大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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121話 灯火の星

 

パッチワークデュオンの体は、前にも後ろにも上体となる箇所がついている。

 

わかりやすく体験するならば、2人の人間が背中合わせで腰あたりを紐か何かで縛ってくっつけるだろうか。

 

その状態でそれぞれが前へ行こうと上体を倒せば当然進まない。

どころか、前のめりになって倒れる。

 

 

「ああっ! もうなんで私気づかなかったんですかもう!」

 

 

Wii Fit トレーナーが本気で悔しそうな表情を見せる。相手は機械で専門分野とは言い難いのだが、それでも構造上の欠点に気づかなかったことが悔しかったのだ。

 

 

『……! 借りるぞ、いけ!』

 

「フシャー」

 

 

ねんりきで動かした白ピクミン。僅かに残ったそれらがミュウツーの手引きによってパッチワークデュオンの歩行部である車輪まで進み、吐き出した毒がホイールを溶かしていく。

 

 

「逆に怖っ!? あんなちっこいのになんやあの威力!?」

 

「(毒というよりは酸だな……)」

 

 

膝の高さもないほどの小ささなのにこの威力。

片方のホイールが崩れて斜めのままになった相手は、もはや満足に動けない。

 

 

「イッシッシッシッシ」

 

『想定以上に……ならば、毒の雨でも降らせよう!』

 

「すまない、ピクミンは私の指揮下……まあいいか……」

 

 

また白ピクミンを浮かせると、辺りに構わず毒を吐き続ける。アームで防ごうと動いてはいるものの、触るだけで効果がある毒をその方法では防げない。金属っぽい体がまだらに薄くなって汚れていく。

 

 

「ひえ〜……」

 

「ヒーローシェルターが穴だらけや……」

 

 

ダックハントを抑えながら、エアロガで弾き飛ばしたソラ、穴が開いてもヒーローシェルターで防いだ4号。

 

 

「せ、責任者でてきい! ウチは完全にキレたで!!」

 

「わー! 遂にわかりやすいダメージが!」

 

 

怒りのままに蹴っ飛ばした4号の足、迎撃しようと向けられた銃口を90°真上に曲げてしまった。

 

 

「さっきまできかなかったのにー!」

 

「さっきの酸で脆くなっていたようだ!」

 

「さんじゃなくてどくー」

 

 

無視して横一閃に振られた刃は、ハンマーの頭部を完璧に粉砕していた。切断よりも破壊の面が強くなり、密かに威勢もよくなっていく。

 

 

「こっちは丸裸! これでどうだ!」

 

 

丸腰になったところでソラのフィニッシュ。2対のキーブレードから放たれた黒と白の光は、相手を焼き焦がしていく。しかし、トドメには遠い。いつものキングダムチェーンを握りながら首を傾げる。

 

 

「あれ?」

 

「さっき腕部で毒を防いでいたから、多少は耐えることができたか……だが、さっきよりはダメージもあるはずだ!」

 

 

腕部で避けた劣化は、決して無意味ではない。

アームほど胴体部分は毒を受けていなかったために、まだ硬さは保っていた。

 

それも、『効いていない』のままであれば、相手が勝る理由になっただろうに。

 

 

「片方が落ち、圧倒的な防御力も削れた……機動力も失ったのならば、もう分かれる理由もない。ゆくぞ」

 

「んー……まあいいけど。たたかうのもたのしいし」」

 

 

射撃サイドへと回り込む他ファイター。得物の先が追いかけようとしても、体は回らない。しかし、動かせない訳ではない。

 

 

「……ッ! まだ飛び上がって……!」

 

 

4つのアームを地面につけて飛び上がる。

ホイールをダメにされれば回転しなくなり、いわゆる歩行ができなくなる。しかし、ジャンプは別だ。

 

飛び跳ねたパッチワークデュオンは、空中でその身を捻らせて、まだ無事な剣サイドをこちらに見せてWii Fit トレーナーとダックハントにのしかかる。

 

 

「うっ……!」

 

「トレさんが!? そこを退けー!」

 

 

奴の背後には、動くことを忘れたマスターハンド。あと崩れた元岩肌現岩と小石。

滑り込んで今度はホイールを完全に壊そうとしたが、その前に剣が振り下ろされてガードしなければならない。

 

 

「どうしたものか……あの位置では回り込めない……っと、」

 

 

剣の横側でソラが引っ叩かれた。射撃によって視界があると思わしき顔部にダックハントの爆弾が届く。

ボウガンの連射を辺りに撃ち続け、少し離れたソロにも届く。天空の盾で防いだはずが、大きくのけ反った。伝説と呼ばれる盾には傷ひとつなかったが、威力が殺しきれてない。

 

 

「いってー……」

 

「守りもろうなっても普通に強いやん……」

 

「ワウ……」

 

 

四つの武器の内、半分が無力化され機動力と防御力が削がれてもそれでもまだ強敵なのだ。

 

 

「さっきと同じように、腕のところを壊せませんか!?」

 

「それが丸いか……囮で誘導して他の誰かが……というのがわかりやすいか」

 

「なら、その囮、私がやります。反射神経は自信があります!」

 

「……だが」

 

「どのみち私にはアームを壊したりできないので」

 

 

理屈はわかるとはいえ、積極的に囮へ行かせるのは憚られる。しかし、それ以外の説得理由がなかった。まだ、そういう青さはクラウドに残っていた。

 

 

「ほら、こっちです!」

 

 

かなりの距離まで近づいたWii Fit トレーナーに狙いを定め、刺突の剣を貫く。くるりと身を翻してかわし、移動は最低限に。そこへ身を引いた左側からボウガンの矢が射られる。

 

 

「しまっ……!」

 

 

まっすぐ胸部に射られた一矢を阻んだのは、プラスチックの箱のようなもの。その先から、どんどんミサイルのようなものが飛び出す。

 

 

「おうりゃ! こちとら射撃なんていっつもみとんねん! ちょっと早いからっていい気なんなよ!」

 

「4号さん!」

 

「火力なし子ちゃんはうちも同じや。女だって体張るんよ! ド派手な箇所は男にまかせ!」

 

 

4号もまた気を引く役割に入っていく。彼女は美味しいところを他の者たちにまかせた。

 

 

「バウッ、ワン!」

 

「おとこ」

 

「うん! ……で、どうすればいいの?」

 

「おとこ……」

 

『あの腕をもぐなり焼くなり好きにしろ、ということ……らしい』

 

「おとこ……?」

 

 

ちょっと性別の概念が壊れてきているソラを置いてきぼりにし、マルチミサイルの勢いにのけ反るしかないパッチワークデュオンへ攻勢にでた。

 

 

「ウウウッ!!」

 

 

さらにダックハントのクレーが激突し、短くない間、視界が不明瞭に。

 

 

「ほらほら、こっちや!」

 

「いーえ、こっちです!」

 

 

音を頼りにした敵が振り下ろす先には誰もいない。マニューバーによるスライドと、身体能力があれば、当たらずに誘い込める。

 

 

「よし……! ここです、ソロさん!」

 

「使えなくすれば、最低限でいい。これで……」

 

 

そうして、天空の剣は煌めく。

視界の潰れた隙を見てボウガンの弦を切り落としていた。純粋な糸でできたような拙い造りではないが、使い手も得物も優秀なれば、弱いはずもない。

 

 

「わっ!」

 

 

最後の武器となったからかは不明だか、まるで激昂したように凄まじい速度で斬り続ける相手。しかし、Wii Fit トレーナーには通用しない。

 

 

「遅くはないですが……ボウガンよりはよっぽど遅い!」

 

 

横に後ろに跳んでかわし続ける。回避だけに専念すればどうにもならない。壁を背にしているパッチワークデュオンは、追えば無力化した後方が露呈する。

 

 

「これでいい……!」

 

「はいっ!」

 

 

地面にめり込むほどに振り下ろした一撃を、他の歴戦の猛者は見逃さない。合体剣で抑え込み、なにこれーと、Mr.ゲーム&ウォッチが加勢する。

 

 

「よし、ここだ!」

 

 

投げられ、はりつく黄ピクミン。振り払うことができない。ミュウツーの強大なサイコキネシスによって抑え込まれているからだ。

 

 

『ハッ──!』

 

 

そこへ念の力でできたスプーンが形を変えて肩部分へまきつく。そしてギュッと絞るように動き、肩から剣をもぎ取っていった。

 

 

「はりついているのは全て黄ピクミンだ、全力でやれ──!」

 

「よーしっ!」

 

「ああ」

 

 

元気よく、そして短く、意思を伝える。

 

 

「いかずちよッ!」

「ギガデイン!!」

 

 

巨大な、強大な雷が落ちる。それは、空気を揺らし、大地を震わせ、そして黄ピクミンをとても元気にさせた。

 

 

「オーーーーーーンッ!!」

 

「うわっ!」

 

 

まったく目に優しくない光があたりを照らす。

全員がしばらく目を開けられなくて、ようやく開いた時に目にしたのは、装甲が所々剥がれ、影蟲が散っていく崩れたパッチワークデュオンと、未だ元気に発光を続ける黄ピクミンの姿だった。

 

 

「ま、まさかここまでになるとは……ゲキカラスプレーかなにかか?」

 

「え、なんかやらかしたかな俺たち?」

 

 

もしかしてあまりよくないことをしてしまったのかと急に不安になっていく。

 

 

─その状況で、反応できたのは奇跡と言える。

 

 

「うわっ!?」

 

『…………』

 

 

まだ登場するボディ達、振るう細身のファルシオンをなんとかキングダムチェーンで受け止める。

 

 

「うわっしつこっ!? まだくるんか!?」

 

『さっきの光で呼び寄せたか……!』

 

「クゥゥー……」

 

 

勝利の余韻に浸る間もなく、結局は戦うことになる。疲労の多い肉体に鞭を打って奮い立つファイター達。

 

 

 

──しかし、敵を引き寄せたこの光。

 

──それは各地に散っていたスマッシュブラザーズを呼ぶ灯火の光にもなったのだ。

 





◯タイトル
みなさまご存知、スマブラSPのアドベンチャーモード。
初報のワクワク感は今でも覚えてます。


◯ピクミン
ショートムービーの毒を吐いて金属を溶かす白ピクミンやイルミネーションになる黄ピクミンなど、見てても面白いし参考になります。
ただちょっと持ち上げ過ぎた感はある。


◯マルチミサイル
スプラトゥーン2からのスペシャル。
談合とかいいイメージはないけど、ロックオンすることで擬似的なポイントセンサーになったりと汎用性抜群。
ここにきてようやく、インクリング系統にスペシャルを使わせるという戦法を思いついた。


◯今章のまとめ
これで個々の章は終了となり、ここから完結に向かうことになります。
さあ、最終章はどうなるのか。ところで、ラスボスになれそうなのまだいなくない……?

今章としては、はなから戦闘続きの章になるのは予想がついてました。
まあ、結構大変でした。ストーリー進めるのとは違って、戦闘は大まかな流れをつくったら後は発想の勝負ですから……
そうなると、1番アドリブ感が大きい章かもしれないです。
とはいえ、合体剣での戦闘、ソラのキーブレード変形、果てはポケスペ 版ミュウツーのスプーンを武器にするまで色々やっちゃいましたね。しかし、その分非戦闘員の出番が薄味で……1人で十分だった気もしますが、それは他とのバランスもありますから難しいところ。
ただ、楽しくはありました。

では、最終章。実際にこんなセリフがあるかは知りませんが、衝動的に予告編もどき、つくってみました。




──最終章。

「お前達の仲間と同じ、私たちは2人で1人。1人で2人。そして私は、慰めだ」

「あの方の誇りを……穢せるものか……!」

「またねって……そう言って……言われて……それが真実になったのははじめてだった」

「あなたがいるなら……もっとはやく会えたなら……この道に行く必要はなかったかもしれないのに……」

「ああ──ああ、そうか、我々は我々というだけで何でもないのだな」

あーあ、やらかしやがった。


──最終章、来週始動予定。


でも、そういうの全部、楽しかったよね。



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