大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
122話 まえの セーブファイルにもどろうとしてもムダだよ。
ハロー!
フラウィだよ。おはなのフラウィさ!
嘘だよ。
ルネだよ。あのときにんげんだった ルネだよ。
ちょっと二つ名みたいだけど、実は事実。あのときがいつだって? さあ、いつの話なんだろうね。
それで今は……伝説の木の下で… って訳でもないね。
伝説でもないし、なんなら僕がいるのはもっと上… いや、世界の根本だ。木はまあ、ボディを捨てたところだよ。今頃他のボディと共に誰か襲ってるんじゃないかな? えっ、どうでもいい? それもそうだね。
ここまで頑張ったんだ。あとは単純に楽しむだけさ。そもそも観測者とでも呼ぶべき僕がここまで干渉するなんて初めてだったし。何回もやり直しちゃった。
どういうことか、だって? そんな難しいことはしてないよ。
親におねだりして買ってもらった?
何ヶ月も前からおこずかいを貯めた?
がんばってバイトして手にいれた?
タイトル画面を見たときの気持ち、憶えてる?
攻略法をおしえてくれたアイツは仲良しだった?
でも、そういうの全部、楽しかったね。
忘れている人もいるかもしれないけど、僕は過去の自分に記憶を明け渡す力がある。
ああ、別にその力でなんでもかんでも好き勝手にやってた訳じゃないんだ。今回が初めて。
だって僕が干渉する前のこの物語はワンサイドゲームでどこにでもケチつけられるほどにつまらなかったからね。
マスターハンドが力を託したのはマリオになっちゃうし、そもそもこの事件に関われない人がいっぱい出てくる。
こんな物語、君達の…盟友の元に届かないから僕が腰を上げたのさ。没った失敗作を無理やり成功させたってこと。同じ目線を持っていても君達が干渉できるのはそういう物語だけだ。でも、僕なら作り変えられる。
干渉するのはこれで終了。
僕も観測者として楽しもうか。
スマッシュブラザーズはどんな結末を辿るのかな?
少しの間、ほんのちょっと気絶していたようだ。
瞼にしっかり力を入れて、なんとか目を覚ます。
「ここは……」
「ううっ……」
「あっ……ルキナちゃん!」
「ここは……あの世界に戻ってきたのですか?」
同じように気絶していた女性の声で、思い出してきた。ケンとルキナは、大乱闘のステージとしていた場所から落下してしまったのだ。
あたりは何か、朽ち果てた遺跡のような建造物。スマッシュブラザーズが拠点のように扱うあの世界に間違いない。
そして、記憶が確かならばもう1人。
「う……ん……私は……」
「──ッ!」
「ちょっとルキナちゃん!?」
シャキンとほとんど反射的に、仲間と同じ姿をした敵の首へ、剣を向ける。
まだ覚醒しきらないまま、座っている少女は少しぼんやりしていたが、その音で置かれている状況をはっきりと理解した。
「……はっ、見たらダメ、でしたよね」
「あいや、そうじゃなくて……彼女にも色々あったみたいでさ」
「…………」
その敵、彼女はキク。
目覚めてから、剣を向けられているというのに、それだけを理解したまま視線を横に滑らせた。ケンを視界に捉えたまま、動かない。
「……ねえ」
「ん?」
「どうして、あんたまで落ちてきたの、見られたらまずいってわかってたんでしょ?」
信じられない、と呆然とした表情でボソボソと話すキクに戦意はかけらも見当たらなかった。
「どうしてって言われてもなあ……笑ってて欲しいからな! 君も君なりの事情があってこんなことをしてたんだろうけど、そういうの関係なしに笑ってる顔が見たかったんだ! なんとかしたかったんだよ!」
「……こんな時にナンパですか」
あ、いやそうじゃなくてー! と大声でルキナに弁明する。彼女の方へ振り向いた彼だから気づかなかった。ルキナは気づいた。色んな意味でギョッとした。
「え、あの、その、みた、かった? わた、わたしの、えがおを……? え、え、え、え」
エイトに呪いが効かないと気づいた時など比ではないほど彼女の顔は紅潮していた。うっすら涙目になって、何かの汗が吹き出している。
「ま、まさかケンさん……!」
「いやいやいやいや! 他意はない、他意はない!」
ルキナは女性だからか気づいた。
ケンも既婚者だからか気づけた。
──完全にオトしてしまった─!
「(ど、どうするんですか!? これ!)」
「(そんなこと言われてもォ!)」
─ザクっ、ザクっ
「(な、ならこれを機に色々聞いてきてください!)」
「(ヤだよ! そんな恋心をダシにするようなこと!)」
────「何をしているの?」
「あっ……」
「ルフレさん……?」
聞き慣れた声色。
所々戦いのせいか服が乱れている以外、通常と同じなのに、穏やかな微笑みから何故か薄ら寒いものを感じ取った。
ルフレはルキナではなく、キクの方へ向かって話を続けた。
「君の役目は反乱分子の捕縛と監視、それに見極めだっただろう? どうしてここにいるんだい?」
「あんたがどうしてそれを……」
「ほら、僕は、
「あっ、ダブル……」
「えっ? ダブルって一体……」
敵であるはずの2人の会話から、まったく知らない人名が登場する。
だからわかった。この男は、ルフレではない。
「……貴方は誰ですか」
「あっ、ルキナ。無事でよかった……イーリスで別れて以来だったから心配……」
「あの人の声で呼ぶな! 薄気味悪い!」
「……ルキナ?」
小首を傾げる。まるで、本気で意味がわかっていない様子だった。どうして敵意を向けられているのか、理解できていないと。
2人を見比べて、視線を右往左往させるケンはどうすればいいかわからずに口を開けない。ケンにとってはルフレだが、絆の深いルキナの目が見抜く事実が嘘とも言えず。
「ダブルは誰かになる力を持ってるわ! でも、今叩いたらそのルフレって人、本人にまでダメージが及ぶ!」
「……! なぜあなたが……!」
「キク……? 君はどっちの味方なんだい?」
「わ……私は……」
少し言い淀んで、ゆっくりと、はっきりと言った。ケンを見て。
「あんたがいるなら……もっとはやく会えたなら……この道に行く必要はなかったかもしれないのに……」
「遅いかもしれないけど……私は! この人の力になりたいっ!!」
片手の平から飛び出したグラップリングビームがダブルを縛り上げる。それはキクが取り込んだダークサムスの力であった。
「…………さっき私に使った呪いは!」
「ル、ルキナちゃん!?」
「今使うと、ルフレって人の魂引っこ抜いちゃうの!」
「敵……」
ボソボソとルフレの姿をしたダブルが呟く。
こうやって拘束するのが最適解。それは彼本人と自覚している。
「貴方は、ルフレさんじゃない。どれだけ姿を取り繕っても能力や記憶を真似ても、体の状態が同じでも! 貴方自身の意思がそこにある以上、
「……ッ! ……!」
絶句したような顔で、そして黙り込んだ。
表情が見えず、俯いた体勢で、いつの間にかルフレ自身の姿からルフレのボディの姿に戻っていた。
「ああ──ああ、そうか、我々は我々というだけで何でもないのだな」
もう、誰にもなれない。
ボディの姿を永遠のものとしようが、本来のファイターを抹殺しようが。
誰かにはなれない。
主人公にも、敵役にも、立役にも、黒幕にも、代役にも、脇役にもなれない。
ヒロインにも、ライバルにも、エキストラにも、アンサンブルにも、ダブルキャストにも、ナレーションにも──────
もとより、自分は何でもないのに!!!
「……ッ!」
今までにない力でビームが引っ張られる。
発射したままのビームはキクと繋がったままだ。
「きゃっ……! あぅっ!?」
「なっ……仲間じゃなかったのかよ!」
空中に投げ出され、引き寄せられたキクの腹部に鋭い拳が突き刺さる。一切の躊躇もない打撃。
キクから裏切ったとはいえ、仲間であったはずなのに慈悲も躊躇もない攻撃にケンが堪忍袋の緒が切れた。
「……我々は。誰でもない。何にでもない。どんな舞台でも立つことを許されないならば、全ての
「キクちゃん!!」
ぐったりしたキクを俵のように抱え、冷たい冷たい目で全てを眺めるダブル。
だが、先程キクが言っていたことを考えれば、今の状態でも、迂闊に攻撃はできない。
忌々しげに睨みつけるしかない自分に腹が立つ。
「あの創造神よりはこちらの方が聞き分けがいいだろうな。あなただけは生かさなければ」
「どうするつもりですか……!」
「そうだな……
唐突に自由な左腕を振る。
周囲に広がる電撃。また変化した。ファルコじゃない。ファルコのボディ。
「ナカツナの……!」
「
「……待てっ……!」
ふっと、2人の姿が見えづらくなっていく。痺れたままの足をなんとか動かして追うが、見失ってしまった。
「キクちゃーん!!」
「どうでもいい。どうでもいい。必要ない。だから、この力に求めるのは破滅の力……この世界を滅ぼせるほどの力を……!」
◯章タイトル
Assembleはいわゆる集合、集まるとかいう意味。
◯ーベル好きな方なら聞いたことあるかと。
◯タイトル
UndertailのNルート、最終盤のフラウィのセリフ。
今まで普通に不殺ルートを進んでいたら、確信的なメタ発言はここがはじめてになる記憶。(コマンドぶっ壊したりはあるけど)
◯あのときがんばった 〇〇
ポケモンの二つ名。
いわゆる努力値MAXの子向けリボン。
◯****
「どんな世界がまっているのだろうか」
◯10章終盤のあらすじ
5章にて、ファイター達が彷徨っていたのはマスターハンドの力を奪い取ったキクの作り出した世界だった。
様々なステージで潜伏していたキクを、フォックス達は見つけて戦闘となる。しかしその果てにキクと、彼女の行動に事情を察したケン、そしてキクの力に巻き込まれたルキナの3人はステージの奈落へと落ちていってしまった。