大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「あっ、あれは……」
「グレートフォックス……また壊れてやがる……」
「草」
「テメェ!!」
「コゥ」
「あっ、なんか側にオニヨンみたいなのもあるっス。なんかすげー色してるけど……」
ホテルラストリゾートに迷い込んでいたルイージ、デイジー、ガンナ、ファルコ、ゲッコウガ、ワリオ、リトル・マック、キノピオ隊長、レックスの9人。巻き込まれていた現地霊リールの力も借りて、どうにか大乱闘の世界に戻ってこれた彼らは右ウイングがへし折れたグレートフォックスを発見したのだった。
大破、というほどでもないが、修理しなければ飛行に支障はあるだろう。
深刻さが低いからか、それとも性格故か、フォックスほどオーバーなリアクションはないが、ガンナの煽りは別腹である。
そして側にはオニヨンに似た何かがある。しかし、普段見るオニヨンより丸っこく、色んな色が混ざりかかったような色をしている。足にあたる部分も、触手のように柔軟だ。
「おい! 誰かいないのか!」
「わあ〜! ファルコ〜!!」
歓喜のあまりにやたらと跳ねながらスリッピーがファルコへ近づいてくる。どうやらセンサーや何かで自分達が近づいてくるのを察知していたようだ。
「よかった〜、バラバラに大乱闘の世界に行ったら、ファルコもフォックスも見当たらなくて〜。空飛ぶボディにウイングをやられちゃったよ〜」
「フォックスはここにはいないの?」
「うん、一緒のタイミングで来たからかな? ペッピーはいるんだけど……まあ、とりあえず中にはいってはいって!」
「やっと休めます〜……」
真っ先に駆け出したキノピオ隊長が、足踏みで急かし、近づいたらぴゅーと中へ入っていく。
「ギャー!?」
「えっ、何!?」
「ゲゲゲゲッソー!?」
「るっせー!! 誰だテメェ!!」
「……誰かいんのか?」
「まあまあ、とりあえず中入ってよ」
聞き覚えのない声に怪訝に思うファルコの背を押しながら、グレートフォックスに乗り込んでいく。
「うわああ……」
「中に入るのははじめてっスね……」
グレートフォックスを見たことがないレックスは勿論、ファイター達もファルコ以外は中に入るのがはじめてだった。普段ファルコに喧嘩を売ってばかりのガンナも、技術が気になるのかあちこちを見てソワソワしていた。
「そういえばさ、バンダナの人とタコっぽい人に会った?」
「いや……会ってないわ。ねえ?」
デイジーが他の顔を見回すが、見たような反応はなかった。しかし、スリッピーは気にせずにま、いっかー、と楽天的である。
ガラッと開け放った操縦室。オリマーに似た小さな男性と蛸の足を髪としたような女性が何やら話し込んでいた。
「うーん……ここの部品は……」
「あ、配線が切れてますね、何かの衝撃が……」
「あー! 勝手に進めないでよ!」
スリッピーも外れてそれに加わっていく。案内役がいなくなったものの、代わりの者が来た。
「ペッピー」
「ようファルコ。無事そうで何よりだ」
ペッピーは話した。
8号達に託したことをそのまま。
マスターハンドの現状。敵と思わしき者達の正体。何をすべきか。
「面倒くせえことになってんなぁ、オレ関係ねえから」
「逃すかこのニンニク臭」
「亜空軍に与したせいで事態がややこしくなったの忘れてねぇぞ」
物騒な2人に捕まる。
喧嘩ばかりだが、こういう時の連携は強いのがお約束。逃げ切れる気がしなかった。
「ワシらのことはいい。まずはそのジョーカーかマスターハンドかを見つけるべきだ」
「ちょっと休憩してから行こう! 大変だったし……」
「コウオ!」
「そうだね……驚いたのもあって疲れてるし……」
ホラー屋敷になったホテルを歩き回ったせいで、精神的にも疲れている。
焦らずに腰を下ろして、と思っていたが、事態は彼らを慮ってはくれない。誰でもわかる緊急時のサイレン。耳に残る不快な音が鳴り響いた。
「大変だー! 大変だー! ボディがいっぱい来てるよー!」
「まさかつけられてた!?」
「原因追及は後でいいわよ!迎え打つわ!」
「よっしゃ! 反復横跳びして準備しておくぜ!」
「なにの準備……?」
「地上だけじゃないんだ、飛んできてる敵もいて……」
「フンッ、そっちはオレに任せとけ。やはり空の方がいい」
逸る気持ちを抑えて駆け出す。ここはグレートフォックス。スターフォックスの基地でもあるここはアーウィンの格納庫でもあるのだ。
「思えばあそこは狭いとこだった。この空で、オレに敵うわけねえだろ!」
相手のボディは、ピットやリザードン、メタナイトといった飛べる手段を持つ敵ばかり。パルテナのような空中に浮くボディもいれば、プリンのように空中戦に強い相手もいる。
「オラァ!」
追尾してくるボディをローリングで振り切り、ガトリングのようにブラスターを連射して敵を落としていく。一瞬、地を見ると他のファイター達が地上で戦いをはじめていた。
ただ、この空中戦、装甲の厚さが違う。
ボディは数こそあれど、所詮は生身。戦車に歩兵が挑むようなもの。どんどん射落としていく。
「この程度かよ!」
「まったくねえ」
「っ!?」
真後ろを取った敵をウイングで斬り落とすもう一機のアーウィン。
ペッピーではない。スリッピーでもない。フォックスでも、なかった。あの声は。
「ガンナッ!! テメェ……!」
『勝手に乗ってっちゃったんだよ〜!!』
通信での簡単な状況説明。
操作方も知らないだろうに、その動きは経験者と遜色なし。
「一度動かして見たかったんだよ。まあ、似たようなもんで戦ってたこともあるし、そんな難しくもねえ」
「テメェの事情は知らねえよ、勝手に……」
「空から地上に攻撃されると面倒だからな、ヘイトを買う頭数は多い方がいいだろ」
「チッ」
粗雑な言動と行動に反して、頭が回るのがガンナだ。気持ちしか反論できる証拠がないのでさらに腹が立つ。
「傷ひとつでもつけたら弁償だからな」
「わかってらあ、おまえこそいきなり茶々入れて……あん? あれは……」
軽口を叩きながら、ブラスターを撃つガンナの視界の端、暗い宇宙に映える赤い翼を捉えていた。
──いつだって、記憶の始まりは燃えるように熱い体とこぼれ落ちていく赤い命の水溜まりからだ。
親はいたのだろう。事切れた女性と今にも同じ末路を辿りそうな男性。
車から投げ出された自分は、強い衝撃で瀕死であるものの、そのおかげで火災には巻き込まれなかった。でも、このままでは時間の問題だろう。
そう、例え事故が起きなくても。
だから契約をした。死にたくないから。
少ない寿命限りなく伸ばすために、ドッペルゲンガーとなって生きながら得るために。
でも欲は止まらない。
生きるために、今までの人生全てを差し出して。
それでも時間が経ったら差し出したそれを欲した。
確固たる自分が欲しい。自分だけの自分が欲しい。
自分だけの体が、自分だけの姿が、自分だけの声が、自分だけの記憶が、自分だけの状態が、自分だけの関係が、自分だけの絆が、自分だけの役割が。
『貴方は、ルフレさんじゃない。どれだけ姿を取り繕っても能力や記憶を真似ても、体の状態が同じでも! 貴方自身の意思がそこにある以上、
ダブルという存在が、ただそれだけで自分だけの何かを手に入れられないのならば、それはそういう世界が悪い。
『────ならば、我々を求める世界を我々が創る。願いを叶える力がドッペルゲンガーの力ならば、我々は全ての世界を破壊する力を求める! 我々が望む世界を手に入れるために!!」
もう、ルフレのボディとしての面影はない。
望むものを手に入れるために、今あるものを破壊する。
そのための姿は、まるでシステムや機械のように無機質なものであった。
──降臨するは、"虚無の残骸"。
◯タイトル
KH2のワールド、存在しなかった世界の城の屋上部。
本当はワールド名をタイトルにしたかったんですが、既出だったので……
ゼムナスとの最終戦の場所だったり、円卓の間以外で機関員が集まる場所。キングダムハーツもよく見える。
◯オニヨン
今話で出てきたのは3バージョン。全ての色が一つになっているので使いやすいが、見た目は微妙。
4では色の区別がはっきりしているので、カラフルで好き。
◯似たようなもん
すれちがいシューティング参考。
◯ダブル
……はい。ラスボスです。ルネはラスボス候補として異質さを目立たせていましたが、ただの誘導です。
"虚無の残骸 ダブル"
【挿絵表示】
能力等は実際に対峙した時にでも。ドット絵をイメージとして置いておきました。自作ゆえにお目汚しですが、少なくとも見てられないほどのものではないはず……
◯作者の気まぐれコメント
スプラトゥーン甲子園見ながら書いてます。
エクカスが活躍しててうれちい……使ってて楽しいし発表当初の酷評が信じられないです。
え? 私もボロクソ言ってた? …………そうだよ(開き直り)
後、来週新生活でドタバタしてるので、もしかしたら更新できないかもしれません。