大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
まるでスローモーションだった。
1未満の倍速で永遠と映像を見ているような感覚。
「フゥ、フゥ、フゥ……!」
荒い息。鎮まれ、動けと心の中で唱え続けても、生きようとする身体は空気ばかりを求め続けている。
「ハッ!」
少しずつ、しかし確実に減っていっているピクミン達。計100匹いたはずのピクミンは、現在隊列50と少しといったところだ。
大乱闘だってそう。どれだけ犠牲なくして戦おうとしても、ただの会社員であるオリマーには限界があるのだ。
そうやって倒れていく戦友を見る中で、自覚しないままに精神的疲労も溜まっていく。
青ピクミンを顔へと投げて視界を潰し、足元へ紫ピクミンをトツゲキさせる。すっ転んだところに缶爆弾が爆破。爆発した後に何も残らなかったのを確認して、ふう、と息を吐いた。
『━━!』
「なっ……!?」
「気を抜くな!」
オリマーの背後を狙った攻撃。
直前で気付いた彼には、大剣で一刀両断されたボディが見えた。その下手人は既に別のボディの攻撃を受け流している。
「くぅ……!」
ピクミン10倍は重い紫ピクミンを掴み、少ししか浮き上がらないのに気づく。やはり、あんな少しの休息ではあまり回復できない。
今彼を支えているのは年長者のプライドである。
『何体来るんだ……!』
「これは……あの取り押さえようとしたアームを弾き飛ばしたヤツだ……!」
畳み掛けるように襲いかかる攻撃を避け、避け。
徒党を組んで蜂球のようにかたまってくるボディを吹き飛ばす。
「えいやっ」
飛ばされてMr.ゲーム&ウォッチの元に来たボディの1人が反射的に椅子によって弾き返される。
「ワフッ?」
「あ、危ねっ」
そのボディがダックハントの元へ。
気づかないままに振り向いたダックハントの眼前で、異次元の狙撃手からの射撃が飛ぶ。弾丸のように飛ぶ敵は軌道を逸れてダックハントの右側へ。
「へぶっ!?」
「あ」
「あ」
オリマーの後頭部に綺麗に激突。
まっすぐ前方向に倒れて、動かなくなった。
「これ、僕が悪いのかなぁ」
「「オリマー(さーん)!?」」
この場で1番反応が素直な2人の大声。
集中していた戦いから意識が引き戻されていく。
「えええ!? どうしよう!?」
「あ、大丈夫そうです! ピクミン達が運んで……オニヨンには入れないでくださいね!?」
ワタワタしだすソラにWii Fit トレーナー。
数を減らすとオリマーとピクミン達に接近していくボディを氷の爪が切り裂き、異空からの弾丸が撃ち抜く。
「はあ……! 邪魔はさせないからな!」
「おっ、クリスタルスノウ。贅沢にフォーム変えるじゃん」
「ンッションッショ」
オリマーを運んでいっているピクミンを庇うようにソラは立ち塞がる。吐いた息は白かった。
「はあ!」
上を取る敵を叩き斬るように、半月状に空に向けた刃が落ちる。地面が抉れる衝撃を手に感じて、気にする間も無く蹴り飛ばす。
身を翻して肩付近で顔の汗を拭った。無数の敵を相手に戦い続けていると、自分がどこにいるのかわからなくなっていく。
俯瞰して全てを見ているような、あるいはどこにも自分がいないような。世界が始まった瞬間からずっと自分は戦い続けているような突拍子もない妄想が頭をよぎる。
「(オリマーの身は安全だとしても! 戦い自体はキツくなっていく……!)」
1人、戦闘に不慣れ気味とはいえ、数が減ったのは間違いない。
クラウド自身も、そこまで遠くないうちに体力は尽きる。少なくとも、今十全には及ばない。
ミュウツーは念力に精彩を欠いて力押しが増えてきているし、ソラはよく動くから底も見えかけている。
Wii Fit トレーナーは身体ができているから、まだ十分動けるが、彼女が残っても他が潰れればジリ貧だ。Mr.ゲーム&ウォッチは……わからない。割と本気で。
次に潰れるのはダックハントか、それともソラか……どうあがいても長続きはしないだろう。
「(失敗だったか……!)」
こうなれば、黒幕を叩きにいけばよかった。
このままだと大乱闘の創設者と共倒れだ。
しかし、過去には戻れないのだから、今をなんとかしなくては。
「そうなったらそっちにボディを向かわせただけだし……えっ、ちょっと待って聞こえてるのコレ」
「まとめて、倒す」
今を乗り切らなければ、後もない。消耗を考えて使わなかった大技を切る覚悟を決めた。
「目立たないけど……明らかに白けさせてるよね? 空気読めなくてゴメンね……」
「っ……! まだまだぁ!」
さらに武器を刃のついた腕輪に、足に氷のようなスケート靴を履いたソラは氷のシャンデリアのようなものを生み出して上空から落とす。
吹き飛んだボディの後ろへ高速で移動し、斬り飛ばす。
「……っ!」
ソラの服装は深い緑からいつもの黒と赤に戻っており、キーブレードも変化していた。
白く、先にはハートが形取られた光の鍵。それを一層強く握りしめる。自分を鼓舞するように、約束を守るために。
『━━!』
「わあっ!?」
『……ッ! 下がれ!』
そして、1人抜けた穴は想像以上に大きい。それこそ援護やサポートの手が回らないほどに。彼女の守護までやっていられないほどに。
咄嗟に盾代わりに使ったボールが真っ二つに。
逃げるWii Fit トレーナーを追うボディがかなしばりによって止まる。サイコブレイクで仕留めたミュウツーは、工作員を庇いきれないと判断した。
「(そう……ですね)」
「ワウ?」「ガア?」
ダックハントを抱き上げ、ピクミンや気絶したオリマー、そして未だ動かないマスターハンドのいる洞穴へと駆け込んでいく。
「イッシッシッシッシ」
最後っ屁とばかりに両手で放り投げられた爆弾。その行き先、
「あっ! ちょっと待ってくださ……!」
「あう!?」
「ワゥッ!?」
飛距離が足りず、空気砲を持ちながら応戦していたMr.ゲーム&ウォッチとボディの間に入っていく。地面との衝突で爆発し、被害者が黒い煙を吐いた、気がした。
「もー!!」
「す、すみませんごめんなさいわざとじゃないんですきっとー!!!」
プンスコと怒りに怒って、彼らを追って彼も離脱していく。
「ちょ、ちょっと!? もう! 水よー!」
止まらない。止められない。
魔法によって生み出した水が激流となってボディ達へ襲う。そして、水を球型に操ってボディを中に閉じ込めるのはエスパーの力。
ソラの感覚での戦闘を、即興の連携へと組み立てる。
『やれっ!』
「本当に……ツキがなかったな!」
自己への皮肉も込めて。
5本の剣が水球を囲うように展開し、すれ違いざまに剣を入れ替えて攻撃していく。最後に上から一振りを。
「よし! これでやっと……」
「えっ……そんな……」
戦線から離れたWii Fit トレーナーは気付いた。
また、同じような数のボディがやってくる。目を見開くしかない、終わりのない永遠の戦い。
「……!」
「オリマーさん!」
気絶から回復したオリマー。すぐに起き上がり、戦況を見る。
何も変わっていない。戦闘が遠くない者たちも限界が近づいていた。
「(どうして……)」
「(何がどうしてこうなった!?)」
いつ終わりが来るんだ。
心が折れそうになる。
「(誰か……頼む。これをどうにか……!)」
「なるほど……消耗してもいい戦士を手当たり次第にぶつけていけばいずれは……といったところか」
天空の輝きがボディの群れを切り裂く。
戦いの時が止まったようにそれぞれがそちらを見た。
「私達も助け立ちする。あともう一踏ん張りだ」
「褒めたりいよ、こいつらのお陰でここまでこれたわ!」
「あ……!」
「ピクミーン」
1人は男、緑髪をかきわけるように装備した羽根のついた兜は剣と同じ輝きを持つ、天空の勇者ソロ。
1人は女、ピンクのボブ程度の頭は髪ではなく触手。自分達がよく知るインクリングよりも短く揃えたインクリングは3号の姿に似た服を着ていた、ヒーロー4号。
2人の足元には、オリマーがはじめに散らしておいて、助けを求めたきり、そういえば戻っていなかった青ピクミンがピョンピョン跳んで喜んでいた。
◯タイトル
ゼノブレイド 3の楽曲名。敵幹部通称メビウス達との戦闘時に流れる曲。バトルの展開によって曲の流れが変化するインタラティブミュージックが本作には使われているが、この曲はバトル相手によって複数のバリエーションがある仕様。サントラに収録されていないバリエーションを含めたら17分半あるとか……
◯約束のお守り
今話でクリスタルスノウからチェンジしたキーブレード。
入手タイミング的に、カイリからもらったお守りがキーチェーンとして変化したものだと思われる。
カイリを象徴するキーブレードだが、カイリが使うキーブレードはこれではないので注意。
◯超究武神覇斬Ver.5
FF7ACで登場の、セフィロスを倒した技。Ver.2から4はどこだろうか。
スマブラでは、既存のファイターに新規要素としてアップデートで追加された珍しい例になる。セフィロスはいつ思い出になってくれるんですかね。
◯青ピクミン
実はまだ合流していない団体がありました。
◯ソロ
DQ4の主人公。不幸な主人公といえば5主人公ばかり取り上げられるが、彼も大概不幸。
公式イラストで既にスライムピアスや天空のかぶとを装備しているおしゃれさん。3、8主人公と区別をつけるために一人称は私の硬派なタイプ。しかし、彼もベホマズン使えるんか……今章は怪我より疲労が大きいからまだいいけど……
◯4号
スプラトゥーン2ヒーローモードの主人公。
マニューバー、シェルター使いの関西弁系オセオセキャラ。なお作者は関西弁に詳しくないのでエセ仕様。逆に押されるのには弱い。
◯現在のピクミン
・隊列
赤:12匹 黄:10匹 青:8匹 紫:5匹 白:8匹 岩:5匹 羽:8匹
・合流
青:10匹
◯作者の気まぐれコメント
今年の投稿は最後になります。忙しくなって土曜日になんとか書き終えて投稿、というのが増えてきました。
来年には、完結できたらいいな、といったところ。
みなさま、よいお年をー。