大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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132話 悪逆

 

──時は昔、天皇の住まう御所にトラツグミに似た大変気味の悪い声が響いたそうだ。

 

 

──毎晩毎晩、武士も寝静まる丑三つ時に毎晩鳴るその鳴き声、黒煙とともに上がり、人々は大層恐れ慄いたそうな。

 

 

──次第に天皇も大層その鳴き声を恐れ、遂には病に伏せってしまった。

 

 

──万病に効くという薬も、名の知れた祈祷師も効果がなく、もはやその天命が尽きるのも時間の問題であった。

 

 

──万策尽きて側近達が頼ったのは、稀代の弓の名手たる将軍だった。

 

 

──1人の家来を連れ、不気味な黒煙の元へ矢を射る。

 

 

──家来と共に鳴き声の主を討伐した後の御所は、小鳥の心地よい鳴き声が響き、夜の静かな静寂が戻ってきたのだ。

 

 

──その鳴き声の主は、それは不可解な姿をしていた。

 

 

──胴は鶏、尾は狐、猿の顔に虎の足。

 

 

──鵺と呼ばれたその妖は死霊となり、一頭の馬となって将軍に飼われたそうな。

 

 

──しかし、敵対する武将が鵺であった馬を取り上げ、その後戦にて将軍は身を滅ぼす。

 

 

──武将はその馬に、長綱という将軍の嫡子の名を名付けたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神剣ファルシオンとヴォーパルの剣が斬り結ぶ。交差した双剣はどちらも名剣と呼ぶに相応しい代物。澄み切った白刃が鳴らした音は、戦闘に似つかわしくないほど澄み切っていた。

 

 

「クロム!」

「……!」

 

「……チィッ! 数が多過ぎる!」

 

「ぐっ!?」

 

 

サイドを固めるように回り込むのは、ロイにソードをコピーしたシャドーカービィ。友人とそっくりな姿に内心驚きはしたが、今は何も言うまい。味方ならば尚更だ。

 

 

狗馬之心(くばのこころ)……!」

 

「電撃の……!」

 

 

辺りに、そして周りに。

一切の容赦もなく降りかかるは無数の雷撃、そして彼自身も人体を焼け焦がす放電を放った。

チハクがファイター達と自分の周りに碁石を囲うように生み出し、可能な限り電撃を弾いていく。ただ隙間のないバリアではないので完全には防げない。彼から遠く離れた者には防御が届かない。

 

 

「願うならば直接殴りたいが、あの剣が目障りだ……」

 

「あー……どうにかどっか飛ばせれば……」

 

 

白く輝くヴォーパルの剣。あれがあるだけで非実態の攻撃は無効にされ、チハクに関しては掠るだけでも致命傷だ。

インクリングには、力技しか思いつかないがどうにか電撃を掻い潜る必要がある。一瞬絶縁性のインクを使えば、と思ったがあいにく在庫切れである。

 

 

「スーパーアーマー! ブラピ!!」

 

「わかってる!!」

 

「……!」

 

 

ダメージの痛みを鈍くし、神弓を短剣として近づく。尚も放電しながら突くように対応した刃の軌道をなんとか逸らす。

これで互いに得物の剣先が下がり隙ができる。

しかし、片方には攻撃に回れる味方がいる。

 

 

「おりゃあっ!!」

「ピチュッチュ!!」

 

「チッ!」

 

 

ローラーの振り回し、こうそくいどうを片方の手で防ぐ。ほとんど防げないものの、無意識の行動だった。

 

 

『グウワアアアアッ!!』

 

「ガッ!?」

 

 

片方は剣に、片方は盾として、両方の手が塞がった状態で竜のままのカムイが馬乗りになる。首を振り回し、角であらゆる場所を引っ掻く。

 

 

「……っ! 舐めるなよ! 平安の怪異を!!」

 

『くっ……!?』

 

 

激しい電圧にカムイの身体が吹き飛ばされる。しかし、その真下にもうナカツナはいない。ファルコのボディを捨て、怪異となった悪霊は、キマイラのようにツギハギの獣に成り果てたのだ。

 

胴は鶏、尾は狐、猿の顔に虎の足。

 

雷雲を纏って全容を露わとしない姿を見た者は恐怖へ叩き込む。ファイター達ですら、背中に底知れぬ薄寒さを感じた。

 

 

武士のようでありながらに剣も捨てた、怪物。

ローラーを下ろしたインクリングが、3号が呟くように言った。

 

 

「なんか……戦う気も失せるや」

 

「…………」

 

「君は……自分が生きることだけを選び続けて、一体どこを目指していたの」

 

 

目的であったはずのボディを捨ててまで勝ちを求めるプライドはあって、恥を晒して倫理に逆らっても生きようとした。

 

何よりも正体がわからなかったのはナカツナ自身ではなく、彼の心の内だった。

 

 

 

「うっ……」

「チュ〜……!」

 

 

力強い羽ばたきが空気を揺らし、軽いシャドウや小さいピチューを吹き飛ばしていく。

踏ん張れた内のガノンドロフに噛みつき、電撃を浴びせて地に叩きつける。

 

 

「ぐっ……厄災か!!」

 

「あんたがそれ言うの! もうっ!」

 

「あっ、カズーイ!」

 

 

勝手に撃ったタマゴ爆弾だが、周囲のモヤに当たって爆発したように見える。効いているのかもなんともいえない。しかし、爆発の中から貫くような電撃が襲った。

 

 

打つかり(ぶつかり)っ!」

 

「うおっ!? 助かった! しかし、これだと銃火器も中々使えないな……」

 

 

突如現れた白石の壁に、スネークは守られた。ヴァーポルの脅威は抜けたが、チハクに火力がないのは変わらないのだ。支援に徹した結果、不意打ちも防げた。しかしナカツナ、能力が能力であるが故か、敵の不意を突くのに長けている。

 

 

「接近戦……いや、周りのモヤが毒でない保証はないね。奴ならやりかねない」

 

「ああ、あれこれ考える必要はない」

 

 

クナイを投げ、そのまま帰ってきた状況を見て、かわしたシーク。しかし、チハクは怒りを抱えながらも、冷静な無表情が残ってたのだ。

()()を拾い上げて珍しく饒舌に言った。

 

 

「既に勝っている。後はどう、奴に地獄を見せるか、だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナカツナァ!!』

 

「カムイッ!?」

 

 

神話から繋がれた神祖竜の血が肉薄する。ロイも驚いたのだ。カムイがこんな、本能のままに怒る様子ははじめてだった。

我を忘れてでもない。自分の感情を自覚した上で怒りにまかせて正気のままに怒り狂っている。

そうでもしないと、結末がどうなろうと今回の出来事が消化できそうにないのだ。

 

 

『ボディだろうがスピリットだろうが……! みんな、それぞれ色んな道を選んで生きている……! チゲンが選んだ道を馬鹿にするな!!』

 

『なぜ庇う? なせ自分の命を捨てられる!! 憎き我が主人は何をしてでも生きることを選ぶ方だった!』

 

『それはおまえの道だ!! 人に押し付けるな!』

 

 

絡み合った2体の異形達は天を舞い、力づくで敵の肉体を引っ掻き、竜穿が肉体を貫く。

尾のようなものに首を絞められ、頭を引っこ抜かんと強い力がかかる。引っ張り返し、首に力を込めて、無理やり耐える。

お互いが飛行体勢を取り続けることができなくなり、もつれあいながら落ちていく。

 

 

『(うるさいッ!!)』

 

 

放電をしても、カムイは離れない。その段階で既にもう理解できない気持ち悪さを感じた。

自分が無くなったら、全て終わりだろう。大切な何かがあっても、自分あってこそのものだろう。

 

 

「守りたい人、守りたいと思う人。自分しかいなかったんだね」

 

『(巫山戯るな!! 俺にとってのそれは我が主人だ!! ただ、あの人は他の武士に恥だと謗られようと生きる方だ……あの人と同じ道を進んでなにが……)』

 

 

ふっ、と音もなく同じ位置まで浮いてきた、シャドウ。かの力はなんだったか。人の形を持っていれば、血の気が引いていただろう。

 

 

「カオス──コントロール」

 

 

落ちる速度が消えていく。

ゆっくり、ゆっくり。そうか、接触していたカムイごと、時間の流れを変えた。

 

 

『(……!?)』

 

 

だが、ナカツナにとどめを刺さんとしたのは、シャドウではない。飛翔の奇跡をつけた、チハクだった。あの剣は、武将としての武器すら切り捨てたもの。存在を明確にする白刃。

 

 

『(ヴァーポルの……剣……!?)』

 

 

チハクが小さく笑うと、上空から真っ直ぐ真下へ、自分へ。

 

 

『あ…………ぐ…………!?』

 

 

言葉すらゆっくりに。

存在を明確にし、スピリットを強制的に霊体へ戻す剣。それが悪霊たる自分に使えば、死しか、ない。

 

垣間見えたチハクの顔。ナカツナにもわかるように、ゆっくりと口が開いた。

 

 

お ろ か

 

 

 

 

馬と化した自分。

あの方は自分の仇を取った。

それだけで好ましかった。

 

何をしてでも、自身の血筋を否定してでも生きる御姿に。

 

 

他者から非難されようと自分を貫く御姿に、自分を大事にしていいのだと、背を押された気がしたのだ。

 

 

 

 

馬鹿馬鹿しい。

命乞いまでできなかった自分は、本当にあの方と同じ道だったのだろうか?

 

走馬灯なんて見て、いったいどの程度の命になるのだ。

 





◯タイトル
FEif 暗夜編 26章の章タイトル。
人の道にそむいた、非常に悪い行い。もしくは、主君・父などを殺そうとする罪。
二通りの意味。


◯ナカツナ
クランクアップです!()
なんか凄くブレブレな設定だったのですが、実際、性格設定がきっちり決めてなかったのです。割と元ネタ通りですから、逆に決めるのが遅くなりました……。よくコイツを一章のボスにしようと思ったよ。

普通に誇り高い武人だったり、卑怯を卑怯とも思ってないナチュラルバーサーカーだったり色んな時期がありました。
ちなみに獣化ですが、当初はそのまま戦ってとどめを刺されるつもりでしたが、敵が多いので急遽形態変化を採用してます。なお、しっかりファイター面子を描き切れたかは……うん、私は人生の負け犬。


◯作者の気まぐれコメント
先週は突然休ませてもらって申し訳ありません。ちょっと新生活のあれこれが忙しくて……
今週も片付け切れなかったので、今週は駆け足で執筆してます。(現在20:53)

そんなこんなしてる間にWiiUと3DSのオンライン終わっちゃいましたね。スプラトゥーン、天使の降臨……できなくなったのが信じられないですね。悲しい……

雑誌で特集されてたスプラトゥーン。
塗ってれば勝てるとパブロに惹かれてソフトを買い、いつの間にやら52凸という殺意に芽生えました。
そっから2でブラブラしてて、3の初期でスクイックリンを逆張りで使いだし、今はスロッシャー愛好家。懐かしいです。
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