を放り、拘束していた残るボディを貫いた。全てのボディが溶けて消えていく。
新たに1本を抜き、木々の隙間に向ける。
「い、いえっ! 私です!」
「あっ……悪かった」
両手を挙げるのはWii Fit トレーナー。それを見てひと段落したと感じたオリマーはゆっくり座り込んだ。近くに残るピクミンが寄ってくる。
「さすが……」
「地べただが、座っておいた方がいい」
「わ……! 大丈夫ですかオリマーさん! 偏った食生活をしてるから……」
遅れて、黄色と白のピクミンが寄ってくる。
それを見てオリマーがふっ、と笑った。
「しっかり2人を呼んできてくれたんだな……本当に助かった……あと食生活については言わないでくれ……寂しいんだ懐が……」
「は、はあ……そうですか……」
「とにかく、なにがあったのか話してくれ」
「ああ、実は……」
自分もわからないことは多いが、とにかく仲間が来てくれた。
そういう安心感と共に息を整えながら、オリマーはマスターハンドの方を見た。
◯タイトル
FF5名脇役、ギルガメッシュとの戦闘曲。
FF人気投票の音楽部門で2位という人気曲で、その後のシリーズでも流れているというのに、作曲者の植松氏によると一曲削るならこれと言われた削除候補であるそう。
他の曲と浮いていて特殊な技巧も使われていないかららしいが、音楽知識のない作者には、そんな単純な曲なんすか……?って感じです。
それでも人気になるということは、手の込んだものほど受けがいいとは限らないってことですよね。ふえー、人生の奥深さを感じる……
◯ピクミン
・隊列
赤:16匹 紫:8匹 岩:9匹
・合流
黄:10匹 白:10匹
・離脱中
青:20匹 黄:10匹 羽:10匹
◯クラウド
FF7AC後なので、若干人当たりがよくなってます。
さらに合体剣での戦闘。正直、ここ書くのめっちゃ楽しい。
マテリアは持ってませんので、自分の力だけで頑張ってもらいます。