大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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11話 平安のエイリアン

 

「ここは…」

 

 

見覚えがある。なんてものじゃない。

オスティア、オスティアの闘技場。リリーナの住む土地じゃないか。

やられた。こんな近くに基地があったなんて。

 

 

剣を没収され、ロイが連れてこられたのは闘技場だった。敵の密度からしてここが間違いなく敵側の拠点だ。

 

 

『こい』

 

「……」

 

 

大人しくついていく。周りの地形を観察しながら。周りを見回し、どうにか逆転の糸口を探しだす。ロイは無抵抗のままで終わる気はなかった。

 

あの駐屯地からも離れてない。逃げ帰るのも不可能ではないだろう。

ただ、不安なのは街の住民だ。男手は徴兵されてこの場にはあまりいないが、それでも女子供は残っているだろう。

 

手段を選ばない男だ。

おそらく、ここに陣をひいたのはいざという時の人質にするつもりだろう。

さらに慎重だ。最初から人質をとれば楽だが、居場所は明かしたくなかったからしなかった。

 

 

「(なんとなく、ナカツナの人柄が掴めてきた…)」

 

 

使えるかはわからない。だが、知っておいて損はない。外の状況でわかる情報はこの程度か。

 

 

中に入り、これで外へ情報を伝えるのは絶望的になった。

 

更に言えば、軍も気になる。リリーナや仲間がどうにかしてくれているとありがたいが。

インクリング、彼女は無事だろうか。カムイもリリーナも杖が使えるから怪我は治っているだろう。もっと、強く説得すればよかったのだ。

 

 

 

竜を巡る戦争が終わったロイの元に届けられた一通の手紙。それは新たな戦いの予感。

だが、そこに血は流れなかった。見慣れてしまった死はどこにもなかった。

悪いことではないのはわかってた。でも少し複雑だったのだ。小さな子供が、戦いを覚えていいのか。

どんどん殴り慣れて、斬り慣れて。

 

 

『でも、大丈夫だと思うよ』

 

『マルス…』

 

『闘争心は悪いことばかりじゃない。こうやって僕たちは斬り合いだってしてるけど、血も流れない。でもそれ以上に憎しみだって生まれないんだ』

 

 

マルスの言葉は簡単にロイの不安を溶かしていった。笑いながら大乱闘を繰り広げる様からいつまでも目を離せなかった。

 

 

 

「(それなのに)」

 

 

彼女は、この事件を終わらせた後。いつも通りに戻れるのだろうか。戦を見て消えてしまった、はじけた笑顔を取り戻せるのか。

 

知らなくてよかったんだ。戦争なんて、対岸の火事でいい。熱さを知らないならそっちの方がずっといい。

 

 

「(…どこに連れて行こうとしているんだ)」

 

 

少しぼーっとしていたかもしれない。

闘技場の内装は修練に利用していた時と変わらないように思える。中央に円形の戦場、それを見下ろすように設置された観客席。それを囲うようにできた見渡しの悪い通路。どこからでも抜け出せる配置だが、よく見ればあの透明な兵士がいる。あれを掻い潜って逃げるのは中々難しいだろう。どこかに閉じ込められればなおさらだ。牢屋、みたいな施設はなかったと思うが、増設されている可能性は否定できない。

 

 

『……背後の柱の裏。それに上だ。』

 

「…?」

 

 

一瞬、ロイには何を言っているのかわからなかった。唐突に何を言い出すのか。その正体がわかったのは、ナカツナが避けた場所に人影が落ちてきたからだ。

 

 

「がっ…!」

 

「…! シーク…!?」

 

 

落ちてきたのはシークだった。姿の見えない配下に押さえつけられて、武装を剥がされている。

 

 

「どうしてここに…」

 

「ぐぅ…!」

 

「っ!」

 

 

先程、ナカツナの言った場所。背後の柱の裏からうめき声が聞こえ、反射的に振り返る。

巨体の戦士に首根っこを掴まれ、柱に押し付けられていたスネーク。ダンボール箱が蹴り飛ばされる。

 

 

「スネーク…!」

 

「くっ… どうにか隙をついて助け出そうとしていたのに…」

 

「しくじった… 悪い、坊っちゃん…」

 

 

この世界に迷い込んだファイターは3人だけではなかったのだ。

 

おそらく、近くで自分が連行されていく姿を見ていたのだろう。そこでなんとか救おうと潜入してくれたのだ。しかし、隠密に長けた二人をいとも簡単に見破った。いつ気づいていたのか。見えない上に背後からではそれもわからない。

 

 

『徹底的に武装を剥がせ。少しの武具も見逃すな。』

 

「くっ…」

 

 

敵意を込めた目でナカツナを睨みつけた。

押さえ込まれた二人の命を奪うのは容易なことだろう。少しでも交戦の動きを見せれば、どうなるかわからない。得物がない以上、ロイにできるのは、精々が護身術程度だ。二人を救い出し、辺りの敵を追い払いながら逃げる… これも困難だった。

 

 

「やめとけ… 俺たちのミスをおまえがカバーする必要はない…!」

 

「…ッ」

 

 

そのロイの感情の変化をどう受け取ったのか、スネークはこう言った。これではもうどうしようもない。

 

 

『スネーク… こいつは調べてなかったな。シーク… いや、ゼルダか。こっちはわかってたから調べてある』

 

「「…!」」

 

 

シークの名前を言い当てた。ナカツナの小声を、近くにいたシークとロイは聞き逃さなかった。知らなければ、シークの本名がゼルダであることはわからないはず。近くに同名の少女がいるなら尚更だ。思い当たることもないだろう。

 

 

「(敵の仲間に、あの世界に詳しい人物がいるのか…!)」

 

 

この結論に帰結した。

それがナカツナ本人の可能性もあるが、それならもっと遠くに陣を組むはずだ。ここは見つかりやすいし、何よりフェレに近い。

そして、ロイはもう一つ思い当たった。

自分とカムイとピチューは調べた。

インクリングとスネークは調べられなかった。

シークは調べた方だろう。わざわざゼルダだとわかってたからと言った上で。

 

 

「(本名か…!?)」

 

 

インクリングの本名を聞いたことがない。

スネークの本名はそこまで親しくもなければ知らないだろう。ファイターとしての名前はスネークで苗字までは知られていないのだから。

シークはゼルダの変装した姿なのだから、本名はゼルダだ。ただ、それは昔から大乱闘の世界を知っていれば、簡単に想像できる領域だ。

 

まとめると、ナカツナの仲間には大乱闘の世界に詳しいもの、本名を知ることで調べることができるものがいるということだ。同一人物か3人組なのかもっといるのか不明だが。

 

 

『同じ場所に入れておく。連れてこい』

 

 

ロイには武器を外しただけだというのに、2人は両手を後ろに回されている。体術ができるのだから、警戒するのは必然のことではあるが、力に加減がないところから、敵意が散り積もっていく。

 

 

散々歩いて着いたところは、円形の戦場… コロシアムのど真ん中だった。3人を電撃で囲み、檻を即席でつくる。

 

 

『大人しくしていろ。ここから出られまい』

 

「…ほんっと頭が切れるね…!!」

 

 

シークが皮肉混じりに言う。3人ともここに閉じ込めておく理由はわかっていた。コロシアムの真ん中に死角はない。周りに兵士を配置しておけば、隙をつくこともできないだろう。

それが本人もわかっているのか、涼しげな様子で立ち去っていく。

 

 

「飛び越えられそうな高さではないか… あの敵… ナカツナが兵士を呼び戻す前になんとかしないと…」

 

「兵士? 戦争でもしてたのか?」

 

「うん。あの姿が見えない兵士が襲ってきて… それで僕が未熟だったからこうして捕まった。」

 

「? 姿が見えない? どういうことだい?」

 

 

疑問にロイの方がハテナマークを浮かべる。

見にくいとはいえ、見落とすはずがない。実際物理的に押さえ込まれているのだから。

 

 

「さっき透明な兵士に押さえられてただろう? それだよ」

 

「透明だぁ?」

 

「何を言ってるんだ?」

 

「影の世界の戦士だろう?」

「普通に武装した人間じゃねえか」

 

「「えっ?」」

 

 

全く違う二人の発言にロイはようやく気づいた。

 

姿の見えない兵士、透魔兵、刀だけ見えるナカツナという敵、影の世界の戦士、普通に武装した人間…

 

 

「そうか…! ようやくわかった! 奴らの正体が! 姿が見えないカラクリが!」

 





○タイトル
東方星蓮船のエクストラステージのボス、封獣ぬえのテーマ曲。作者曰く、古風で和風な恐怖と哀愁を漂わせた曲とのこと。私音楽に関してはトーシロもいいところなので長く語れません。
どうしてこれがタイトルなのかって? これが一番のヒントだからです。具体的に言えばKH3Dのリクの服レベルの。


○シビア世界出身者の大乱闘への感情
概ね肯定的。というか、FE組の平和主義者って戦いそのものというよりは人が死ぬのが嫌だってことが多いんですよね。スネークもそんな感じ。本作品や前作のプリンみたいに傷つけ合うのが嫌だということの方が珍しいかも。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「新たな伝承英雄召喚イベントが発表されたよ。一番新しい総選挙の四人や飛空城にて最強のユーリスなど他のピックアップも錚々たる面子だ」
「ようやく僕の時代が…」
「カムイ… そのことなんだけど…」
「新伝承英雄はフォドラを導く者べレス。つまりまた先送りになりました…」

「…………………………伝承英雄化経験のある人は残ろうか」

「………………………………………………………………………………世界が僕をはぶりに来てる!! 後輩二人ともに先越されるなんて思うわけないだろ!! 女の僕に比翼英雄取られた傷がようやく癒えてきたところなのに!! どこまで僕の存在を消せば気が済むんだ!!! どれだけ差をつければ気が済むんだ!!」
「ソシャゲなら後からの実装の方が強いし…」
「父親のコスプレしてきた人は黙っててよ!! 二度とスマブラ参戦できない呪いかけるよ!!」
「ごめん、それだけは…」
「インフレの問題じゃないんだって!!! 畜生めぇー!! そろそろ来ると思ってた! 主人公は大体伝承英雄されてるからさ!! 伝承ベレトだって古い方じゃないからさ!! 安住の地スマブラでも勝ち上がり乱闘の一枚絵を取られてる始末! こんなことなら最初からマイユニじゃなくて女性単独主人公でいいだろ!! 外伝だの聖魔だの気にせずにさあ!!!」

「………………………今回は言い過ぎた。恋愛シュミレーションと女性単独主人公は両立できないよね。べレスに人気があるのは確かだし、あのおっぱいぷる〜んぷる〜ん!!に惹かれる人は少なくないだろうし」
「実は僕だって女ギムレー除いたら伝承英雄になってないんだよ……」(扉の外側)
「(何気に伝承英雄女カムイをなかったことにしてますね……)」
「わかってはいるんだよ。商売なんだから人気キャラを優先するのは当然だって」
「(誰かフォローをお願い…)」
「(もう手遅れだろう…)」
「(そろそろ女の自分を祝いに行ってもいいんだろうか)」
「(肉食うのに忙しい)」
「僕も露出が多かったら人気出たのかな…」
「(人気を露出のせいにしないでくれ…)」
「べレス、伝承英雄おめでとう。











二度とカラチェンできない呪いかけたから」


○年末年始のバーゲンセール
毎週土曜日である、1/1、1/8だけでなく、水曜日の12/29と1/5も投稿します! 本当は一日一話投稿できればよかったけどそこまでの余裕はなかった。後上述の小話書くのに疲れた

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