大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
ここは、どこだろう……
きっと、わからせる気がないんだわ。もちろん、逃す気も。
ダブルの目的は私が持つ、この世界を作り変えてしまえるほどの力……
真っ暗な場所で、どうにか宙吊りになって自由を奪われているのだけは理解できる。
もしかしたら、大乱闘の世界のどこでもない、ダブルが創った場所かもしれない。
私が自由だったらこんな場所、簡単に消せる。
私の力を使うために私は必要だし、そうでなくても私が敵に回ると厄介だから……放す気はないんだわ。
畳とか、吹いたら倒れるような家が規則正しく並ぶ都。そこへ足を運べる程度の郊外で、いつの間にか私はそこにいた。
自分の体がどうなってるかなんて気づかなかったけど。仮に人と同じでも目を背けられただろう。
毒が蔓延しているように私を見る人がバタバタと倒れていく。陰陽師? とか言う人が目を閉じたまま長くアレコレ言ってってどこにも私はいないんだって……
……ずっと、見られることもできなくて、だから友人どころか知人すらできなくて。
ああやって恐れず私を見てくれる人ははじめてだった。
その瞬間思ったの。私の今までの苦しみはこの人に会うための試練だったんじゃないかって。
私の人生はこの人と出会うために存在していたんじゃ、って。
仲良くなりたいを飛び越した唯一になりたい。
隣にいたい。
ケン、だっけ。
…………でも、言えないよ……
あの人にとって私は仲間を苦しめた敵なんだ。
どうしてもっと早く会えなかったの……
長くない付き合いの中で今まで見たことがないほどの冷めた目。私と同じ、違う肉体を求めた現世の幻惑。
あんたは一体どうして、その体を求めていたの。
「我々は……この力に願う」
「この世界も、この世界に連なる全ての世界も、関係のない世界も……全ての世界を等しく虚無へ導く破滅を。我々を拒む舞台を全て壊す力を」
「我々を求めぬ世界に──存在する価値などないのだから」
「もはや本物には興味がない。創造主……貴様の器と作品の崩壊を、1人劇の序曲にしてやる。」
「そして、我々を望む世界を、創ってやる。」
あんたは……誰かの唯一に、なりたかったんじゃないの?
誰かの皮を纏ったところで、そこにいるのはきっと、あんたじゃないだろうに。
言葉にできないうめき声を上げて、眉間に皺をつくって瞼を開く。自分はどうしたというのだろう。あそこに遅れてきたルキナから外の事情を聞いてそれから……?
「ここは……」
ボケたピントを合わせて、立ち上がった。慣れぬ人工的な光の隙間、貼り付けたような近い星空。
「あいったったった……ここ前のステージだよね?」
「うん、使われなくなった……そうか、こんなところにいたら見つけられない訳だ」
キクがマスターハンドから奪った力を最大限に発揮して立ちはだかったアナザーマスター。
その討伐が果たされたことによって、彼らは大乱闘が有するステージへ戻ることができた。
キクの支配が緩まり、偽りの闇の世界は崩壊し、魂だけの存在だった彼らは気づかぬままに元の肉体へと戻っていた。
オービタルゲート周域。
今は使われてないとはいえ、見慣れたはずのステージへ戻ることができた現状。戦うことのできない一般の人物らも安堵の息をこぼす。
「おーい!!」
「フォックスか!」
遠くから旧友の声。
ミサイルの上に乗ってゲートまで数人が飛んできた。フォックスとリンク、そして見慣れぬインクリングに似た存在。
「一瞬ルキナが元に戻ってたみたいに見えたからもしかしたらって思ったぞ」
「手間をかけたな。助かった」
「ゼルダ様……申し訳ありません。御身に迫った危機を振り払うどころかオレは……!」
「いいのです。こうして貴方も私も、無事に戻ってきたではありませんか。また、私のために戦ってくれた、それだけで私は嬉しいです」
「硬いなぁ……あ、そういえばさ、姫さんも来てるって軽く聞いたんだけど、この場にいないだけ?」
「エット、アンマリ広クナイノデトリアエズ3人デッテコトニナッテ……」
「そうそうそのことなんだが!」
控えめに話し出した8号の前に出たフォックス。事態は穏やかに進んでいないのだ。ルキナやケンを追わずにマルス達の元へ向かったのは、何も合流だけを目的にしたわけではないのだ。
要所で他の2人が補足しながら簡潔に説明した。
今この世界でボディ達が蔓延っている現状。敵対するボディを仮の肉体とする彼女らとその目的。そして、マスターハンドとその力の行先のことを。
「だから、ジョーカーを見つけてマスターハンドのところに連れて行けばなんとかなるんじゃないかって!」
「ケンとルキナの2人も見つけなきゃ。とりあえず、8号とエイトが進んだ道を逆算すれば、このステージばっかの場所を抜けられるぞ!」
「で、でも、ここの皆さんはどうしましょう……」
しずえの心配は自分達ではない。
戦う力も意思も存在しない巻き込まれた一般人。連れて行動するには数が多すぎる。かといって無策で放っておくこともできない。
そこでスティーブが手を挙げた。
あの偽りの世界でもやっていた似たようなこと。
「そうか! 砦の補強と同じように防壁をつくるのか……!」
「ソレデモ少シ不安デスガ……」
「あ、じゃあ戦える人を残しておくのはどうかな? 守れる人がいるってだけで違うと思うんだけど」
「まあ、間違ってはないけど……よもやピットからそういう案が出てくるとは……」
「ボク一応パルテナ軍親衛隊長ォ!」
実はマルスらと同じく率いる立場である。
周りの戦闘力が期待できないだけで。
あとは誰を残すかだが。
「君は……どうする?」
「プリ……」
主を立てると引いた身が、会話から離れた場所のプリンを見つけた。
この生物、表面上は主に似ているように見えるが、根っこは違う。勢いや雰囲気に押されなければ戦う覚悟も持てない存在。
「残りたい、と言うならばマルス様は拒否はしないさ。戦闘が起こらないと断言はできないが、着いて行けば確実にある」
「プリ、」
そこは、彼女も理解していた。頭が回らない訳ではないのだ。
折り合いは、"いつか"つけなければならないだろう。スマッシュブラザーズである限り。戦乱の中に、戦わなければ平和はない。敵も味方も自分も、傷つかなければ望む未来などありはしないのだ。
ただ、自分が不可欠とは言えないほど味方が頼れる人間だったからその"いつか"が後回しになっていっただけ。
自分が見ないところで、忌避する痛さがあっただけ。妥協しなければならないのだ。傷つくことを。
「プリリ……!」
「ふっ、」
提案は拒否した。
もしかしたら、また勢いだけで、明日には元の性根に戻ってしまうかもしれないけど、それでも今は、妥協した。
「プリン、君は……」
「ププリッ!」
「わかったよ」
スマッシュブラザーズは全員がいく。
ジョーカーの援護ならば、共闘も視野に入れた方がいい。
クッパ七人衆と、前衛、回復をこなすネネとキノをこの場に残すことに。
リンクのみが、ゼルダを連れていくことに難色を示したが、戦闘の危険があるのはどちらも一緒ならば近くにいた方がいいと言ったのと、ファイターではないもう1人のリンクが説得に入ったことでなんとか合意に至った。
スティーブを主導に、リンクから譲り受けたシーカーストーンのアイスメーカーやマグネキャッチがアシストをする。
── 我々を求めぬ世界に──存在する価値などないのだから
── 自分が見ないところで、忌避する痛さがあっただけ。妥協しなければならないのだ。傷つくことを。
戦闘の意志。
壊すために戦うこと、守るために戦うこと。
近くない同種の思いは真逆の意思によってもたらされた。
◯タイトル
FE覚醒の最終盤、ラスボス戦のBGM。
最高に盛り上がるし、ボーカルかっこいいし……
ただ雑魚が無限に出てくる都合上、速攻でラスボス叩いてクリアが手っ取り早いから曲聞けないんですよね……
ちなみに読み方はタメでもイでもいいらしい。スマブラにも入ってるよ!
◯リンクとゼルダ
名前被りなんて今更だろーっと思いつつもいざ同じ場面に出すとややこしいし書きづらい。
◯一応親衛隊長
一応イカロスという一般兵はいるものの、雑魚すぎて戦闘はピットに任せきりな様子。ニンジン捕獲作戦みたいな戦闘じゃなければ駆り出されている。……設定だけは。
ゲーム本編だとマッチョが嫌いになります。戦闘力なしは嘘だろお前。
◯5章のあらすじ
ナイトの一族であるリンクと封印の力を使うゼルダ。
意識を失う前に1人の少女の姿を見た2人は気がつくと、過去リンクが冒険をした闇の世界にそっくりな場所にいた。
他にも同じ境遇の人間が多くおり、そこにはファイターだけではなく大乱闘を見世物としている一般の人間も存在していた。
彼らは闇の世界に蔓延るボディに抵抗し、戦いながら脱出方法を探していたのだ。しかし、この世界の真実を知ってしまったディディーコングを追ってキクという非実体の攻撃を取り込む少女と相対する。
それを退け、同じように魂を抜かれて闇の世界に堕ちてきたルキナと合流する。この世界はキクがつくりだした偽物の世界、そして自分達はキクの姿を見た結果魂を抜かれていたことを知ってしまった。
外の世界でフォックス達とキクとの対戦の結果、ルキナ、ケンと逸れたもののキクが一時気絶したことにより、魂はあるべき肉体に戻っていった。
◯作者の気まぐれコメント
エクカスがぁぁぁぁぁぁ
ガロンデコさん、スペシャル交換しませんか?
クイボメガホンが希望でしたが、本気でそうなるとは思ってませんでした。でもチャクチって……
打開のためにスシやボトルやらがウルショ貯めるなか、受動的な使用が前提の構成ってだけで一歩遅れてるんだよなぁ……まあなんだかんだで使うんですが。スロッシャーってだけで使う理由になります。